NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 D2/D3入替戦 第2戦
2024年5月25日(土)12:00 AGFフィールド (東京都)
クリタウォーターガッシュ昭島 26-41 日本製鉄釜石シーウェイブス

前半4分のトライと後半30分のビッグタックル。
釜石SWをD2残留に導いた24歳のウイング

攻守にわたって活躍した日本製鉄釜石シーウェイブスの阿部竜二選手。特に後半30分のサウマキ選手を止めたタックルは勝敗を決するビッグタックルだった

NTTリーグワン2023-24 D2/D3入替戦第2戦は、日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)が41対26でクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)を下し、来季のディビジョン2残留を決めた。

先制したのは釜石SWだった。勝利した第1戦の勢いのままに、前半4分に阿部竜二がトライを決めると、その2分後には村上陽平がトライ。さらにキャプテンの小野航大も続き、前半20分で21対0と大きくリードする。ところが、このまま釜石SWが圧倒して試合が進むかと思われたが、フリン・イェーツとタタナ ダラスと立て続けの負傷交代によって流れが変わる。

きっかけはスクラムだった。WG昭島が生命線とも言えるスクラムで息を吹き返すと、ホセア・サウマキ、濱副慧悟の強力な両ウイングに、いい形でボールが回るようになる。前半のうちに2トライを返し、後半に入ると怒とうの反撃を開始。後半24分には26対24と逆転に成功する。ボーナスポイントを加えた勝ち点5を奪えば、2試合トータルの勝ち点で上回ることができるWG昭島にとって、そのチャンスは目の前に訪れた。後半30分、ホセア・サウマキにボールがわたり、トライに向かって突き進む。しかし、1本のタックルがホセア・サウマキの足を止めた。釜石SWの阿部のタックルだった。

「勝ちタックルだった」と、ワイクリフ・パールー ヘッドコーチに言わしめたそのタックルが止めたのは、ホセア・サウマキだけではなかった。釜石SWは再び流れを取り戻すと、最後は地力の差を見せつけるようにトライを重ね、WG昭島を突き放した。

試合を終えて、濱副が言った。「満足はしていないです。もっとボールタッチを増やせればチャンスはあったと思います」。何より悔しかったのは、この試合で現役を引退する同期の坂本英人を勝利で送り出せなかったことだった。

「一緒に駆け抜けてきた仲間のラストゲームでしたから。坂本のぶんも、僕はこれからもっともっと活躍しないといけないです」

この日、濱副が決めたトライは二つ。最初のトライは坂本のパスから生まれた。坂本から濱副への“最後のパス”。それぞれの胸に去来する思いを乗せて、一つのシーズンが終わり、また新しいシーズンが始まる。

(匂坂俊之/Rugby Cafe)

クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(左)、中尾泰星ゲームキャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ

「激しい試合でした。一時はスコアをひっくり返すところまでいけたことには満足しています。あと一つトライが取れればという場面で、ホセア(・サウマキ)がラインブレイクした際に、日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)の14番のいいタックルがあって、その瞬間に(ゲームは)決まったと思いました。ただ、自分たちのラグビーは遂行できたと思います」

──前半の最後のペナルティの場面で、タッチキックのミスがあり、勢いを失ってしまったのではないでしょうか?

「試合を通して2、3回タッチキックのミスはあったと思います。このミスがなければ、あと2つ、3つのトライを取れていた可能性はあると思います。ただ、(キッカーの林田)拓朗が、1回ミスをしたからといって、手前に蹴るのではなく、ギリギリを狙って蹴り続けていたことは評価しています」

──今季を通じて、大事なところでのペナルティが多かったことについてはどう考えていますか?

「多くのペナルティは、お互いのコミュニケーション不足から生まれると思います。シーズンが進む中で、少しずつ減ってきていると思いますが、まだまだ改善は必要です」

──ディビジョン2に昇格するために必要なことはどんなことだと感じていますか?

「D2に上がることよりも、(その前の段階で)もっと大切なことはあると思っています。全員と話をして、何を改善する必要があるのかを明確にしていきたいです。そういう部分がしっかりできて、それから初めて、チームのいい文化、いい環境を作っていけると思います」

クリタウォーターガッシュ昭島
中尾泰星ゲームキャプテン

「前半の入りが良くなかったです。後半もいいアタックはできていたと思いますが、大事な場面でペナルティをしていまい、自分たちの首を絞めてしまいました」

──D2に上がるために必要なことはどんなことだと感じていますか?

「日本人選手は全員社業と両立をしていますが、限られた時間の中で、時間を効率的に使うことに関しては優れていると思うので、来季が始まったら、あらためて何が必要かを考えていきたいです。やるからには上を目指していきたいので、全身全霊で戦っていきたいと思います」

日本製鉄釜石シーウェイブス

日本製鉄釜石シーウェイブスの須田康夫ヘッドコーチ(右)、小野航大キャプテン

日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ

「プレッシャーの掛かる試合でしたが、お互いに出し切れたと思います。前半はいい入りができて、そこでしっかりと流れに乗れたのが勝利の要因だと思います。途中、セットピースのところで、クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)のプレッシャーを受けたところもありましたが、選手たちがきつい時間をしっかりと我慢してくれました」

──来季もD2で戦うことになりました。改善すべき点はどんなところでしょうか?

「昨季に比べて、いい部分が多くなってきていると思います。特に、セットピースを修正することで、それなりの試合をできるようになったのは、今季の収穫だと思います。ただ、重要な局面でのミスが多かったことが勝ち切れない原因だと思うので、来季はチームとしてさらにまとまることが大事になってきます」

──今日も多くのファンが応援に駆け付けていました。

「東京での試合は多くのファンが来てくれるのでありがたいです。今季はもっと勝つ姿を届けたかったですが、惜しいところで負けてしまい、レギュラーシーズンは1勝と悔しい思いをさせてしまったので、来季こそはトップ3に入れるように、しっかりと準備をしていきたいです」

日本製鉄釜石シーウェイブス
小野航大キャプテン

「(入替戦の)2試合とも、すごくタフなゲームでしたが、なんとか我慢比べで勝ち切れたと思います。チームとしては、さらにレベルアップしないといけないと感じさせられた試合でしたが、なんとか来季のD2で戦うチケットを取ることができて良かったです」

──前半の内に選手交代があって、そこから崩れてしまったように見えたのですが、いかがでしょうか?

「フリン・イェーツがけがで交代してから、スクラムでプレッシャーを受けるようになってしまいました。そこから自分たちの流れで試合ができなかったです。前半に得点を重ねたことで、軽いプレーになったということでなくて、力技でWG昭島にプレッシャーを掛けられていましたが、なんとか我慢できたかと思います」

──ファンに向けてメッセージをお願いします。

「ファンの方は強い釜石SWの姿を期待していると思います、今季は勝つ試合をなかなか見せることができなかったので、来季こそ強い釜石SWを見せられるように、いい準備をしていきたいです」

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