NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第9節
2025年3月23日(日)14:30 えがお健康スタジアム (熊本県)
九州電力キューデンヴォルテクス 16-14 レッドハリケーンズ大阪
「地元で下手なところは見せられない」。愛されキャラの若武者が“凱旋試合”で見せたたくましさ

「いつもいつも、クロスゲームになる」。九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)の今村友基ヘッドコーチが試合後に語ったとおり、九州KVがレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)を迎えて行ったホストゲームは、8対9で折り返し、最終スコアは16対14。互いの我慢強さがぶつかり合うことになった今回の対戦は、この3シーズンの対戦の中で最もスコアが低い決着だった。勝ち点4を得た九州KVは5位に浮上。RH大阪は3連敗を喫したものの、上位争いをする上で貴重な勝ち点1を得た。
この試合は、熊本県のえがお健康スタジアムで行われた。九州KVで先発した萩原蓮、リザーブだった上杉太郎は、熊本県にゆかりのある選手だ。二人は勝利した試合後、スタジアムに駆け付けてくれたファンに、笑顔で挨拶することができた。
昨季途中に加入した上杉に関しては、これが「高校生のとき以来」の熊本県での試合だった。地元での試合でプレーできることを「ありがたい」と感じていたぶん、「下手なところは見せられないな、とずっと思っていました」。
その気持ちは、セットピース以外のプレーにも表現された。上杉は後半10分に交代出場し、グラウンドに入って早々に見せたスティールを含め、合計2本のスティールを成功させている。「普段はあまりスティールを強みにしているわけではない」選手だと今村ヘッドコーチも話していたが、本人も「意外だとは思います(笑)。来たところに反応しただけだった」と言う。我慢比べのようなゲームの中で、相手のアタックを止めて勝利に貢献した。
「下手なところを見せられない」という気持ちの根幹にあったのは、地元の子供たちへの思い。上杉自身も帝京大学に進学するまでは、熊本西高校など、地元でプレーしてきている。「試合を見てくれる中学生や高校生には、熊本県でプレーしていても、こういうところに帰ってきてラグビーができるということを感じてほしかった」のだという。上杉のこの日の活躍は、その思いを伝えるには十分なものだった。
愛らしい笑顔と愛嬌のある人柄で、加入1年目ながらすでにチーム全員に愛されている上杉。地元以外での試合でも、地元の子供たちに思いが届くように、これからもチームに貢献していきたい。
(前田カオリ)
九州電力キューデンヴォルテクス
九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ
「本日の試合開催に当たりご尽力いただきました皆さまに感謝申し上げます。ホストゲームということで、本当に天気も良く、結果として勝てたことが一番だったと感じています。
いつもいつも、レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)さんとはクロスゲームになっていて、今日も本当にプレッシャーを多く受けていて、ブレイクダウンでのペナルティやトライキャンセルもありました。苦しい試合展開の中、最後、守り切って勝ってくれた選手を誇りに思います。勝って反省できることが一番です。前回は勝利したあと、連勝を重ねられなかったので、今日の勝利を勢いにして、次の試合にしっかりつなげ、今日出た反省すべき点は反省してやっていきます」
──今日の反省点と良かった点について、教えてください。
「アタックしているときのブレイクダウンでは、たくさんスティールされています。ボールを継続できなければトライは取れません。チャンスを作り出すことはできていたと思いますが、取り切ることができなかった一つの要因が、ブレイクダウンだったと思います。
ディフェンスしているときは、本当に安心して見ていられました。後半は特に相手陣内でゲームを進めれば、自信をもってディフェンスできました。そこは、今日は本当に良かったと思います」
──勝利を重ねていくために、次の試合に向けてどのように準備していこうと考えていますか。
「バイウィークを挟みますので、まずはしっかりと疲れている体をリカバリーします。うまくいっているときは、本当に良い練習ができているときなので、スタッフとしてはしっかりプランニングし、選手がそれを理解して実行できるようなトレーニングのプランを作っていきたいです」
──今日は、熊本県にゆかりのある2選手(萩原蓮選手、上杉太郎選手)が出場されました。
「上杉に関しては、後半に2回のスティールがありました。地元ということで、何か期するところがあったのかもしれません。普段はあまりスティールを強みにしているわけではなかったのですが、周りの選手が良いタックルをしたときに、良い場所にいたのだと思いますし、そこでしっかりペナルティを取れました。本当に素晴らしい活躍でした。萩原に関しては、試合後に彼から『すみません』という言葉がありました。ゴールキックには自信をもっている選手ですが、今日に限っては少しミスもありました。それに関してはしっかり改善して決めてくれると思います。それ以外のところでは、ハードワークできますし、チームを鼓舞するコミュニケーションもよく取れていたと思います」
──昨季加入したばかりの上杉選手は、どのような人柄でしょうか。
「見た目は、すごくかわいいですね。“くまモン”みたいな感じもあって(笑)。でも、運動能力はとても高くて、プロップとは思えないような走りをします。ああやってニコニコしてくれているので、チームのマスコット的な存在と言いますか、チームの雰囲気を和ませてくれる選手です」
九州電力キューデンヴォルテクス
ウォーカー アレックス拓也キャプテン
「本日試合を開催するに当たりましてご尽力いただきました関係者の皆さま、本当にありがとうございます。
今日の試合では、素直に、やはり勝ててうれしいです。先程今村ヘッドコーチからもありましたように、RH大阪さんとの対戦では、毎回拮抗した試合をしています。試合に出ている立場でも最後までハラハラするような試合ですが、チームの23人全員がしっかり我慢して、相手のプレッシャーを耐え切った形で勝てたことはとてもうれしいです。反省点ももちろんいっぱいありますけども、今日はまずは勝ったことをしっかり喜んで、次の練習からは今日出た反省をしっかり生かし、次の試合ではもっと質の高いラグビーができるように研鑽を積んでいきます」
──ブレイクダウンでの強みは、特に後半に発揮する場面があったと思いますが、ハーフタイムにどのような話をされましたか。
「前半も後半も、同じ話をしていましたが、まずは先手を打とうと話していました。今週は“Win the small battle”ということで、小さい勝負をしっかり勝っていこうという話をしていました。その最たる例が、ブレイクダウンのところかなと。自分たちのチームには、ブレイクダウンにしっかり自信をもっていける選手が何人かいますので、その選手たちを信用してしっかり低く突き刺さるタックルをして、その選手たちにしっかりスティールを取ってもらうということは、チームとしてできたと感じていますし、我慢の試合ができたというのは自分たちの強みかなと感じています」
──次の試合でも勝利を重ねるため、どのように準備していきたいですか。
「自分としては、チームの規律の部分をしっかりしたいというふうに思います。前半は特に、ブレイクダウンのところなどでペナルティが多くなってしまい、それで自陣に食い込まれる場面がありました。無駄なペナルティ、やらなくてもいいペナルティをしっかり減らしていきたいと考えています。トークや毎日の練習でしっかり解消していきたいです」
──今日は、熊本県にゆかりのある2選手(萩原蓮選手、上杉太郎選手)が出場されました。
「二人とも今日の試合で活躍していました。蓮さんは、キックはもちろんですが、ディフェンスの部分でもチームにエナジーを与えてくれる、チームに欠かせない存在です。
太郎も、後半から入ってきて早速2本スティールをして、スクラムでも活躍しました。チームがエナジーを出すためにプレーしてくれる選手です。キャプテンとして、本当に心強い味方だと思っています」
──昨季加入したばかりの上杉選手は、どのような人柄でしょうか。
「ヘッドコーチからもありましたように、グラウンド外では本当にかわいくて、『ラーメン食べちゃいました』みたいな話をしてくれるなど、本当に愛嬌があります。加入初年度ですが、チーム全体に愛されています。ヘッドコーチが『マスコット』というふうに表現していましたが、僕も本当にそのとおりだと思います。でも、試合中はとてもハードに戦ってくれますし、意見も言ってくれます。本当にメリハリがある選手だなというふうに思います」
レッドハリケーンズ大阪
レッドハリケーンズ大阪
松川功ヘッドコーチ
「この試合の開催に当たってご尽力いただきました九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)の皆さま、スタッフの皆さま、レフリーの皆さま、ありがとうございます。
NTTドコモの社員の方もたくさん応援に来てくださっていた中で、結果を残せなかったことは非常に残念です。
九州KVさんとはディビジョン3から一緒に上がってきた仲間なので、前回の対戦と同様に、ともに成長した姿を示してここでもう一度戦いたいと考えていました。前回は負けてしまっていましたので、その借りを返したいということでこの試合に臨みました。前半は、良い形というか、お互いにプレッシャーがあり、混沌としたゲームでした。タフに戦い続けたものの、後半はブレイクダウンで九州KVさんのプレッシャーに少し負けてペナルティになってしまい、マイボールを継続することができませんでした。小さなことの積み重ねが大事ですし、今後もシーズンは続くので、次はショートウィークになりますが、私たちは常に成長を続けるために今回出た課題を修正していきます」
──9対8と、僅差の状況で試合を折り返しました。ハーフタイムにはどのような話をされましたか。
「前半は、思いどおりにできている部分とそうでない部分がありましたが、それは想定内の範囲ではありました。前半の最後のほうには一人欠いた状況にもなりましたが、しっかり守り抜くこともできていましたし、自分たちらしさは表現できていました。今週のゲームのテーマとして、コリジョンと規律にフォーカスしていましたので、もう一度そのスタンダードとやらなければならないことを明確にし、後半に入りました」
──ハーフタイムに話した内容に関して、後半はいかがだったでしょうか。
「良い反応でやってくれたと思います。前回の対戦の際は、ラック周りで近くに行きすぎてスティールされるシーンが多い印象だったので、しっかり自分たちのアタックで少しずつずらしながらプレーしようと話していました。そういったところでは良いふうにできたのではないかと思います。ただ、最終の局面のところでは、相手の寄りの速さが少し上回っていたのかなと感じています」
──今日の試合では、知念優来選手がファーストキャップでした。
「長い時間ではなかったですが、RH大阪のジャージーを着る機会になりました。セットピースで少しプレッシャーを感じているところもありましたが、スクラムでは良いプレーも見せてくれました。良い面も悪い面も、彼にとってプラスになる経験だと思いますし、これからも引き続きがんばっていってもらいたいなと思っています」
レッドハリケーンズ大阪
茂野洸気バイスキャプテン
「この試合を開催するに当たりまして、ご尽力いただいた皆さまありがとうございます。レフリーの皆さま、九州KVの皆さま、本当にありがとうございました。
試合としては、負けてしまい、とても悔しいです。松川ヘッドコーチが話してくれたとおり、ブレイクダウンの二人目の寄りが相手のほうが1枚上手だったと感じています。その寄りの速さで相手にスティールされるシーンが多くあったので、そこに関しては、来週はショートウィークですが早期に改善して、次戦で勝利できるよう、またチーム一丸となって頑張っていきます」
──ディフェンスとアタック、それぞれグラウンドでどのように感じましたか。
「この試合のディフェンスに関しては、大きく崩されたという印象はもっていません。アタックに関しては、後半のキャリーしたあとの相手の寄りに対して相手の速さを上回れませんでした。九州KVさんにはスティールのキーマンが何人かいますので、試合前から警戒しようと話していましたし、試合中もハドルのときなどに僕からも伝えていましたが、本当に相手が1枚上手でした」
──RH大阪もまた、この試合ではスティール成功が多い印象でした。その点についてはいかがですか。
「ディフェンスのときにスティールできていたことは、良かったと思います。特に3列目の選手が頑張って働いてくれました。また、後半の厳しい時間帯にも、スクラムハーフの山内(俊央)がスティールしてくれる場面もありました。より精度を向上させていけるよう、引き続き取り組んでいきます」