2023.01.08NTTリーグワン2022-23 D1 第3節レポート(東京SG 32-23 横浜E)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第3節 カンファレンスB
2023年1月7日(土) 14:30 味の素スタジアム (東京都)
東京サントリーサンゴリアス 32-23 横浜キヤノンイーグルス

「14人でも絶対勝つ」。
数的不利をはねのけたサンゴリアスの勝因

泥臭いプレーで勝利に貢献したフランカーの箸本龍雅選手

東京サントリーサンゴリアスにとって、開幕から続いた味の素スタジアムでのホストゲーム3連戦。1勝1敗で迎えた3戦目、1月7日の横浜キヤノンイーグルス戦は、我慢比べの末の勝利となった。

良くも悪くもゲーム序盤の話題の主は、この日がサンゴリアスデビューとなった10番のアーロン・クルーデン。先制を許したあとの前半6分に同点トライを奪うと、その後のコンバージョンキックも自ら決めて逆転に成功する。だが、好事魔多し。前半18分、危険なプレーでレッドカードとなり退場処分に。その直後には横浜キヤノンイーグルスに逆転を許してしまう。

残り60分以上を14人で戦わなければならない非常事態。普通に考えれば、ここからの再逆転はなかなか困難だ。この難しいミッションを成功できた要因の一つは、前線で精力的に体を張ったフォワード陣の踏ん張りだ。プレーの合間には選手間で「エナジーアップ! エナジーアップ!」と声がけをするシーンが増え、時にその声はスタンド席でも聞き取れたほど。その意図をキャプテンの齋藤直人はこう明かす。

「14人でも絶対に勝つ、という意志を共有するため、自分だけじゃなくフォワード陣からも、『エナジーを上げていくぞ』という言葉を何度か掛け合いました」

その齋藤に代わって後半からスクラムハームを務めた流大も、「本当にフォワードの頑張りがすべて」とその奮闘を讃えた。

「ラグビーで14人になるって本当に大変なこと。数的優位を作れないからこそ、チームで意志統一して後半に臨みました。ただ、フォワードの顔を見たときに自信満々な顔をしていたので、フォワード勝負にこだわりました」

プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたのはそんなフォワード陣の一角、フランカー(7番)の山本凱。もう一人のフランカー(6番)箸本龍雅とともに泥臭いプレーが光り輝いていた。その姿勢に、田中澄憲監督も目を細めた。 「試合前から二人には、『今日はバックロー(6、7、8番)の仕事、特にブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)のところが大事だぞ』という話をしていました。その仕事を二人ともしっかり果たしてくれましたね」

次節からはビジターゲームが続く東京サントリーサンゴリアス。ますます激しさを増す戦いに向け、大きな自信をつかんだ一戦となった。

(オグマナオト)

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督(右)、齋藤直人 共同キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督

「前半で14人になってもパニックにならず、冷静に対処した選手たちに成長を感じました。やはり、東京サントリーサンゴリアスらしい『ハードワークの徹底』ですね。14人になってからのほうがみんな動くし、強かったかなと思うほどで、それを80分間続けられたことが今日の結果につながりました」

──10番のアーロン・クルーデン選手にレッドカードが出たあと、すぐに森谷圭介選手を投入して10番の位置に据えるのではなく、後半からの投入にした理由は?

「10番が不在になっても、9番の(齋藤)直人と12番の(中村)亮土のところでコントロールしてくれていたので、すぐに変更するプランはとりませんでした。ただ、後半は勝利をつかむために仕掛けにいったということです。また、攻撃の舵取り役として亮土の負担が大きかったので、その部分は(後半頭から投入した)森谷と流大に託しました」

──横浜キヤノンイーグルスのファフ・デクラーク選手の印象と、彼に対してどんな対策を練ってきたのでしょうか。

「世界トップのスクラムハーフですし、何をやってくるか分からないので、そこに対してパニックにならないというか、想定外を想定内にしていく準備をしてきました。落ち着いてプレーができていましたし、今日はウチのハーフがいいパフォーマンスをしたと思います」

東京サントリーサンゴリアス
齋藤直人キャプテン

「前半からレッドカードが出てしまい、厳しい状況になった中で勝ち切れたこと、そういった状況でもゲーム中にやるべきことをチーム全員で統一して戦えたことは大きかったと思います」

──レッドカードが出たあと、ボックスキックを多用するなどプランを変えた印象を受けます。

「一つには、人数が少ないぶん、ボール保持をするよりは手放してディフェンスをしたほうがいいと判断したからです。また、(中村)亮土さんは普段、10番の位置に立ってコントロールする選手ではないので、そこを自分からのキックに変えよう、というのは亮土さんと話して決めました」

──退場したアーロン・クルーデン選手に変わって前半のペナルティーキックを担当されました。こうしたアクシデントに備えてキックの準備はいつもされていますか?

「準備という点では、昨季同様にサードキッカーの立ち位置なので、何かあったときのために練習していました。それが生きてよかったです」

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督(左)、梶村祐介キャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「今日は勝たなきゃいけない試合でしたが、自分たちから崩れてしまいました。一人少ない状況になっても東京サントリーサンゴリアスさんはしっかりいいコントロールができて、チャンスをしっかりスコアにまでつなげていました。そういうところの差が出ましたね。

ただ、下を向いていてもしょうがない。選手たちも試合後に言っていましたが、次の試合でどう振る舞うか。負けから学ぶなんてもう十分なので、しっかりレベルアップして強くなった横浜キヤノンイーグルスを次の試合で見せたいと思います」

──どこで崩れてしまったと分析しますか?

「アタッキングの部分で、自分たちのスタイルではなく、トライを取り急いだり、目の前のプレーよりも先のプレーを考えて細かいことが疎かになったり。僕らはしっかり組織としてアタックするチーム。そこの集中力が原因だと思います」

横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン

「今日の試合、相手が(前半途中から)14人というのもありましたけど、相手以前の問題で自分たちから崩れてしまった、そういうゲームでした。こういう試合を勝たないと今後も難しくなってきます。結果としては残念ですけど、しっかり前を向いて次に進みたいと思います」

──序盤はほぼノーミスで20分以上続いていました。そこからうまくいかなくなってしまった要因は?

「相手が14人になってからはずっと外にスペースがあるのは見えていましたし、自分たちのアタックマインドがより強まったというのはあるんですけど、結果としてそこで何か油断のようなものが出てしまった。組織として戦えていたゲーム序盤と比べると、どんどん個人個人になってしまったと思います。また、後半の最後は自陣にくぎ付けにされました。毎試合反省に出ている『ディフェンスで長い時間我慢できない』という課題があらためて出てしまったと感じています」

──次もビジターゲーム。どういうラグビーで勝利をつかむ展望ですか?

「自分たちのスタイルは『アタックラグビー』。そのために、練習からしっかり速いセットで攻める、という点をもう一度徹底したいです。選手全員、週明けからまたいいメンタリティーで集まってくれると思うので、しっかりチーム練習をしていきたいです」

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