NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第5節 カンファレンスA
2024年1月14日(日)14:35 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東芝ブレイブルーパス東京 40-12 三重ホンダヒート
ワーナー・ディアンズが示す、天井知らずの向上心
東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は1月14日、秩父宮ラグビー場で三重ホンダヒート(以下、三重H)に40対12で快勝し、開幕からの連勝を5に伸ばした。一方の三重Hは開幕5連敗となった。
ここまでの両チームの勝敗と試合終了時の得点差を見ると、BL東京がゆとりを持って勝ったようにも見えるが、キャプテンのリーチ マイケルはその考えを否定した。
「リーグワンは本当にきつい。毎試合きついです。自分のパフォーマンスを5%下げたら勝てないですね。三重Hにも、ここまで点差は開きましたが、100%を出さないと勝てません」
前半21分まで7対5と競った展開だったが、同22分にトライを奪ったのはBL東京のワーナー・ディアンズ。リーチとともに、日本代表としてラグビーワールドカップ2023フランス大会に出場した21歳は、ラックから判断良くボールを持ち出してチームに勢いを与えた。
身長201cmのワーナー・ディアンズは前半38分にはペナルティからのデザインされた攻撃でスクラムハーフ役としてパス。長身選手としては珍しい役回りだった。
「なんでパスしているのか分からないですけど(笑)。そうですね。俺がハーフになってパスしました。コーチが決めたことなので、うまくいって良かったです」
その身長の高さとともに、ワーナー・ディアンズは多彩な能力が大きな魅力となっている。攻撃では低いボールを苦もなく扱い、パスも正確。ラインアウトキャッチは抜群の高さを誇り、昨季のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦では約100m独走トライも決めてみせた。
ディフェンスにおいても、相手を抱え上げるチョークタックルでボールを奪うシーンがあるが、ワーナー・ディアンズは満足していない。
「最近、チョークに行き過ぎてあまり良くないとも思っていて、バリエーションを持って低いタックルも行かないといけません。自分が先にチョークの姿勢に入っちゃうと受け身になって、うまくいかないと相手にモメンタム(勢い)が出てしまう。低いタックルで勢いを出すか、チャンスがあればチョークでいくかという判断ですね。自分のスタイルとタックルの種類を増やしていきたいです」
同僚のジェイコブ・ピアスはワーナー・ディアンズについて「例えばラグビー選手が努力して努力して、キャリアのピークで到達できたら良いな…というレベルに彼は19歳のころから到達しています」と称賛しているが、ワーナー・ディアンズは「ワークレート(運動量)はもっと上げたいと思っています。いまが良くても、もっと良くしたい」とどん欲に上を目指している。
21歳にして世界が注目する選手となり、さらに向上心を持って努力する。ワーナー・ディアンズの可能性はどこまでも広がっている。その成長を見守ることができる日本のラグビーファンは、きっと幸せだ。
(安実剛士)
東芝ブレイブルーパス東京
東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ
「最初に、勝つことができてとてもうれしく思います。良いスタートを切ることができましたが、タフな試合だったのは間違いありません。相手にディフェンスのラインスピードを上げられて、プレッシャーを受けた場面もありました。こちらもメンバー変更があってチャレンジングな試合でしたが、選手たちはよくやってくれました。後半に主導権を握ることができました。ラインアウトやスクラムはややプレッシャーを受ける場面もありましたが、総合的に基本的なところに立ち返ることができたのが良かったと思います」
──今日のメンバー構成の意図を教えてください。
「一つはローテーションで選手を入れ替えました。これまでチャンスがなかった選手にも出場時間を与えることで、選ばれるのではないかという緊張感とワクワク感をもたらしたかったのが一つの狙いです。この時期に彼らを起用できたことが、シーズン後半戦における選手層の厚みにつながると思っています。前節まで出ていた選手をパフォーマンスが理由で外したのではなく、小さなけがや違和感のある選手のところを代えていきました。あとは小川高廣(スクラムハーフで先発し、後半途中からウイング)がウイングでどれだけ頑張れるのかを見たかったので(笑)」
──ペナルティゴールの3点を狙うよりトライを狙っていましたが、その点についての評価を教えてください。
「結果としてすごく良い判断だったと思います。しっかり守ってからやっと敵陣に行ってペナルティを得て、時間をかけて3点を取ってもまた自陣スタートになるので。観客席にいるよりもピッチレベルは風が強かったと思いますし、クイックタップで攻めたシーンもスペースを見て攻めてくれたので良かったです」
──リーチ マイケルは休みなく出ていますが、その点についてのお考えを教えてください。
「ローテーションはしようと考えています。来週はバイウィーク(試合がない週)なので、精神的にリフレッシュしてほしいです。リーチはタフで経験もあって僕らのキャプテンなので。今日もかなり疲れるまですごく頑張ってくれていました」
東芝ブレイブルーパス東京
リッチー・モウンガ選手
「とても良いパフォーマンスでうれしく思っています。けがから復帰した選手や、これまで出場機会がなかった選手も試合に出て勝利することができました。三重ホンダヒート(以下、三重H)さんがいろいろなアタックを仕掛けてきて、こちらとしても想定はしていたのですが、やられた部分もありました。そのため、モメンタム(勢い)を取り合う展開になりました。勝ったことはうれしく思いますが、まったく満足はしていません。僕らが目指すところはもっと上なので、そこを目指してここからまた練習を続けていきます」
──アタックにおいて、ラインのコントロールで気をつけたことは何ですか?
「三重Hさんがラインスピードを上げたり、スピードを上げずにスライドしたりとディフェンスの方法を混ぜてくると分析していましたが、今日の最初の20分はかなりアグレッシブに前に出てきました。僕らが向かい風でキックしにくいと分かっていたので、そうやってラインスピードを上げていたのだと思います。ラインの深さについては全体的に相手ディフェンスへ対応するための、一つの要素です」
──初トライの感想を教えてください。
「トライについては正直そこまで特別なことをしたとは思っていません。良い環境、良い文化があって、より良くなりたいと取り組めているチームにいられることが幸せです。チーム内のポジション争いも良いレベルで、試合に出られるのは23人ですが、出てしかるべき能力を持った選手はたくさんいます。優勝を目指すとなると、シーズン終盤には全員の力が必要になると思います」
──連勝を続ける中で気をつけることは何ですか?
「チームの中の全員において、『この状態が居心地いいな。これでいいや』と思っている選手はいません。毎週、相手は違った準備をしてきて、違った脅威があります。5連勝はうれしいですし、頑張ってきた証明ではありますが、長いシーズンなので慢心せずに向かっていきたいです」
三重ホンダヒート
三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ
「私たちもこの秩父宮ラグビー場に勝利を求めてやって来ましたが、東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)さんが勝利しました。おめでとうございます。私たちとしては、ハッピーな部分が増えてきました。チームとしてもこの数週間で向上している部分があります。作ったチャンスに対してトライを取り切れず、スコアがついてこなかったことが残念ですが、終盤に直線的なプレーで得点を取れたことはポジティブです」
──良い部分も出てきているが、精度を上げることが必要ですか?
「オフロードパスを含めて精度を高めていかないといけません。チャンスを作れたところで、どうフィニッシュできるかにこだわり続ける必要があります。サポートラインもそうですし、取り切るために考え続けて練習していくことが求められます。
チームはシーズン序盤からタフな状況が続いていて、来週は埼玉パナソニックワイルドナイツさんと対戦します。開幕から6試合を日本トップレベルのチームと戦わないといけない状況の中で、チャンスで取り切ることにこだわり続けていきます。BL東京さんは作り出したチャンスでスコアして自陣に帰っていきましたが、われわれは得点できなかったので改善していきたいと考えています」
──ワイドに攻めてボールを取られる場面もありました。
「レフリーの判定において、われわれに風が向かなかった部分はあると思います。もちろん、『ハンズオフ』とコールされたら離さなくてはいけないのですが、向くべき風が向かなかったとも感じています。ワイドのブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)は先週から課題に感じていて、しつこく練習してきました。少し改善したと思っていますが、引き続きブレイクダウンは練習してボールキープできるようにしていければと思います。BL東京さんはブレイクダウンでうまく仕掛けてきたので、それもわれわれにプレッシャーがかかってしまった要因です」
三重ホンダヒート
古田凌キャプテン
「結果として負けてしまったので悔しいです。試合ごとに少しずつチームとして成長している部分があると思います。試合は続いていくので、アタックでは最後まで取り切れるか、ディフェンスでは我慢強くできるかにこだわって、チームとして修正して、向上していきたいと思います」
──ワイドに攻めてボールを取られる場面もありました。
「ブレイクダウンは終始、BL東京さんのプレッシャーにやられた部分もあったので、よりフォーカスして、相手より速くブレイクダウンに入ってボールをコントロールしたいと感じました。次の試合では修正して、良い形で我慢強くアタックできるようにしていきたいと思います」
──序盤はよく攻める場面が見られました。
「試合最初の20分間は改善されたと思います。試合ごとにフィジカルの部分も良くなってきて、自分たちのラグビーができている実感もあります。負けはしましたが、良い部分もあるので。改善すべきところを改善して次の試合に向かうことが大事なので、チームとしてまとまって、前を向いて、しっかり勝利できるように頑張りたいと思います」