2022.12.18NTTリーグワン2022-23 D1 第1節レポート(BR東京 8-34 相模原DB)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第1節 カンファレンスA
2022年12月17日(土) 12:00 秩父宮ラグビー場(東京都)
リコーブラックラムズ東京 8-34 三菱重工相模原ダイナボアーズ

『笑顔で80分間ハードワーク』。その先に待っていた初勝利

初トライの坂本選手とメイン平選手

12月17日、秩父宮ラグビー場で行われたリコーブラックラムズ東京対三菱重工相模原ダイナボアーズの開幕戦。『TOKYO UNITE』に参画する他競技のチームマスコットも見守る中、盛大に幕を開けた。

記念すべき最初のスコアはリコーブラックラムズ東京。前半17分にペナルティーゴールで3点を獲得した。対する三菱重工相模原ダイナボアーズの反撃はその直後。ラインアウトから一気に相手の守備を崩して勢いに乗る。前半を14点のリードで折り返した。

後半、先手を打ったのは三菱重工相模原ダイナボアーズ。この試合がリーグワンデビュー戦となった坂本侑翼がラインアウトモールを押し込んだ。

後半34分にはリコーブラックラムズ東京のウイング、ネタニ・ヴァカヤリアが念願の今季初トライをチームにもたらしたが万事休す。三菱重工相模原ダイナボアーズが4トライの快勝で、ディビジョン1初勝利を手にした。

三菱重工相模原ダイナボアーズが開幕戦に掲げたテーマは『笑顔で80分間ハードワークしよう』。坂本侑翼は「初キャップで初トライを取れるなんて思っていなかったので、とてもうれしいです」と笑顔。試合前は「すごく緊張した」というが、それでも「ファーストプレーで当たった瞬間に緊張がとれた」と振り返り、リーグワンでの一歩目を、自らのトライで祝福した。

一方、リコーブラックラムズ東京の面々は、一様に「残念」と口をそろえる。

フルバックのメイン平は、日本代表初キャップを獲得した6月18日・ウルグアイ戦以来の実戦。「久しぶりのゲームで不安な部分もあったが、感覚的には良かった」と振り返る。前半はスクラムから供給されたボールを自らの突破で打開しようとも試みた。

しかし、「あそこは誰かにボールを託すべきだった。パスしていたらトライというシーン。もったいないです」と反省の色をのぞかせ、「今季は自分の強みを発揮して、もう一度ジャパンに呼んでもらえるように。毎試合全力で戦っていきたい」と続けた。

若い選手たちが多いチームだからこそ、ベテランのハードワークも光った。足をつりながらも80分間グラウンドに立ち続けた33歳の柳川大樹は「ひたむきに、泥臭く。“DNA”を見せられたのではないか」と前を向く。

試合後、グラウンド上で長くハドルを組んだリコーブラックラムズ東京。武井日向キャプテンは次戦に向け、「自分たちがどれだけキツい状況でも絶対に守り続ける」と誓った。

(原田友莉子)

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京のピーター・ヒューワット ヘッドコーチ(右)、武井日向キャプテン

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「すごく残念です。そして驚いています。三菱重工相模原ダイナボアーズがやってきたことに対しての驚きではなく、自分たちのパフォーマンスに対しての驚きです。最初の15分、20分はドミネートしていたかなと思いますが、そこから三菱重工相模原ダイナボアーズさんが良いレジリエンスを見せ、私たちを2、3度に渡って止めにきました。その中で相手に勢いがつき、私たちは流れを取り戻すことができませんでした。追いつこう、というようなラグビーになってしまったように思います」

──プレシーズンマッチの最終戦となった花園近鉄ライナーズ戦に比べ、メンバーが変わったと思うが、今日の15人を選ぶにあたってのポイントは?

「(プレシーズンマッチで)東京サントリーサンゴリアスを相手に良いパフォーマンスができ、また花園近鉄ライナーズ戦でも良いパフォーマンスができました。横浜キヤノンイーグルス戦はキャンセルとなりましたが、言い訳にはならないですし、そのぶんトレーニングで良い準備をしてきました。メンバーに関しては、メイン(平)が日本代表から戻ってきましたが、ロック以外は割とあまり変わっていないかな、と思います。トライアルゲームはいろんな選手に時間を与えるので、毎週同じメンバーにはなりません。ウチのスコッドを見てもらえれば分かると思いますが、誰が出ても同じ仕事を期待されています」

──前半は地域を取れたのにトライを取り切れなかった要因は?

「まずは相手が良いディフェンスを見せた、というところ。3回ヘルドアップされて、一度ゴールラインを越えたけれども、ボールを落としてしまいました。ラインアウトも1、2回スティールされたので、シンプルに自分たちの実行力の部分が大きかったです。あとは相手の良いディフェンスですね。そこで取り切れなかったことで、勢いを失ってしまいました。相手がハーフタイム前にスコアしたことが、流れという点でダメージがあったと思います」

──「驚き」とは自分たちの後半のパフォーマンスにという意味か?

「相手についてはプレビューもしているので、そういった点では驚きはなかったです。試合中の自分たちのリアクションには驚きがあったかなと思います。東京サントリーサンゴリアスや花園近鉄ライナーズとのトライアルゲームで良いゲームができたのに、それが今日は見えなかった。そういったところがサプライズでした。準備はしっかりできていたかな、と思ったのですが、試合を通してのサプライズです」

リコーブラックラムズ東京
武井日向キャプテン

「この日のためにプレシーズンをしっかりと準備をしてきて、勝利を目標にやってきたので残念な気持ちでいます。自分たちにフォーカスしてこの試合に臨んだのですが、自分たちがレジリエンスを見せなければいけないところで見せられなかった。相手にやられてしまった、という印象です」

──スクラムは前半互角だったと思いますが、後半はペナルティーにつながるスクラムもありました。相手の圧力をどう感じましたか?

「相手どうこうというよりも、誰が入っても自分たちのスクラムをする、ということでセットアップにこだわっていました。そこができていないとプレッシャーを受ける場面もあったので、誰が入っても同じセットアップができるように、今後修正していかなければいけないと感じました」

──試合のテーマと遂行度はどれくらいか?

「テーマは『DNAバトルで勝つ』。自分たちの大事にしている部分で勝つ、をテーマにしました。そこを見せられた部分もありますが、キツい状況になってもそれができたか、と言われたらできていなかったと思います。そういうところでまだまだ成長していかなければいけなかったと思いましたし、相手どうこうよりも自分たちがどうしたいか、どうしなければいけないか、をもう1回考えるべきかと思いました。

──前半はペナルティーゴールを狙わずトライを狙った意図について。

「自分たちのモールに自信がありましたし、スクラムも良い流れで組めていたので、そういう選択をしました。ペナルティーゴールを狙う、という話も出ていて、そこのコミュニケーションはよく取れていたと思います。その中で、全員で『じゃあモールでいこう』という話をして選択しました。チョイスに関しては、あれを選んだから負けた、というわけではないと思います。ただ実行する能力はつけていきたいな、と思います」

──22mラインの内側に入ってからが苦しかった。次戦に向けどのように改善していきたいでしょうか?

「敵陣ゴール前でトライを取り切れませんでした。逆に相手が22mに入ってきたときには、簡単にトライを取られてしまいました。本当だったらこれを逆にしなければならないと思います。自分たちがどれだけキツい状況でも絶対にディフェンスし続ける、逆に相手のゴール前では必ずスコアして帰ってくる、ということにこだわって、このバランスを次の試合では逆にしたいなと思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(右)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「タフな試合でした。リコーブラックラムズ東京はとても強いチームですし、パワーもすごくあるチームです。ハーフタイムにスタッツを見たところ、前半の自分たちのポゼッションは30%ぐらい。陣地も25%ぐらいでした。いろいろとプレッシャーがかかっているところもありましたが、ラッキーなところもあった。でもそれは相手が強いチームだからこそ、だと思います」

──スタッツの話もありましたが、そういう状況でリコーブラックラムズ東京を後半の1トライに抑えられた要因は?

「自分たちはチームとしてだけではなく、会社としてハードワークをするDNAを持っています。必死な時間帯もありましたが、みんながハードワークすることで自分たちのディフェンスラインを守ることができました。自分たちの、三菱のDNAを今日はお見せすることができたと思います」

──ゲームプラン及び実際のゲーム運びで良かった点と悪かった点は?

「自分たちが準備してきたことや戦術は、前半の2トライでお見せできたと思います。敵陣で2回のチャンスをものにできたことは、アタックコーチのおかげだと思います。自分たちは新しく昇格したチーム。毎週新しい経験が多く、自分たちが練習したことをしっかりと試合で出せるかどうか、というのはまだ分かりませんでした。でもそれをお見せすることができたのは、良かった点だと思います」

──序盤の苦しい展開から、気付いたら一方的な展開になっていました。ターニングポイントとなったプレーがあったら教えてください。

「最初の展開(リコーブラックラムズ東京の最初のアタック)に相手がすべてを投げ込んできていて、そういった展開はあまり練習で準備することはできません。選手に任せないといけないところではあるのですが、本当にみんなが粘って、どうにかして相手を止めてくれた。何度かプレーが続いた後、相手が最終的に3点を選んだ時、自分たちは相手の攻撃を耐えることができる、と選手たちが思ったのかもしれません。そこは本当に選手たちのハート(に関わる部分)が大きいです。そこの素晴らしさを誇りに思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「ヘッドコーチが言ったとおり、前半はすごくタフな時間帯がありました。そこを全員が気を抜かずに守り切ったことで、最終的な流れをつかめたのだと思います。また敵陣に入った時にしっかりと取り切れたことが、すごく大きかったと思っています」

──実際にディビジョン1のチームと戦っての感想は?

「D1で戦えるフィットネス、フィジカルをつけるため、プレシーズンは全員でハードワークをしてきました。実際にシーズンに入り、D1でも戦えるフィジカルやフィットネスがついていることを実感しています。そういったプレシーズンがあったからこそ、今日の結果が得られたんじゃないかなと思います」

──ゲームプラン及び実際のゲーム運びで良かった点と悪かった点は?

「試合を通して23人全員が1週間準備してきたことをクオリティー高く遂行できたことが良かったと思います。詳しいところは言えませんが、準備したことをグラウンドで表現できた、そこが本当に良かったなと思っています」

──今日の試合のテーマは?

「良い準備ができていたので、『80分間全員笑顔で楽しむ』とヘッドコーチが試合前に言っていました。(キャプテン自身は楽しめたか、と問われ)はい、楽しめました」

──昇格した年の開幕戦で勝点5。率直なお気持ちと、次戦に向けた意気込みをお願いします。

「この試合に勝つために準備してきました。それが結果につながったことは率直にうれしいです。チームメート、ダイナボアーズスタッフ、みんなを誇りに思います。ただ、まだリーグワンは始まったばかりなので。気を抜くことなく、一つひとつ成長していきたいと思います。次のトヨタヴェルブリッツ戦も1週間準備があるので、全員が同じ方向を向いていけるように。自分たちのラグビーを表現したいと思います」

──昨季から失点が少ないですが、粘り強さ、ハードワークするDNAはチームのディフェンスに生きているのか?

「昨年からグラックス(グレン・ディレーニーヘッドコーチ)のもとでディフェンスが向上しています。要因は全員が同じ絵を見られていること。システムに則って、全員が同じ動きをすることが、まず一つ目です。また粘り強さのところに関しては、練習からスタッフ陣がわれわれにどんどんプレッシャーを与えて、厳しさや忍耐強さをつけています。その二つが、三菱重工相模原ダイナボアーズがいま粘り強くディフェンスできている要因だと思います。あとはチーム内競争もとても多くなってきていて、いま試合に出ている選手も安泰ではない、自分のパフォーマンスを出さないといつ代わるか分からない、という環境ができてきています。そういったところも要因かと思います」

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