NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第13節 カンファレンスB
2024年4月12日(金)19:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 vs 埼玉パナソニックワイルドナイツ
リコーブラックラムズ東京(D1 カンファレンスB)
幾度となくあった苦労を越えて。
『先生』の前で魂のスクラムを見せる
リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)が今季3勝目を目指し戦うディビジョン1第13節の相手は、埼玉パナソニックワイルドナイツ(以降、埼玉WK)。BR東京にとって今季唯一となるナイターでのホストゲームは、4月12日(金)に秩父宮ラグビー場で19時にキックオフを迎える。
3戦続けてのメンバー入りを果たしたのは、入団8年目の大西将史。
大学3年次まではロック、ナンバーエイトなどのバックファイブ(4番~8番の選手の総称)が主戦場だった大西にとって、フッカー転向時の『先生』が埼玉WKの坂手淳史だった。
「スクラムの組み方一つにしても分かりませんでした。実際にスクラムを組みながら、どこをどう改善したらいいのかを教えてくれたのが、帝京大学で1学年先輩の坂手さん。ラインアウトのスローイングも、『フォロースルーを意識するように』というアドバイスでした」と大西は当時を振り返る。
近年、フッカーには有望な若手選手が多く存在する。BR東京のキャプテン・武井日向も、そのうちの一人だ。
「年下ですが、人としてもラグビー選手としても尊敬しています。あれだけハードワークできる選手って、日本に何人いるんやろ?と思います」
先発するハードワーカーから引き継ぐ大切なポジション。「キャプテンの背中についていけるように」と、気持ちを込めピッチに立つ。
BR東京入団後5年目までは、出場機会をほとんど得ることができなかった大西。セットピースに苦戦し、ラグビーを嫌いになりそうになったことも、決して一度や二度ではない。
それでも腐らず、親身になってくれるコーチ陣とともにラグビーと向き合い続けてきたからこそ、いまつかむ真黒のジャージー。
もうすぐ30歳。ラグビー歴17年の男が、魂のスクラムを見せる。
(原田友莉子)
埼玉パナソニックワイルドナイツ(D1 カンファレンスB)
現役でプレーできるのは最大であと6試合。
内田啓介はキックオフのときを静かに待つ
埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)が、4月12日午後7時に秩父宮ラグビー場でキックオフとなるディビジョン1第13節のビジターゲームで、リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)と対戦する。開幕12連勝の首位・埼玉WKは、リーグ戦全勝へ向けて今節も全力を尽くす。
一戦一戦が、ラグビー人生の集大成だ。内田啓介が、BR東京戦へ向けて最善の準備を続けている。
内田が突然の現役引退発表をしたのは第3節のBR東京戦後だった。途中出場でジャパンラグビー トップリーグ・ジャパンラグビー リーグワン通算100キャップを達成。試合後には記念セレモニーが開かれたが、そこで今季限りでジャージーを脱ぐことをファン、そして仲間たちに伝えた。
内田は「本当は、昨季限りで引退しようと思っていましたが、プレーオフトーナメント決勝戦で負けてしまって、そのままでは終われないと思いました」と明かしていた。埼玉WKは開幕前に堀江翔太が今季限りでの引退を発表していただけに、また一人、功労者がフィールドを離れることになった。
今季は、スクラムハーフの先発を小山大輝に譲る試合も多いが、内田は途中出場でも与えられたタスクをきっちりとこなしている。前節・三菱重工相模原ダイナボアーズ戦でも後半16分から途中出場すると、ゲームメーカーとしてチームの勝利に貢献した。
リーグ戦は残り4試合。内田の好パフォーマンスとは裏腹にラストゲームは近づく。
「プレーオフトーナメントを含めると残されたゲームは最大で6試合になりました。(今季限りでの引退を)発表させてもらってからも、気持ち的には同じ。ラグビーを楽しむということは変わっていないし、一瞬一瞬を大切にしたい」
内田のプレー、コンディションを見ている限り、まだまだ陰りは感じられない。
「自分のパフォーマンスと引退は『=(イコール)』ではありません。パフォーマンスが落ちたから引退を決めたのではなく、自分の気持ちやタイミングの問題が大きかった。(現役を)続けたい自分はいるが、どこかで区切りをつけなければいけないのかなと思います。考えればいろいろあるけれど、いまは純粋にラグビーを楽しみたい。それだけです」
内田は今節のビジターゲームにも控えのメンバーに入った。一つひとつのプレーが、内田にとっては貴重な時間となる。「どんなに頑張っても、時間は流れていく。毎日練習しても1日が終わっていく。一瞬一瞬が無駄にできない。ファンの方々に応援してもらえる時間を大事にして、最高の結果で締めくくりたい」
内田は、静かにキックオフを待っている。
(伊藤寿学)