2023.01.16NTTリーグワン2022-23 D1 第4節レポート(埼玉WK 34-19 トヨタV)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第4節 カンファレンスA
2023年1月15日(日) 14:30 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 34-19 トヨタヴェルブリッツ

開幕4連勝で首位を死守した埼玉WK。立役者は圧倒的なスピードと天性の得点感覚の持ち主

ウイングなのにフランカーも。脅威的なスピードとパワーを改めて見せつけた埼玉パナソニックワイルドナイツのマリカ・コロインベテ選手

埼玉パナソニックワイルドナイツが、トヨタヴェルブリッツに肉弾戦で勝利した。

埼玉パナソニックワイルドナイツは立ち上がりにトヨタヴェルブリッツの日本代表・姫野和樹にトライを許した。だが、その後に大西樹、ルード・デヤハー、マリカ・コロインベテのトライで逆転。27対14で前半を折り返す。後半は互いの我慢比べとなったが相手の反撃を食い止めて34対19で逃げ切り。開幕4連勝で首位を死守した。

球際で互いのプライドがぶつかり合う白熱のゲームとなった中で、スタンドを沸かせたのはフィジー出身のオーストラリア代表、マリカ・コロインベテだった。

100m10秒台の圧倒的なスピードを駆使する快速ウイングは、リーグワン初年度の2022年から埼玉パナソニックワイルドナイツでプレーしている。昨季はリーグ戦で6トライを挙げるパフォーマンスで「ベスト15」に選出された。

マリカ・コロインベテのスピードと天性の得点感覚が、価値あるトライを生んだ。前半26分、パントキックを追った野口竜司が叩いたボールを拾うと、一気にトップギアへ入れて左コーナーへ一直線に走っていく。弾丸のように加速すると、迫り来る相手DFをかわすようにライン際でダイブ。右手一本でポール際にボールを置くようにして、ワールドクラスのグラウンディングを決めてみせた。

「トヨタヴェルブリッツの選手の足が速かったが、あのシーンは決め切らなければいけないので最後は直感でダイビングを選択した。それがウイングとしてのフィニッシュの仕事だ。(TMOになったが)ボールを置いた感覚はあったのでトライを確信していた」

前半を13点差で折り返した埼玉パナソニックワイルドナイツは、後半にトヨタヴェルブリッツの攻撃を自陣で受ける展開。再三にわたりゴール前に迫られたが、一丸となったディフェンスで食い止めてトライを与えない。「あのディフェンスがワイルドナイツのプライド」(坂手淳史)。

アクシデントも力に変えた。大西の負傷交代によってフランカーのポジションとなったマリカ・コロインベテは、強烈なタックルを食らわせて相手に圧力をかけるなど守備でも存在感を発揮。後半はスコアが動かなかったが同31分にマリカ・コロインベテが密集の背後から相手DFを引きずりながら技ありのローリングでトライを奪って、乱戦は決着した。

2トライのマリカ・コロインベテは今ゲームのプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出された。勝利の立役者は「プレーヤー・オブ・ザ・マッチは意識せず、毎試合良いプレーができるように心掛けている。役割を果たしたことが勝利につながった」とさわやかな笑顔を見せた。

(伊藤寿学)

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督(右)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ ヘッドコーチ

「タフな試合でした。フィジカルな試合で、われわれにとってとても難しい試合でした。途中壊れかけたところもありましたが、うまく防げたと感じています。選手がチャレンジに対して良いワークをしてくれた。やるべきことに集中してくれていました。

ゲームとしては、ディフェンスとスクラムがとても良かった。後半の選手たちも頑張ってくれました。初出場の(ベン・)ガンター選手は短いプレーになりましたが、良かったと思います。チームは困難を乗り越えることで強くなります。けがから戻ってくる選手が出てきますが、新しい選手にプレータイムが与えられます。来週のリコーブラックラムズ東京戦も選手の活躍を楽しみにしています」

──選手の負傷もあり、難しい状況もあった。アクシデントへの準備は?

「毎週、予測や対策はしています。可能性があることに関しては準備をしていきますが、練習の中で長い時間をかけてやっているわけではありません。『WHAT IF』というシナリオを考えて、どうするかを考えています。内田(啓介)選手がウイングをやって、マリカ(・コロインベテ)はどこのポジションでもやってもらっています」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「フィジカリティーな試合でした。終わったあとに、明日、体が痛いだろうなというゲームでした(笑)。改善点は多くあるのですが、良かったところとしてはディフェンスです。ディフェンスにはチームのプライドが見えるところでもあります。ディフェンスは大切に鍛えてきて、積み重ねてきたところであるので、今日もゲームの中で良かったと思います。ペナルティは少なくなっていますが、イエローカード2枚はチームが難しくなるので、そこはチームとして反省しなければいけませんし、14人の戦いはラグビーですごく大変な10分になります。そこはチームとして改善していきたいと思っています。スクラム、アタックともにまだ良くなっていくので、チームとして良いゲームができるように修正していきたいと思います」

──後半に我慢比べになり、スコアが動かなかった。

「僕が先ほどプライドと言ったところは、あのディフェンスのところを指しています。そういったところでプライドが見えたと思います。仕上がりについてはまだ細かいコミュニケーションは必要です。ポゼッションやテリトリーを奪われた時間もありましたが、その時間も楽しんで守れたと思います」

──ディフェンス力が上がっている。

「ディフェンスは堀江(翔太)さん中心に話しています。アタックでも、つなぎ目を大事にしています。ラグビーは話さないと意思統一できないので、みんなで話しながら強くなっていきたいと思います」

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(左)、福田健太選手

トヨタヴェルブリッツ
ベン・ヘリング ヘッドコーチ

「非常に残念な結果でした。埼玉パナソニックワイルドナイツはチャンピオンらしい戦いをしたと思います。チャンスをすべて使ったと思います。トヨタヴェルブリッツはチャンスを生かし切れない、そういった試合になりました。まだトヨタヴェルブリッツは歯車が完全にかみ合っていない状況ですが、埼玉パナソニックワイルドナイツは非常にスタンダードが高い試合を80分間通じて行っていたと思います」

──後半だけのスコアは5対7だった。後半の評価は?

「後半、トヨタヴェルブリッツのメンバーは最後までハートを見せたと思います。小さなことが足りずに、フィニッシュまで持ち込めなかったという感触です。トヨタヴェルブリッツのディフェンスには心がこもっていました。心と精神が見えたが、まだ我慢が足りなかった。ただ、トヨタヴェルブリッツの情熱は見せてくれたと思っています」

トヨタヴェルブリッツ
福田健太選手

「個人としてもチームとしてもリーグワン初代王者の埼玉パナソニックワイルドナイツさんに、どれだけチャレンジできるか楽しみにして1週間準備を重ねてきました。その中で結果はついてこなかったのですが、小さいところでターニングポイントを埼玉パナソニックワイルドナイツさんに取られたという印象があります。今後、歯車がかみ合うチャレンジをしていきたいと思います」

──チャンスはありながらも相手のディフェンスを破れなかった理由は?

「埼玉パナソニックワイルドナイツのディンフェンスの壁が強力だったのは確かです。その中、お互いに我慢比べになって、埼玉パナソニックワイルドナイツさんが22mに入ってからスコアを重ねてきました。われわれとしては埼玉パナソニックワイルドナイツさんのようにディフェンスで我慢できなかったことが敗因だと思います。もう一つ、我慢強く戦えていければ展開は違っていたと思います」

──惜しい試合ではなく勝たなければ意味がない。

「ゲインをしても、ブレイクダウンで仕事をやり切れないとトライにつながりません。埼玉パナソニックワイルドナイツさんは取り切る力があって、そこは見習っていかなければいけない。トッププレーヤーが集まっているので個人の意識のところが大切。細かいところの修正の積み重ねだと思います」

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