2025.04.20NTTリーグワン2024-25 D2 第12節レポート(GR東葛 15-8 S愛知)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第12節
2025年4月19日(土)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 15-8 豊田自動織機シャトルズ愛知

急きょの出場ながら抜群の存在感。ビハインドとアクシデントがその闘志に火を付けた

急なメンバー入りにもかかわらず、高いパフォーマンスを示したNECグリーンロケッツ東葛の大和田立選手

NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)にとっては、一つ間違えれば0対42で敗れた第4節の二の舞になりかねない試合だった。

先発メンバーに名を連ねていた亀井亮依が直前のアクシデントでメンバーから外れ、試合自体も豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)に前半4分で先制トライを奪われた。しかも前半21分には山極大貴がHIA(脳振盪の確認)で一時退出となり(その後、前半33分に交替)、さらにその2分後にもジェフ・クリッジが負傷で交替を余儀なくされた。

白いヘッドキャップを付ける大和田立が投入されたのは、そのクリッジと交替する前半23分のことだった。

「試合前日のジャージープレゼンテーションまで、僕がメンバーに入っていることを知らなくて、そこで『20番、大和田』と言われて、『え!選ばれたのか?』という感じでした」(大和田)

メンバー外から繰り上がりでのリザーブメンバー入り。なおかつ今季初出場にして、クリッジのけがというアクシデントもあって、前半23分からの出場になった。その時点でのスコアは0対8、S愛知にリードを許すばかりか、GR東葛は自陣から出られない苦しい展開が続いていた。

しかし、こうしたシチュエーションは大和田の闘志に火を付けた。

「負けん気が強い、じゃないですけど、こういう状況だから燃えました。前回対戦は0対42で負けていましたし、この試合も0対8で負けていた。ここはやるしかないと思ってプレーしました」

この試合大和田は直接スコアを記録したわけではなかった。それでもブレイクダウンでの攻防や、果敢に攻撃の起点を作るプレーで彼が示した存在感は抜群と言うほかない。

圧巻だったのは後半23分から24分に掛けての連続プレーだろう。

吉岡義喜からパスを受けた大和田は中央へ突進。相手のタックルを浴びて倒されたものの、S愛知のオフサイドを誘発した。アドバンテージでプレーが継続されると、次のフェーズでも大和田はアタックに加勢し、5mラインを越えてトライラインに迫った。まるで「この試合に勝つ!」という大和田の闘志があふれ出ているような熱いプレーだった。

そして80分を告げるホーンが鳴り響いたとき、同点を狙うS愛知の最後の攻撃を大和田が食い止め、試合を終わらせる。

「ラインアウトのミスが多くて、相手の攻撃のフェーズが続いてキツかったですけど、みんなで我慢して守り切れたと思います」と、激闘を終えた大和田は安堵の表情で試合を振り返った。

また、亀井に代わって急きょ7番で出場したヴィリアミ・ルトゥア・アホフォノや、大和田と同じく直前にリザーブメンバーに入りながら、キャプテンのマルティノ・ネマニの負傷交代で出場し奮闘した小幡将己のことも忘れてはならない。

15対8という僅差での決着。首位攻防戦の名にふさわしい、見ごたえのある80分間だった。

(鈴木潤)

NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛のウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ(右)、アセリ ・マシヴォウ選手

NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ

「まずはここにアセリ(・マシヴォウ)が座っているということが、本日の試合がタフだったということが表されていると思っています。キャプテンのティノ(マリティノ・ネマニ)がけがで、バイスキャプテンの山極(大貴)も頭部の負傷があったため、最終的にアセリがキャプテンシーをとってくれたことに感謝したいと思います。

今日の試合は長い間楽しみにしていました。(第4節で)0対42で豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)に負けて、恥ずかしい気持ちにさせられたというのが前回の試合でした。その0対42の試合に関しては、今まであまり蒸し返さず、今週の準備の1週間に入って再度話をしました。本日、コンディションは非常に良かったんですが、華麗なラグビーを見せられる場でないということは分かっていましたし、不運なことにけが人が何人か出てしまいました。けが人については今日これからチェックをします。ただ、勝利できて、4ポイントを取ることができたことは非常に満足しています。トップ2に入ることを目標にしていますが、いまのところは3チームが上位を争っている状況なので、今日の試合が非常に大事だとは分かっていました。本日、試合の前には『ギャングのようなメンタリティーをもってほしい』と伝えました。80分間をとおして、『すべてのために戦う。S愛知に対してディフェンスで、ものすごいエフォート(努力)をしてほしい』という話をしました。前半のテリトリーが19%で、やっと敵陣に入れたという前半でした。テリトリーとポゼッションで不利な状況でも耐え抜いたディフェンスに関しては良かったと思います。

そして何名か、この場で名前を出したい選手がいます。今週の練習でも何人かけが人が出てしまいましたが、ヴィリアミ・ルトゥア・アホフォノは本来リザーブから出場の予定でしたが、80分間やり切ってくれて、かつ非常に良いパフォーマンスをして、ジェフ・クリッジ、山極のけがにも対応してくれたと思います。大和田立は昨日のキャプテンズランで試合に出ることが決定しまして、今シーズンまだ出場していなかったんですが、今日はかなり早い段階で出ることになり、それでも非常に良いパフーマンスを見せてくれました。コーチ側としては、けががありながら、しかも自分の本来のポジションではないところでプレーしなければいけない状況から、選手がガッツを保った状況で勝ち抜いてくれたことに満足しています」

──前半はキーガン・ファリア選手のトライ以外、ほとんどチャンスがなかったです。ハーフタイムにはどのような修正をして後半に臨んだのでしょうか。

「ポジティブなアプローチをしました。S愛知があれだけテリトリーを支配してポゼッションも高かったが、1トライしかされていないという話をして、『恐れる必要はない、相手にはまだ痛め付けられていない』と伝えました。ウチの5mラインに来てようやく脅威を感じましたが、そこまではディフェンスで止めることができていました。前半は多くのミスがありましたが、そのミスの話はせずに、ディフェンスが良かったことを褒めました。そのあと、フォワード、バックスに分かれて、ユニットで整理しなければいけない事柄を話しました」

NECグリーンロケッツ東葛
アセリ・マシヴォウ選手

「ウェイン(・ピヴァック ヘッドコーチ)が言ったように、今週は前回のS愛知戦のことを話して、『ああいう試合はしたくなかったよね』という話をしました。本日プレーした選手たちは、その話もあったのでチームのために絶対に勝つという気持ちがあったと思います。今週の練習ではメンバー変更もありましたが、それでもチーム一丸となって戦い抜けたことをうれしく思いますし、選手のことを誇りに思っています」

──試合のラスト15分、自陣のトライラインで守り切った場面もありました。あのときのチームの雰囲気はいかがだったでしょうか。

「常にトライラインディフェンスのトレーニングはしていて、そういう機会が訪れると、みんなトライラインディフェンスが好きなので、頑張ろうという気持ちになります。お互いのためにプレーをして、選手の間には誰もとおさないという意図でプレーをしていました」

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(左)、ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「毎年思うのですが、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)さんが地域に根付いていて、たくさんの観客のみなさんの前で試合ができたことを、チームを代表して感謝申し上げます。そしてGR東葛は勝ち点4を獲得されたということでおめでとうございますという言葉を送りたいです。試合としては、結果は非常に残念ですが、われわれとしてはイエローカードを3枚出した中で勝ち点1を獲得できたことや、暑い中、最後まで頑張ってくれた選手たちを称えたいと思います。本日はありがとうございました」

──前半は完全に試合をコントロールして、前半25分まではGR東葛に何もさせていなかったと思います。後半にその流れを継続できなかった原因をどのように分析されていますか。

「前半は40分をとおして完全にコントロールできたと思っています。ただ、それが22mの中に侵入してから、なかなかスコアに変えられなかった。そこで少し手こずってしまっている間に、自分たち自身でリズムを壊してしまった。その中で少し焦りがあるのか、簡単なエラーが起こったり、不用意なペナルティが続いたりしてしまったので、そういう仕留め切る部分で仕留め切れなかったことが、後半に流れを失った原因だと思います」

──敗れたとはいえ首位という状況は変わりません。リーグ戦の残り2試合はどのように臨むつもりでしょうか。

「ここまで順位が1位で来ていたということと、この試合を終えても1位でいるということは非常に重要なことでもあるんですが、われわれが最終的に見据えているのはディビジョン1に上がること。そこにつなげていくということでは、今日の試合もそうですし、次の日野レッドドルフィンズ戦、最終節の花園近鉄ライナーズ戦、そこで自分たちがどれだけチャレンジをして成長するかということが非常に大事だと思います。今日の内容はわれわれにとって、最後の大きな山頂にアタックする上では学びを得たと思っているので、これは一貫して変わらず、今日も、次も、最終戦も自分たちがチャレンジして成長していく試合にするべきだと思っています」

豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

「試合を振り返るとエラーやイエローカードが3枚出るなどがありましたが、そこをしっかりと直していきたいと思います」

──勝ち点5を取ればD2の1位が決まる状況でしたが、それによって気持ちが入り過ぎて、エキサイトし過ぎたという面はありましたか。

「エキサイトしたというよりは、GR東葛さんがすごく良い試合をしたと思います。今回負けてしまったところから学びを得て、次の試合に切り替えて、立ち向かっていくことが大事だと思います」

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