NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2(リーグ戦) 第1節
2023年12月9日(土)14:30 東平尾公園博多の森陸上競技場 (福岡県)
九州電力キューデンヴォルテクス 22-26 レッドハリケーンズ大阪
劇的な結末の再現!
2年連続で勝利の立役者となった小村健太
昇格組同士の顔合わせとなった九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)とレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)の開幕戦。昨季、ディビジョン3でも同じ顔合わせでの開幕戦だったが、ラストプレーでの逆転トライという劇的な結末の再現を果たしたRH大阪が26-22で九州KVを下し、白星発進となった。
ラストワンプレーで逆転トライ。RH大阪にとっては歓喜の、九州KVにとっては悪夢の逆転劇となってしまった。その主人公となったのは1年前と同じく、この日も小村健太だった。
「キックでのパスを呼んでいたんですけど、『来やんなー』(関西弁で『来ないな』の意)と思っていて(笑)」
小村の脳裏に瞬間的によぎっていたのは昨季の開幕戦の自分の姿だった。あまりにも状況が酷似していたため、それも当然だ。3点差のビハインドで迎えた試合終了直前。ペナルティを得ると同点のペナルティーゴールを狙うのではなく、タッチへのキックを選択。ラインアウトからのモールで逆転トライを狙う。得点差もチームの選択も昨季の開幕戦と同じ。ここで右サイドからのキックパスを受け、逆転トライを決めたのが小村だった。
イメージしていたキックでのパスは来なかった。チームメートがつないできたパスは乱れ、本来は小村を狙ったパスでもなかった。それでも、小村はボールを回収すると力強くゲイン。昨季、逆転トライを決めた位置とほぼ同じところにグランディングさせた。
「絶対に勝ちたいという気持ちだった。最後にああいう形でトライを取れたのはうれしい」と小村は笑顔を見せた。振り返れば、1年前の開幕戦が自身にとってRH大阪でのデビュー戦だった。「これで満足しているわけではなく、もっともっとこれから良いプレーを示し、チームの主力になっていきたい」。試合後にそう話していた向上心はいまも変わらない。
「今日も良くないところはたくさんあったので(個人の出来は)100点ではない。修正できるところは修正していきたい。まだまだ、伸びシロがあると書いておいてください(笑)」。
2年連続、開幕戦での劇的な勝利の立役者となっても小村に浮かれる様子はまったくなかった。向上心を胸に、その視線はすでに次週に控えるホスト開幕戦へと向けられていた。
(杉山文宣)
九州電力キューデンヴォルテクス
九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ代行
「まずは関係者のみなさま、素晴らしいスタジアムを準備していただいて、本当にありがとうございました。(シーズンの)初戦(というところでは)、昨季もレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)さんに逆転負けを喫しています。今日の試合は本当にいい準備をして臨めましたし、前半は素晴らしいパフォーマンスを選手たちは見せてくれたと思います。後半に入って、RH大阪さんのフィジカルのところで少しずつ削られてしまい、なかなか自分たちのやりたいことができなかったかなと感じております。まだまだ、シーズンは続きますし、昨季もここから(開幕戦に敗れてから)しっかりと切り替えて、D2に昇格することができました。ここから自分たちはどうやったら改善できるかということを考えながら、シーズンをとおして成長し続けられるように月曜日から前を向いて、次に向けてやっていこうと思っています。本日はありがとうございました」
──悔しい敗戦になりましたが、その中での収穫を挙げるとすればどんなところでしょうか。
「前半、自分たちが準備してきたプレー、自分たちが強みにしていたプレーがしっかりトライという結果につながったことは収穫です。後半の戦い方はすごく大きな学びがありました。どこで攻めて、どこでキックを使うのか。そのバランスのところと、ディフェンスでの、ちょっと映像で見返してみないとわからないのですが、改善すべきところはあるかなと思います。試合全体をとおして、80分間をマネジメントする力が、やっぱり必要かなと感じています」
九州電力キューデンヴォルテクス
ウォーカー アレックス拓也 共同キャプテン
「まずは関係者のみなさま、このような素晴らしいグラウンドでラグビーをさせていただきありがとうございます。一言で言うとすごく悔しいです。ですが、自分たちのやらなければいけないことは、特に前半は今村さん(今村友基ヘッドコーチ代行)も言ったように、できました。ただ、後半は相手の強いフィジカルにちょっと受けてしまう部分があったので、このような結果になってしまったのかなと思います」
──後半はRH大阪さんとフィットネス、モメンタムの部分で差が感じられました。そうなってしまった原因はどこにあると感じていますか?
「自分たちがやらなければいけないことをしっかりと遂行できれば、レベルの高いラグビーを表現できるとチーム内でも自信を持って言えると思います。どちらかというと相手のフィジカルに対して、受け身になってしまったところがあって、自分たちがやらなければいけないディテールができてない点が特に後半はあったと思います。まずは自分たちがやらなければいけないことを遂行する。それができれば、もっと試合展開は変わったんじゃないかなと思います」
──前半は前に出るディフェンスができていて、統率も取れていたと思います。ただ、後半はそれができなくなってしまった。フィジカルの話もありましたが、それ以外に要因はあったのでしょうか?
「前半は自分たちが準備してきたものができて、それが自信にもつながって、どんどん前に行くことができたと思います。後半はRH大阪さんの激しいコンタクト、ラック周りの激しいプレーにちょっと受け身になってしまう時間帯があったと思います。そこは改善しないといけないと思っています。そこで負けたという思いはないですが、まだまだ自分たちとしては、そこをちゃんとやっていかないと相手に圧倒される時間を作られてしまうという学びがありました」
──後半立ち上がりはペナルティも増えてしまいました。
「自分たちはノーペナルティという目標、それをチームのスタンダードとしてずっとプレシーズンのときから言ってきたんですが、統率という部分で気合いが入り過ぎてちょっと周りが見えなくなっている時間帯がもしかしたらあったのかもしれないなという反省があります」
レッドハリケーンズ大阪
レッドハリケーンズ大阪
マット・コベイン ヘッドコーチ
「まず、九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)さんは本当にいい試合をしてくれたと思います。光栄にも僕らは試合に勝利することができました。前半、僕らはゆっくりとしたスタートになりましたが、後半はしっかりと僕らのペースでできるところを見せることができたのではないかと思います。すでに来週の話がロッカーの中でも出ています。ここからしっかり、チームとしてビルドアップしていかなければいけない。特にわれわれはD3からD2に上がってきたチームであり、大きなチャレンジになることはわかっています。その中でもチームとしてそのチャレンジを受け入れる。すでにロッカーで話し合っていたのが、『“BTB”(Better than before)、以前よりも良く』という言葉が出ていて、すでに次の準備が始まっていると思っています」
──昨季の開幕戦がよぎるような勝ち方だったと思います。立ち上がりは苦しんだが前半終盤以降は終始、ペースを握っていた印象です。プレー面ではどこが良くなったのでしょうか。
「射場(大輔)選手が話したように『自分たちがやってきたことをしっかりと信じて、自分たちのシステムをやろう』という話をしました。全体としてそのシステムをやってくれたのかなと思っています。もう一つあるとしたら、良くできたところはチョップタックル。下にタックルで入り込むところはみんなで話し合ってできました。特に前半はファーストコンタクトで九州KVさんに前に出られてしまったところがあったので、その点の改善をハーフタイムにしました。それと同時にアタックでのブレイクダウン。僕らには倒れてしまっている選手が多かったので、『可能な限り、立ってプレーしよう』ということは心掛けさせました。
あと、さらにもう一つは『チャンスがあるときにしっかり取り切ろう』という話もしました。そこでしっかり、ボールを我慢強く持って、最後までやり切って得点を取り切る。フィフティ・フィフティのパスをするのではなくて、ボールを保持して我慢するということを伝えましたが、後半は特にその点が良くなったと思っています」
レッドハリケーンズ大阪
射場大輔バイスキャプテン
「今日の試合は開幕戦ということもあって九州KVさんのホストゲームでの試合でしたし、難しい対応になると思っていました。やっぱり、試合開始早々から九州KVさんの勢いの強いアタックをレッドハリケーンズ大阪としては受けてしまって5対19というスコアで前半が終わってしまいました。ハーフタイムにみんなで話したのが、『今まで自分たちがやってきたことを信じて、やり切ったら絶対に勝てるから』ということ。そこを全員で確信していたので、全員でこれまでやってきたことを自分たちで遂行しました。結果的にラストワンプレーで逆転トライを取ることができて、いい形で開幕戦を勝つことができました。本当に良かったと思います。今季の目標であるトップ3に向けて、いいスタートダッシュができたと思います。マット・コベイン ヘッドコーチからも話があったように今週よりも来週。いいパフォーマンスができるように選手たちも頑張っていきたいと思います。ありがとうございました」
──今季は上のステージで戦うにあたってチームとして新しい部分に取り組んだところもあったかと思います。その点についての手ごたえはいかがでしょうか。
「開幕戦ということもあって、難しい試合になることは分かっていました。そこで自分たちのやってきたことというのは昨季とほとんど変わりません。ただ、練習の質というのは昨季よりも断然、上がっていますし、新しく入ってきた選手たち、外国籍選手たちがいいリーダーシップを持って、チームがうまく循環していると思います。やってきたことは昨季と変わらないですし、そのベースを保ちながら質を上げていくことが大事かなと思っています」