NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3 第8節
2023年2月18日(土)13:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
マツダスカイアクティブズ広島 38-5 クリタウォーターガッシュ昭島
待望の初勝利でSA広島に漂う逆襲の予感。ジェイコブ・アベルがポジティブなエネルギーを吹き込む
NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3 第8節、Balcom BMW Stadiumにクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)を迎えてのホストゲームで、マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)がついに連敗のトンネルを脱出した。小雨が降る中での試合だったが、SA広島は最後まで集中力を欠くことなくプレーし、38-5と結果的には大差をつけての勝利となった。
試合をとおして大活躍だったのが、9番ジェイコブ・アベル。SA広島でのデビュー戦で、チームのファーストトライを取ってみせた。「(ジェイコブ・)アベルの加入でチームに新しい武器ができた」と、中居智昭ヘッドコーチも評価。(ジェイコブ・)アベル本人は、「ほかの(スクラム)ハーフと比べたらフィジカリティで違いを出せると思う。12番(インサイドセンター)でのプレーを求められているのも、いろいろなことにチャレンジするのが好きな性格だから楽しい。できれば(スクラム)ハーフのほうがいいけど」と笑う。経験のある選手の加入は、明るいキャラクターと相まって、チームにポジティブなエネルギーを与えてくれそうだ。
中居ヘッドコーチ、﨑口銀二朗キャプテンともに、「どれだけチャレンジできるか。自分たちにフォーカスして、やるべきことを、やり切る」と、口をそろえて言うように、チーム全員の意識も統一されてきた。この試合でSA広島は、3トライ差以上のボーナスポイントも含めて、勝点5を獲得。ファンの後押しとともに、ディビジョン3の最下位から、SA広島の逆襲がはじまる予感がする。
一方、ビジターゲームでの勝利が遠いWG昭島。今季、7試合のうち5試合でスタメン出場している江本洸志は、「いいときのWG昭島は、トライを取ったあとも、取られたあとも、すぐに全員が集まって、やることを整理して、そういう円陣を徹底するんですけど、今日は自分も含めて、全員がバラバラになっていた。そこのところをもっと自分から声を掛けていけたらと思います」と、唇をかむ。「一手一つ」、自身の座右の銘を体現するために、ルーキーのチャレンジが続く。
(平野有希/Rugby Cafe)
マツダスカイアクティブズ広島
マツダスカイアクティブズ広島
中居智昭ヘッドコーチ
「連敗が続く中で、選手たちが自分たちを見つめ直して、前を向いて戦ってくれたことが今日の勝利につながったと思います。今日は多少のミスはあっても、選手全員がお互いをカバーして、一体となったアタック・ディフェンスができました。何より、選手自身が考えて、ゲームをコントロールした点が、私にとっては一番うれしい。成長を感じた一戦でした」
──長いトンネルでしたが、正しいプロセスを経てつかんだ初勝利のように見えます。
「これまでは、試合の中でのミスを、うまくいかない原因だと考えていた部分がありますが、ミスは起こるもので、ミスが起きたときにどうマネジメントするか。そこのところを、トレーニングを通じて選手と一緒に成長できていると実感しています。今日も実は最初のラインアウトでミスがあったのですが、選手たちがリカバリーをしっかりやってくれて、そのあとのラインアウトはすべてキープし続けた。成長の証が見られた試合でした」
──新戦力がさっそく活躍しました。9番のジェイコブ・アベル、14番の大内錬の評価は?
「(ジェイコブ・)アベルについては、9番というコミュニケーションが重要なポジションで、すごく周りの声を聞く能力もあって、自分でもしかけることができる。チームとしてもう一つの武器ができたと思います。大内錬は、いまセブンズ日本代表(7人制ラグビー日本代表)としてチャレンジしていて、そこで得た活力をチームに注入してほしいと思います。今日の試合ではハイボールでも、ブレイクダウンのところでも細かい仕事を見事にしてくれて、勝利の要因でもあったかなと思います」
──次戦に向けて、チームへのメッセージをお願いします。
「いまの上向きの状態を、一過性のもので終わらせてしまうのではなく、常に自分たちからコントロールして、前を向いて、前に出続けることが大切。そういうラグビーをお見せできたらと思います」
マツダスカイアクティブズ広島
﨑口銀二朗キャプテン
「今季の初勝利、素直にうれしいです。これまでの試合では自分たちのミスや、相手の勢いを受けてしまうことが多かったのですが、試合前に選手同士で話し合って、やるべきことを明確にしたことで、今日は終始安定して自分たちの試合運びができたかなと。今日勝てたことで、ようやくスタートが切れた。残り6試合、しっかり上を見て戦っていきたいです」
──自分たちがやるべきことを明確にしたというのは、具体的に言うとなんですか?
「ミスが続いたり、相手に吞まれたりすると、ベクトルが他人に向いてしまうので、自分たちがやるべきことをやろう、と。アタックであれば、シンプルにボールに走り込んで、レッグドライブして、打開していく。ディフェンスでは、受けてしまうと下げられるので、しっかり前に出る。そのためには、やっぱり基本的なこと、細かいことが一番大事で、それを全員でやり切る。それを整理できたことで、80分間自信をもって戦うことができたと思います」
──次節に向けての意気込みをお願いします。
「やるべきことは変わらないです。自分たちがどれだけチャレンジできるか。自分たちにフォーカスを置いて、やり切る。その先に勝利があると思います。しっかりやり切りたいです」
クリタウォーターガッシュ昭島
クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ
「結果にはとてもがっかりしています。試合の入りは良かったですが、ハンドリングエラーやセットピースのところでミスが続いて、崩れて、試合の流れを失ってしまいました。一方で、マツダスカイアクティブズ広島はとてもいいゲームを、特に後半はいい試合を展開したと思います」
──10番林田拓郎、12番アンドリュー・ディーガンのダブルフライハーフの意図は?
「どちらも試合をつくることができる選手なので、二人を一緒に出すことで、ボールをより動かしたいということです。ハンドリングエラーが多かったので、やりたかった展開にはなりませんでした」
──アウェイで勝てない要因はどこに感じていますか?
「とくに今日に関しては、4週連続で試合が続いた最後の試合だったので、週の練習ボリュームも落としたのですが、もうちょっとやり方があったのかなと。そこは見直しが必要だと感じています」
──次の試合まで2週間空くが、どこを修正していきたいですか?
「ラインアウトやセットピース、ハンドリングエラーのミスを減らすこと。シンプルに、自分たちのエラーを減らす。そこにフォーカスして、自分たちから修正していくつもりです」
クリタウォーターガッシュ昭島
石井洋介キャプテン
「今日の試合は自分たちのミス、それに尽きます。流れに乗れそうなときもミスで相手にボールを渡してしまう場面が多くて、自分たちのやりたいことができなかった。それがこの結果になってしまったのかなと思います」
──雨の影響はありましたか?
「自分自身では感じていませんでしたが、試合をとおしてミスが多かったということは、少なからず影響したのかなと思います」
──ラインアウトでのミスが続いているのは何が要因ですか?
「相手ゴールに近いところでのマイボールラインアウトで、この3、4試合ずっとミスが続いていて、プレッシャーの中での精度があまりよくない。やっぱり練習からプレッシャーをイメージしながらやっていくことが必要なのかなと思います」
──次の試合に向けての課題は?
「自分たちの強みはセットピースからのアタックにあるので、まずはセットプレーを安定させること。あとはハンドリングエラーとか、ブレイクダウンでのミスとか、そういう細かいところ。この2点を修正していきたいです」