NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第5節
2025年2月1日(土)13:00 AGFフィールド (東京都)
日野レッドドルフィンズ 46-35 日本製鉄釜石シーウェイブス
もどかしさを振り払う今季初勝利。その要因はチーム一丸での『最高の準備』
日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)がAGFフィールドに日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)を迎えたホストゲーム。前半にトライを積み重ね、試合の主導権を握った日野RDが後半の釜石SWによる怒とうの反撃をしのぎ、ディビジョン2復帰後初となる勝利をつかみ取った。
今季初勝利をつかんだ日野RDでチーム最多の21得点を挙げたのは大内空。急きょプレースキッカーに指名される大役を果たしての活躍だった。
「試合直前にサイモン・ヒッキーから『今日は(ゴールキックを)蹴ってくれ』と託されて。練習から準備はしていましたがやはり試合で蹴るとなると正直に言ってとても緊張しました。でも、アンドレ(・プレトリアス バックス)コーチに教わった『(キックでの)ヒットの瞬間だけを考えろ』という一点に意識を集中できたことが、良い結果につながった」と大内。難しい角度のコンバージョンを1本外したものの二つのペナルティゴールを含む8本中7本を成功させ、46点という今季のチーム最多得点に大きく貢献。さらに後半7分には右タッチライン際を駆け上がりトライを奪い、フィニッシャーとしての役割も十二分に発揮した。
「トライを奪うことはウイングのやるべき仕事。そこは自分としても一番こだわっているポイントですが、今日もフォワードがしっかり前進してくれて、センターのオギー(オーガスティン・プル)やマリー(コスター)も前に出てくれたことで自分が走り込むスペースを作ってくれた。チーム全体として奪えた良いトライだった」と大内はチームメートへの感謝を口にした。
またオーガスティン・プルがハットトリックを決めるなどチームの全6トライを引き出したフォワードの頑張りも光った。特に試合の入りからフォワードの集中力はすさまじく、ファーストスクラムから3回続けてスクラムで相手をペナルティに追い込むなど釜石SWを圧倒。その原動力となったのはやはりフロントローの3人だった。
フッカーの谷口永遠は欠場した前節のスクラムを見て多少の違和感に気付き、改善を提案したという。「プレシーズンのときの良いスクラムを思い出せたことで、しっかり今日につなげることができた」と谷口。さらに両プロップも「相手にフォーカスするのではなくて、セットアップからフィットまで『自分たちの形で組む』という点をしっかり準備して、今日ここで実践することができた」(徳田悠人)、「準備してきたことを前半でしっかりと示せた。後半も苦しい中、スクラムでも耐えることができて、交代したメンバーも含めて仲間に感謝したい」(船木頌介)と充実の表情を見せた。
チーム一丸となって『最高の準備』をしてつかみ取った今季初勝利。日野RDにとっては、ここまで好内容ながら勝ち切れないために生じていた、もどかしい気持ちを一気に振り払う白星となった。
(関谷智紀)
日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ
「本日は非常に良い天候ということもあり、素晴らしい環境で試合をできたことに感謝を申し上げます。ここまでの4戦はロースコアの展開が続き、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)戦こそ点差が開きましたが、日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)としては勝っても負けてもおかしくないようなゲームが連続していました。負けが込んでいる状況ですと、試合では良い内容があったとしても、やはり(それまで)負けているということに意識がいってしまい、自分たちの良い部分が見えなくなってしまうところが否めなかったと思います。しかし、この2週間は選手たちが中心となってとても主体的かつポジティブに『目の前のことに集中してそれを積み重ねていこう』という意識で本当に良い準備ができました。良い準備と選手の努力があったからこそ今日の勝利につなげられたと思います」
──フォワードを中心にスクラムで圧倒するなど、前半の入りが非常に良かったですが、そうできた要因は何でしょうか?
「試合前に選手中心でミーティングを行ったときに、選手の顔を見るととても良い表情をしていたので『今日は絶対に勝てる』と試合前に思っていたくらいだったのですけれども、みんながこの1週間の準備を含めて自信がみなぎっていたし、この状態で早く試合がしたいという熱い思いも非常に伝わってきました。フォワードもバックスも全員が目の前のことに集中してプレーできたことが、そういう結果につながったと思います」
──後半はトライを2本取ったあとに相手に3本のトライを返されました。そうなってしまった要因とその窮地をしのぎ切れた要因を教えてください。
「後半、1トライを返されたタイミングでローリー・アーノルドとノア・トビオの両ロックが交代せざるを得ない状況になって、緊急的なメンバーチェンジとなり、なかなか準備したことがうまく出せなかった部分もありました。そこで相手も今日勝つために準備してきた部分をしっかり遂行してきて、それに飲み込まれそうな場面があったんですけれども、中鹿(駿)ゲームキャプテンを中心に目の前のプレーに集中して、一つひとつわれわれのプロセスを積み重ねていくことでチャンスが生まれてくるところまで我慢することができました。チャンスを待つのではなく、自分たちがチャンスを引き込むように選手が各々の役割を理解し、『次のすべき仕事は何か?』を確認できたことがそこでのピンチを乗り切れた要因だと思っています」
──ここまで5試合戦ってきた中で、一貫して選手に伝えてきた言葉などあれば教えてください。
「開幕戦から『自分たちの力を出し切れば勝てる』ということは常々言い続けていましたし、選手たちもそれは感じ取ってくれていたと思います。あとは先ほども申し上げたように、先を見て、チャンスが転がってくるのを待つのではなくて、自分たちが努力してチャンスをつかむために目の前のことに集中する、という点を伝えてきました。今日の試合を迎えるにあたってけがで戦列を離れていたメンバーも戻ってきて、経験豊富なメンバーも加わる中で練習を重ねて実践することで、それは自信に変わったと思います。シーズンのスタート時から言い続けていた言葉ですが、今日勝利を得たことで、さらに自信を深めて次のステップへ進んでいけると思いました」
──先ほど「選手の表情に自信がみなぎっていた」とおっしゃいましたが、何がその自信に結びついたと思われますか?
「前節は隣にいる中鹿も出場していなかったですし、今日フィニッシャーを務めたジョシュ・フェナーや今日プレーヤー・オブ・ザ・マッチを獲ったオーガスティン・プルなど何人か試合に出ていない選手がいましたが、経験豊富な彼らが練習に取り組む中で『こうすれば自分たちが良いラグビーをできる』という助言を言い続けてくれました。それが練習をとおして成果として現れることによって、自分たちがさらに自信を深めて試合に臨めた。それが今日勝てた一番の要因だと考えています」
日野レッドドルフィンズ
中鹿駿バイスキャプテン
「今日もこのような素晴らしい環境でラグビーをさせていただいたことにすごく感謝をしています。今日の試合は、苑田ヘッドコーチもおっしゃったとおり、準備がすごく良かったです。僕がみんなに声を掛けたのは、ローリー・アーノルドやサイモン・ヒッキーが言ってくれた言葉でもあるのですが『結果を見るのではなくて、まず一つひとつの目の前のプレーを大切にしよう。それでこそ結果が付いてくる』ということ。そこを全員に意識してもらいたくて試合前にあらためて声掛けをし、本当にその言葉どおりみんなが一つひとつのプレーに集中してくれました。危ないシーンもありましたが、(乗り越えられたのは)みんなが集中してプレーしてくれたおかげです。それが今日の結果につながったと思います」
──準備が良かったとのことですが、具体的にはどんな準備をしてきたのでしょうか?
「4戦して1分3敗という状況の中で、選手が本当に主体的に動いて、選手だけで集まってミーティングをしたり、いろいろなことを主体的に決めたりすることができた、そこが良かったと思います。昨季はディビジョン3で勝ち続けていたがゆえに、何といいますか……、厳しさがもっと必要というか、『もっと練習中に厳しく言い合ったほうが良いよね』といった部分から見直して本当に変えることができました。それが今回こういう良い結果につながって良い方向にチームとして進めた点だと思います。それから、フォワードの中でやはりセットピースのところは過去4戦とも正直うまくいっていない部分がありましたので、そこはもう全員で相手を圧倒していこうと意識を統一していました。全体としてもフィニッシュのところでまだ甘い部分があったので、トライを取り切る、という点も意識して取り組みました」
日本製鉄釜石シーウェイブス

日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ
「本日はたいへん多くの観客の皆さまにご覧いただいて、ゲームとしてはすごく盛り上がったんじゃないでしょうか。(観客の方々には)非常に試合を楽しんでいただけたかなと思うのですけれども、釜石シーウェイブスとしては前半、接点のところであまりうまくいかず、日野RDさんに何度か良い時間帯を作られてしまったところが最後まで影響してしまったと思います。これは相手どうこうと言うよりはわれわれの方向性の問題だと思います。次の試合までには修正したいと思いますけれども、こういった真剣勝負のところでそこを出せないという点はやはり課題だなと思っています。いつも関東でのゲームでは、たくさんのシーウェイブスファンのみなさんにお集まりいただいて非常に大声援をいただいているので、われわれもなんとか勝利を届けたいと思っていますし、しっかりと次の試合に向けて準備をしてまいります」
──前半、セットピース、特にラインアウトがかなり不安定だった印象がありますが、そうなってしまった理由は何でしょうか?
「前半はたぶん、パニックになっていたのだと思います。前節の試合ですとラインアウト(の獲得率)は100%でしたし、ウチはラインアウトの獲得率は非常に高いのでああいう状況はここまで体験したことがなかっただけに、そういったパニックになっていたとも思います。後半もしっかり具体的に修正していきましょう、というプランをもったのですが、実行し切れなかった。そこはやはり相手から精神的にプレッシャーを掛けられていたのだろうという点が大きかったのだと思います」
──後半は2トライを奪われたあとに3トライを返しました。良くなった要因はどこにありましたか?
「いわゆる特別なことはないと思います。ただ普通にわれわれの中で準備してきたことをやろうとして、遂行することができただけだと思っています。それまでの時間でそれをやれなかったところが大きな問題であって、その点は選手たちと話し合い原因を確認したいと思います」
──後半に立て直そうとしたができなかった、とのことですがどこに原因があると思われますか?
「ボールをセットするところから、今まで自分たちがやってきたことを遂行するか、やろうとしているか、だけで難しい話ではないですよね。どういう方法でラグビーをやるかというところで、やるべきことをやっていなかった。そこが結果として出たと思います」
──ハーフタイムにはどんな指示を出されたのでしょうか?
「しっかりと自分たちのラグビーをやっていこう、という部分。それだけです」
──今までラインアウトではそんなにミスがなかったとのことですが、今日はどういった点が今までと違ったのでしょうか?
「日野RDさんが分析したディフェンスだとは思うのですが、やはりローリー・アーノルド選手の高さをちょっと気にし過ぎてしまった部分はあったと思います。ただ、セットピースではスクラムも含めてそうですが、後半は自分たちのやろうとしているラインアウトを遂行できたので、前半に自分たちから崩れてしまった部分は大きかったなと思います」
──序盤の5試合を終えて、手ごたえをつかんでいる点と課題を教えてください。
「今年、われわれが目指している、取り組んでいるラグビーに対しては、できる時間帯ではプレーを自分たちからしっかりコントロールできるようになっているので、そこは良い部分だと思っています。それが花園近鉄ライナーズさん、GR東葛さんなどに対してもしっかり表現できていたので自信につながっている部分はあります。課題としては、そういったムラがあるところですかね。自分たちがやるべきことをやらなくなる、という。プレッシャーに負けてのことなのかもしれないですけれども、そういったところは課題として見えている部分なのかなと思います」
日本製鉄釜石シーウェイブス
村上陽平キャプテン
「相手がどうこうというよりは、試合の立ち上がりから自分たちがやろうとしていることができていなかったりとか、結局、その内包的なところから自分たちがやるべきことにしっかりフォーカスできていなかったりしたことが、試合終盤まで尾を引いて最終的にこのような結果となってしまいました。結局、日本製鉄釜石シーウェイブスはやられてから追い上げるのではなくて、最初から自分たちのペースでゲームを作っていかなければいけないと今日の試合であらためて感じました。次の試合に向けてポジティブな部分ももちろんあったのですけれども、そのネガティブな部分をいかにフラットにして、またチームとして次の試合に向けて良い準備をしていけるかだと思っていますので、そこはリーダーとしてしっかりとチームに対して声を掛けて継続して改善に取り組んでいこうと思っています」
──試合の中でプレッシャーを掛けられていたと感じた部分はどこでしょうか?
「ラインアウトのところはもちろん全然うまくいかなかったので、プレッシャーが掛かっていたと思いますし、ディフェンスでもチームとして一人目がしっかり下に入って二人目がしっかりボールに対してプレッシャーを掛けるという形を立ち上がりから遂行できていなかった部分がありました。そこで結局後手に回って、また余計なペナルティをしてしまうという悪循環で自分たちが自分たちを苦しめてしまった部分がありました」
──今日の試合で見えたネガティブな部分をどう修正していきたいですか?
「うまくいかないときに、それをどうチームとして良いときに近づけようとするかという部分は各選手のメンタリティーのところだと思います。そこは人任せにするのではなく、チームメートが良いプレーをして気持ちを上げていくのを待つだけではなくて、自分から積極的に上げていきましょう、という点を今日も試合後にチームとして話し合いました。後半に3トライを挙げてモメンタム的にも良い流れができていたと思うのですが、そこでのちょっとしたエラーが最終的には影響してしまいました。ボール(保持を)を継続すれば得点できるというところは証明できたので、そのエラーの部分を改善していきたいと思っています」