2024.03.05NTTリーグワン2023-24 D1 第8節レポート(神戸S 57-22 トヨタV)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第8節
2024年3月3日(日)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
コベルコ神戸スティーラーズ 57-22 トヨタヴェルブリッツ

世界最優秀選手がしかける、
圧倒的な“ラグビー・エンターテインメント”

圧巻の1試合4トライでディビジョン1のトライランキングでも4位に浮上。コベルコ神戸スティーラーズのアーディ・サベア選手

コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)が、勝ち点で並んでいたトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)に快勝を収めた。序盤から連続トライを奪い、追いすがる相手を突き放しながら最終的には35点差の大勝。目先のライバルを打ち破り、3連勝を飾った西の名門がプレーオフトーナメント進出圏内の4位に浮上した。

貫禄のアーディ・サベア劇場だった。

前半12分に密集から一瞬のスキを突き、同20分には大外に回ってきたボールを着実にインゴールに置いた神戸Sの7番。連続トライでチームに勢いをもたらすと、後半早々には自陣ハーフウェイライン手前から相手陣22m内側まで一気にボールを運び、味方のトライをお膳立て。後半38分に圧巻のジャンピングトライを決め、最後は足を引っ掛けられながらも回転して背中からトライする離れ業を演じた。

衝撃のパフォーマンスで会場を沸かせた、ニュージーランド代表81キャップを誇る30歳。その“劇場ぶり”は、取材陣が待つミックスゾーンでも全開だった。

「毎試合とにかくベストを尽くすということを念頭に置いてやらせてもらっていますので、とにかくそれができたかどうかというところで、ベストを尽くし過ぎて途中で肺がつぶれるかと思ってめちゃくちゃしんどかったですけど……(笑)。それでもチームがしっかりと勝つことができて、結果につながって、あらためて自分の仕事ができたのかなと思います」

開口一番から楽しませてくれる、国際統括団体『ワールドラグビー』が選出する昨年の世界最優秀選手。トライの仕方も特徴的だが、そこにこだわりはあるのか。「そういうパフォーマンスが人の笑顔につながればいいと思っていますし、自分なりに全力で取り組んだ結果がああいうものにつながっているんだと思います」という。観る者の心を揺さぶる、そんな魅力がアーディ・サベアのプレーには詰まっている。

そして、彼の魅力は記者陣を爆笑に包んだ次の言葉にも現れた。

「昨日、インスタグラムのストーリーにもあげたんですけど、今日の4トライに関しては、おにぎりとローソンの『からあげクン』と、チョコアイスバー、スポーツドリンクも飲んで、そしたらこんなパフォーマンスができました(笑)」

漂ってくるのは“人を楽しませずにはいられない”、生粋のエンターテイナーの気質。世界最優秀選手がしかける圧倒的なラグビー・エンターテインメント、それを体感できる時間が、神戸Sの試合にはある。

(小野慶太)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(右)、ブロディ・レタリック共同キャプテン

コベルコス神戸ティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)にとって本当にいい日でした。いいチームを相手に自分たちがやるべきことを丁寧にやり切ることができた試合でした。長いフェーズ、長い時間でもしっかりいいディフェンスができましたし、そこからターンオーバーしたチャンスを自分たちで得点に変えることもできました。しっかり成長している部分が見えたので良かったです。ただ、まだまだここが自分たちの完成型かといったらそうではないですし、しっかりこれからも成長を続けていきたいと思っています」

──「やるべきことを丁寧にやり切ったことが勝利につながった」との話だが、具体的に教えてもらえますか?

「ここ数週間、3週間ほどのオフ明けから本当にいい準備ができている状況で、それに関して言えば、ゲームメンバーの23人以外の選手たちも含めて全員がいい準備ができている状態でした。なので、何週間も今日のようなパフォーマンスを試合の中で出していけそうな状況にはもっていけていたのですが、今日でそれがやっと形になったと思います。ゲームの中でもしっかり自分たちのスキルを正しく丁寧に行うことによってモメンタムを得た上で、相手を突き放すことができた。その部分を今日、見られたのはすごくうれしかったです」

──三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)との次の試合へ向けての意気込みを教えてください。

「トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)さんもそうでしたけど、相模原DBさんに関しても体の大きな選手が多いチームだと思っています。なので、勝つのは簡単ではない相手だと思っています。いま流れがある状態だと思っていますので、そこに向けていい準備をしていきたいと思います」

──シーズン折り返しの試合で勝利したことは、どのような意味をもつと思いますか?

「今日の試合に関しては神戸SだけでなくトヨタVさんにとっても重要な試合でした。両方とも(試合前の)勝ち点が19の状況でした。これからのチャレンジとしては勝ち続けることだと思います。どこを見回してもリーグワン(ディビジョン1)は強いチームが多いですし、おそらく、東芝ブレイブルーパス東京さん、埼玉パナソニックワイルドナイツさんは全勝で進めているので、トップ4に進出できる2個のスポットを取られている状況だと思います。このあと腕相撲のような試合が8試合続くので、そこでどれだけ勝ちを積み重ねていけるか。そこだと思います」

──ブリン・ガットランド選手が好パフォーマンスを見せたが、一番評価するところはどこですか?

「おそらく今日の試合を見直したときに、たくさんの方はアーディ(・サベア)のことをしゃべると思います。もちろん、アーディ(・サベア)も素晴らしかったですが、おそらく気づかれにくいのは(ブリン・)ガットランドだったと思います。たくさん、いいパフォーマンスをした選手がいますが、正しい形で試合をコントロールしてくれたと思いますし、正しいエリアでプレーする判断をしてくれたと思います。キックを使うべきときはキックを使いながら、プレーができる状態のとき、チャンスがあるときにはプレーする選択をしてくれた。それによって本人自身もトライすることができたと思うので、彼に関しては今日、すごくいいパフォーマンスだったと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック共同キャプテン

「デイブ(・レニー ヘッドコーチ)が言ったように今日はしっかりと楽しめる日でした。試合の中はアームレスリングのような、力比べのような状態でしたが、その中でもうれしかったところは、自分たちのスキルのレベルの高さです。そこは本当に良かったと思います。スキルの部分で前半、自分たちがトライを取って、そのあとで自分たちがちょっと気を抜いてスキルを落とすことは簡単だと思いますけど、そこの部分でスタンダードを落とさずに戦い続けることができた。そこが今日は自分の中で一番ハッピーだったところです」

──後半の立ち上がりまで互角の勝負だったが、山下楽平選手のインターセプトからのトライで流れをつかんだ印象があります。チームにどんな影響があったでしょうか?

「ディフェンスラインがしっかりプレッシャーを掛けた結果のインターセプトからのトライだったと思います。(山下)楽平の本当にいい判断だったと思います。そのあと、自分たちの丁寧なプレーをし続けることにつながりますけど、自分たちがキックオフレシーブのところでも正しいエリアにしっかりとイグジットして、正しいエリアでプレーしたことでそのあとのモメンタムや自分たちが続ける状況になったと思います。自分たちが今日、こうやってトライを取れたところもディフェンスが素晴らしかったからだと思います。ディフェンスの部分が本当に良かったことによって、ターンオーバーのアタックなど、いい形のアタックをしてトライを取り切れる状況を与えてくれたと思うので、そこの部分が一番良かったと思います」

──相手にはアーロン・スミス選手やボーデン・バレット選手など同じニュージーランド代表オールブラックスの選手がいますが、彼らと対戦したことについては?

「彼らとプレーすることは楽しかったです。もちろん、オールブラックスでも長い時間、友人として過ごしているので。ひさしぶりにマッチアップできたことはうれしいですけど、フィールド上で勝つことができたので、さらにうれしかったです」

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(左)、姫野和樹キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
ベン・ヘリング ヘッドコーチ

「まず今回の試合は非常に激しい戦いで、腕相撲とでも言えるような、そういった試合だったと思います。神戸Sに関してはスクラムのところで非常に力を発揮し、特にセカンドヒットのところでプレッシャーを掛けてきていました。そういった側面で力をつけてきている印象でしたので、トヨタVとしてはそういった点に取り組む必要があると思います。また後半序盤、キックオフからのラインブレイク、インターセプトなど、トライが続き、われわれとしてはスイッチが切れたような瞬間があったかと思いますが、神戸Sのようなチームにそういう勢いを与えてしまうと非常に厳しい試合の運びになると思います。そういった点で非常に多くの学びがあった試合ですので、来週のショートウイークに向けて修正点、課題に取り組んでいきたいと思います」

──次の試合に向けて一番準備しないといけないといま感じていることを教えてください。

「われわれチームとしてはステイオン、集中し続けることがすべてだと思います。一貫性という部分でも、先ほど姫野(和樹)からもあったように、後半の入りなどで細かなミスというのが続きました。そういった点が試合に与える影響は非常に大きいと思います。また、神戸Sにはアーディ・サベアのような選手がいて、一瞬、気の抜けた場面が彼らのパフォーマンスに直結するので、われわれとしては来週をとおして一貫性、そしてステイオンし続けるところですね。それができていればいいチームなのでそこに取り組んでいきたいと思います」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「非常に残念です。試合の総括はベン(・ヘリング ヘッドコーチ)が言ったとおりですけど、僕が試合のあとにチームに言ったのは、『これを許しちゃいけない』と。やっぱり何かを変えないといけない。『次のゲームにまた進もう』というのはよくある話ですけど、これを自分たち自身で許してはいけないと思っています。『もう1回、自分たちの準備で、一人ひとりのスキルなどをもう一度見つめ直してやらないといけない』と言いました。『強くなるということはこういった試合をしっかりと自分たちの学びにつなげて、この悔しさを忘れずに、成長していくことで、そうしていかないといけない』とも話しました。それがすべてだと思います。来週はショートウィークですけど、もう一度、自分たちを見つめ直して、来週のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦に挑みたいと思います」

──何かを変えないといけないとの話だが、特にどういうところでしょうか?

「それは試合を見てからまた考えたいと思いますけど、一人ひとりの準備など、何かを変えないといけないと思いますし、その何かを模索していかないといけないです。チームとしてはベン(・ヘリング ヘッドコーチ)の話したこともそうですし、チームのメンタリティーの部分、なぜスイッチを切ってしまったのか、そういう部分をもっと追求していかないといけない。何かに問題があるからスイッチを切ってしまったと思うので、もう一度、自分たちの準備を見直していきたいと思います」

──そのことはどの時間帯から感じていたのか?

「セカンドハーフの入りが悪くて、そこから自分たちのリズムを失ってしまったのもありますし、ゲームに関して言えばたくさんあるんですけど、もっともっと自分たちとしては相手陣に入ってプレーしたい。22m付近に入ればスコアもついてくるし、ミドルのところで攻め過ぎて自分たちの精度が落ちてしまって、そこでカウンターパンチをくらうことがすごく多かったなと思うので、そこのところのゲームバランスをもうちょっと考えていかないといけないと思います」

ニュースの一覧へ