クリタウォーターガッシュ昭島(D3)
スクラムで優勢になり、外で仕留める。それぞれの思いと、一つの目標
NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 入替戦第2戦。クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)と釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)による来季のディビジョン2入りを懸けた最終決戦は、5月13日、愛知県のパロマ瑞穂ラグビー場が舞台となる。
WG昭島のキャプテン石井洋介は第1戦を振り返って、「後半は自分がシンビンで抜けたりして、チームとしての方向を定め切れずに同点に追い付かれてしまった。引き分けたのは運が良かっただけ」と、キャプテンとしての役割を果たし切れなかったことを悔んだ。
その試合、チーム内MVPには江本洸志が選出された。「先輩に対しても、『やる気がなかったら練習しに来ないでください』、と言いますよ。そのぶん、自分もしっかりやらないといけない、という気持ちになるので」。あえて自分にプレシャーを掛けるために、厳しい言葉を口にするのだと言う。
「(アンドリュー・)ディーガンがスタンドオフに入っているので、外にポジショニングをすることを意識するようになりました。そこからラン、トライも増えたかなと。(アンドリュー・)ディーガンは僕の動きも分かってくれて、欲しいところにボールをくれる」と、ここ数試合にわたって活躍できている要因を冷静に分析する一方で、そのアンドリュー・ディーガンと通訳なしで、二人で食事に出かけてコミュニケーションを図るなど、常に自分から主体的に動くエネルギーもある。冷静に熱く、それは江本のプレースタイルそのものだ。
もう一人、期待が懸かるのは、第1戦でスクラムを圧倒した渋谷圭。「最初に組んで、『いける』と思ったので、そこからは押せたかなと。全体をとおして良かったです。チーム内での競争が激しく、そこでいいスクラムが組めているからこそ、釜石SW相手でもプレッシャーを掛けることができました」。今週の試合でも相手にプレッシャーを掛け続けて、ディビジョン2昇格につなげることができるか。自信を持つスクラムからチャンスを狙う。
「(ワイクリフ・)パールー ヘッドコーチを胴上げする」。江本、渋谷ともに強い思いをもって、最終決戦にすべての力をぶつける。
(匂坂俊之/Rugby Cafe)
釜石シーウェイブスRFC(D2)
残留のカギを握るスクラム。「これしかない」という組み方でまとまった釜石SWが圧倒を期す
釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)は5月13日、ディビジョン2残留を懸けて、ビジターの地、愛知県のパロマ瑞穂ラグビー場でクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)との入替戦第2戦に臨む。引き分けとなった第1戦は勝ち点、トライ数すべてにおいてイーブンの数字となった。次戦の結果が運命を分けるだけにより目が離せない一戦だ。
入替戦第1戦は、手に汗握り、息をするのを忘れてしまうほどの緊張感に包まれた人も多いはずだ。釜石SWは一時19点をリードされ、反撃の狼煙を上げたのは後半残り20分を切ってからだった。トライを重ね、ラストプレーとなったコンバージョンキックを落和史が落ち着いて決めて何とか追い付いた。
勝ち点5はつかめなかったものの、引き分けに持ち込めたことは大きい。キャプテンの小野航大も、「試合前から“2戦とおして80分”というイメージでいて、まだ前半が終わっただけ。課題は修正できているので次は“バチッと”勝てると思います」と心強い言葉を残した。
勝負のカギを握るのは前回同様、スクラムだ。第1戦は相手に押し込まれ苦しい展開になった。「追い付いてくれた仲間に感謝して今度はしっかりスクラムから流れをつかみたい」と話したのは稲田壮一郎だ。大卒ルーキーで迎えた今季、ほとんどの試合に出場。代表レベルの相手とスクラムを組むなどの刺激を力に大きく成長した選手の一人だ。大事な入替戦も2戦連続で先発を任された。「最終的には“これしかない”という組み方でまとまったので次こそは圧倒したい」とセットのタイミングやテンポ、8人が一体となって組む感覚など、前回のスクラムの肌感もはっきり残る今週、より多く練習を重ね確かなものにしてきた。
稲田は普段、営業の仕事をする社会人ラガーマンだ。練習と仕事の両立という初めての経験に苦労しながらも“ラグビーのまち釜石”での日常も原動力となっている。「今週は練習でもスクラムで頭がいっぱい。職場でもみなさんラグビーに詳しいので『スクラムしっかりな!』と毎日のように言われています。ここまで気にかけてくれる人たちはなかなかいないと思うので、自分がチームを残留に導くという強い気持ちを持ち、頑張ります」。
万全の準備に、釜石の熱い応援、さらに決戦の地は稲田の地元・愛知県。勝利へのパワーは蓄えているはずだ。あと稲田は試合前日に勝負飯の大盛パスタを食べれば準備完了。運命の日、エンジン全開でチームにいい流れを呼び込む覚悟だ。
(佐々木成美)