2024.03.04NTTリーグワン2023-24 D1 第8節レポート(東京SG 62-0 BR東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第8節
2024年3月2日(土)14:05 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東京サントリーサンゴリアス 62-0 リコーブラックラムズ東京

監督も手放しで褒めた完勝劇!
その背景にあった2月3日の苦い経験

ブルーズに敗れた試合から、もう一度自分たちのスタンダードは何かを確認したという東京サントリーサンゴリアスの中村亮土選手

まさに完勝。3月2日に行われたディビジョン1第8節、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)は、リコーブラックラムズ東京に対して、堂々9トライを奪って62得点。田中澄憲監督も「何も言うことはないですね」と手放しで褒める見事な完封勝利を収めた。

今季はここまで、勝った試合でも終了間際の逆転トライで勝負が決まるなど、厳しい展開が多かった東京SG。ようやく、今季ベストマッチと言える勝利を飾ることができた。

では、この「完勝劇」を呼び起こしたものは何か。選手たちの言葉を整理すると、ちょうど1カ月前、2月3日に経験した「完敗劇」に端を発する。スーパーラグビーの雄・ブルーズ相手に7対43で敗れた「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」での苦い経験だ。

チームリーダーの一人、ラグビーワールドカップ2023フランス大会にも出場した中村亮土は、この1カ月のチームの変化をこう語る。

「クロスボーダーの試合後、『東京SGのラグビーができていない』ということで、チーム内でお互いが本音でレビューをしたんです。そこでもう一度、自分たちのスタンダードは何かを確認し、その上で臨んだのが前節の埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)戦でした」

埼玉WK戦は結果的に4点差で敗れたものの、無敗で首位を走るチーム相手に後半途中で一時逆転。東京SGの選手たちはみな、負けた悔しさだけでなく、手ごたえを感じた一戦だった。

「結果的に負けてしまったけど、『自分たちの基準はこれだ!』と取り戻すことができた。その基準からブレることなく、この1週間もタフな練習を徹底することができました。チーム全体で共有できているから、ノンメンバーのクオリティーも高くて、メンバーにとってはいい準備ができましたね」

2月に味わった手痛い敗戦をとおし、自分たちの目指す「高い基準」を思い出した東京SG。もちろん、その成果を1試合だけの快勝にとどめるつもりはない。

「自分たちで導き出した基準だからこそ、毎週毎週、同じスタンダードでやらないといけない。そこは僕たち経験のあるメンバーも率先して、求める基準をしっかり示していく必要があると思います」

ちょうどリーグ戦折り返しのタイミングでチームのベクトルがしっかり上を向いた東京SG。もちろん、そのベクトルの先に見据えるのは、リーグの頂だ。

(オグマナオト)

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督(右)、堀越康介キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲 監督

「選手が素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。ディフェンスの強いリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)さんを相手に62点を取れたこともそうですし、0点に抑えることができたのもすごく価値のある内容でした」

──ブレイクダウン周りで勢いが出たように思えますが、そこに関してはどのように感じていますか?

「BR東京さんには昨季もそれ以前も、いつもブレイクダウンで後手に回っています。われわれがやられたくないことを一番分かっていると思うので、ブレイクダウンについては今週かなり意識して取り組んできました。その意味では、しっかりと早くボールを抑えられたのは良かったと思います。今日は本当にいいアタックでボールに当たってきたと思いますし、ターンオーバーを相手に取られることも少なかった。ここ最近のBR東京さんとのゲームと比べても、かなり成長の手ごたえがあります」

──連戦が続く中で選手のコンディショニングで意識している部分はありますか?

「もちろん毎週タフなゲームが続くので、コンディショニングは大事です。ただ、コンディショニングを整えるためにゲームに出さないという発想はこのチームにはないし、そんな余裕もないです。良いパフォーマンスの選手がゲームに出ることができているので、そこについて特別なことは考えていません」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン

「今日の試合で意識してきたのは“フィジカルバトル”。今日のメンバー表を見ても分かるとおり、BR東京さんのメンバーは控えにフォワードが6人もいて、そこで勝負をしかけてくるのはわかっていました。最初の20分で、その“フィジカルバトル”に勝てたことが今日の勝因です」

──今シーズンはスロースタートの試合が続いた中で、今日は入りから良かったように見えました。その要因をどのように考えていますか?

「今日の試合に関してはすごく規律が良くて、相手は逆にペナルティを犯すような試合展開だったので、そこは良かった部分です。ペナルティを犯すと、自分たちがモメンタムを起こそうとしても一気に陣地を戻されてしまうので、そこはみんなで意識したし、ミーティングもしたし、レフリーによりクリアな姿勢を見せていこうとチームとして取り組んでいたところです。

これから緊迫した試合が続き、本当に強い相手との試合も増えてきます。一つのペナルティですべてが大きく変わってしまうというのは、チーム全体としてより意識し始めているので、そこがスロースタートにならなかった要因だと思います」

──今日のご自身のハットトリックについて、率直な思いを教えてください。

「フォワードの得点はチームメートの頑張りの結果です。モールからトライを取れたことは僕としてもすごくうれしいです」

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京のピーター・ヒューワット ヘッドコーチ(右)、武井日向キャプテン

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「スタートが悪く、意志や狙い、泥臭さという部分は求めていたレベルに達していなかった。ここまで長らくよくできていた部分も今日はうまく見せられず、相手に有利な状況を与え、消極的になってしまった。ペナルティカウントが19対8になってしまうとかなり厳しいです」

──いい試合をしたかと思えば、明らかに力を発揮できないゲームも見受けられます。その原因をどう分析しますか?

「複合的な要因だと思います。準備面もあれば、メンタル面やフィジカル面……。特にメンタル面は、10%でも足りていないとかなりダメージが大きく出てしまう傾向があります。ここ数試合、接戦を落としてきた中で、今週は準備期間の短いショートウィークだった影響もあるかもしれません」

──前の試合でも課題だった規律問題が今週も出てしまいました。消極的になってしまった点との兼ね合いはありますか?

「タックルで消極的になってしまうとノット・ロール・アウェイなどのペナルティが増えてしまうし、スクラムでも消極的になるとペナルティを取られてしまいます。今日のペナルティが一番多かった。今後はペナルティ自体をもう一度見直したい。とにかくわれわれとしてはコンシステンシー(一貫性)を求めていきたいです」

リコーブラックラムズ東京
武井日向キャプテン

「自分たちのDNAや泥臭さ、フィジカルをまったく見せられずに東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)さんのやりたいことをすべてやらせてしまったような試合でした。入りの部分から受け身になってしまったのがまず原因だと思うし、最後までそれを改善できなかったです」

──立ち上がりの場面、東京SGはかなり積極的でした。ここ数試合の中で、チームがうまくいかないような要因をどう感じていますか?

「そこはいまから考えていきたいところ。僕自身も含めてマインドセットの問題なのか、東京SGさんがアグレッシブにアタックして来るのは分かっていたことなので、そういう部分に対して正しいマインドセットで挑むことができたのかどうか。そこは反省点になります」

──無得点に終わってしまった原因はどこにあるのでしょうか?

「継続していてもミスで終わってしまった。後半冒頭もアタックし続けたものの、最後はミスで終わってしまった。そこは課題だと思います」

──具体的な改善点を教えてください。

「一人ひとりの役割の精度だと思います。キャリーする選手にはキャリーする選手の仕事があるし、サポートプレーヤーにはサポートプレーヤーの仕事がある。一人ひとりのやるべき役割をその瞬間で100%実行できないと、リーグワンのチーム相手にはミスを招いてしまうので、一人ひとりの精度をもっと上げていく必要があります」

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