NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第1節(リーグ戦) カンファレンスB
2024年12月21日(土)12:10 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 (三重県)
三重ホンダヒート 23-21 リコーブラックラムズ東京
“約2年ぶりの勝利”の要因は遂行力。
その象徴は「やり切った」新人のセンター
「岡野の先発に驚いた方もいるかと思いますが彼のスキルの遂行力や精度は目を見張るものがある」
試合後、三重ホンダヒート(以下、三重H)を率いるキアラン・クローリー ヘッドコーチはそう語っていた。
12月21日に行われたディビジョン1開幕戦で、三重Hはリコーブラックラムズ東京に23対21で勝利した。一時は8点差を付けられ、試合終了直前までリードされている状況の中、最後の最後でマヌ・ヴニポラのペナルティキックが決まって逆転するという劇的な結末。昨季はホストゲームで一度も勝てなかったチームにとって、ドラマチックにも程があるホストゲーム白星である。ゲームキャプテンを務めたパブロ・マテーラは、勝利の要因を「最後まで信じてやり続けた」遂行力だと語った。
そのピッチに最後まで立っていたのが、同志社大学から加入したルーキーの岡野喬吾だ。昨季にアーリーエントリーされたが出場はなく、この日がリーグワンでのデビュー戦であった。
「プレッシャーはありましたけど、それよりはうれしさが勝っていました。緊張はあまりしませんでしたね。練習試合とは違う強度も感じましたが、それは最初だけでした。そこからは順応できたと思います」
突然の先発デビューについてそう語った岡野は、「ヘッドコーチからの『思い切ってやれ!』の一言で背中を押されました」と続けた。
彼の強みであるタックルやディフェンスは、昨季リーグ最多失点だった三重Hの守備を改善するための一翼を担っていた。「学生時代は毎日居残り練習でタックルをやっていたので、そこがいまに生きていると思います。まだ完璧とは言えないですけど、僕は守備面が長所なので、そこをどんどん伸ばしてアピールしたいです」。
試合の終盤で印象に残ったのは、同じサイドでポジションを取るラリー・スルンガとともにしばしば足を伸ばしつつ、懸命にプランを“遂行し続けた”岡野の姿だった。その仕草について聞いてみると、「実は途中で足がつりながらプレーしていたんです。試合が途切れたらその都度ちょっと伸ばして回復させていました。最後はちょっと自分のプレーが出せなかったのは次に向けての課題ですね」と受け止めつつ、「最後までやり切りました」と充実の表情を浮かべていた。
三重Hは次節にトヨタヴェルブリッツとの『東海ダービー』に挑む。12月28日に岐阜メモリアルセンター長良川競技場で行われる強豪相手の試合でも、この“遂行力”で勝利をつかみ取ることができるだろうか。
(籠信明)
三重ホンダヒート
三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ
「地元の鈴鹿で勝つことがわれわれの新しい経験であり、私はとてもハッピーです。それに加え、終盤まであきらめずに調子を取り戻してきた選手たちのパフォーマンスをとてもうれしく思います。最初の20分で7回のペナルティを犯してしまい、自分たちにとても重いプレッシャーが掛かってしまいました。ただ、前半の残り20分で少し改善できましたし、後半は取り戻した調子を継続して戦い続けることにフォーカスしました。今回の勝利はチームの全員が貢献してくれた結果です」
──チームとしての収穫と課題を教えてください。
「先ほども申し上げましたが、改善しなければいけないポイントは7個のペナルティを最初の20分で犯してしまったことです。その間はボールもほとんど触ることができませんでした。収穫としては、われわれが自分たちのプロセスを信じて最後まで戦い続けられたこと。それによって、ボックスキックから得たペナルティなどを得点につなげて試合に勝つことができました。どのような状況でもプロセスを信じてやり続けたという部分に関しては収穫だと言えます」
──今季はフィジカルとディフェンスの向上をテーマに挙げていましたが、その二つの点の評価については?
「それらに関しては、良い時間がかなりありました。ただ、ペナルティの多さによってわれわれが不利な状況に自ら追いやってしまったという部分が気になっています。フィジカルの部分に関しては、アタックについても、モールでのディフェンスについても実際に強くなったと感じています。ディフェンス面で言えば、最終的に失点する場面はあったとはいえ、それはわれわれが犯したペナルティなどから始まったものでした。その2点については実際に改善されていると感じています」
──先発してリーグワンデビューとなったマヌ・ヴニポラ選手と岡野喬吾選手についての評価はいかがですか?
「デビューした選手(新加入選手)は控えも入れて多くいました。岡野に関しては、まず先発することが発表されたときに驚いた方もいるかと思いますが、彼が持っているスキルの遂行力や精度は目を見張るものがあります。控えの選手ではフェインガ・ファカイやヤンコ・スワナポール、中尾隼太も三重ホンダヒート(以下、三重H)では初めての試合でした。その中でフェインガ・ファカイは強いキャリーを見せてくれましたし、中尾もいいテンポを作ってくれました。そのような部分があっての勝利でした。もちろんこれからレビューはしますが、どのように行われたかという点に関してはとても良くできたと思っています」
三重ホンダヒート
パブロ・マテーラ ゲームキャプテン
「キアラン(キアラン・クローリー ヘッドコーチ)と同じく、私もとてもハッピーです。戦い続けられたことによって勝利がついてきました。それと同時に、この22週間のプレシーズンでやってきたことを信じて最後まで遂行し続けられたことで、今までのハードワークが報われたと感じています。昨季はホストゲームでの白星を鈴鹿のファンに届けられなかったので、今回この素晴らしい勝利で開幕戦を迎えられたことをとてもうれしく思います」
──チームとしての収穫と課題を教えてください。
「このチームについて最も感じていることは、努力と魂のような部分を持っているという点です。プレシーズンでは50点を取られるようなゲームもありました。ただ、そのような強いチームと戦う試合でも、われわれは手強い存在にならなければいけない。最後までそれを信じてやり続けたことによって、勝利をつかみ取ることができました」
──先日「チーム内で開幕戦のことをずっと話していた」と仰っていましたが、それはどんな内容でしたか?
「チーム内では『エキサイトしてしっかり開幕戦を勝とう』という話をしていました。『まずは1試合目にフォーカスを当てて、そこでパフォーマンスを全力で出せるようにしよう』と。そして試合の中でもわれわれはプランを遂行し続けることができて、最終的に勝つことができた。とてもハッピーです」
──次節のトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)戦はパブロ・マテーラ選手自身も楽しみにしていると思います。勝利に向けての意気込みを教えてください。
「トヨタVとの対戦は、われわれにとってとても大事な試合だということは理解しています。ただ、いまはこの勝利の瞬間を味わいたいですね。トヨタV戦に関しては月曜日からまた考えていこうと思います。まずはリカバリーをして、集中して、自分たちの試合を見直して分析するところから始めていきます」
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ
「ファーストゲーム(開幕戦)はもちろんどんなときでも重要なものですし、プレシーズンで頑張ってきたことを結果と内容につなげていきたいゲームでした。ポジティブな面も見えたと思いますが、結果についてはとても残念です。特に最後の30分に実行力が落ちたことが試合に影響しました。三重Hさんはとても良かったですし、最後までファイトを続けていました。その結果、勝利するチャンスを得て、それをつかんだと思います」
──かつて三重Hの指導もされていたと伺っていますが、対戦してどのように感じられましたか?
「かつて私がスポットコーチを務めてからかなり変わっていますね。キアラン・クローリーさんはとても経験があるインターナショナルなコーチです。取れるところでポイントを取って、ボールをキックして、われわれにプレッシャーを掛けてきた。チームにいい影響を与えていると思います」
リコーブラックラムズ東京
武井日向キャプテン
「ヘッドコーチのコメントと重なってしまいますが、やはり後半のラスト30分で自分たちのプレーが思うように進みませんでした。最後の最後までファイトすることができませんでしたし、プランを実行できなかったところが、この敗北につながってしまいました。結果だけを見れば負けですが、今季はまだ始まったばかりですし、来週も試合があります。正しく分析して、しっかり切り替えて、いい自信を持って来週を過ごしていきたいと思っています」
──前半はチャンスが多かったものの、突き放せそうな場面で突き放せず、相手に粘られているうちにチームとしてズレが出ていったように見えました。後半に入って何がうまくいかなくなっていったのですか?
「それぞれが自分の役割をしっかり理解して、その一瞬一瞬で任された仕事をやらなければならないのですが、それを正しく理解できずに実行できなければチャンスをものにできません。逆に、三重Hさんは僕たちがミスをしたところをチャンスに変えていきました。そのようなリアクションの部分や、物事を正しく理解して実行するというところ。われわれはそこが良くなかったのかなと思います」
──前半は攻めながら得点につながらなかった部分があります。その時間で体力が削られたような感覚はありますか?
「特に削られたという感覚はないですね。相手のゴール前で何度かチャンスは逃しましたが、それでも攻め込んでいたという点でいえば、特にそれほど自分たちにプレッシャーも掛かっていませんでした。ただ、その中でのペナルティの判断というところは、これからリーダーの間で話したいと思っています」