NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第3節
2025年1月11日(土)12:00 ミクニワールドスタジアム北九州 (福岡県)
九州電力キューデンヴォルテクス 10-26 豊田自動織機シャトルズ愛知
街にラグビーチームがある価値とは―。それを知る男の、地元を沸かす7年ぶりのトライ
ミクニワールドスタジアム北九州で行われた2025年最初の一戦のスコアは10対26。ビジターチームの豊田自動織機シャトルズ愛知が九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)を下し、新年初白星をつかみ取った。
後半30分、投入直後の牧野内翔馬はファーストプレーで勝利を確実なモノとするトライを奪う。本人によれば「7年ぶりのトライ」とのことだったが、喜びをさらに増したのは福岡出身の牧野内にとって地元でのトライだったということだ。
「東福岡高校のときにここ(地元)で何度も試合をしたことがあって、家族や親戚、中学や高校でお世話になった方々が今日も観に来ていました。『何かあればいいな』とは思っていたんですが、まさかトライが取れるとは(笑)。本当にうれしかったです」
福岡出身の牧野内だからこそ、地元にラグビーチームがあることへの感謝の思いは強い。自身も宗像サニックスブルースに在籍した経験をもつが、そのチームもすでに活動休止。福岡にリーグワンのチームがなければ、こうやって自分の雄姿を地元で見せることはできない。
「九州KVさんは小さいころから応援していたチーム。対戦相手ではあるんですけど敵というような感覚はラグビーにはあまりないので、一緒にディビジョン1に上がれたら最高だなと思っています」
そんな牧野内だが、「ルリーロ福岡(以下、LR福岡)が今季からリーグワンに参入したことはうれしい」と話す。
「実は、うきは市に親戚がいて、豪雨災害に遭ったことがあるんです。そのとき、自分もオフシーズンだったので(片付けの)手伝いに行っていたんですけど、倉庫が泥や水に浸かってどうすることもできないような状況で……。そのときにLR福岡に在籍していた元サニックスのメンバーに声を掛けたら『じゃあ、チームみんなで行きますよ』と20人くらいで駆け付けてくれたんです。2時間くらいで片付けることができたんですけど、自分一人だったらどれくらいかかったか分からなかった。『お金はもちろんいらないので試合を観に来てくれたらうれしいです』とだけウチの親戚に伝えていました。こんなチームはほかにないと思いますし、本当に感謝しています」
いま、牧野内は地元にリーグワンのチームがあることの価値を誰よりも感じている選手かもしれない。そんな選手が地元で見せた活躍はこの試合を観に訪れた子どもたちやラグビーファンに地元でリーグワンが見られる喜びを与えられたはずだ。
(杉山文宣)
九州電力キューデンヴォルテクス
九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ
「本日は寒い中、素晴らしい会場を準備してくださった方々に感謝しています。チームとしては試合までに準備したことが前半はできた部分もたくさんあったんですが、自分たちのエラー、ペナルティでポゼッションやテリトリーを取ることができませんでした。良いディフェンスもあった中でも、自陣でプレーする時間が長いと、あれだけディフェンスする時間が長くなってしまうし、そのぶん相手の得点につながってしまったかなという印象です。相手のプレッシャーももちろんあったんですが、キッキングゲームのところで相手の強みを出させてしまったという印象です。もっと相手の10番にプレッシャーを掛けることや自分たちのやりたいことの精度を上げていかないといけない。次に向けて良い課題をもらったと思います。まずは休んで来週の日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)戦に向けて良い準備をしたいと思います」
──後半はキックでのダイレクトタッチが続きましたが、要因についてはどう考えていますか?
「個人的なところもありますし、ああいった状況を想定してプレッシャーがある中での練習ができなかったというところでの私の立場での反省もあります。選手自身はもっとああいうプレッシャーが掛かったところでスキルを遂行しなければいけないことを、身をもって感じたと思います。(次節までの)1週間を短いと捉えるのか、長いと捉えるのか。しっかり準備して次節に向けて改善していきたいと思います」
──開幕からの2試合は試合の入りが課題になっていましたが、今日の試合の入りについてはどういった評価でしょうか。
「前節に関して言うと最初の10分で勝負が決まってしまったという反省がありました。ただ、入り自体は一貫して悪いというような印象も特にありません。前回がああいうゲームになってしまって、まずは試合の入りというところで準備はしてきました。今日に関しては悪くはなかったですが、良くもなかったですね。最初はペナルティがありました。(隣に座っている)アレックス(ウォーカー アレックス拓也)だったかな(笑)。ペナルティから入ってしまうと下げられて、自陣でディフェンスという形になってしまうので、そこはチームとして問題と捉えてしっかりと改善したいと思います」
九州電力キューデンヴォルテクス
ウォーカー アレックス拓也キャプテン
「まずは本日、試合を開催するにあたってご尽力いただきました関係者の皆さま、本当にありがとうございます。自分たちは前節の敗戦からしっかり反省をして、今回の対戦相手を『80分間、苦しめていこう。激しくディフェンスをしていこう』と話をしていました。ただ、自分たちのミスや規律が少し乱れた部分から相手にトライを許してしまって、このような形になってしまったのかなと思います。来週には日野RD戦がありますし、今回学んだこともたくさんあります。選手たちもこの試合で全力を出したと思うので、しっかりとリフレッシュして次節に向けて、100%の集中をしていきたいなと思います」
──コルビー・ファインガア選手のラストプレーでの意地のトライもありました。そういった部分も含めて、この試合から次につなげていきたいことがあれば教えてください。
「自分たちは、自分たちのやらなければいけないことをグラウンドに立っている15人全員が100%でやり切ることでトライを取ることもできますし、ディフェンスもうまくいく。そこには自信をもっているんですが、そこがミスや規律の甘さで欠けてしまうと成り立たなくなってしまう。意地もありますし、あそこでトライを取れたのは自信になりますが、あれを80分間続けないといけないということが今回得た学びの一つだと思います。次の試合はその集中力を80分間、保ち続けたいなと思います」
豊田自動織機シャトルズ愛知
豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ
「本日は素晴らしいグラウンド、そして、多くのファンの方々、運営の方々のサポートもあってこの場でラグビーができたこと、本当に幸せに思っております。チームを代表し御礼を申し上げます。ありがとうございます。
今日の試合、勝ち点4を獲得でき、そのことはうれしく思っています。特に第2節、われわれとしては勝ち点を落とすという中で今日の試合というのは、もちろん、九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)さんに勝利すること以上にわれわれ自身がしっかり自分たちの力で立ち上がっていくという意味でも非常に重要なゲームだったと思っています。そういう中でキャプテンを筆頭に選手たちが前を向いて立ち上がってくれたことにこの試合の大きな意味があったのかなと思っています。選手の努力を称えたいと思っています」
──立ち上がりはチャンスがありながら得点を取り切れませんでしたが、徐々に効果的なゲインが増えていきました。何か修正をされたのでしょうか?
「まずはゲームの入りは非常に素晴らしかったと思います。ただ、九州KVが本当に我慢強く、規律の高いディフェンスを継続されて、なかなかフィニッシュまでもち込めない時間が20分くらいあったと思います。ただ、そこでわれわれがギアを上げて一貫性をもったアタックを続けられたことがスコアに表れたのかなと思っています。タイトな20分間の中での九州KVさんとの我慢比べで負けずにアグレッシブに詰めることができたのがスコアにつながったと思います」
──いくつか効果的な50-22を取ることもできましたが、ゲームプランの中でキックというのはどう考えていたのでしょうか。
「今日の試合はテリトリーをうまく獲得することを重要なポイントとして掲げていました。その中でフレディー・バーンズが効果的に裏のスペースを取った結果、50-22が取れました。これは彼のスキルの高さによるものだと思いますが、あまり褒めるとすぐに調子に乗ってしまうので、これくらいにしておきます(笑)」
豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン
「まず、先ほど徳野さんからお話があったようにスタジアム、スタッフのみなさん、ファンのみなさんが温かく迎えてくださってありがとうございます。
まずはフォワードでフッカー、プロップのところですね。(この試合まで)2週間(の準備期間が)ありましたが、その2週間はプレッシャーの中でやってきました。その成果が出てうれしく思います。九州KVさんのプッシャーに対して、80分間戦えたことを誇りに思います」
──前節の敗戦は悔しさとともに学ぶことが多かったと思います。この試合でその学びを生かせたと感じられたところはありましたか?
「前節の試合をレビューしてみたらペナルティがすごく多かったので、そこを減らさなければ勝つことができないというのは考えていました。ディフェンスのところやディシプリン(規律)、アタックはしっかりとシェイプを作ってレフリーに見せていくことをすごく注意して試合に臨んでいました」