2024.03.25NTTリーグワン2023-24 D3 第10節レポート(SA広島 28-48 WG昭島)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン3 第10節
2024年3月23日(土)13:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
マツダスカイアクティブズ広島 28-48 クリタウォーターガッシュ昭島

順位の近いライバルに勝利。
殊勲の元イングランド代表が語る「長い旅」

「できれば日本で長くプレーしたい」と語るクリタウォーターガッシュ昭島のピアーズ・フランシス選手

昨年の12月16日に行われた開幕戦では、マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)が躍動して勝利を収めたこのカード。その開幕戦では前半3分に先制トライを決めて試合の主導権を握ったが、後半の立ち上がりにクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)にトライを許して逆転されてしまう。それでも、そこからSA広島がギアをもう一段上げて突き放した。

あれから3カ月、雨の降るBalcom BMW Stadium に乗り込んだWG昭島は、3位を争うSA広島との直接対決で重要な勝利をつかみ取った。

まず先制パンチが効いた。前半4分にペナルティゴールを決めたピアーズ・フランシスは、そのプレーを選択した意図をこう語っている。

「こういうコンディションでは、まず得点することが大事だった。ビジターの試合で先に得点を取って相手にプレッシャーを掛けたかったし、リードすれば自分たちは自信を持ってプレーできる」

ワイクリフ・パールー ヘッドコーチが試合後に「今日のパフォーマンスにはすごく高い評価をしています。今シーズン初めてスタメンで出た選手が何人かいたんですが、パフォーマンスは良かったと思います」と称えたのも、イングランド代表キャップも有する33歳のピアーズ・フランシスの巧みなゲームメークがあったからだ。

もっとも、後半はSA広島がボーディン・ワッカを投入して流れを変え、後半6分に笹岡海斗がトライを決め、コンバージョンキックも成功。6点差としたことで試合の行方は分からなくなった。ピアーズ・フランシスは後半の立ち上がりを振り返り、自分たちに問題があったと話した。

「ハーフタイムに、『後半は良い入りをしよう』と話しました。しかし、最初のキックのあとに二人が一人にディフェンスをしに行ってしまってラインブレイクされ、その後もミスが続きました。話したことと真逆のことをやってしまいました」

一方で、後半の入りに失敗しながらも崩れなかったチームに成長を感じてもいた。「一度崩れると戻ってこられない試合もあります。そこはすごく評価したい。今日は選手個々の成長が見られました」。優しい笑みを浮かべていたピアーズ・フランシスは、これからもWG昭島を正しい方向に導いていくに違いない。

日本で誕生して3カ月になった娘と一緒に家族で日本の生活をエンジョイしており、「自分はまだまだ若い33歳だと思っています。体はすごく元気だし、できれば日本で長くプレーしたい」と、ピアーズ・フランシスはしっかりと前を見据えて語った。

「いまはチームを立て直しているところですが、いい感じになってきています。ただ、まだまだこれからです。長い旅になるでしょうね」

(寺田弘幸)

マツダスカイアクティブズ広島

マツダスカイアクティブズ広島の中居智昭ヘッドコーチ(左)、﨑口銀二朗キャプテン

マツダスカイアクティブズ広島
中居智昭ヘッドコーチ

「本日のゲーム、ありがとうございました。雨の中にもかかわらず、たくさんのお客さんに来ていただいて感謝しています。

試合のほうは、ボールがなかなか手に付かない中、前半にハンドリングエラーがすごく多くなってしまって、自分たちのリズムに乗れないような試合展開でした。後半に修正してアタックのほうにもっとシフトしていこうということで流れを変えるような形にはしたのですが、クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)さんのアタック力に上回られてしまい、最後の最後まで自分たちの強みがなかなか出せないゲームだったと思います。

その中でも攻撃のところで光るものが見え、ディフェンスのところでもしっかり食らいついていくところがありましたが、全般的にWG昭島さんの精度が素晴らしいゲームだったと思います」

マツダスカイアクティブズ広島
﨑口銀二朗キャプテン

「本日もありがとうございました。

試合の前半のほうは、自分たちのミスや、WG昭島さんの継続するアタックで少しスペースができたところを突かれたりしていい流れを作れなかった中で、まだ届く範囲のスコアで前半を折り返しました。後半の最初にスコアできたところまでは良かったんですけど、そこからまた自分たちのミスやペナルティから簡単なトライの取られ方をしました。それが重なって、試合をひっくり返せなくなってしまいました。まだまだ練習で積み重ねていかなければならないものがいっぱいあるとあらためて思いました。

すごく悔しいですけど、3連戦はあと2試合残っているので、下を向かずにしっかりと次に向けてやっていきたいと思っています」

──後半はボーディン・ワッカ選手も出場して流れを変えられたと思います。先ほども後半にスコアしたあとのことを悔やまれていましたが、フィールド内でどんなことが起こっていたのでしょうか?

「スペースにボールを運ぶ面では、後半に(ボーディン・)ワッカが入ってすごくボールが動き出したんですけど、セットアップの遅さがあり、ブレイクダウンもちょっと見てから寄ってしまうところがあって、自分たちのリズムを作るまでには至らなかった。そこが後半にスコアを重ねられなかったところかなと思います。自分たちからもっとアクションを起こすところをしっかりと重視してやっていきたいと思います」

クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(右)中尾泰星ゲームキャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ

「フィジカルゲームになることは分かっていたので、そこにフォーカスして準備してきました。今シーズンをとおして一番フィジカルにプレーできた試合だったと思います。改善点は何個かありますけど、今日のパフォーマンスにはすごく高い評価をしています。スタメンも今シーズン初めての選手が何人かいましたが、パフォーマンスは良かったと思います。今年はまだ勝利が少ない状況ですが、今日は本当に称えたいです」

──ディビジョン3の3位が現実的な目標になりました。シーズン終盤に向けて、どうしていきたいですか?

「3位で終われればいいですけど、チームとしていまは立て直しているところです。新しい選手が入ってきて、その選手の強みを出しているところなので、この2、3週間はしっかりとそこにフォーカスしていきたい。今日のゲームを見ても分かったように、フィジカルは良くなっていると思うので、それを継続していければいいと思います」

クリタウォーターガッシュ昭島
中尾泰星ゲームキャプテン

「いつもクリフ(ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ)に言われているように、今日も試合の入りから『フィジカルのところで圧倒して前に出ていくんだ』と言われていましたが、雨でもありましたし、ガンガン当たっていくだけだと(プレーする)エリア的にも厳しいところが多かったので、ゲームの中で話しながらキックをうまく使ったのが前半の戦いにつながったと思います。後半もアタックしたい気持ちはあったんですが、エリアを取るためにキックをしてそこからチェイスできたので、今日はこういう結果になったと思っています」

──中尾選手自身のプレーを振り返ってみて、いかがでしょうか?

「今日はこうやってプレーヤー・オブ・ザ・マッチをいただいたんですが、自分的には『そんなにいいプレーをしたのかな?』というのが正直なところです。確かにジャッカルを2本いいところで決めることができたかなと思いますが、僕の強みであるタックルのところで今日は3、4回くらい外されたところがあったので、自分のプレーには満足していないです。ただ、こうやって選んでいただいたことはすごくありがたいですし、もう1回選ばれるように、自分も納得して選ばれるように、頑張りたいと思います」

──ピアーズ・フランシス選手の存在はすごく大きいと感じましたが、いかがでしょうか?

「やっぱりキックの距離が出るので、僕らも必然的に相手のキックオフをタッチに出して前に出られます。それからセットピースのところはいつもいろいろなバリエーションの練習をしてアタックにつなげていっているんですが、ピアーズ(・フランシス)がいいキックを蹴ってくれて、いいチェイスをしたことで相手が蹴ってくれて、自分たちがアタックにいく。そのいい流れができたところが今日のゲームの良かったところだと思います」

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