NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン 2/ディビジョン 3 入替戦 第2戦
2023年5月13日(土)14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
クリタウォーターガッシュ昭島 28-38 釜石シーウェイブスRFC

自らの強みを生かせなかった結果。昇降格を分けたのは、“ファーストスクラム”

ディビジョン2/ディビジョン3 入替戦は、釜石シーウェイブスRFCがディビジョン2残留を決めた

NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23 ディビジョン2/ディビジョン3 入替戦第2戦。クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)と釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)の昇降格を懸けた最終決戦は、釜石SWが勝利し、ディビジョン2残留が確定した。

「試合前からファーストスクラムを全員が意識していました。自分自身も第1戦ではスクラムでやられて、かなりメンタル的に苦しい部分もありましたが、この1週間で整理することができた。その結果だと思います」と、釜石SWの稲田壮一郎がうれしそうに振り返った。ファーストスクラムからチャンスをつかみ、そのままトライまでつなげた釜石SWが試合の主導権を握った。

対峙したWG昭島は、「(スクラムの)最初のヒットのところで受けてしまった。それでも僕たちのディテールがしっかりできていれば、あんなスクラムにはならなかったと思います」と栗原良多。第1戦ではスクラムで圧倒できた。そのいいイメージを持って試合に入ること自体は悪くない。だが、相手も変化する。「そのまま組んでしまった」(栗原)と、ファーストスクラムを悔やむ。

最初に歯車を狂わされたWG昭島は得意のラインアウトの流れから点差を縮め、必死に釜石SWに追いすがる。しかし、大事な局面でパスミスやノックオン、ペナルティを繰り返した。チャレンジする側がミスを繰り返せば勝機は逃げてゆく。主導権を最後まで取り戻せないまま、今季のディビジョン2昇格への道は断たれた。

釜石SWの稲田が、「ディビジョン2のほかのチームと比較しても、WG昭島のスクラムはとても強い。メンバーが代わってもやってくることは変わらなかった。本当に徹底してやっているなと」と言うように、WG昭島のスクラムはシーズンをとおして大きな武器となった。しかし、スクラムの課題もまた、明確になった。「スクラムは成長できたし、ほとんどのチームを圧倒することができた。ただ、波がある」(栗原)。

スクラムでも、スクラム以外のところでも、いいときと悪いときの差をなくすこと、いつでも一定のクオリティーを保つこと。来季への準備はすでに始まっている。

(匂坂俊之/Rugby Cafe)

クリタウォーターガッシュ昭島(D3)

クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(右)、石井洋介キャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ

「試合はスタートからプランどおりにいきませんでした。特に前半は、第1戦でクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)がやれたことを、今回は釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)にやられてしまった。後半はWG昭島のラグビーがしっかりとできたと思いますが、最後は力が足りなかったです」

──濱副慧悟が今季初めて控えからのスタートでしたが、戦術的な意図を教えてください。

「前半はセットピースとフィールドポジションを重視していこうという戦術的な意図がありました。後半からアタックを展開していくプランで、濱副は入ってからすごく活躍してくれたと思います」

──『ランニングラグビー』を掲げた今季の総括をお願いします。

「マインドセットは確実に変わったと思います。シーズンの始まりはどうなるかと思いましたが、全体的に選手たちがハードワークしてくれて、シーズンの後半はいいラグビーができたように思います」

クリタウォーターガッシュ昭島
石井洋介キャプテン

「前半に相手のほうがハードワークできていたことが、結果としてこの点差につながってしまったと思います」

──第1戦とスクラムの違いは感じましたか?

「違いというよりレフリーとのコミュニケーションのところが大きかったです。僕らがスクラムで勝っていても、押し方が悪かったというか、自分たちの組みたいスクラムが組めませんでした」

──レフリーとコミュニケーションということでは、具体的にどういった話をしていたのでしょうか?

「フィールドプレーのところでペナルティになることが多かったので、『どういうところを中心に見て判断しているのか』、というコミュニケーションです」

──今季の総括をお願いします。

「今季は『ランニングラグビー』を掲げて取り組みましたが、スキル面でまだまだ足りないと思っています。ただ、『どこのエリアからでも攻めよう』、というマインドセットのところはチーム全体に染み込んできた。いい方向には進んでいると思います。マインドセットの部分は継続して、そこに来季はさらにスキルを上げていきたいです」

釜石シーウェイブスRFC(D2)

釜石シーウェイブスRFCの須田康夫ヘッドコーチ(右)、小野航大キャプテン

釜石シーウェイブスRFC
須田康夫ヘッドコーチ

「第1戦が同点で終わってしまって、崖っぷちでしたが、しっかりと前回の反省を生かして挑めたと思います。特にスクラムのところ。短期間で修正するのは難しかったですが、選手たちがしっかりとやってくれたことが、今日の勝利の要因だと思います」

──スクラムは具体的にどのような修正をしたのでしょうか?

「低さ、それから、相手より先にセットする、という点にこだわってこの1週間は練習してきました。前回の試合でもいいスクラムはいくつかあったので、それをしっかり80分間できるような準備をしてきました。今日は70%ぐらいできたのかなと思います」

──試合前にどのような話をして選手を送り出したのでしょうか?

「『自分たちにフォーカスすること』。『自分たちのやるべきことをやろう』。そんな話をしました」

──今季の総括をお願いします。

「シーズンをとおして失点が多かったので、ディフェンスの改善は必要となってきます。スクラムでボールを失うことも多かった。そのあたりにフォーカスして、来季またチャレンジしていきたいです」

釜石シーウェイブスRFC
小野航大キャプテン

「入替戦ということで、難しいゲームになることは分かっていました。自分たちのやるべきことにフォーカスして、80分間我慢してプレーできたのは、チームとして大きな収穫だったと思います。良かった部分、悪かった部分はそれぞれありますが、ディビジョン2に残留できたこと。今日はそれがすべてだと思います」

──ファーストスクラムでいい流れをつかんだと思いますが、いかがですか?

「僕らとしてはスクラムをイーブンに組めれば、ベストだと思っていましたが、最高の結果でした。ペナルティを取れて、クリタウォーターガッシュ昭島にダメージを与えることができたのは良かったです」

──雨の影響は?

「プレーには特に影響はなかったです。雨のプランを立ててこの1週間は練習をしてきました。特に迷いもなくプレーできました。逆に雨が降ってくれてよかったとも思います(笑)」

──今季の総括をお願いします。

「昨季よりボールを持つ時間は増えたと思いますし、アタックの能力は個人のスキルとともに上がったという実感はあります。あとは(須田康夫)ヘッドコーチが言うように、ディフェンスの部分。そして、セットピースの改善が大事になると思います。特にディフェンスのところは、こだわりをもってまた1年間やっていきたいです」

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