NTTジャパンラグビー リーグワン 2025-26
ディビジョン1 第1節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年12月13日(土)17:00 ノエビアスタジアム神戸 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ vs クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1)
復帰に至るまでには、結果として2年もの長い歳月が必要となった。2023年11月11日、浦安D-Rocksとのプレシーズンマッチで、谷口和洋は左ひざの前十字靭帯断裂という重傷を負った。
ロシアンルーレットに例えるのは少し乱暴かもしれないが、けがと隣り合わせのラグビーを闘い続ける上で、それはいつかは回ってくるものだと、比較的冷静に受け止めることができた。だが、この時まだ彼は知らなかった。本当の悲劇が、1年後に訪れることを──。
その日付を谷口は明確に記憶している。2024年12月3日。シーズン開幕まで、あと約3週間。プレシーズンマッチにも出場し、本格復帰に向けてギアを上げていた谷口は、練習中に左ひざに違和感を覚えた。
「自宅に戻ったらひざがどんどん腫れてきて。『まあ一応、念のため診てもらうか』くらいの気持ちで病院に行ったら、『切れていますね』と言われて……」
それは1年前に断裂し、移植腱による再建手術を受けた前十字靭帯。まさか、同じ個所が二度も……。そんなことが起こり得るのかと、谷口は呆然とした。
次の誕生日で30歳。『引退』の2文字が脳裏をよぎった。だが、チームは「来年も頑張ってもらうからね」と、その帰りを待った。
「その言葉が心の助けになりました。30歳が近くなると、やりたくてもチームに残れず辞めていく後輩を何人も見てきました。だから、自分から辞めるという選択肢はないなと思ったんです。チームが必要としてくれるなら、僕は続けるべきだし、頑張るべきだと」
しかし、試練は何の予告もなくやってきて、彼に容赦なく足止めを食らわせた。今年9月、リハビリも順調に進み、グラウンド復帰まであとわずかの段階で、走った際に肉離れを起こしてしまう。
「復帰が近いと思う気持ちだけが先走ってしまって、そこでのけがは本当にショックでした。あの時が一番しんどかったです」
その苦悩は、時を経て気づきへと変わる。先を見過ぎず、目の前のことにフォーカスする。これはフラン・ルディケ ヘッドコーチがよく口にする“プロセス重視”の哲学である。その大切さにあらためて気づいたと語る。
「焦って一歩先を急ぐようなことは、もうしなくなりました。いまは自分にできることを精一杯やるだけ。とにかく一つずつ積み上げていこうという気持ちになりました」
12月13日、コベルコ神戸スティーラーズ戦で谷口は2年半ぶりの復帰戦にリザーブとして臨む。「次に靭帯が切れたら、そこで終わりです。さすがにラグビーを続けるのはしんどいと思います」。そう語る谷口の表情に悲壮感はなく、「逆に分かりやすい状況ですよね」と笑う。
「ポジション争いが激しい中で選んでもらえたことは、本当に光栄ですし、責任を持ってやりたい。ここまで戻ってこられたこと自体がすごくうれしいですし、支えてくれた多くの人たちに応えたいです」
切れたら、終わり。だから、その瞬間、瞬間を精一杯に生きる。今年も魂を焦がす季節が始まる。
(藤本かずまさ)



























