2024.03.11NTTリーグワン2023-24 D1 第9節レポート(相模原DB 14-43 神戸S)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第9節
2024年3月10日(日)14:30 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 14-43 コベルコ神戸スティーラーズ

フィジカルバトルで存在感を放った吉田杏。
連勝ストップで強まった勝利への思い

トヨタヴェルブリッツから移籍、今季から三菱重工相模原ダイナボアーズに加わった吉田杏選手

「バチッ」。肉体と肉体がぶつかり合う音がスタンドまで聞こえてくるような、フィジカルを強みとするチーム同士の対決は、コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)に軍配が上がった。

先手をとったのは風上の神戸S。この試合でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた司令塔ブリン・ガットランドが三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)のディフェンスラインの裏を突くキックで揺さぶりをかけ、さらに変幻自在なパスから展開するナニ・ラウマペや李承信らの力強いボールキャリーでトライを奪う。

守備でも神戸Sのフォワード陣、ブロディ・レタリックや昨年のワールドラグビー男子15人制年間最優秀選手賞のアーディ・サベアらが相模原DBの前に立ちはだかった。

加えて、神戸Sがブレイクダウンでペナルティを積み重ねたこともこの試合展開になった要因だろうか。ここ2試合の勝因だった相模原DBの“畳み掛けるアタック”がこれにより封じ込まれ、さらに苦戦を強いられた。

後半、風向きが変わる不運もあり、相模原DBが目論んでいた“後半からの風上の優位性”をつかみ損ねたことも誤算だったか。けがや脳震盪の疑いで、複数人の選手が戦列を離れていく激闘の末、“Xファクター”を多数有する神戸Sがトップ4入りに名乗りを上げる勝ち点5を積み重ねた。

フィジカルバトルの中で存在感を見せていた一人が、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)から今季加入し、ここまで全試合に出場している相模原DBの吉田杏だ。ポジションは、フォワードの中でも特に運動量と仕事量が求められるフランカー。フィジカルの強さはトヨタV時代から定評があったが、首から肩にかけての筋肉のボリューム感は、今季、クロスボーダーラグビー2024の開催に伴うリーグ休止期間1カ月間の「過去一番」(吉田)というハードトレーニングでさらに迫力を増している。

「2連勝で勢いに乗れるはずでしたが、自分たちのスタイルや準備してきたことが出せませんでした。先制パンチで畳み掛けるという思い、勝ちたいという思いは神戸Sのほうが強かったと思います」と吉田。

その言葉から発せられる勝利への思い、成長過程のチームに貢献したいという気持ちは、とりわけ強い。「個人的には高いパフォーマンスを発揮できましたが、ラグビーは一人ではできませんし、チームとして勝たなければ意味がありません。このチームは、波をなくせば上位にいけるはずです」。

次は、東芝ブレイブルーパス東京戦。「フォワード勝負のゲームになると思うので、自分たちのスタイルを貫きつつ、メンタル面でチャレンジャーとして一から準備するだけです」。

そして、「チームとして危機感をもって戦いたい。勝ちたいのか、勝ちたくないのかが本当に問われると思います」と語気を強めた。

(宮本隆介)

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(左)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「80分をとおしてコントロールできなかった試合だったと思います。常にプレッシャーが掛かっていて、自分たちもそれによってスコアできなかった。スコアボードの点差にも、それは表れたと思います。相手はダイレクトにフィジカルを押し出してきて、自分たちのやりたいことをさせてくれませんでした」

──相手の大外(ライン際)のトライへの対策はありましたか?

「自分がディフェンスコーチなので責任をとらないといけません。自分たちが敵陣でプレーをして、アタックをしても、相手にターンオーバーされて、スクラムからキックパスで外を狙われたシーンがあったと思います。自分たちのポジショニングがよくなくて、うまく対応できませんでした」

──前半は風下でした。ゲームプランに誤算や遂行できなかったことはありますか?

「風下のときにどれだけ得点できるかが大事です。前半、自分たちのゲームプランがあまり遂行できなかったこともありました。二つ目のトライを取れていたら、変わっていたかもしれません。最初の守備は全体的にできていたと思いますが、相手に簡単なトライを取られて、自分たちはトライを取れなかった。その2点が違う結果になっていたら、まったく違う前半になっていたかと思います。ペナルティ数は相手が20、われわれが3でした。それだけ差が出ることはなかなかないので、自分たちが有効に使わなければいけませんでした。『ペナルティをどうやって得点に変えるか』についてレビューして、改善しなければいけないと思います」

──今週までの準備をかえりみて、今日、力が出せなかった理由はどんなところにあると思いますか?

「自分たちのリズムを作れなかったところだと思います。理由としては、何人か個人のミスが目立ったためです。特に相手がこれだけダイレクトにプレッシャーを掛けてくるチームだと、そういうミスが多くなって、自分たちがやりたいことがどんどんできなくなってしまうので、個人のミスからスタートして、そこからどんどん力が出せなくなっていったのかなと思います。先週(第8節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦)は65%くらいボールを支配していました。それができていれば、やりたいことがどんどんできると思いますが、そこが今日はできなかった。自分たちのリズムにできなかったし、自分たちはそれを改善しようとしている途中にいるチームではあるので、もちろん今日の結果について自分は満足していませんが、こういうところからいろいろ学べることはあると思います。チームとして学んで次に進むことが大事だと思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「ブレイクダウンで受けに回ってしまいました。ボールキャリーなどのレベルがわれわれのスタンダードではなく、一つ目の仕事をうまくできなかったことによって、われわれのアタックができませんでした。あとは22mラインに入って、チャンスが生まれたときに、個人のミスがあったりして、しっかり点数を取って帰ることができなかったというのも、苦しい展開になった要因かなと思います」

──今日のテーマがもしあれば教えてください。あるとすれば、それができなかった要因はなんですか?

「先週も会見の際に言ったのですが、ダイレクトにプレー(あまりパスで展開せずに相手に当たっていくようなプレー)しているときには、われわれはいいラグビーができているので、そこを継続してやろうとしました。コベルコ神戸スティーラーズがブレイクダウンでプレッシャーを掛けてくることは分かっていたので、そこに対して受けずにやっていこうという話はしていたのですが、実際にそれをグラウンドで遂行することができませんでした」

──フィジカルが強いチームとの3連戦の疲労があったのでしょうか?

「疲労感というのは言い訳になると思いますので。グラウンドに立つ以上は、選手たちはしっかり、一つひとつの勝負に勝たなければいけないと思います。そういったところで今日は負けたのかなと思います」

──自分たちよりも順位が上のチームを相手にしていく上で、後半戦から大事にしていきたいところはありますか?

「毎試合、一貫性をもって自分たちのスタンダードを出し続けるのがすごく大切だと思います。まずは準備の段階でしっかり一貫性をもっていい準備をしていく。次に、試合に出る選手が一人ひとり一貫性をもって遂行していくことが、何より大事だと思います。相手のことは多少、気にしますが、まずは自分たちがしっかりスタンダードを出すということをこれからも意識していきたいと思います」

──前半の最初と前半の最後と後半の入り、ショットを狙える位置でのペナルティは、いずれもタッチを狙っていったと思います。それはどういった判断でしたか?また、風下スタートを選んだ狙いは何かありましたか?

「ペナルティからタッチにいったところは、前半からモールに関しては相手にプレッシャーを掛けることができていたので、そこでもっとプレッシャーを掛けていこうという意図でタッチに蹴りました。風下を選んだ理由は、さきほどグレン・ディレーニー ヘッドコーチも言ったとおり、前半の風下でどれだけ相手にプレッシャーを掛けてスコアを取れるかが大事だったからです。(2月24日の第7節・)静岡ブルーレヴズ戦なども、風下からスタートして、前半同点で折り返して、後半に引き離すことができました。また、われわれはハードワークができるチームだと自信をもっていたので、『後半に勝負ができる』といった意図で風下を選びました」

──後半、風が止んでしまったり、逆に吹いたりと、誤算になった部分もありましたか?

「そこはコントロールできないところなので、仕方がないですが、これもいい学びとして、次に選択するときには考えたいと思います(ここでグレン・ディレーニー ヘッドコーチも『変わってしまいましたね。初めて見ました』とコメント)」

──今日の試合で想定外だった部分があったら教えてください。それとも、ブレイクダウンで相手のプレッシャーに負けたことにつきますか?

「想定外はチームとしてはあまりありませんでした。ブレイクダウンのところで、われわれのアタック中に相手が何度もペナルティを犯してきて、そこでフラストレーションが溜まったところがあったのかなと思いますし、相手がペナルティで圧倒しているところに立ち向かっていけませんでした。相手の勢いを受けてしまったところはよくなかったところです」

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(右)、ブロディ・レタリック共同キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「勝ち点5を取るという大事なところは達成できたと思います。ビジターの試合で、三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)さんは今季、格上の相手にも勝ち切っているチームなので、そこの部分で上回るということが自分たちにとっても大事な部分でした。ペナルティのカウントはおそらく20で、相模原DBは3だったと思います。来週の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦(以下、埼玉WK)はそこの部分が同じような形になってはダメだと思います。レフリーの方々とは、しっかりと正しいプロセスで話していきますが、正直、今日の試合に関しては、片方のチームだけレフリングされているという認識を自分の中では受けました。そこの部分で、自分たちの解釈が間違っているのかどうかをクリアしなければいけないと思っています」

──前半、トライを取るところの実行力が高かったと思います。テーマや練習した部分で出たところがあれば教えてください。

「準備してきたことをしっかり出せた部分が多かった試合だと思います。この試合に向けては、『キックにしっかり対応して、相手のディフェンスを自分たちがコントロールしていこう』ということを話していて、そこはできたと思います。自分たちは成長している途中の段階なので、今回で4連勝までもっていけたことはよかったと思います。来週に向かっても、自分たちは成長していかなければいけないと思っています。来週は埼玉WKさんとの試合です。このリーグワンの中でいま一番のチームが相手なので、自分たちにとってしっかりチャレンジしていかなければいけない試合だと思っています」

──この4連勝の中では、10番のブリン・ガットランド選手がチームを前に出し、彼自身も前に出る場面が多かったように思います。彼の活躍についてどのようにとらえていますか?

「素晴らしいパフォーマンスを見せてくれていると思います。ブリン(・ガットランド)に関しては、ディフェンス部分でも多く体を張ってくれていますし、フィールドでも周りの選手をオーガナイズしてリードしてくれています。前に仕掛けなければいけないところに関しては、しっかりとブリン(・ガットランド)が指示して、味方が正しい位置でプレーするためのコントロールもやってくれているので、素晴らしいパフォーマンスだと思います。ただ、彼以外にもいいパフォーマンスを見せている選手はたくさんいるので、そのまま成長し続けてもらえるようにがんばってもらいたいと思っています」

──日和佐篤選手が先発するようになってから、非常にゲームが落ち着いているように見えます。日和佐選手をスタートにした判断の理由と彼への評価をお願いします。

「37歳近い選手ではありますが、正直、フィールド上では17歳くらいの元気さを出してくれていると思います。素晴らしい人間ですし、競争意識も高く、取り組む姿勢のレベルが非常に高いです。ディフェンスに関しても、勇気あるプレーを見せてくれています。先ほど、ブリン(・ガットランド)のところで言ったように、いいパフォーマンスを見せてくれている選手はたくさんいます。日和佐選手も間違いなくそのうちの一人です」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック共同キャプテン

「正直、興味深い試合だったと思います。自分たちの規律の部分で、ペナルティがすごく多かった試合だと思います。ボールを持っているときには、しっかり丁寧にプレーすることができて、チャンスを仕留め切ることができましたが、あれだけペナルティを与えてしまうと、フェーズを重ねて自分たちのラグビーをやるのが難しい状況になってしまうと思います」

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