NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第17節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年5月3日(土)13:00 味の素スタジアム (東京都)
東京サントリーサンゴリアス 43-34 リコーブラックラムズ東京
PO進出を決めた東京SG。チームを前に進めたのは二人の“突破者”
第17節を終え、ようやくプレーオフトーナメント最後の枠を手にした東京サントリーサンゴリアス。5月3日、その最後の枠を争う相手でもあったリコーブラックラムズ東京との試合でチームを前に進めたのは、二人の“突破者”の存在だった。
一人は、この一戦で28得点を稼ぎ、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたチェスリン・コルビだ。チーム加入2シーズン目にして初の1試合2トライ。特に後半8分のトライは、ピッチ中央付近から大外に回り込み、そこから一気にライン際の狭いスペースを華麗にすり抜けると、自ら蹴ったグラウンダーのキックに自慢の爆走で追い付いてトライゾーンで押さえる、らしさ満載のスーパープレーだった。
「フォワードが一生懸命真ん中で戦ってくれていることで、ボールも回ってくる。あのキックも、チームを前に出すことだけを考えて蹴ったら、結果トライにつながりました」
大外からの突破者がコルビなら、タックルしてくる相手を重戦車のごとくなぎ倒して突破したのは、後半途中から出場したタマティ・イオアネ。第8節以降、足のけがで戦列を離れていたペネトレイター(ディフェンスを突破し前進したり、それによってスペースを作る選手)は、復帰戦となった前節での豪快トライに続き、2試合連続トライで存在感を示した。
「苦戦しているときでもいい状態のときでも、常にチームを前に引っ張る、前に運ぶことが自分の仕事。次の試合でも必ずチームを前に引っ張る、ゲインラインを切っていくことをしっかり示していきたいです」
そんな突破者二人の働きぶりについて、小野晃征ヘッドコーチはこう評する。
「イオアネ選手はスタートの選手たちが疲れてきたときに、その勢いで周りにも影響を与えるエナジーになる。ゲームの流れを変えられる選手です。コルビ選手も、彼がボールを持つだけで何かが起きる期待を抱かせてくれる。味方までも予想できないプレーで、アグレッシブにアタックしてくれています。彼も含め、バックスリーの選手たちはいま、調子がとてもいいので、うまくチームを前に運べていますね」
苦しみながら歩を進め、ようやく決戦の舞台に辿り着いたサンゴリアス。その歩みをさらに前へと進める推進力がこのチームにはいくつもある。
(オグマナオト)
東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアス
小野晃征ヘッドコーチ
「両チームの関係者、ファンのみなさん、熱い応援ありがとうございました。今日の相手はTJ・ペレナラ選手から生まれるモメンタムが特長のチームだと思っていて、その相手のモーメントをどう止めるか、そして、自分たちのラグビーで自分たちのモーメントをどう生み出していくか、という点にフォーカスして1週間準備をしてきました。その結果、今日勝つことができたと思います。引き続き、来週の埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)戦にしっかり自分たちのベストを出せるように生かしたいと思っています。
この試合が今季最後のホストゲームでした。シーズンをとおして応援してくださったファンのみなさんにあらためて『ありがとうございます』と伝えたいです」
──苦しみながらもプレーオフトーナメントが見えてきました。ここまで勝ち点を積み上げられた要因を教えてください。
「もちろん、シーズンの入りでもっと勝ちたかったです。このチームなら勝たないとダメだというのは分かっていますが、起きてしまったことに関しては何も変えられません。いまは目の前のこと、今日の試合をまず勝つことが一番大事だと思っています。しっかりチーム全員が目の前のことをコントロールできるようにコミットすること(が要因だと思います)。来週の埼玉WK戦もしっかり勝つことを意識して、またいい準備をしたいと思っています」
東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン
「今週1週間はずっと、『最初の10分、自分たちでファーストパンチを仕掛けて、自分たちのスタンダードを出し続けよう』と話をしてきました。そのとおりの10分間にできたことが勝因の一つだと思います。
また、TJ・ペレナラ選手を中心に作ってくるモメンタムのところを、自分たちで分析したとおり、練習したとおりの展開でゲームを運べました。少し相手にモメンタムが傾く時間帯もありましたが、自分たちのゲームプランを信じて80分間プレーできたことが良かったと思います」
──話に出た「最初の10分」を制する上で、どういった部分をしっかりやっていこうと準備してきたのでしょうか。
「特別なことは一つもなくて、もう1回、自分たちのディテールというか、細かいところの精度やコミュニケーションの中での規律、そういうところをシンプルに、精度高くやっていこう、と準備してきました。
『1週間いい準備ができても、この日に自分たちのベストを出さなかったら意味がないよ』と試合中の最初の10分間も言い続けたので、そこがマインド的にも良かったんじゃないかなと思います」
──プレーオフトーナメント進出の6位以内をまだ決められていませんが、シーズン冒頭の苦しい状況を考えると、よくここまで来られた、という思いもあるのではないでしょうか。
「もちろん一戦一戦を大事に戦ってきて、本当に苦しいときもありましたが、コーチ陣を中心にリーダー陣みんなで、チームのカルチャーというか、根本のところは絶対にブレさせることなく、いい準備をし続けた結果が、いまのこの立ち位置につながっていると思います。まだプレーオフトーナメント進出が決まったわけではないですが、来週の埼玉WK戦に向けてもまた自分たちの100%を出せるような最高の準備をみんなでしていきたいです」
リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ
「スポーツにとって、プレーオフで戦えることはとても大切なことです。(今日の敗戦によって)そのチャンスをつかむことができませんでした。だからこそ、レビューをするのが本当に大事なゲームになると思います。
今季の中でも、かなり悪いパフォーマンスだったと思います。なぜそうなってしまったのか。こういうチャンスはなかなか得られないので、しっかりここから学んで成長につなげたいです。イエローカードがたくさん出てしまったことは、ゲームを戦う上では厳しい結果でした。ただ、そういう難しい状況の中でも学ぶことはあると思っています」
リコーブラックラムズ東京
TJ・ペレナラ ゲームキャプテン
「プレーオフトーナメント出場のチャンスを失ってしまい、すごく残念な気持ちです。特に前半、自分たちの残念なパフォーマンスが目立ちました。僕自身も、必要なレベルに達していなかったと思います。自分たちが悪かったけれども、相手チームがいいラグビーをしていたのも事実です。そこは無視をしたくないです。
今後は、こういうゲームをもっともっとやっていきたい。自分たちのシーズンがもっと長くなるようにしたいです。今日のゲームをしっかりレビューして、また同じようなシチュエーションになったら、前半からしっかりいい状態でプレーできるようにしたいと思っています。
また、後半に関してはいいラグビーができていたと思います。自分たちのチームを誇りに思うことは伝えたいです。13人になった時間帯もありましたし、14人でプレーする時間帯も長かったですから。ただ、絶対に間違えてほしくないのは、イエローカードの判定が悪かったということはありません。判定はすべて正解だったと思います」
──東京サントリーサンゴリアスがたくさんキックを蹴ってきたことも、ゲームプランがうまくいかなかった要因でしょうか。
「相手のキックよりも、自分たちのキックが悪かったです。相手はバックススリーがすごくいいチームで、そこからのカウンターもあります。前半はキックバトルをモノにできず、そこは残念に思います。個人的にも、自分のキックだけでなく、キックデュエル(キックされたボールを争う攻防)の部分はしっかりレビューをしたいです」
──試合中にミスが起きたとき、どのようにチームを落ち着かせようと働きかけましたか。
「ミスはどうやっても起きてしまうものです。相手も自分たちを阻止しようとしてきますし、ハードなゲームで、疲労がある中でプレーをするわけですから。そのミスの次の仕事をどうするかが重要です。自分たちにとって、今日の試合はプレーオフのような立ち位置の試合でした。そういうプレッシャーというか、そういう雰囲気を感じた中でプレーをすることが初めてのメンバーも多かったと思います。
僕がこのクラブに来た一つの理由は、その感覚をもっとチームメートに感じさせてあげること。そして、オフシーズン、さらに次のプレシーズンでもしっかりビルドし続けて、こういったいいプレッシャーをまた感じられるように。このクラブには、もっとビッグゲームを経験してもらいたいと感じています。しっかりレビューして、来週の試合にまた臨みたいと思います」