2025.04.24[S東京ベイ] 活路を見いだす、ユーティリティーバックスへの挑戦。成功のために新鋭は突き進む

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第16節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年4月26日(土)12:00 スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場) (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs 三重ホンダヒート

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスB)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの松下怜央選手。「新しいことに挑戦して成長していく。僕は、きっとそういうのが好きなんです」

第14節のリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)戦。前半25分、HIAで一時交替となった根塚洸雅に替わってピッチに入った松下怜央は、その数分後にはトライを決めて歓喜の渦の中にいた。スタンド席からのチームメートたちの熱狂的な歓声が、全身に浸透する。ほんの1週間前までは、彼はその声援を送る側にいた。

2023年、早稲田大学からアーリーエントリーでクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)に入団。当時のポジションはウイング。大学時代とはプレーの強度が異なることは明白で、S東京ベイへの加入は松下にとって大きなチャレンジだった。

しかし、公式戦出場の機会に恵まれないまま2シーズンを過ごす。そうした中で見つけた自身の可能性。きっかけは、2023年12月に行われた横浜キヤノンイーグルスとのトレーニングマッチ。転機は突然、訪れた。

「その試合の2、3日前に、フラン(・ルディケ ヘッドコーチ)から『12番(センター)はできるか?』と言われました」

試合開始1分、ボールを保持した松下はセンターとして力強く切り込み、トライの起点を作ってみせた。手ごたえが、あった。

「そこからです、ユーティリティーバックスの軸を見いだしたのは」

12番に軸足を置き、暗闇の先に光があると信じ、ひたすらに前を向いた。焦りを感じることもあったものの、ノンメンバーで同じ時間を共有した押川敦治やデーヴィッド・ヴァンジーランドらの今季の活躍が、希望の光を灯してくれた。

今季第5節を終えたタイミングで、松下はルディケ ヘッドコーチにユーティリティー志望を伝える。「15番(フルバック)はできるか?」と打診されたのは、それからすぐのことだ。

「新しいことに挑戦して成長していく。僕は、きっとそういうのが好きなんです」

サッカーに打ち込んでいた小学生時代。中学から始めたラグビーも、新たな挑戦だった。早稲田大学への進学も、S東京ベイへの入団も、松下にとってすべては挑戦。そして、いまの選択も。

「選んだ道を『成功した』と言えるように進む。そのプロセスが大事で、僕は『失敗したら』とは考えません」

センセーショナルなデビューを飾ったBR東京戦。その気持ちが理解できるだけに、仲間たちからの声援が心に深く響き渡った。次の舞台は不敗神話を誇るホームスタジアム・“えどりく”(スピアーズえどりくフィールド〈江戸川区陸上競技場〉)。ユーティリティーバックスとしてベンチから出番を待つ。

「前回の試合では、まだ(コーチ陣の)信頼を勝ち取るには至っていないと感じています。次の試合でもいいパフォーマンスを発揮して、チームに貢献したいです」

現状に甘んじる気はさらさらなく、プレーオフトーナメント決勝戦には先発としてメンバーに名を連ねたい。未来への扉は、挑戦という名のカギを握りしめた者だけに、その向こう側の景色を見せる。

(藤本かずまさ)

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