NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第7節
2024年3月2日(土)14:30 東平尾公園博多の森陸上競技場 (福岡県)
九州電力キューデンヴォルテクス 10-15 豊田自動織機シャトルズ愛知
一進一退のタフバトル。
明暗を分けた二つのシーン
3連勝を目指して福岡の地に乗り込んだ豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)と、今季2勝目を狙う九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)の一戦は、見ごたえのあるフィジカルバトルを制したS愛知が15対10で辛勝。勝ち点4を手にした。
第5節の前回対戦時、試合序盤で大差をつけられた九州KV。その反省を生かし、今節は「フィジカルを押し出していこう」(ウォーカー アレックス拓也)と徹底バトルの構え。敵将も賛辞を送るほどの素晴らしいパフォーマンスで、S愛知を追い詰めた。
苦しいパフォーマンスに終始した前半のS愛知。それでも、修正を施した後半は九州KVの「少しのほころびが出た」(ウォーカー)ところを強襲し、逆転までこぎ着けた。しかし、17分の時間を残して、差は5点。1トライ1ゴールで試合をひっくり返せるこの点差に、会場に集まったファンも固唾をのんで見守った。
その中で、印象的だったプレーが二つある。一つは64分、果敢にアタックを続けた九州KVのパスを、この日プレーヤー・オブ・ザ・マッチを獲得したフレディー・バーンズがインターセプトしたシーン。「自分がいるサイドの人数が少なかったので、チャンスがあればインターセプトを狙おうと思っていた」(フレディー・バーンズ)と、飛び出せばインターセプトできる絶妙なポジションに位置していた。「ラッキーと予測の両方」と語った実際の場面は、まるでボールが吸い込まれるかのようにフレディー・バーンズの手中へ。「タックルにいかなくて済んだ」と冗談交じりに振り返った。
もう一つは、78分から79分のシーン。S愛知がペナルティを取られ、自陣22m付近でのラインアウトに臨んだ。試合の結果を左右しかねない場面に、会場のボルテージは最高潮に達した。「フォワード内で話をした際に、『いける』という判断をした」とウォーカーが語ったように、九州KVはモールを組む選択をした。しかし、九州KVがボールを確保したものの、そのあとの攻防で痛恨のボールロスト。S愛知がペナルティを誘発し、この試合最大のピンチを脱してみせた。
前回対戦とは対照的に、試合終了の笛が鳴る瞬間まで分からない展開だった今節。課題も残ったS愛知だが、共同キャプテンのジェームズ・ガスケルが「Win is a win (勝ちは勝ち)」と話したように、勝って反省できるのはこの上ないこと。次節は首位の浦安D-Rocks戦。今節同様にタフな試合展開が予想されるが、いまあるものをぶつけて勝ちにいきたい。
(齋藤弦)
九州電力キューデンヴォルテクス
九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ代行
「本日は素晴らしいグラウンドを準備していただいて、たくさんのファンの方にも来ていただき、本当にありがとうございました。先週のゲームから引き続き、しっかり戦えたことは本当にプラスになりますし、体を張ったプレーをした選手を称えたいと思っています。
ただ、これで満足している選手は一人もいないですし、当然、最後に笑って終えられるように、毎週、毎週成長していくしかありません。チームはディビジョン2にチャレンジして二巡目(の対戦)に入って、開幕から考えれば選手たちは本当に素晴らしい成長を見せてくれています。ただ、これに満足することなく、今日きていただいたチャージャー(ファンの呼称)のみなさんに笑顔で帰っていただけるように、また来週いい準備をして、次の試合に挑んでいきたいと思います。ありがとうございました」
──接戦に持ち込む試合が増えましたが、あと一歩を埋めるために必要なことはなんでしょうか?
「見ていただいても分かると思いますが、ディフェンスで我慢できるチームですので、やっぱりアタックで点を取るということが必要になってくると思います。個々の判断における『このような状況ではこのようなプレーをしないといけない』『このようなときにこのようなミスをしてはいけない』というのを『ラグビーナレッジ』と言いますが、そのあたりを上げていくことが大事かなと思います。試合でこのようなことを学べたのは本当にポジティブなことだと思うので、必ず次につなげて、トライを取れるラグビーをやっていかないといけないなと感じています」
九州電力キューデンヴォルテクス
ウォーカー アレックス拓也キャプテン
「まずは今回の試合にあたり、ご尽力いただきました関係者のみなさま、そして寒い中、応援していただきましたチャージャーのみなさま、誠にありがとうございます。ヘッドコーチ代行からもあったとおり、しっかり自分たちのやることをやって、フィジカルを押し出していこうという話はしていました。80分間そのようなプレーはできたと思いますが、少しのミスであったり、差し込まれる部分があったりすると、そこにつけ込まれてしまいますし、そのようなところを少しでも見せてしまうと、やはり勝てる試合を落としてしまうというのが、今回80分間やり抜いて感じた印象です」
──試合の序盤はどのような意識をもって入りましたか?
「前回対戦時(第5節)は、最初の10分間で相手に3トライを奪われて、0対19になりました。もちろんそこはチーム内でも話しましたし、『先制パンチをしよう』『最初の10分で相手に付け入るスキを与えないようにしよう』と話しました。
実際そこで我慢することができたので、試合を先行して折り返せたと思います。一つひとつのプレーに意識を切らさずできたというのは非常に大きいと思います」
──後半は押される場面もありましたが、前半との違いをどう感じましたか?
「後半に入って、疲労も前半に比べて増えていく中で、自分たちのやらないといけないことを一つずつやっていくところに、少しのほころびが出たというか、一瞬、スイッチがオフになってしまう瞬間がありました。もちろん全員努力はしていましたけど、そのようなちょっと軽いプレーをしたところを突かれて、レベルの高い豊田自動織機シャトルズ愛知さんに、勢いでもっていかれたのかなというのはあります」
──僅差で追いかける中で、チームはどのようなメンタリティーでしたか?
「まずは、規律を守ろうと僕はチームに話していました。理由としては、どれだけ敵陣に入ったとしても、自分たちの軽いミスだったり、ペナルティだったりをしてしまった際に、つけ込まれている部分があったためです。自分たちの最低限の規律をしっかり守って我慢すれば、実際前半も点を取れましたし、絶対結果もついてくると思っていたので、まずは規律を守ろうとしっかり話をしていました」
豊田自動織機シャトルズ愛知
豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ
「本日は本当に素晴らしい天気の中で、素晴らしいグラウンド、そしてたくさんのファンの方々の前で試合ができたこと、本当にうれしく思っております。運営の方々におかれましても、チームを代表してお礼申し上げます。ありがとうございました。試合自体は勝ち点4を取れたことを非常にうれしく思っております。80分とおしてわれわれがやりたかったラグビーができたかと言われると、できなかった部分もある試合でした。ただ、うまくいかない中でも、最終的にスコアで上回れたということは、われわれ自身の成長につながるかなと思っていますので、非常にうれしく思っております。本日はありがとうございました」
──課題として残った点はどこでしょうか?
「まず、われわれのパフォーマンスの以前に、九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)さんのパフォーマンスが非常に良かったところがあります。前回対戦ではスコアで大幅に上回れましたが、点差ほど簡単な相手ではないことも理解していました。そのため、今日の試合は点差があまりなかったことに驚きはないです。ただ、(得点を)取り切るべきところで取り切れなかったり、しっかり流れを引き寄せなければいけないところで簡単なエラーをしたり、そういったところは課題かなと思っています」
──次節に向けてその課題をどう改善しますか?
「自分たちがやってきたことを信じることと、シンプルにプレーすることが一番重要だと思っています。何かが特別悪かったとか、何か方向性が間違っているチーム作りがされているかというと、そのような受け取り方はしてないので、いま一度、自分たちのやってきたことを信じて、シンプルに立ち返れば十分に機能するかなと思っています」
豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン
「徳野(洋一)ヘッドコーチも申していたように、本当に九州KVのみなさんのパフォーマンスが素晴らしかったと思います。今週の初めからレビューをする段階で、リスペクトをもってこの試合に向けて準備をしておりました。ポイントを重ねることができなかったことにはフラストレーションが溜まってしまいますが、九州KVさんの素晴らしいターンオーバーが5mから10mのゴール前のところで何本もあって、本来であれば自分たちが相手にプレッシャーを掛けなければいけないところが、あまりうまくできなかったと感じております。ただ、徳野ヘッドコーチが申したように、勝ちは勝ちです。再来週、浦安D-Rocksとの試合が待っているので、そこに向けてまた改善して、自分が成長して、臨んでいきたいと思います」
──自身がイエローカードを受けて一時的退場をしている中で、チームメートの奮闘ぶりをどう見ていましたか?
「イエローカードを受けてしまい、チームを少し意気消沈させてしまったというところに関しては、やはりフラストレーションが溜まります。ただ、グラウンドの14人の選手たちが、自分が抜けたときでも0対7のスコアをキープしてくれました。その奮闘はとても素晴らしかったなと思いますし、個人的には自分のミスを仲間に謝りたいと思うのと同時に、今後そのような形で自分がグラウンドから出ることは避けるようにやっていきたいです」
──今後の大事な試合に向けて、チームにどんな意識付けをしていきますか?
「ペナルティや、本当に大事なところでミスをするところは、しっかりと改善していかなければいけないと思いますし、アタックというものは、どれだけ相手にプレッシャーを掛けるかということだと思います。そのため、相手にしっかりプレッシャーを掛け続けることが重要です。良いところもいっぱいあると思うので、自分たちのやってきたプロセスを信じて、そこをしっかりと伸ばして、次節に向けてやっていきたいと思います」