NTTジャパンラグビーリーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦)第7節
2023年2月5日(日)12:00 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 30-49 コベルコ神戸スティーラーズ
課題は明確も「悲観している暇はない」。初の連敗も相模原DBは前を向く
コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)が三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)に競り勝って、4試合ぶりの白星を挙げた。
前半は神戸Sが優勢に試合を進めるも、相模原DBが後半最初のトライを奪って1点差に迫り、相模原DBの勝ちパターンに持ち込む。しかし、ここから神戸Sが2連続トライを奪って、相模原に主導権を譲らなかった。
神戸Sは、デビュー戦となった浜野隼大のトライなど今季初出場の選手が活躍。ニコラス・ホルテン ヘッドコーチは「ここ1カ月、いいプレーができていない状況が続いていました。デビューした選手たちがチームに対して情熱を与えてくれて、チーム一丸となって戦うことができたと思います」と勝利を喜んだ。
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチが「試合の決定打」と評価したのは、トライを奪われたあとのハドルでの会話だった。「しっかり切り替えようと、ポジティブな言葉」(橋本皓キャプテン)をかけることで、チームとしてのパフォーマンスが出せたという。
一方、相模原DBは、神戸Sの力強くかつ緩急をつけたボールキャリーに苦戦。後半から出場し2トライを挙げた安江祥光は「神戸Sは、タックルをずらしながらフィジカルでボールをつないできた。いいテンポで運ばれて、後手に回り、それが焦りとなって、バタバタしたところをつけ込まれてしまった」と振り返る。ペナルティでエリアを戻されて、畳みかけるような攻撃をしかけられなかった点について「ディシプリン(規律)を課題として取り組まないといけない」と反省を口にする。
相模原DBは、今季2番目に多い30得点を記録。司令塔のジェームス・シルコックは「アタックはポジティブな面があったが、ミスから攻撃の糸口を失っていた」と振り返る。マット・トゥームアは後半、センターのポジションで初出場。短いプレー時間ながら、タックルとランで存在感を見せた。
「まだ試合はたくさんあるので、悲観している暇はない。しっかり次を見て、自分たちの役割を次も明確にして成長していきたい」(岩村昂太キャプテン)
今季初の連敗だが、選手はみなポジティブだ。
(宮本隆介)
三菱重工相模原ダイナボアーズ
三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ
「今日の相手はとても強いチームですし、フィジカルもすごかったと思います。そこを粘って、13対14まで追い上げたのは良かったと思います。しかし、そのあとの大事な場面でミスをして、相手にスキを突かれて、そこから自分たちがやりたいことができなくなりました。こういうビッグチームと対戦するときにはいろいろな学びがあります。点差を縮めたあと、次に何をするのか。次の大事なところでは集中して、自分たちのスキルを実行するところを今日、学べたのはすごく良かったと思います」
──前節の敗戦から1週間、どのように立て直してこのゲームに臨んだかを教えてください。
「前節での一番の学びは、ハーフタイムの直前とその直後にも相手にトライを許したところです。大きな場面で、自分たちがトライを2回許したので、そこに今節は集中しました。今節、前半の最後をみんなで集中して相手を止めることができましたし、後半最初、逆に自分たちがトライを取ることができたので、そういうところでは大きな成長が見えたと思います」
──そうした中、今節、トライを取ったあとに、自分たちのペナルティで流れを渡してしまう場面が何回かあったと思います。そこの反省はいかがでしょうか。
「自分たちが点を取ったあと、プレッシャーが掛かる中でどうそれに対応するのか、対応力のところがまた今日の学びだったと思います。自分たちはまだまだ自分たちの進む道のりの途上にあります。まだ行きたいところに到達していませんが、毎日、成長できていると思います。点差が広がっているときにも、そこから何を学べるのかが一番大事だと思います。今季、とても大きなチャレンジになることは分かっています。そこから自分たちが毎週成長できるように、前向きに、楽しんでいきたいと思いますし、それはいまのところはできているかなと思います」
──ディフェンスの部分は、グレン・ディレーニー ヘッドコーチの担当分野だと思うのですが、今までの粘り強いディフェンスではなくて、ソフトな部分を感じました。そこはどう見ていたのか。バイウィークを挟んだ2週間で、何を直していくのかを教えてください。
「おっしゃるとおり、自分たちの強みはディフェンスのところですが、今日は一つひとつのタックルを決め切れなかったところがありました。自分たちの形としてはあったと思いますけど、相手には勢いのあるキャリーがありますし、オフロードパスを出すチームなので、そこで自分たちが一発で相手を止めないと、相手は勢いに乗ってしまいます。そういうところは自分たちがもっと対応できるようにしないといけませんね。
前半のコベルコ神戸スティーラーズのポゼッションは約62%だったと思います。自分たちがなかなかボールを取れない状況でディフェンスをし続けたところがありますし、自分たちにアタックチャンスがあったときに、3、4回ミスをして終わったところがありました。相手に勢いがある前半でしたが、自分たちももっと点を取れるチャンスがあったかもしれません。後半開始後、トライを取って点差を縮めることができたのはいい粘りだったと思います。しかし、そのあと、点差が開きました。自分たちが粘り強いことを見せることはできましたが、それを80分とおしてすることができませんでした」
──それはチームのシステムやストラクチャーの部分ではなくて、個人の部分が主だということですか?
「そうですね。アタック、パス、キャリー、キッキング、あるいはディフェンスのタックルなどすべてのスキルが合わさってラグビーがあると思います。それらについて自分たちも毎週、練習し、努力しています。みんなハードワークをして入ろうとしたところで、低く入り過ぎたり、高く入り過ぎたりするところがあり、そこで少々相手が勢いに乗れたところがありました。自分たちも何回かいいタックルをしてターンオーバーすることができたので、そういう回数をもっと増やさなければなりませんし、もっと一貫性をもってできるようにならないといけません」
──今日、マット・トゥームア選手が初めて出場しました。短い時間でしたが、そのパフォーマンスについてどういう感想をもち、今後、マット・トゥームア選手をどのように使っていきたいと考えていますか?
「今季、自分たちの外国人選手はがんばって大活躍してくれていると思います。ジェームス・シルコック選手も10番で大活躍しています。(マット・)トゥームア選手も復帰して、今日、最初のチャンスで出てきました。いろいろな外国出身の選手がいる中、今日はウォルト・スティーンカンプ選手を交代させて、バックスにもう一人入れて、10、12、13番に外国籍選手が3人いる組み合わせにしました。
最後にすごく良かったところが、あきらめずに、アタックし続けたところです。いいトライも何個か取れたので、それもすごく良かったと思います。経験のあるパップ(マット・トゥームア)をいろいろな場面で使っていきたいと思います。どのような布陣、バックス、フォワードで外国籍選手を使うのかというバランスになってくると思います。パップは10番も12番もできますし、(ジェームス・)シルコック選手は10番も15番もできます。いろいろな組み合わせがある中、毎週、自分たちとして何が一番合っているのかを考えて使っていきたいと思います」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン
「グレン・ディレーニー ヘッドコーチが言ったとおり、コベルコ神戸スティーラーズという強いチームに対して、13対14まで巻き返したときに、われわれがどういったマインドで、どういった役割をしっかり果たしていくのか、そういったところを学べた1日だったかなと思います。その状況になったときに、われわれがこれからどういったラグビーをしていくか。またしっかりレビューして、次につなげていきたいと思います」
──前節の敗戦から、この1週間どのように立て直して、このゲームに臨んだかを教えてください。
「グレン・ディレーニー ヘッドコーチが言ったことと、もう一つ、アタックのところで、前節は遂行力のところが欠けていたので、1週間、全員で同じ絵を見ながら、アタックしていくマインドを作っていきたいです。実際、コベルコ神戸スティーラーズに対して30点を取ることができたのは、前節から少し成長できたポイントかなと思います」
──今節、トライを取ったあとに、自分たちのペナルティで流れを渡してしまう場面が何回かあったと思います。その反省はいかがでしょうか?
「グレン・ディレーニー ヘッドコーチのおっしゃったとおりです」
──今日、マット・トゥームア選手が初めて出場しました。短い時間でしたが、そのパフォーマンスについてどういう感想をもちましたか?
「パップ(マット・トゥームア)は普段の練習からチームにエナジーを与えてくれますし、リーダーシップをとって、アタックに関してもクラリティー(はっきりして分かりやすいこと)の形をとってくれます。実際にグラウンドに入ったときも、たくさんボールをもって、アタックをたくさんしかけようとしてくれたので、すごく心強かったです。今日、ファーストゲームでしたが、これから調子もどんどん上がってくると思いますし、また、9番、10番、どこで組むか分からないですが、楽しみです」
──初めての連敗で、勝利としては1ヶ月遠ざかっています。岩村キャプテンの表情としてはそこまで落ち込んでいるようには見えないのですが、チームの雰囲気などはどういう感じでしょうか?
「個人的にはすごく悔しい気持ちです。顔に出ていないかもしれませんが、本当に悔しいですし、キャプテンとしてもっとチームを鼓舞していきたいと思っています。ただ、まだ試合はたくさんあるので、一個一個悲観している暇はないです。しっかり次を見て、自分らの役割を次も明確にして、一個一個、負けはしていますけど、成長していけたらいいなと思っています。そういうメンタリティーでいます」
コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズ
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ
「やっと試合に勝つことができてよかったです。ここ1ヶ月、コベルコ神戸スティーラーズとしていいプレーができていない状況が続いていました。自分たちの試合に向かう上での姿勢に正しくなかった部分もあったと思います。今日、新しくデビューした選手も多かったのですが、そうした選手たちがチームに対して情熱を与えてくれて、それによってチームが一丸となって戦うことができたと思います。4人がコベルコ神戸スティーラーズとしての初キャップになりましたが、そのうち二人がトライを取ることができました。本人たちにとってもすごく良かったと思います。また、この席に、負けた側で座るのではなく、勝った側で座ることができて良かったです」
──後半、トライされたあと、これまでだったら下を向いてしまって、そのままずるずる行ってしまったと思うのですが、そこをこらえて、逆に突き放すことができました。
「そこで崩れなかったのは、タイミングというよりも、試合前からの表れがあったと思います。ハーフタイムで、ソフトな入り方をするこれまでから絶対成長しなければいけないと言いました。直後の結果は良くなかったのですが、そこでトライを取られたあとの自分たちの姿勢が今までの試合とは違いました。今節の選手の姿勢、意思の部分が見えた瞬間だったと思います」
──後半11分、1点差に迫られた中で山下楽平選手が見事トライを決めました。そこから攻撃が一気に勢いに乗った印象ですが、あの後半11分の山下選手のトライはこのゲームにおいて大きかったとお考えでしょうか?
「そこのタイミングよりも、トライを取られたあとのハドルでの選手たちの姿勢、話の内容が大きかったです。そこが今日の試合を決めた一番のタイミングだったと思います。そのあとのトライに関しては、結局、選手たちが出した姿勢の結果でしかありません。全員が仕事をした結果、トライという形に変えることができました。今日の試合の決定打になったのは、ハドルの中で、選手たちがトライを取られたあとも自分たちがやっていくのだという姿勢を出してくれたことです。自分たちのチームは、個人でいいプレーをする選手は多いのですが、今節はしっかり、チームとしてのパフォーマンスを出せた。そこが見ていて一番よかったところです」
──バイウィークを挟んで次節には静岡ブルーレヴズ、さらに次々節には埼玉パナソニックワイルドナイツと、ホストゲームで大事な2試合が続きます。どういった戦いをしますか?
「今日の試合を見ても、まだまだ成長しなければならないことがたくさんあります。点を取ったあと、キックオフレシーブから相手に流れをつかまれてしまう部分も多く、そこは間違いなく修正しなければいけないと思っています。ディフェンスに関しても、最初のときより良くはなっていますが、まだまだ成長できる部分はあります。静岡ブルーレヴズ戦を前に、自分たちの修正できる部分、成長できる部分がたくさんあるので、そこにしっかり注力していきたいと思います。選手たちも、自分たちはまだまだ良くなれるチームだと間違いなく理解しているので、エキサイティングな気持ちをもって取り組んでいきたいと思います」
コベルコ神戸スティーラーズ
橋本皓キャプテン
「長らく勝ちから遠ざかっていたので、まず、勝ったことを非常にうれしく思います。負けが続いている中で、チームとしてちょっと暗いような感じだったのですが、『勝ちたい気持ち、勝つ意思をもって試合に臨もう。それを80分間、“神戸ラグビー”とともに出そう』ということを言っていました。そういう部分ではいい部分がたくさんあったと思います。修正する部分もあると思いますが、またこれから頑張っていきたいと思います」
──後半、トライされたあと、これまでだったら下を向いてしまって、そのままずるずる行ってしまったと思うのですが、そこをこらえて、逆に突き放すことができました。
「ニコラス・ホルテン ヘッドコーチが言ったとおりです。そういったことを、取られたあとのハドルで言っていました。ここでしっかり切り替えようと。そういったポジティブな言葉をかけて臨みました」
──ご自身が試合に出られない間、チームの中でキャプテンとしてどういう意識で振る舞うかを考えられたのでしょうか?
「ラグビー的な部分で、何がいけないのかというところはすごく話しました。あとは姿勢の部分、チームが全体的に暗くなっているので、そういうところをどうしていくかとか……。自分だけでなく、リーダーと話し合って、チームがいい方向にいけるようにすごく話し合ったりしていました」
──暗くなっているところを改善していくために、実際、どういうことを心がけられたのでしょうか?
「できるだけ、最終的にはポジティブな言葉で終われるようにとか。そんな大それたことはしていないですね」