NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第5節 カンファレンスA
2023年1月21日(土) 13:00 駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 17-38 埼玉パナソニックワイルドナイツ
初キャップを刻んだ長田智希。緊張をはねのけ、長年のライバル・福井翔大との共演を楽しむ
晴れ渡る冬空の下、リコーブラックラムズ東京が迎えたホストゲーム開幕戦。『世田谷デー』と題し、昨季王者・埼玉パナソニックワイルドナイツと相対した。試合は終始、埼玉パナソニックワイルドナイツがスコアで上回る。一度もポイントリーダーの座を明け渡すことなく、17対38で勝利を収めた。
この試合がリーグワン初出場となった選手がいる。埼玉パナソニックワイルドナイツの12番・長田智希。東海大学付属大阪仰星高校時代にキャプテンとして全国優勝を果たしたあと、早稲田大学でも主将を務め、現在大卒1年目。各国の代表選手がひしめく激戦区・センターで、チャンスを手にした。
終始落ち着いたプレーを見せたが、実は「今までで一番緊張していた」と長田。「メンバー発表のときがすごく緊張して。試合中も硬さが抜けなかった」と明かし、「もっとできたという思い。次の試合を大事にしたい」と自己評価は50点に留めた。それでも、3トライ目のアシストを決めるなど十分なデビュー戦を飾り、高校時代から年代別の日本代表で主将・副主将としてともに切磋琢磨してきた福井翔大もナンバーエイト先発で共演。久しぶりに同じジャージーを着て戦った公式戦を「多分、福井のほうがうれしいと思います」と振り返り、微笑んだ。
一方、敗れたリコーブラックラムズ東京。20点のビハインドで折り返したハーフタイム、ゲームキャプテンの松橋周平は「勝手なプレーをせず、やるべきことを変えずにやろう」とあらためて仲間に伝えた。しかしペナルティ数は今季最多となる18。「多すぎる。一人ひとりの責任として、もう一度イチから作り直していきたい」と気を引き締め直した。
もちろん好材料もある。戦列から離れている武井日向キャプテンに代わり、2戦連続で先発フッカーを務めた大西将史は言った。「今季、セットピースに成長を感じています」。トイメンには帝京大学の1年先輩・坂手淳史がおり、またフロントローには日本代表がそろった埼玉ワイルドナイツ。そんな相手からスクラムでペナルティを奪えたこと、モールで押し負けなかったことは、間違いなく自信になった。「日向が居ないぶん、フォワード8人が同じ方向を向けるようリーダーシップをとっていきたい」と前を向く。
来週からは交流戦が始まる。「成長段階なことは間違いない。まずは今日の反省を絶対次に残さないこと。必ず自分たちのラグビーをやり続けます」と、松橋は気持ちを切り替えていた。
(原田友莉子)
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ
「選手たちのことを誇りに思っています。ハーフタイムを3対23で折り返し、そこからどういうふうにゲームが展開していってもおかしくないところ、しっかりファイトバックしてくれました。相手はやっぱりチャンピオンチームで、それには理由があります。やはり良いチームですね。代表選手もたくさんいますし、ワールドクラスの選手もたくさんいます。なので、われわれはチームとして、80分間良いパフォーマンスをし続けないといけない。
今日、僕たちは65分ぐらい良くできたけど、80分ではありませんでした。ハーフタイムに入る10分前までは3対9。そこから3対23という点差になりましたが、やはりそこの10分が結構効いたなと思います。ハーフタイム後にもそういう時間帯はありましたが、チームとしてやはり改善していかなければいけないところがあります。
埼玉パナソニックワイルドナイツのようなクオリティーの高いチームを相手にボールをターンオーバーされてしまうと、やはりそこからダメージを与えられるのかな、と。規律が守れなくてフィールドポジションを与えてしまえば、相手はやはりそこを逃しません。しかしチームとしては、来週に向けて良いところもありました」
──前半に奪われた二つのトライはプレッシャーを掛けた中でのオープンサイドへのキックパスでした。どうすれば防げたと思いますか?
「キックチェイスが前半25~30分ぐらいまでは良かったと思うのですが、そこから少しタイトになってしまった。あのような状況下で、ウイングがいつもより1個内側に寄っているような感じでした。先ほどの話に戻るのですが、開始から30分のプランはうまくいっていたんです。風が強い中で3対9で進めていて、キック自体も完璧でした。だけど1分スイッチを切らしてしまったところでやられてしまった。やはりインテリジェンスが高くスキルもあるチームを相手にすると、1回のディテールミスであのように突かれてしまうのかな、と思います。
80分間、切れてはいけないですね。良いレッスン、良い学びだったと思います。われわれはまだ若いチームだと思うので、自分たちが目指すところを考えると、『まだやらないといけないね』ということがやはり見えたかなと思います」
リコーブラックラムズ東京
松橋周平ゲームキャプテン
「ビジターゲーム2連戦で連勝できて、チームにも自信がつき、ホームで埼玉パナソニックワイルドナイツを相手にしっかり勝ちたい、勝てるという自信がすごくあった中で挑んだ試合でした。前半は風下。3対9まではすごく良かったと思います。そこで折り返せていたらきっと気持ちにも余裕があったと思うのですが、最後残り10分で相手に取られてしまいました。それでも後半は風上なので全然問題なく行こうと思っていたんですけど、やっぱり自分たちのミス、一つのラインアウトのチャンスでミスをして相手に一気に攻められた。
ラグビーには流れがあると思います。自分たちのターンだったり、相手のターンだったり。その自分たちのターンになりかけたときに、自分たちでミスをして、相手のターンに一気に戻してしまう。その繰り返しをひたすらしていた気がします。やっぱり埼玉パナソニックワイルドナイツ相手には一つひとつのプレー精度をもっと上げないといけないですし、80分間やることをやらないといけないですね。東芝ブレイブルーパス東京や静岡ブルーレヴズが埼玉パナソニックワイルドナイツを相手に良い試合していたのを見ると、そこの部分の精度がすごく高かったなと思います。
まだまだ試合は続きます。今日の試合は悪いところもありましたが良いところもありました。どうやったら僕たちのラグビーができるか。それは分かっているので、次、それをしっかりやるだけ。しっかり自分たちで修正して、常に自分たちにフォーカスして、リコーブラックラムズ東京のラグビーをできるようにやっていきたいなと思います」
──特に敵陣22mの内側に入ったときのラインアウトが残念でした。相手の対策なのか、自分たちの問題なのでしょうか?
「シンプルに自分たちのミスです。コールは正しいですし、そういう準備もしてきているんですけど、ただ自分たちのサインミスだったり、ナレッジ(知識)の部分の足りなさだったり。多少のメンバー変更もあって、責任を果たせなかったのがもう本当にそのままです。ただ、見てもらったら分かるとおり、良いライアウトが組めてそのままボールが出ると、トライまで直結することもあった。そこの部分はすごく大きかったなと思います」
──前半終盤に奪われた二つのトライは止めきれなかったですか?
「システム的には僕たちはやり切っていたと思うのですが、ちょっとしたスキを相手に与えたかなと。僕らがプレッシャーを掛けていたところにキックパスで対応してきたのは、やっぱり1枚上だなと思います」
──モールディフェンスがうまく機能していました。
「自分たちの強みになっている部分です。僕たちの責任として、それぞれ一人ひとりの役割を遂行したらしっかり止められる。そこに関しては問題ないかな、と自信をもってやっています」
──勝利を繰り返すには何をすればいいのか?
「ちょっとした精度の部分やリアクションの部分はまだまだ上げていかないといけないと思います。どんな場面でも、自分の仕事を全員がしないといけない。誰か一人が自分の仕事ができていない瞬間があると、それが得点につながってしまうので。どういう状況であれ、自分の仕事をもっと全員が責任をもってやることかなと思います」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「すごく良い試合だったと思います。最初はけっこう相手にプレッシャーをかけていたと思うのですが、それに見合った見返り(トライ)がなかったかなと思っています。その理由の一つとして、ペナルティが挙げられます。
リコーブラックラムズ東京さんもすごく良いチームで、これから先、良い結果が出てくるチームだと感じました。これから先の6試合は交流戦。とても良いブロックだと思っていますし、どのチームも総力戦になるのではないでしょうか。また今日は長田智希選手のデビューを見られてうれしかったです。これがファーストキャップ。これから先、もっともっと活躍してキャップを重ねられると感じています」
──山沢拓也、野口竜司、松田力也、竹山晃輝4選手の起用方法と狙いについて。
「強みを生かすことがもちろん第一ですが、さまざまなコンビネーションを試しています。今日の試合では二人のプレーメーカーを出場させていました。その強みとして、山沢選手や野口選手がサイドのポジションでプレーする時間を与えられ、山沢選手については後ろからゲームを見る時間が与えられました。野口選手については、11番(左ウイング)・14番(右ウイング)をできるようになれば、代表にも選ばれやすくなると思います。
チームとしては、いろいろなコンビネーションを試しチームの幅を広げていきたい、と考えています。シーズンとおして一つのコンビネーションだけで貫きとおすのはすごく難しいこと。いろいろなパターンを試しています。みなさんはこのようなコンビネーションを試合で初めて目にし、驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちにとって試合とは、準備してきたことを反映する舞台。選手自身はそこまで驚きはないと思います。どのチームにも言えることですが、対応できる能力がとても大切だと思っています。対応し、そして解決していく。セレクションでさまざまな変化を試せるようになることが重要だと感じています。自分たちのアタックを常に進化させ、相手にとって難しいアタックを常に繰り広げていきたいと思います」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「結果として勝つことができ、またカンファレンスAの前半戦をすべて勝つことができた、そこにチームの成長を感じています。プレーに関してはロビーさん(ロビー・ディーンズ監督)が言ったとおり、前半のスタートで相手に良い形でプレッシャーを掛けることができたのですが、それがなかなかトライという形では点数につながらなかったです。ただそこでウチには良いキッカーもいるので、そこで3点を積み重ねて、ポイントで相手にプレッシャーを掛け続けることができた。そこに関してはすごくポジティブに感じています。試合をとおして自分たちの時間ではないときが多々ありました。14人になったり、少しミスが重なったり。後半は風もあって自陣から出られないときなど難しい時間帯がありました。ですが、その中でコミュニケーションをとりながら、埼玉パナソニックワイルドナイツのラグビーに立ち返ることができた。そこに関してはすごくポジティブに、自分たちの成長を感じます。
崩れることなくゲームを進めることができて、そこから点数も取れたので、よかったです。最後はボーナスポイントを目指してアタックしようと思っていましたが、まずは勝つことが大事だったので、(松田)力也の3点はもちろん良かったです。そこから一つトライを取れたことも良かったと思います。ミスにペナルティと直すところはたくさんあるので、そこに関してはまた来週、良い準備ができるように。交流戦初戦、頑張って勝ちたいなと思います」
──堀江翔太選手がいない中でしんどい時間を乗り越えました。
「ハドルの中でも結構いろんな声が出ていました。モールにするのか、3点取るのか、と点数を見ながらのコミュニケーションもありました。14人になった時間帯では、ラックにかける人数の話も出ています。そこに関しては良かったですね。13点差になったときはすごくしんどい時間帯でしたが、あそこで自分たちのゲームに戻ってくることができたので、そこは成長していると感じます。いろいろなことを話す選手たちが増えてきているので、それをまとめながら、ゲームの中でも良い影響を与えられればなと思います」
──前半の中盤から終盤にトライを取れた要因は?
「基本的にはあのようなラグビーを目指しています。あれを狙っているわけではないですが、ゲームの中でチャンスがあったときに、それを自分たちのスコアにできるところを目指しています。だから、あの時間帯でああいうところでチャンスがあって、個人が判断をして、あのプレーができたのは、埼玉パナソニックワイルドナイツの強みだなと思っています。ただモールでトライを取れたら良かったですし、スクラムからのアタックでも取れたら良かったので、そういうストラクチャーからの攻撃もさらに強くできればと思っています」