NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 1〜3位 順位決定戦 第2節
2024年4月28日(日)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 vs 豊田自動織機シャトルズ愛知
NECグリーンロケッツ東葛(D2)
残り4試合、GR東葛の思いはただ一つ。
「昇格してフミさんを送り出したい」
シーズンは残り4試合。だが、ディビジョン1復帰へ向けて、ここから戦いはさらに熱く、激しさを増す。NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)にとって、順位決定戦の初戦の相手は豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)だ。
勝利が絶対に必要な順位決定戦において、チームの全員が抱く勝利への欲求をさらにかき立てる出来事が今週にあった。4月24日、田中史朗が今季限りで現役から退くことを発表したのである。
GR東葛のチーム内でも田中の影響力は非常に強い。今季2年目の丸尾祐資は、ポジションも田中と同じスクラムハーフとあって、技術、戦術、メンタルなど、練習を通じてあらゆる面を教わってきた。
「フミさん(田中)からは『9番と10番がゲームを作っていくんだという意識をもっと持て。まだ動かされている感じがあるから、自分がやりやすいように周りに指示を出して、自信を持ってやりなさい』と言われました」(丸尾)
田中から教えられたことを意識しながら練習に取り組んだ丸尾は、昨季の出場機会ゼロという立場から大きく躍進した。今季はジャパンラグビー リーグワンでデビューを飾っただけでなく、初めて先発で起用された第7節・日本製鉄釜石シーウェイブス戦では初トライも決めており、確実に飛躍を遂げた1年になっている。
小幡将己もまた、田中の教えによって力を伸ばした選手の一人だ。
「フミさんはウエイトトレーニングでも、グラウンドの練習でも、絶対に手を抜かない。『日本を代表する選手というのは、どんな練習でも絶対に手を抜かない』と、フミさんの姿を見て学びました」
田中の姿を見て、小幡はより一層練習に熱を込めて打ち込んだ。
小幡の特長の一つに、グラウンド内で誰よりも声を張り上げる点がある。それに関して問うと、「僕はタレント性のある選手ではないので、声を出すことでチームに貢献しようと思っています。フミさんの声は試合でもよくとおる。そういう部分も学ばせてもらいました」と、田中から影響を受けていることを話してくれた。
S愛知とのリーグ戦での対戦成績は1勝1敗。実力が拮抗する難敵には違いないが、GR東葛は負けるわけにはいかない。
“フミさんのために、絶対に勝ちたい。D1に昇格して、フミさんを送り出したい”
丸尾と小幡は田中から引退の話を聞かされたとき、そう意を決したという。もちろん彼ら二人だけではない。GR東葛の全選手がその思いを胸に抱き、4月28日、S愛知との決戦に臨む。
(鈴木潤)
豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)
手段と目的を間違えずに勝利を。
二人のベテランが先頭に立ち発信する
ディビジョン2 1~3位順位決定戦第1節で浦安D-Rocksと対戦し、20対57で敗れた豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)。今節はNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)とのビジターゲームに臨む。
「勝てる手ごたえを持って準備していた」と徳野洋一ヘッドコーチが言うように、前節に臨む前のチームにはポジティブな雰囲気があった。しかし、結果は大敗。その原因を「前半はボールを保持して、テリトリーも奪えていたが、それができたことでチームが満足してしまっていた」と徳野ヘッドコーチは分析する。
得点を取って勝つという目的と、ボールを保持してテリトリーを奪うという手段が入れ替わってしまった。その反省を生かして今節は、“ギアアップ”をテーマとして、有利な状況だからこそ積極的にプレッシャーを掛けにいく姿勢を練習から強調している。
そのためのキーになるのは、リーグ戦第7節以来の復帰を果たす藤原恵太と、前節フル出場した牧野内翔馬の二人。現在、藤原も牧野内も29歳と、若い選手が多いS愛知ではベテランの部類に入る。
「うまくいかない時間帯で、チームを一つにまとめないといけない」と話す藤原は、スクラムハーフとしてチームの舵取りをする立場にあることから、「自分自身のプレーに責任をもって、チームにメッセージを発信していきたい」とコミュニケーション面やゲームコントロール面で今節において担う役割は大きい。
「自分のできることを全員がしっかりとやれば、結果はついてくる」とは牧野内の言葉。ここまでレギュラーシーズン11試合中8試合に出場し、ラインアウトのコーラーも務めることがある。「昨シーズンにS愛知へ移籍してきて、システム面で慣れなければいけないことが多くあった」と言うが、現在は「目をつぶっても分かる」と今では言えるほど適応してみせた。
「今まではガムシャラにやってきたけど、30歳になる年を迎えて、周りを見ないといけない立場になった。チームからもっと信頼されるように成長していきたい」(牧野内)。
相手はタレントぞろいのGR東葛。劣勢になる時間は必ずあるだろう。しかし、この二人をはじめとして、チームには明確なメッセージを送り出せる選手たちがいる。自信を失うことなく、チャレンジャーとして勝ちにいきたい。
(齋藤弦)