NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第13節 カンファレンスB
2024年4月12日(金)19:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 26-50 埼玉パナソニックワイルドナイツ
『家族』の絆、そして再会の春。
秩父宮で生まれたハートフルな光景
リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)は4月12日(金)、秩父宮ラグビー場で埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)と対戦し、26対50で敗れた。
前半36分。
ルーズボールに対して即座に飛び込み、ボールを確保したのはBR東京の池田悠希。キャプテンの武井日向も、落とさずにつなぐ。その後、マット・マッガーンのキックパスを右サイドの大外でキャッチしたのは西川大輔。中楠一期がオフロードパスを受けゴール前まで進むと、最後は共同バイスキャプテンの松橋周平が押し込んだ。
ここまで2勝しかできていないチームの、どん欲に勝利を求めるハングリーさが体現された、この試合での2トライ目だった。
一方、その前の前半9分、山本嶺二郎が初トライを奪うと、最初にハイタッチへ歩み寄ったのは松橋だった。
それ以外でも、ノックオンし、悔しさから自らの手を叩く選手には、キャプテンの武井がそっと肩をなでた。
チームメートを『家族』と呼ぶ絆を示す、数々の光景。
どん欲さと絆、その双方が垣間見えた、少し肌寒い桜舞う“秩父宮”でのナイトゲームだった。
またこの日は、注目の『再会』が二つあった。
一つは、ともに背番号20を着けたBR東京の木原音弥と埼玉WKの福井翔大。東福岡高校の同級生であり、ラグビースクール時代は福岡県内の別クラブで互いにキャプテンを担っていた幼馴染でもある。
「(福井は)サイズもあって、動ける選手。だからこそ運動量で負けていられない」と木原が闘志を見せれば、福井も「じゃあ僕はパワーで負けずゴリゴリにいきます」と返すほど仲はいい。
一足先に日本代表へと駆け上がった旧友を前に、木原は「次はプレーオフトーナメントでの対戦を目指して頑張りたい」と今後を見据えた。
また古巣との初対戦を果たしたのは、セミシ・トゥポウ。「なんとかチームの役に立ちたかった」とキレのある走りをいくつも見せる。チーム2トライ目は、セミシ・トゥポウのキックチェイスでボールをこぼさせたことが起点だった。
「最後の瞬間まで戦った僕たちを誇りに思います」とセミシ・トゥポウ。
再会の春。それぞれの決意を胸に、次の戦いへと向かう。
(原田友莉子)
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ
「まずは埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)さんに『おめでとうございます』とお伝えします。今日も、なぜ埼玉WKさんたちがそこ(首位)にいるのかを見せてくれたと思います。特に前半はターンオーバーからボールを失い過ぎてしまいました。ディシプリンもゲームスタート時からあまり良くなく、そこから自陣に侵入されました。自陣まで来られてしまうと埼玉WKさんは良いチームなので(難しくなる)。あれだけ経験のあるチームに、簡単にチャンスを与えてはいけないですね。
相手は、(先発メンバーの)代表キャップ数が合計で230オーバーのチーム。ウチは8。やはりその経験の差が、プレッシャー下で表れたのかなと思います。ウチのチームは、ルーキーレベルでもないアーリーエントリーの選手もいました。ナンバーエイトのサム(サミュエラ・ワカヴァカ)はタイトヘッドプロップとしてチームに加入したのですが、当分そのポジションはやらないと思います。山本嶺二郎もすごく良かったと思いました。とても誇りに思います」
──常に攻める姿勢を見せていた中で、ディフェンスの強い埼玉WKから4トライを取れたことは自信になるのではないでしょうか。
「自信になると思います。試合後、選手たちにも伝えましたが、ゲームの中で良いところもありました。ただ、経験が何をもたらすかというと一貫性です。1試合をとおして、波なく良いパフォーマンスを見せ続けなければいけません。トップレベルのチームもミスはしますが、彼らは良い時間帯を安定して長めに作れています。自分たちもそこを目指し、求めています。
自分たちのDNAはゲームで見せ続けられていますが、良いチームは常にプレッシャー下でも良いパフォーマンスをし続けられるチームだと思います」
リコーブラックラムズ東京
武井日向キャプテン
「自分たちの精度が悪く、ターンオーバーを許してしまう場面も多かったですし、そこから埼玉WKさんのアタックでスコアが開いていきました。その中でも自分たちの規律や、プレッシャー下での精度を上げられた時間帯には、良いアタックと良いディフェンスができていたと思います。その精度を上げていくことが、次に向けて改善するべきポイントだと思いました」
──失点を減らすためのポイントについて、考えを教えてください。
「規律(の低さ)が自分たちのモメンタムを作れなかった要因だと思います。徹底して規律を守ることが大切です。あとはシンプルにスキルミスもありました。ブレイクダウンでの精度を上げていくことが一番大事かなと思います」
──山本嶺二郎選手が初先発となりましたが、チームにどうコミットしていますか。
「彼は大学のシーズン終了後すぐに合流しました。そこからも彼の気持ちが伝わっています。練習後、最後までラインアウトの確認をして、すぐにサインを完璧に覚えました。準備に対するアティチュード(態度、姿勢)は、僕も感心しているところです。
最初は僕がラインアウトのサインを全部教えましたが、すでにリーダーとしてやっていけるぐらいの選手になっています。僕自身も彼を信頼しています。今日のプレーを見ても、僕たちのDNAを体現してくれた選手の一人だったと思います。コンタクトで外国人選手に負けず、ラインアウトでも彼がリードしてくれるところもありました。リーダーシップ含め、パフォーマンスが“ブラックラムズらしい”ものでした」
──相手のブレイクダウンについてどのように感じましたか。
「二人目のプレーヤーのファイトが、自分たちにとってはプレッシャーが掛かっていました。そこに対して僕たちも正しい精度で、もっとクリーンにボールを出さなければいけなかったと感じます」
──戦う姿勢、マインドセットについてどうチームの変化を感じますか。
「何トライもされてしまうと、チームとしてコネクトできなくなるという状態がここ何試合か続いていました。練習から次の仕事だけにフォーカスしようと全員がセイムページを見て、どんな状況でもコネクトできる準備をしてきました。そういう姿勢が試合に表れたのではないかと思います」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「すごくタフな試合でした。スコアを見ても分かると思います。リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)さんがコンタクトやブレイクダウンで激しく来たことで、少し受けた部分もありますが、自分たちのラグビーができたと感じています。
加えて、本日はエセイ・ハアンガナやルード・デヤハー、ヴィンス・アソ、長田智希がゲームタイムをもらえたことはプラスです。新しいコンビネーションで試合ができたことが自分たちにとっては良いことだったと思います。まずは来週に向けて良い週末を迎え、新たな週に向かっていきます」
──プレーオフトーナメント進出が決まったあとの試合ですが、チームに最も求めたこと、また選手にやって欲しいと伝えたことは何でしょうか。
「今週より先のことは見ていません。タフな大会でもありますし、先を見てしまうとすごく苦しんでしまうと感じています。それは試合の流れだけでなく、スコアボードにも表れます。
一戦一戦、対戦相手が自分たちに対してどう戦ってくるのかを考えて対策を練り、当日に何も驚きがないようにしています。毎週自分たちは試されているので、試された中から学んでいき、次に進んでいきたいと思っています。
これを機に選手層の厚さと幅を伸ばして、どんなタイプにも対応できるようにしていきたいと思います。1試合1試合学んで、相手がどのように出てきても対応できるようにしていきたいです。
来週の相手はトヨタヴェルブリッツ。相手にとっては、勝たなければシーズンが終わってしまうような一戦です。相手は必死になってくると思いますし、ワクワクしています。良いチャレンジになると思います」
──復帰したエセイ・ハアンガナとルード・デヤハーについての評価をお願いします。
「ルード(・デヤハー)は80分出続けました。このことは決して簡単なことではなく、前回の出場から長い期間が空きましたが、すごく良いパフォーマンスだったと思います。
(エセイ・)ハアンガナについては、大きなけがをし、(最後に出場した試合から)2カ月空きました。2カ月も空いた中で、体の大きいフィジカルゲームに戻ってくるのは怖かったと思いますが、よく頑張ったと思います」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「タフなゲームでした。フィジカルレベルも高く、トランジションのところでイレギュラーなボールがたくさん出るスピーディーなゲーム展開でした。フィットネスやスキル面でチャレンジングな結果になったと思います。
ミスも多々ありましたが、ゲームの中でみんながアジャストしてくれて、得点を取り切れたところは良かったです。ただ、前半の最後と後半の最後にトライを取られたところはしっかりと映像を見返しながらディフェンス面でコミュニケーションを取って成長できればと思います。総じて良いゲームだったと思うので、来週に向かって良いレビューをしていきたいです」
──プレーオフトーナメント進出が決まってからどのように過ごしているのでしょうか。
「チームに伝えているのは『1試合1試合成長したい』ということです。どのゲームも大事ですし、自分たちにとってどういうチャレンジがあるのか、自分たちがどういうことにフォーカスするのか、ということに意思統一し続けることで成長できると思っています。それこそがロビー(・ディーンズ監督)さんの言う『どういうラグビーに対してもアジャストしていく』ということにつながっていくと思います。
そういった意味で、プレーオフトーナメント進出が決まったということはあまりチームでは触れていません。目の前の仕事をしながら、みんなで成長しています。ゲームに出るメンバーだけでなく、全員で成長していくことが選手層や戦術にも大きく関わってきます。どのチームも自分たちに対して何か試してくるものがあると思いますが、自分たちが受けるよりも、自分たちから立ち向かっていけるようなチームを目指して成長していきたいです」
──今週、試合までの期間でフォーカスしたことと、その出来はいかがでしたか?
「『精度』を今週の僕たちのテーマに置いていました。BR東京がどういうプレーをしてくるかはある程度分かっていたので、そこに対して自分たちは精度高くプレーすることを意識しました。精度という言葉は大きな括りになりますが、そのために一つひとつのディテールがあって、正確性を持ってプレーすることにフォーカスしました。80分間をとおして良い精度でプレーできたかなと思います」