2025.12.13[記録が紡ぐ ジャパンラグビーリーグワン #2]リーグワン50トライ一番乗りは誰?

東芝ブレイブルーパス東京のジョネ・ナイカブラ選手(©NOBUHIKO OTOMO)

(文:大友信彦)

NTTジャパンラグビーリーグワン2025-26の開幕が目前に迫った。リーグワンでこれまで表彰されてきたのは、通算100試合出場や150試合出場、通算100トライなど、主にジャパンラグビー トップリーグ(以下、TL)時代からの通算記録だった。リーグワン自体、2003-2004年から2021年まで続いたTLの発展形として誕生したわけで、18シーズンにわたって積み重ねられた歴史へのリスペクトが、それぞれの表彰には表れている。
しかし、リーグワンも今季で5年目。当初はTL時代を加えなければ大きな数字にならなかった「記録」の世界だが、リーグワン「での」記録もじわじわと蓄積されてきた。リーグワンに限った個人通算得点も、すでに松田力也(埼玉WK―トヨタV)とバーナード・フォーリー(S東京ベイ)の2人が500点を突破。昨季、トップリーグ時代からの通算得点が1000点を突破した田村優(NEC―キヤノン/横浜E)はリーグワンでの得点が昨季終了時点で471。3人目となるリーグワン500得点が目前に迫っている。
そして、今季注目したいトピックが「リーグワン通算50トライ一番乗り」だ。
昨季終了時点のリーグワン通算トライランキングTOP10を以下に示す。

リーグワン通算トライで首位に立っているのは昨季の最多トライゲッターに輝いたジョネ・ナイカブラ(BL東京)の46トライ。1差の45トライで追うのが2022-23シーズンのトライ王・尾﨑晟也(東京SG)で、さらに4差の41トライで一昨季のトライ王・マロ・ツイタマ(静岡BR)が追っている。過去3シーズンのトライ王3人が、リーグワン通算最多トライを争い4差にひしめいているのだ。

静岡ブルーレヴズのマロ・ツイタマ選手(©NOBUHIKO OTOMO)

では記録達成はいつになるだろうか? 何しろ通算トライランク上位に来ているのは名だたるトライゲッターたちだ。勢いにのれば1試合で3トライ4トライを量産したっておかしくない。
ちなみにTL時代の1試合最多トライ記録は、2011-2012シーズンにネマニ・ナドロ(NEC)、2016-2017シーズンに福岡堅樹(パナソニック)、2019-2020シーズンにマロ・ツイタマ(ヤマハ発動機)が樹立した「6」だが、リーグワンになってからの記録(D1)は、ナイカブラや山下楽平(神戸S、今季から三重H)、森勇登(BL東京、今季から横浜E)ら8人が記録した「4」が最多だ(D3では愛知Sの齊藤大朗が2022シーズンに「5」を記録している)。
こうみると、1試合最多トライ記録がTL時代よりも少なくなっていることに気づく。やはり、リーグワンになって戦力が接近していることが数字にも表れているのだろう。現在は映像を使ったスカウティング、それを活用したディフェンス理論が発達し、個人技やサインプレーで簡単にトライは生まれなくなっている。それだけに「王手」がかかっても、簡単に節目の記録は生まれないかもしれない。

小野澤宏時選手(©NOBUHIKO OTOMO)

さらに、記録達成がかかると別の重圧が生まれてくる可能性がある。TL時代の2012-2013シーズンに史上初の100トライを達成した小野澤宏時(サントリー)の場合は、「あと2」となった試合で家族が記録達成セレモニーに備え会場でスタンバイしたが、1トライに終わり花束贈呈は空振りに。リーチをかけた翌週、サニックス戦では家族4人が飛行機で福岡まで駆けつけた中、後半34分にようやくトライ。再びセレモニーに備えていた家族にとっても冷や汗ものの達成だった。2016-2017シーズンに史上2人目の100トライを達成した北川智規(パナソニック)の場合は、99トライをあげてリーチをかけてから2試合続けてノートライ。うち1試合はチームが9トライをあげて圧勝していらエースが不発という、なんともじれったい経過をたどった…。

北川智規選手(©NOBUHIKO OTOMO)

ただし今回は、過去の節目のトライと違うことがある。それは「競り合い」の存在だ。TL時代の小野澤、北川が100トライに迫ったときは争う者のいない一人旅だったが、今回は3人のトライゲッター同士が先陣争いを演じている。先に王手をかけられた側が次節で逆転する可能性もあるのだ。第2節には首位ナイカブラのBL東京と3位ツイタマの静岡BRが直接対決、第4節には2位・尾﨑の東京SGを含め、通算トライ上位3人の所属する3チームが別々の会場で同時刻にキックオフ。一番乗り記録が同じ日に生まれる可能性だってある。そうなったら第1号は時間差で決まることになる……。

東京サントリーサンゴリアスの尾﨑晟也選手(©NOBUHIKO OTOMO)

記録について尾﨑は、トップリーグ時代の50トライ、100トライもサンゴリアスの先輩・小野澤が一番乗りだったと聞き「取らないわけには行きませんね」と苦笑しながらも目を光らせた。一方、ここまで首位のナイカブラは「いまは負傷からのリハビリ中で、開幕時の出場は難しいが、回復は順調。シーズンの終盤には帰ってこられるかもしれない」とトッド・ブラックアダーHCは話した。長いシーズンにはいろいろなアクシデントがありうるが、それも含めてラグビーでありリーグワン。記録の世界も例外ではない。
節目の記録はいつ、どこで、誰が最初に達成するか? ラグビーでは珍しい個人記録の先陣争いは、リーグワン2025-26シーズン序盤の隠れた注目ポイントだ。

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