2024.02.19NTTリーグワン2023-24 D1 第7節レポート(トヨタV 54-7 三重H)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第7節
2024年2月17日(土)14:00 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 54-7 三重ホンダヒート

三重Hの壁を打ち破ったのは高橋汰地。日本代表
ヘッドコーチの発破に応えるハットトリック

この試合、ハットトリックでプレーヤー・オブ・ザ・マッチ。そしてディビジョン1のトライランキングトップタイに並んだトヨタヴェルブリッツの高橋汰地選手

三重ホンダヒート(以下、三重H)の粘り強く勇敢な守備の前に、苦戦を強いられたトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)。その壁を打ち破ったのは、自分たちのやるべきことをしっかりとやり切る”遂行力”だった。

まるでハーフコートゲームのように押し込み続けていたトヨタVは、インゴールまであとわずかのところまで迫ったものの、なかなか得点を挙げられずにいた。ようやくトライを奪ったのは前半21分。ラインアウトからモールを組むと見せかけ、姫野和樹からの速いパス回しで完全に三重Hの裏をかくと、ウィリアム・トゥポウのパスを受けた高橋汰地がトライを決めた。

「前半は、サインが出ていても違う動きをしてしまうことがあって、うまく攻め切れていない部分がありました。その中で(あのトライは)しっかりと準備してきたことをチーム全体で遂行できて、それをスコアにつなげられた。準備の大切さをチーム全体として認識できたと思います」(高橋)

このトライがトヨタVの歯車をかみ合わせた。そして、それを奪ったのが高橋だったというのもトヨタVにとって大きかった。もともと、トライを取り始めると手が付けられなくなると評価の高い快足ウイングだが、この試合に向けて気持ちが充実し切っていたのだ。「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」による中断期間に、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチによる男子15人制トレーニングスコッド合宿に参加した高橋は決意を新たにしていた。

「エディーさんに『毎試合トライを取れ』と言われていたし、自分自身としてもシーズン前からトライ王になりたいと思っていたので、今節は絶対にトライを取らないといけないという思いが強くありました」

高橋はその後2トライを重ねてハットトリックを達成。3トライ目は大外にいる味方にパスを出す選択肢もあったが、そこに引き付けられて生まれたスキを見逃さず自ら取りにいった。

「自分の役割をやっていない選手がいると、穴ができたりコネクションが切れたりしてガタガタになってしまいますけど、みんなが自分の役割を遂行すれば、ディフェンスでもアタックでもいいつながりができる。相手がどうであれ自分たちがやるべきことをしっかり遂行できれば、どんな相手にも勝てると思います」

この試合を終え、高橋は合計7トライでディビジョン1のトライランキングトップタイに並んだ。ただ、それもチームのみんながやるべきことをやり切ってつなげてくれた結果だと、高橋は感謝を忘れない。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(中央)、姫野和樹キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
ベン・ヘリング ヘッドコーチ

「今日はいい結果をもたらすことができて、チームとして非常に良かったと思っています。三重ホンダヒート(以下、三重H)さんは、最初の20分間、勇敢にプレーし、強いパフォーマンスを発揮してきました。その中でわれわれは姫野(和樹)やリーダー陣を筆頭に、チームを良く引っ張ってくれて、最後いい形で締めまで持っていってくれたと思います。スタートのメンバーが相手を疲れさせ、ベンチのメンバーが締める、良い試合だったと言えると思います」

──先発では木津悠輔や秋山大地、リザーブからは加藤竜聖や和田悠一郎といった今季初出場の選手が持ち味を出したが評価はいかがでしょうか?

「木津と秋山に関しては長期のけがからコンディションを整えて復帰しましたが、素晴らしい仕事ぶりを見せてくれました。さらに秋山は、今日フル出場となりました。和田に関しては本日がリーグワンデビューというところで、これまでディベロップメントゲームであるMIRAI MATCHで素晴らしいパフォーマンスを見せ続けていたので、今日は出場に値する、そういったパフォーマンスをこれまでも発揮していました。加藤に関しては、チーム内のセレクションが厳しく、非常に良い競り合いをしていた中で、それをつかみ取り、ベンチから出場し、見事なパフォーマンスを見せてくれました。こういった新しい顔ぶれが、試合にいいインパクトを与えてくれたと思っています。

あと、秋山は兄弟対決ということで、今日はいつもより激しいタックルをするような、そういったモチベーションでかなり意気込んでいました」

──今後は連戦が続きます。

「今シーズンはバイウィークもあり長いシーズンになると分かっていました。その中でチームとしていい準備ができていると考えています。チーム全体のスコッドも今日の和田のように層が厚くなってきているので、10週間で9試合という連戦に向けて準備はチームとして出来ています」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「今週1週間は本当に良い準備ができました。みんなが理解してやることを100%やってくれたというのが今日の試合でした。リーダーとしてはメンタリティーを引っ張っていくことを意識してやっていました。プレーをしていく中で、ゲームのインテンシティーやスタンダードは、自分たちのメンタリティーで決まると、とてもいい勉強になったと思いますし、そのメンタリティーを持ってくれたからこそいいゲームができました。今後も一貫性を持ったメンタリティー、一貫性を持った準備を心掛けていきたいと思います」

──バイウィークはどんな準備をしてきたのでしょうか?

「この3週間は自分たちを見つめ直す時間になりましたし、自分たちの持っている刀をシャープにする作業をずっとしてきました。それが本当に良い感じでシャープになってきていますし、やることも全員が理解しています。選手も(練習)試合があって、ゲーム勘も保つことができたので、すごくチームとしていい状態で今日の試合に臨むことができました。この3週間で積み上げてきたことが正しい方向に向かっていると思います。3月は連戦が続きますので、その中でもしっかりと一貫性を持って準備していくことが、今後すごく大事になると思います」

──いい試合展開にできた要因はなんでしょうか?

「まずは全員が同じ絵が見えるかというのがやっぱりすごく大事で、それを1週間かけてやってきました。全員がクリアで自分たちのやるべきことが分かっている状態の中で試合に臨む、そのプレーの中でメンタリティーやインテンシティー、スタンダードというのは自分たち自身のメンタリティーがすごく影響してきます。その正しいメンタリティーは、やはり僕たちの中では「テイク・マインドセット」(トヨタVの中でのキーワード。自分たちから主導権を取りにいこうというマインドセットのこと)というのがあるので、相手からではなく自分たちからアクションをして、自分たちから奪っていくという、自分たちからやるというポイント、正しいマインドセットというのが、チームとして個人として持っていたからいいゲームになったと思います」

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(左)、フランコ・モスタート選手

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「ゲームの感想としては、もう非常に残念だということに尽きると思います。最初の20分までは得点を取られずにディフェンスができたという部分に関して、すごく良かったと思っています。ただ、そのあとにペナルティを取られ始めて、われわれの展開を壊されてしまうところもありました。ペナルティを取られたことがプレッシャーにも重なってしまいました。アタックを継続しようとしていても、ボールを失ってターンオーバーされてしまった場面が多かったので、非常に残念な展開となってしまいました」

──ハーフタイムで選手にどんな声を掛けたのでしょうか?

「自分たちがボールを持ってプレーするということを心掛けること。一人少ない状況にもかかわらず、非常によくできたと感じています。

私個人の意見ですが、リーグワンは本当に能力の高い選手が多くいて、世界でもベストなコーチがそろっている中で、レフリーの能力の向上が今後、気になってくるのかなと思っています。いくつかのレフリーの判断に対して、もちろんそれがすべてではないですが、いくつかの場面でわれわれに犠牲を強いるというか、苦しめられることになってしまいました。プレッシャーでわれわれが作れなかったところもありましたが、グラウンドの中に4人のレフリーの方がいて、しっかりと自分の仕事をこなされていると思っていますが、やはり彼らのレベルの向上を求めますし、プロフェッショナルという観点からしっかりと考えてほしいと思う場面が多々ありました」

──トヨタヴェルブリッツを見て、スティーブ・ハンセン(ディレクターオブラグビー兼総監督)の影響を感じたましたか?

「そこまで明らかに彼の影響を受けているとは感じませんでした。彼がトヨタVを率いて、良い選手とともにコーチングできる環境にあると思っています。例えばアーロン・スミスとかピーターステフ・デュトイとか、日本人選手もすごく能力が高い選手がそろっています。その中で彼のコーチングの影響があるかというところに関しては、分かりやすく影響を受けているなとは思いませんでした」

三重ホンダヒート
フランコ・モスタート選手

「ほとんどのことはキアラン(クローリー ヘッドコーチ)に言われてしまいましたが、特にわれわれとしてはレフリーの判断に苦しんでしまったところがあって、特にラック周りやロールアウェイのところが非常に厳しく取られてしまい、状況的に非常に厳しいものになってしまったと感じています。われわれとしては今後もハードワークを重ねて、自分たちにフォーカスして、引き続き練習をしていくしかないと思っています」

──粘り強い戦いはできていたが、それを勝利に結びつけるために必要なことはなんでしょうか?

「ペナルティをこれだけ取られてしまっている中で、勝つことは難しいと思います。一番大きな部分として、われわれがペナルティを取られてしまって、一つネガティブなことがあったとして、それにまた二つ目のネガティブなことを塗り重ねてしまう、これを続けてしまうところにチームの課題があると思います。そのペナルティで後手に回ってしまい、コーナーに蹴られて、モールを組まれてしまうとか、失トライが、そのペナルティから起きてしまいました。まずその部分も含めて自分たちにしっかりとフォーカスをして、次の横浜キヤノンイーグルスとのゲームに向けて、しっかりと修正していくことが大事だと思っています」

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