2024.03.24NTTリーグワン2023-24 D1 第11節レポート(静岡BR 24-8 トヨタV)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第11節
2024年3月23日(土)14:00 エコパスタジアム (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 24-8 トヨタヴェルブリッツ

静岡BRがつかみ取った二つの“初勝利”は
目指すところに近づく価値あるものに

「ただトヨタVに勝てたことより(エコパスタジアムでの)ホストゲームでやっと勝てたことが大きい」と、静岡ブルーレヴズの日野剛志選手

「ここ2年ぐらい(トヨタヴェルブリッツ、以下、トヨタVに)勝てなくて、本当に惜しい試合ばかりだったので、やっと勝てて良かったです。ただトヨタVに勝てたことより(エコパスタジアムでの)ホストゲームでやっと勝てたことが大きいですね。この雨の中に5,000人以上の方々が来てくれたのは力になりましたし、濡れながら見てくれた人たちに勝つ試合を見せられたというのは本当に良かった、また観に行きたいと思ってもらえる試合ができたんじゃないかと思います」

隣県のライバル、トヨタVと数々の熱戦を経験してきた34歳の日野剛志はこう語った。ジャパンラグビー トップリーグ時代には苦手にしていなかった相手だが、ジャパンラグビー リーグワンがスタートしてからは接戦が多かった中で4戦全敗(1試合は不戦敗)。またリーグワンになってエコパスタジアムでも初めての勝利となった。二つの意味でようやく胸のつかえが取れたようなすっきりした表情を見せていた。

また内容的にも、ニュージーランド代表“オールブラックス”勢を含めて代表キャップを数多く持つ選手が多いトヨタVに対して、80分をとおして主導権を握り、強力な相手の攻撃を1トライに抑えて完勝したことも大きな収穫だった。ミスで取り消しになったトライが2本あり、ボーナスポイントが取れてもおかしくなかった。

体調不良者が多く出たこともあって、日野レッドドルフィンズからの移籍後初出場となったシオネ・ブナや、アーリーエントリーで加わって初先発のショーン・ヴェーテーをはじめ前節のリコーブラックラムズ東京戦からスタメンが7人代わったが、それでも静岡ブルーレヴズらしくセットピースで優位に立ち、アグレッシブな姿勢を最後まで貫けたことも大きかった。

「これまで何回も逆転負けしていますが、終盤のゲームコントロールも良くなったと思います」と日野も言う。前節でも、終盤の相手の勢いに押し負けることなく、勝負強く戦い連敗を止めた。勝ち切る、という面で課題のあったチームだが、この2連勝はそこが改善されてきたことの証明にもなった。

「相手はオールブラックスや日本代表がたくさんいますが、自分たちが引けを取っているとはまったく感じていないですし、“レヴズとしての強み”をしっかり出して戦っていけば、どのチームにも勝てると思っています。それをホストスタジアムの一つであるエコパで見せられたという意味でも大きな1勝だと思います。自分たちは静岡県全域に根付いて拠点とするクラブチームなので」

ゲームキャプテンを務めた庄司拓馬も、トヨタVに対する初勝利以上にエコパスタジアムで良い試合と初勝利を見せられたことに価値があったと言う。ラグビーに詳しくない人でも「雨だけど観に来て良かった」と思える試合ができたことは、静岡BRが目指すところという面でも大きな意味のある一歩だった。

(前島芳雄)

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの藤井雄一郎監督(左)、庄司拓馬バイスキャプテン

静岡ブルーレヴズ
藤井 雄一郎監督

「前半でしっかり攻撃して、後半につないでいくというプランでした。天候は悪かったんですが、それは関係なくしっかりボールをつないでいこうということで、選手がミスを恐れずにしっかり戦った結果がこの結果になったと思っています。今日は選手がよくやったと思います」

──これで2連勝。終盤まで安定した戦いが2試合ともできたと思いますが、その部分でチームの成長を感じますか?

「そうですね。戦い方を絞って、このように戦う、ということをしっかりとみんなが意思統一してできるようになってきました。それはチームとして成長しているところではないかと思います」

──試合の入りも非常に良かったと思いますが、どう感じていますか?

「そうですね。今日の合言葉が『1ラウンドK.O.』でした。1ラウンドでノックアウトできるぐらいのパンチを放っていけということで、今日はそれをみんなが体現していたと思っています」

──静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)として、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)にリーグワンになって勝利したのは初めて。さらに、エコパスタジアムで勝ったのも初めてです。そのことについてどう感じていますか?

「いま聞いて、『そうなんだな』と思ったのですが、あまり相手うんぬんというよりは今日は自分たちにフォーカスすること、天気をしっかり味方につけるということ、攻撃しながらしっかりとボールを前に運ぶということができたので、その相手がたまたまトヨタVさんだったということで。苦手意識は僕にはそこまでなかったんですが、そういうものはいろいろなところから作られていくものだと思っていて、もう苦手意識はないと思います」

──代表キャップを持っている選手、世界的な選手がたくさんいる相手に勝てたというのは、どういう理由があると考えていますか?

「それはちょっと分からないですね。チームとしてやることがすごく絞られていて、それができたということと、今日初めて出た選手に対しても、しっかりいろいろな選手がコミュニケーションを取って、彼らをサポートしながら自分たちも成長していけたというところがありました。そこに差があるという気はしています」

静岡ブルーレヴズ
庄司拓馬バイスキャプテン

「藤井(雄一郎)監督が言ったとおり、前半からアタックしていくというマインドを持った中で、相手のペナルティで点数を重ねられて、優位に進められたと思います。雨の中でも自分たちのやるべきこと、セットピースなどでアタックのマインドというのを持って80分を戦ったことで勝てたと思っています」

──今日はあまり攻め込まれずに戦い続けられたと思いますが、どのあたりで優位に立てたという印象がありますか?

「雨なのでスクラムやラインアウトが増えると思っていました。その中でも自分たちのセットピースをやり切ってペナルティをもらったり、相手のミスのところにしっかり反応したり、『1ラウンドK.O.』という合言葉とともに自分たちは進んで、そういうところで優位に進められたと思います」

──静岡BRとして、トヨタVにリーグワンになって勝利したのは初めて。さらに、エコパスタジアムで勝ったのも初めてです。そのことについてどう感じていますか?

「僕が入団してからは勝てていなかったと思います。僕としてもトヨタVさんに勝ててうれしい1勝でありましたが、勝てていなかった相手に勝てたからではなくて、目の前の試合で1勝ができたということをまず喜びたいと思います。あとホームグラウンドのエコパで勝てたというのは、やっぱり大きい1勝だと思います。自分たちは静岡県全域に根付いて拠点とするクラブチームですので。

もちろんIAIスタジアム日本平や、ヤマハスタジアムもありますが、地域の方々に近いところで見てもらえるという面では、エコパでの勝利というのは、また見に行きたいなと思ってもらえるきっかけになったんじゃないかと思います」

──代表キャップを持っている選手、世界的な選手がたくさんいる相手に勝てたというのは、どういう理由があると考えていますか?

「もちろん相手にはニュージーランド代表オールブラックスのハーフバック団がいて、日本代表のキャップを持っている選手もたくさんいますが、別にそこに対して自分たちが引けを取っているとはまったく感じていないですし、静岡BRとしての強みをしっかり出して戦っていけば、どのチームにも勝てると思っています。そういう面では、特にそこに対して考えることなく、自分たちのスタイルを貫きとおすというところでやってきました」

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(左)、姫野和樹キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
ベン・へリング ヘッドコーチ

「まず今日のトヨタVとしてのパフォーマンスに関しては非常に残念です。そして静岡BRのほうが、この雨天の中でセットピースも含めて良いプレーを見せました。彼らの方が1枚上手だったという結果になりました。多くの部分で彼らが良いプレーを見せ、われわれとしてはやるべきことを遂行することができない場面が多々ありました」

──なかなか相手陣内まで押し込むことができない展開だったと思いますが、試合展開の明暗を分けたポイントというのはどんなところだと感じていますか?

「まず前半が良い例だったと思います。彼ら(静岡BR)がボールをよくキープしながらプレーしたと思います。ですから、前半に関しては常にトヨタVが相手のキャリーによって後退し続けるという場面が続きました。常にディフェンス側にいることが多い状況の中で、1cmずつ静岡BR側が前に進み、雨の中でそういった良いプレーを見せたというところに尽きると思います。前半、そして試合をとおして、そういう相手の勢いを止めることができませんでした」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「今週の1週間、素晴らしい準備ができていたので、こういった結果になったことを、すごく残念に思います。ベン(・ヘリング ヘッドコーチ)も言いましたが、静岡BRさんが雨という難しい状況の中で、うまくゲームを進めてきたこと、それに対して自分たちが対応できなかったというところが今回の敗因だと感じています。こういった雨の中でのゲームというのは今シーズン初めてでしたので、僕たちにとっては残念ですが、良い学びにはなりました」

──なかなか相手陣内まで押し込むことができない展開でした。試合展開の明暗を分けたポイントというのはどんなところだと感じていますか?

「ベン(・ヘリング ヘッドコーチのコメント)と一緒なんですが、こういった日では敵陣でどれだけプレーできるかというところが重要になると思いますし、その中で自分たちのディシプリンのところで、良いアタックに対して自分たちがペナルティをしてしまっていたら、簡単に3点を取られてしまいます。さらにコーナーにボールを蹴られてしまいますし、エリアを取られてしまいます。こういったゲームの中では、そういう規律もすごく重要です。それに、ゲームのバランス、キックのバランスもすごく重要だと思います。そこで静岡BRさんがすごくうまく試合を運んでいったんじゃないかと感じています」

──前半の入りが非常に悪かったんですが、それは相手が想定外のことをしてきたからでしょうか?

「想定外ということではないと思います。この雨の中でのプレー精度のところで、彼らが1枚上手で、うまくプレーをしたということだと思います。そうした内容をボーディー(ボーデン・バレット)と話をしました。そういったところで一つひとつのプレーの精度が、この差に出たと僕は感じています」

──ペナルティがなかなか減らない。その課題をどう捉えていますか?

「これは前にも言いましたけど、練習の中でそういった意識レベルをもっと高めていかなければならないです。時間は掛かるのですが、そこをキャプテンとしてずっとアプローチしていくということが必要になると思いますし、一人ひとりの意識がすごく大事になってくると僕は思います」

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