NTT ジャパンラグビー リーグワン 2023-24 プレーオフトーナメント準決勝
2024年5月18日（土）14:05 秩父宮ラグビー場 (東京都)
埼玉パナソニックワイルドナイツ vs 横浜キヤノンイーグルス

埼玉パナソニックワイルドナイツ（D1 カンファレンスB）

去りゆくクラブレジェンドの二人とともに。
王座奪還という最高のフィナーレを目指す

プレーオフトーナメントを終えれば引退となる埼玉パナソニックワイルドナイツの二人。「相手がいろいろなことをしかけてくる可能性がある中で、しっかりと対処しなければいけない」（堀江翔太選手＝写真左）、「最後の瞬間まで成長したい。それが（王座奪還という）結果につながると思う」（内田啓介選手＝写真右）

いよいよプレーオフトーナメントが幕を開ける。埼玉パナソニックワイルドナイツ（以下、埼玉WK）にとって今季の最終章は、今季限りでの引退を表明しているクラブのレジェンドである堀江翔太と内田啓介との別れを意味する。二人はこの試合、ベンチから出番を待つ。残り2試合、チームは一戦必勝で決戦へ臨む。

埼玉WKは、横浜キヤノンイーグルス（以下、横浜E）に対してジャパンラグビー トップリーグ時代からリーグ戦で15連勝中。昨季のプレーオフトーナメント準決勝でも対戦して埼玉WKが勝利しており、今季のリーグ戦最終節でも横浜Eに勝利を挙げたことでリーグ戦での全勝を成し遂げた。

16日の練習後に報道陣の取材に応じた堀江は「プレーオフトーナメントに過去の結果は関係ない。相手がいろいろなことをしかけてくる可能性がある中で、しっかりと対処しなければいけない」と気を引き締める。そして、自身の引退については「自分のことはまったく考えていない。プレーオフトーナメントでしっかりと勝って、良い終わり方をしたい。それだけです」と一戦必勝で目の前の試合に向かう。このプレーオフトーナメントは、“ラスボス”にとっての最終章となる。

チームのために戦う気持ちは、内田も同じだ。内田は昨季限りでの引退を決めていたが、プレーオフトーナメント決勝で惜敗したあとに1年限定での現役延長を自らの意志で決めた。“王座奪還”に懸ける思いは特別だ。

「リーグ戦のときは（引退するという）実感がなく、プレーオフトーナメントになったら自分の中でカウントダウンが始まるのだろうと思っていたが、そのとおりになった。試合は2試合で、熊谷で練習するのもあと数回。一瞬一瞬がもう二度とできない経験で、すべてが貴重に感じられる。この瞬間を楽しみたいという境地です。この１年、毎日成長できたし、やってきたことに悔いはない。最後の瞬間まで成長したい。それが（王座奪還という）結果につながると思う」（内田）

勝負の厳しさ、そして、ラグビーの面白さを知る二人がプレーオフトーナメントでどんなパフォーマンスを見せるのか。埼玉WK、そして、堀江と内田にとって最高のフィナーレに向けた戦いが始まろうとしている。

（伊藤寿学）

横浜キヤノンイーグルス（D1 カンファレンスＢ）

チームの成長に確信を持つ“ワンクラブマン”。
この仲間たちとともにまだ見ぬ景色へとたどり着く

横浜キヤノンイーグルスの嶋田直人選手。「昨季とは違う、もう一つ上のステージに立ちたい」

2年連続の4位でプレーオフトーナメント進出を決めた横浜キヤノンイーグルス（以下、横浜E）は、準決勝でレギュラーシーズントップの埼玉パナソニックワイルドナイツ（以下、埼玉WK）と対戦する。レギュラーシーズン最終節以来の再戦は、その試合で敗戦を喫した横浜Eにとっての“リベンジマッチ”。横浜Eの選手たちが雪辱を期す気持ちは強い。

「ビッグマッチ、絶対に勝ちましょう!!」

言葉の主は、準決勝の4日前にあたる5月14日が誕生日だった荒井康植。準決勝のメンバー入りを果たしたスクラムハーフは、全体練習を終える際の声掛けでそう語りかけ、チームの士気を高めていた。

横浜キヤノンイーグルスの荒井康植選手。シーズンの終盤は9番での先発が定位置に

また2014年に加入以降、横浜E一筋を貫く“ワンクラブマン”として、横浜Eの歴史を知る嶋田直人は、万感の表情でこう語った。

「なかなか勝てない時期を知っている一人としては、またプレーオフトーナメントの場に立てることがとてもうれしい。特に今季はけが人も多かった中で、チームとしての力を見せられたことがうれしいし、力がついてきた証拠かなと思っています」

シーズン途中、ジェシー・クリエルやファフ・デクラークを負傷で欠いたため、大きな戦力ダウンが懸念される中、横浜Eはチームとしての総合力を発揮し、2年連続でのレギュラーシーズン4位フィニッシュを成し遂げた。嶋田いわく、「試合に向けての準備に集中し、勝ちたいという気持ちが強くなった」チームのカルチャーが、新たな偉業を勝ち取る原動力となった。「昨季とは違う、もう一つ上のステージに立ちたい」とまずはファイナル進出を願う嶋田は、勇猛果敢に今季リーグ戦16戦全勝の埼玉WKに挑むことを誓った。

「フォワードの選手としてスクラムやラインアウトのセットピースを安定させること。そこで相手に良いプレッシャーを掛けることができれば、自分たちのリズムになると思います」

まだ見ぬ景色にたどり着くために――。チームの勝利を最優先する嶋田は、どんな仕事もいとわない。

（郡司聡）