NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第9節
2024年3月10日(日)14:30 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ vs コベルコ神戸スティーラーズ
三菱重工相模原ダイナボアーズ(D1 カンファレンスB)
相模原DBの柱となったジャクソン・ヘモポ。
苦楽をともにした盟友たちとの邂逅
前節、チーム一丸となったハードワークで昨季のチャンピオンチームを撃破。いい形でシーズン後半を迎えた三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)が、世界的名手を擁するコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)を相模原ギオンスタジアムで迎え撃つ。
試合を2日後に控えたグラウンド。雨後の晴れ間の中、泥だらけになった選手たちのひときわ大きな掛け声が響く。活気にあふれた練習風景。「ゲームプランを遂行して2連勝できて、チームはとてもいい雰囲気です」とジャクソン・ヘモポも語る。
パワーとスピード、的確な判断力を兼ね備えるニュージーランド出身の“エイトマン”。ニュージーランド代表“オールブラックス”5キャップの30歳は5年前、全盛期に日本でプレーすることを選んだ。その理由をこう明かす。
「ニュージーランドでは、けが人が出たら出場できるようなポジションで、将来的にどんな環境でラグビーするかを自分で決めることができませんでした。そこで、グレッグ・クーパー(相模原DBの前ヘッドコーチ)のオファーを受けて、確実にプレーできる日本にきました」
以来、チームの大黒柱として5シーズンに渡って多くの出場時間を重ね、ディビジョン1でもインパクトを与える存在になる。
「ニュージーランドにいたころは若く、常に学ぶ立場でした。いまはベテランになり、オフ・ザ・フィールドでも規律よく生活することを心がけています。チームにいい影響をもたらしたいと思い、チームメートとともに成長しました。オフ・ザ・フィールドでのリーダーの役割も与えられ、教えるという立場からも学んでいます」という言葉から、日本での充実した生活がうかがえる。
今季は全試合に出場し、7試合に先発。そして、チームは昨季できなかった、シーズン序盤の勢いを中盤でも維持することに成功している。
「細部を突き詰めることを忘れずにプレーし続けること。勝つことはできても、100%満足しているわけではないですし、もっとできたところはいっぱいあります。満足せずに成長し続けることがシーズン後半に向けても重要だと思います」
神戸Sのアーディ・サベア、ナニ・ラウマペは同い年。ハイスクールで、「毎試合、いいバトルをしていた」関係だ。同じ高校の同級生だったナニ・ラウマペについては、「彼にタックルできるのは学校に3人しかいませんでした。ファーストチームの選手が数人で守備をしないと練習にならないほどでした」と、“弾丸ランナー”の若かりしエピソードを披露する。
そして、2022年に相模原DBのD1昇格をともに成し遂げ、神戸Sに移籍したマイケル・リトルもメンバー入り。対戦がかなわなかった昨季に触れ、「マイキー(マイケル・リトルの愛称)は私たちを怖がって試合に出なかったと噂で聞いています。なので、今回も出ないかも」と真顔で口にしたあと、「長く一緒にプレーした彼らと、また試合できることが楽しみです」と笑みを浮かべた。
それぞれのラグビー人生を歩んできた男たちがここで邂逅する。
(宮本隆介)
コベルコ神戸スティーラーズ(D1 カンファレンスA)
普段はのんびり、試合では熱血漢。
“応援せずにはいられない男”の誓い
3連勝で4位に順位を上げてきたコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)は今節、神奈川県の相模原ギオンスタジアムで三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)と対戦する。キックオフは3月10日14時30分。上昇気流をつかむ神戸Sのアグレッシブなラグビーに注目だ。
「いつまでも慣れないです……」
どこか愛くるしい、のんびりした雰囲気が漂う髙尾時流。彼が「慣れない」と話したのはもちろん、ラグビーのことではなく、メディア取材のこと。チームメディアマネージャーを務める田中大治郎氏から「活躍しているから(取材依頼が)どんどんくるで!」とハッパをかけられると、「いやあ……」と頭をかいた。
照れ屋ぶりが全開の髙尾だが、5試合ぶりに先発出場した前節・トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)戦は鬼神のごとき働きぶり。スクラムの最前列に入る1番として体を張り、惜しげもなくハードワークを繰り返す。その献身性は際立っていた。
「スクラムとブレイクダウンでいいボールを出させないこと。(トヨタVには)アーロン・スミス選手とかがいて、そこでテンポを出されてしまうと厳しい展開になると分かっていました。ブレイクダウンでもフォワードがいい仕事をできましたし、スタンドオフのブリン(・ガットランド)もいいキックでエリア取りをしてくれたので、敵陣で戦うことが多かったと思いますし、それがいい結果につながったのかなと思います」
勝ち点で並んでいたトヨタVを打ち破り、神戸Sはついにプレーオフトーナメント出場圏の4位に浮上した。ただ、髙尾は浮かれる様子をみじんも見せない。
「勝ち点は5位以下のチームとそんなに変わりません。一つひとつの試合が本当に大事になってきます。目の前の試合を大事に、自分たちがやることを精度高くやっていきたいです。今節の相手の相模原DBも体の大きい選手が多くて、自陣に入られると、どんどんフィジカルのある選手を当ててくると思います。受けに回れば勢い付くチームなので、しっかり前に出て相手に圧力を掛けていきたいです」
強い言葉でチームメートと勝利をつかむことを誓う髙尾は、「嫌いなものはない」と豪語するようにチーム随一の大食漢としても知られる。ただ、「毎日食べていると太るので……」とシーズン中は自己管理を徹底し、「シーズンが終わったら思いっ切り食べますよ」と笑う。
愛くるしい、のんびり肌。その実体は、ラグビーに思いを込めるオン・ザ・フィールドの熱血漢。応援せずにはいられない、そんな魅力が髙尾にはある。
(小野慶太)