NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第6節
2024年1月27日(土)13:00 駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 17-18 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
手元からすり抜けた勝利。残り数秒で入れ替わった明と暗
リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)は1月27日(土)、駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でクボタスピアーズ船橋・東京ベイと対戦し、17対18で敗れた。
ペナルティトライで逆転し、17対15とBR東京のリードで迎えた後半39分57秒。BR東京のキャプテン・武井日向がボールを持った。
このフェーズで後半40分を過ぎたことを示すホーンが鳴り、球を出せば、念願の勝利が手に入る。スピードを緩めながら、後ろに3人の仲間を携え、目の前の選手に当たった。
後半39分58秒。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)のフッカー、スカルク・エラスマスの手が、武井が持つボールに絡んだ。
後半40分1秒。
レフリーが長い笛を吹き、手はS東京ベイ側に上がった。
そして後半41分を15秒ほど過ぎたころ、S東京ベイのゲラード・ファンデンヒーファーが蹴り上げたボールは、Hポールの間に吸い込まれた。ペナルティゴール成功。18対17でS東京ベイが大逆転勝利を手にした。
グラウンドに立つS東京ベイの選手も、スタンドに控えるノンメンバーたちも、ガッツポーズを見せ喜んだ。
対照的に、真黒の戦士たちのほとんどはグラウンドにひざをついた。
あと数秒、で手放した勝利。昨季は2点差。今季は1点差。どうしても、勝ち切ることができない。
「最後、自分がラックを作ってゲームを切る、という場面でした。相手は何かしてくるだろうな、と分かっていましたが、精度がまだまだだった。ああいう場面でのボールキャリーの仕方を僕は学ばなければならないですし、サポートプレーヤーもどうすべきか、学ばなければいけない」
武井はラストプレーを振り返った。
この日がファーストキャップとなった中村公星にとっては、苦いデビュー戦になった。
大卒1年目の左プロップ。後半21分にピッチに立つと、最初に組んだスクラムでペナルティを取られ、リーグワンの厳しさを実感した。
「完全にこっちに(ペナルティを)もらえたと思った。勝ちにつなげられなかったことが一番悔しい」
それでも試合後には「緊張することなく純粋に試合を楽しめた」と安堵の表情を見せる。「これからもチームメートとコーチ陣から信頼を得られるように、練習から信頼を積み上げていきたい」と、続く道に思いを馳せた。
(原田友莉子)
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ
「クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)さんに勝利おめでとうございますと伝えたいと思います。そしてリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)の選手たちにも今日はよくやったと伝えたいと思います。クリアなプランをもって挑みましたが、残り5秒で勝利をつかみ切れませんでした。そこまでしっかりとやり遂げてくれた選手たちを本当に誇りに思います。ロッカールームはかなりがっかりした様子ですが、前に進むのみだと思うので次に向けて進みます」
──自分たちのゲームはできているという印象はあるが、あとは精度が惜しまれるように感じます。
「今週は少しメンバーを代えましたが、フィニッシュのところが決まり切らなかったです。S東京ベイはビッグチームなので、セットピースからセットピースという流れを続けていくわけにはいきません。なるべくボールを動かしましたが、動かせば動かすほどミスの確率は上がります。そういうことを受け入れつつ、最後でもう少しうまくフィニッシュできれば良かったかなと思います。
接戦が多い、ということは、ビッグゲームを最後どう締めるのか、という経験も必要になります。経験が増えれば増えるほど、方法を見出していけると思っています。経験とは、スイッチを押したら増えるものではありません。時には痛い思いをしながら学んでいく必要もあると思います」
──武井日向キャプテンがゲームに戻ってきました。どのような存在でしょうか?
「チームのキャプテンですし、このチームを表せる選手だと思います。プレーすれば必ず自分たちが見せたいDNAを表現してくれ、アクションを通じてみんなを引っ張ってくれています。
ビックパックを相手にフル出場、しかも相手はオールブラックス(ニュージーランド代表)のフッカーでした。ひさしぶりの試合で80分間戦ってくれたのは、それだけチームを大事に思ってくれているからだと思います」
リコーブラックラムズ東京
武井日向キャプテン
「最後の最後で結果を逃してしまったことが悔しいです。負けていい試合はないですし、正直勝利が欲しかったです。でもここが、まだまだ自分たちが成長できる、成長しなければいけないポイントだと思うので、接戦をモノにするチームにしていきたいと思います。
ただ、やっているラグビーは正しい方向には進んでいると思います。自分たちのラグビーを信じて、最後の最後を突き詰めて、次の試合から頑張ります」
──フォワードとしては前を向けるゲームになったのではないでしょうか?
「スクラムでは安定したボールをバックスに出せたと思います。ただ、チャンスやピンチの場面で無理に行ってしまったので、そういうところはもう少し詰めていきます。
負けましたが、ネガティブな部分ばかりではないので。精度は改善して、良いものは良いもの、として継続してさらにレベルアップしていきたいなと思います」
──けがからの復帰戦でフル出場。チャンピオンチームに臨む気持ちは特別だったのでしょうか?
「僕は毎試合、BR東京のために戦おうと思っています。それを一番体現しよう、というのが僕のテーマです。今日も特に相手がS東京ベイだから、というのはありません。
ただリーダーとして、ほかの選手に自信をもってプレーさせたいし、自分たちはできるのだという自信をつけたい。そういう声掛けをすることで、チームが良い方向に向けばいいと思っています」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「BR東京さんにありがとうと言いたいです。あのような良い試合ができてお客様もハッピーだと思います。プレッシャーの戦いだったと思いますが、結果的には最後のプレーでハードワークが実ったこともハッピーです。またそのあとにゲラード・ファンデンヒーファー選手のキックで逆転できたことも良かったです。BR東京さんもギブアップせずに、すごく良いディフェンスの強いチームだったと思います」
──シーズン序盤に苦しんだ要因、そして今季初めての連勝ができた要因を教えてください。
「プロセスに関しては同じことをやり続けていました。開幕の東京サントリーサンゴリアス戦は、ラグビーワールドカップ2023フランス大会から戻ってきた選手が合流したばかりの試合だったので、やりたいことがやり切れなかった部分があります。その後の試合は良いプレーが続いていましたし、チームとして良くなっていたと思います。特に直近の2週間で、パフォーマンスの一貫性が良くなったところが理由です。
具体的には規律面の改善が一つ挙げられます。ペナルティを含め、ベーシックなところ、細かいところを微調整することができました。信頼する力、信じる力によってモメンタムも生まれたと思っています」
──メンバー入りした本職のスクラムハーフが藤原忍選手だけでした。どのような理由からでしょうか?
「けが人が多い状況です。言い訳はありません。岸岡(智樹)は大学で9番をやっていたこともあり、エックスファクター(特別な才能の持ち主)です。彼は才能もありますし、若い才能がチャンスをモノにしてくれている姿を見ることはうれしいです。
フル出場の藤原は、試合に出れば出るほどパフォーマンスが良くなるタイプ。ゲームコントロールも、チームを前に出すところも良くなっています。今日もタフな試合でしたが、9番、10番、15番が大事な場面でコントロールしてくれたのでこのような結果になったと思います」
──これから「クロスボーダーラグビー2024」に入っていきます。
「気持ちはエキサイティング。良い機会と捉えています。若手中心にはなりますが、カギとなるスタートメンバーを出しつつも若手を使ってベストメンバーでしっかり挑みたいと思っています」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ピーター・ラピース・ラブスカフニ選手
「こんにちは、みなさん。今日は本当にフィジカルな戦いでした。フォワード、バックス、セットピースにミスはありましたが、あのような結果を誇りに思います。両チームとも最後までしっかりとやり切った、やり合った結果だと思います。試合もエンジョイできましたし、そういう試合ができたことを感謝し誇りに思っています」
──BR東京のディフェンスの印象について教えてください。
「フィジカルな相手と想定していました。質の高い、良い選手たちがいます。アタック、セットピースをとおして良い戦いになったことに感謝しています」