NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第9節
2024年3月24日(日)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 42-26 豊田自動織機シャトルズ愛知
D2史上最多の大観衆が酔いしれた
名手の妙技と白熱の80分
5対7と豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)のリードで迎えた前半11分、猛然とプレッシャーをしかけたニック・フィップスがフレディー・バーンズのキックを食い止め、ボールを奪ってからそのままトライを決めた。すぐさま逆転に成功したNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)が、相手に傾きかけていた流れを手繰り寄せた。
第2節の前回対戦では、GR東葛は22対3と一時は19点差をつけながらS愛知に逆転負けを喫していた。フレディー・バーンズのゲームコントロールと巧みなキックに翻ろうされたことが敗因の一つでもあった。
しかもニック・フィップスは、ロンドン・アイリッシュ時代にバースやレスター・タイガースでプレーしていたフレディー・バーンズと何度も対戦してきた経験がある。だからこそ、「彼がいかに良い選手で、いかに良い10番かということはよく理解していました」と、この一戦に臨むにあたりS愛知のキープレーヤーへの警戒心を強めていた。
「彼は声が大きく、声を出してチームを動かすことができます。そしてスペースを見つけて、キックを使って試合の状況をひっくり返せる選手です。どれだけ彼に与える時間を短くして良いキックを出させないかに集中していました」
後半30分には、逆転勝利へ向けて猛攻を強めるS愛知に対し、今度はニック・フィップスのジャッカルが炸裂する。GR東葛が数的不利で戦う苦しい時間帯でボールを奪い取ったビッグプレーだった。
オーストラリア代表として72キャップを誇り、ラグビーワールドカップ2015イングランド大会準優勝メンバーの一人。ディビジョン2で2位のGR東葛と3位のS愛知による上位直接対決にて、数々の修羅場をくぐり抜けてきたニック・フィップスの技術と経験が見事に発揮された。
この日の柏の葉公園総合競技場には、ジャパンラグビー リーグワンにおけるD2の史上最多動員数を更新する8,682人の観客が詰めかけ、スタンドは緑一色に染まっていた。一つひとつのプレーに歓声が上がり、どよめき、大きな拍手が沸き起こる。ニック・フィップスが随所に見せたワールドクラスのプレーもさることながら、両チーム合わせて10トライが生まれた白熱の80分間を目の当たりにして、大勢の観客はきっとラグビーの面白さを堪能したのではないだろうか。
(鈴木潤)
NECグリーンロケッツ東葛
NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ
「今日の試合に向けて、丹念に準備をしてきました。私たちにとって豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)は今季唯一負けたチームで、22対3から逆転された第2節の悔しい敗戦があったので、今日はファンの前でリベンジできたことに喜びを感じています。いまは多くの選手がけがをして、先発の第一候補の選手が離脱している中、しっかりと第二候補の選手が良い活躍を見せてくれました。チームの質を高めて、選手たちがレベルアップした姿を見せてくれたので、チームは正しい方向へ進んでいると思います」
──第2節の敗戦の教訓は、どのような部分に生かされたのでしょうか?
「第2節で対戦したときは相手のフレディー・バーンズがとても良いプレーをして、こちらが苦労することが多々ありました。それを踏まえて、ニック・フィップスが(フレディー・)バーンズにプレッシャーを掛けました。それによってトライも取れましたし、(フレディー・)バーンズも前半から自分にプレッシャーが掛かっていることを感じながらプレーしていたと思います。また、第2節ではスクラムでも圧倒されたのですが、そこも時間をかけて改善し、今日のスクラムは良い形でできていたと思います。時間とエナジーをかけた準備が、今日の結果につながったと思います。後半途中で(ミティエリ・ツイナカウヴァドラに)イエローカードが出ましたが、その状況の中で押し込まれずに戦えたことも良かったと思います。ただ、ラインアウトではプレッシャーを受けていた部分もあったので、そこはレビューをしなければいけないと思います」
NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン
「本当に良い試合でした。さっきGPSを見たら8km以上走っていて、めっちゃ疲れました。ウェイン(・ピヴァックヘッドコーチ)が言ったように、第2節でS愛知に負けて、そこからこの試合をずっと楽しみにしていました。前回負けたときはフレディー・バーンズのキックにやられました。彼はとても上手な選手なので、今週は彼への対策にフォーカスして、バックフィールドのカバーや、どうやってボールを動かすかなどの練習をしてきました。完璧ではなかったですけど、6、7割ぐらいはやりたいことができて勝てたので良かったです。今日の結果で順位決定戦(の少なくとも1試合)をまたホストスタジアムでできるので、良かったと思います」
豊田自動織機シャトルズ愛知
豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ
「本日は本当に素晴らしい環境の中、たくさんの観客のみなさんの前で試合をさせていただいたことにチームを代表してお礼申し上げます。ありがとうございました。そして、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)さんのファンの方々、試合前のこの会場の雰囲気を見て、GR東葛さんがこの地域に愛されている素晴らしいクラブだということが分かり、われわれもこういうクラブ作りを目指していかなければいけないと感じました。GR東葛さん、勝ち点を取られたということで、おめでとうございます。
結果につきましては非常に残念であったかなと思います。前半、イグジットのところでシンプルにプレーできず、少しもたつき、リズムを壊したことが苦しんだ原因になったと思います。もちろんGR東葛さんのプレッシャーもあったのですが、われわれ自身がスマートにプレーするべきところでそれができなかった、そこが敗因だと受け止めています」
──テンポの良い攻撃にもっていけず、ボールを持つ時間も短かったですが、アタック面を振り返っていただけますか?
「接点での圧力はGR東葛さんのプレッシャーが素晴らしかったです。あとはセットピースでプレッシャーを受けたシーンもあったと思います。ただ、数少ないチャンスの中で、ボールを持ち続けることができればスコアできているシチュエーションもありました。思いどおりにいかなかった要因はイグジットのテリトリーのところでスマートに戦えなかったことで、それによって自分たちが難しい状況に追い込まれたと思います」
豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームス・ガスケル共同キャプテン
「この試合に関しては『残念』の一言です。今週、私たちはGR東葛との試合への準備もできていました。また今日の試合のレビューをすることになりますが、自分たちが思うようにプレーできなかったことに関してはとても残念に思います。GR東葛のバックスはタレントがそろっており、正直なところ少しリスペクトをし過ぎて、彼らにやりたいようにプレーさせてしまいました。オフロードパスを簡単につながれてしまったことも、敗因の一つになったと思います。来週は日本製鉄釜石シーウェイブスとの試合がありますので、しっかり勝って、順位決定戦までの試合を良い形で締めくくれたらと思います」