2023.02.26NTTリーグワン2022-23 D1 第9節レポート(静岡BR 17-25 東京SG)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第9節
2023年2月25日(土)14:30 ヤマハスタジアム(磐田) (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 17-25 東京サントリーサンゴリアス

激しくぶつかり合った青と黒。若い力の躍動がチームの未来を明るく照らす

東京サントリーサンゴリアスの下川甲嗣選手
静岡ブルーレヴズの槇瑛人選手(ボールキャリア)と東京サントリーサンゴリアスの河瀬諒介選手(右)
静岡ブルーレヴズの家村健太選手

青天白日のヤマハスタジアム。静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)の青いジャージーと、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)の黒のジャージーが激しくぶつかり合ったNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1第9節は、25対17で東京SGが粘り勝ち。そんな試合で目を引いたのは、両チームとも「若い力」だった。

試合前、「セットピースが強い静岡BR相手に、接点でいかに負けないか」と選手も監督も口にしていた東京SG。攻守両面でその接点に顔を出す6、7、8番のバックロー陣には、2年目の山本凱、3年目の下川甲嗣と箸本龍雅を起用。田中澄憲監督が常々「競争し合って成長著しい若い3人」と語るバックローがタックルで、そしてボールキャリーで当たり負けしなかった。

また、7対5と拮抗していた前半23分、東京SGにとって貴重な追加点となるトライを決めたのは、この日が二度目の先発となったルーキー、早稲田大学出身の河瀬諒介だ。

ただ、この日はそんな1年目の河瀬よりも若い力があった。卒業前から公式戦出場が可能になる新制度「アーリーエントリー」で静岡BRに入団したばかりの槇瑛人(早稲田大学4年)だ。この日が初先発となった大学の1年後輩を先輩・河瀬はこう評した。

「まさか同じ背番号(14)で出ることになるとは思っていなかったですけど、僕も槇と戦えることは楽しみでした。外側でのランニングといった『槇らしい強み』は出せていましたし、やっぱりいい選手だなと思いましたね。ただ、僕も槇もまだ先発に定着したわけじゃないですから。『お互いしっかり頑張っていこう』と話をしました」

その槇とともにアーリーエントリーで静岡BRに入団した家村健太(京都産業大学4年)もこの日がリーグワン初出場初先発。司令塔として80分フル出場を果たした。そんな二人の抜擢理由を堀川隆延ヘッドコーチはこう説明する。

「家村はゲームコントロールできる力があり、チームの良さをどう発揮するか、すごく考えてプレーできる選手です。練習でもパフォーマンスが非常に良かったので彼を信じて使ってみました。槇についても、ボールを持ってから全速力での躍動感を皆さんにお伝え出来たんじゃないかと思います。二人ともまだ若いし、まだまだ伸びシロがあります。大事に育成していきたいです」

勝った東京SGだけでなく、負けた静岡BRもチームの輝かしい青写真を描きたくなる……そんな一戦だった。

(オグマナオト)

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズ
堀川隆延ヘッドコーチ

静岡ブルーレヴズ(D1 カンファレンスA)の堀川隆延ヘッドコーチ

「選手は今日もすごくいいパフォーマンスをしてくれました。チームとしての成長も見せてくれましたし、若い力も躍動しました。ただ、勝負の点でいうと『ここを踏ん張らないといけない』という、たとえばラスト20分の自陣でのペナルティの部分で踏ん張り切れなかったことがいまのチームの弱さであり、伸びシロでもあると思います。

今日のゲームを悲観することなく、何が足りなかったのかをもう一度選手としっかり見つめ直して次に向かっていきたいと思います。(アーリーエントリーで初先発の)10番の家村健太、14番の槇瑛人はともに素晴らしいパフォーマンスをしてくれたと思います」

──アタックにおける敵陣22mに入って残りあと一歩、二歩での課題はなんでしょうか?

「東京サントリーサンゴリアスさんは本当に素晴らしいディフェンスだったと思います。試合後に田中(澄憲)監督とも話しましたが、このゲームに向けてブレイクダウンの練習をすごくやってこられたと。非常に堅いディフェンスでした。スペースにボールをもうひとつふたつ運べればスコアできるチャンスはありましたが、そこまでに至らないのが現状だと思います。アタックのブレイクダウンをもう一度見つめ直したいです」

静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス 共同キャプテン

静岡ブルーレヴズ(D1 カンファレンスA)のクワッガ・スミス共同キャプテン

「いいゲームだったと思います。東京サントリーサンゴリアスは本当にいいチームで、ディフェンスはしっかりオーガナイズされ、チャンスを作ったらそこをしっかり突いて得点を重ねていました。そんな相手に対し、われわれも選手一人ひとりが最後まであきらめずによく戦いました。一緒に戦った選手を誇らしく思います」

──初先発だった家村健太選手と槇瑛人選手のパフォーマンスはいかがでしたか?

「すごくいろいろ考えてプレーしていましたし、いいチームを相手にしっかりパフォーマンスができたというのは、彼らの自信につながっていきます。彼らはまだまだ成長を続けていくはず。素晴らしかったです」

──今日はひさしぶりのホストゲーム、そして、観客の声出しも解禁されました。今日のスタンドの雰囲気をどう感じましたか?

「ホームスタジアムでファンのみなさんの前でプレーできることは、いつも嬉しく思っています。だからこそ、ファンのみなさんにもっと誇りに思ってもらえるようなプレーをしていきたい。今日は風が強く、フィールドでプレーしているわれわれだけでなく、見ているほうも大変だったと思います。その中でしっかりと応援をしてくださったのは喜ばしいことですし、もっともっとファンのみなさんが興奮できるプレーをしていきたいです」

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督

東京サントリーサンゴリアス(D1 カンファレンスB)の田中澄憲監督

「雰囲気のいいスタジアムで、非常にいい環境で試合ができました。まずはそこに感謝を申し上げます。静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)さんはここのところ僅差の試合を落としているチーム状況だったので、ホームでわれわれを迎えるにあたってモチベーションは絶対に高いと思っていました。その意味でわれわれとしても危機感を持って臨んだ試合でしたし、結果的にも内容的にもそのとおりになったと思います。

われわれも、今日はペナルティのところで主導権を握り切れなかった。そこは普段の練習でどう改善できるのか。選手たちと引き続き取り組んでいきたいです」

──セットピースの部分はどう振り返りますか?

「スクラムは誤算でした。特に後半、自分たちが有利に組めると思っていたところでそれができなかった点は、やはり静岡BRさんの強いところでもあるのかなと。

ラインアウトは、普段は大戸(裕矢)選手がジャンパーとして高い獲得率を持っていますので、そこにプレッシャーを掛ける狙いでした。ただ、その大戸選手がケガによる欠場ということで、マリー・ダグラス選手とマルジーン・イラウア選手に散らしていました。そこを絞り切れず、逆に難しかったですが、その中で比較的獲得できていたと思います」

──今回はテビタ・タタフ選手に代わって箸本龍雅選手がナンバーエイトで先発するなど、若い3人(山本凱、下川甲嗣、箸本)でバックローを組みました。その狙いと3人の評価を聞かせてください。

「静岡BRさんはワークレート(仕事量)の部分で強みのあるチームなので、そこに対抗するためにもハードワークができる若い3人を起用しました。そこでしっかりと60分くらい戦って、最後にインパクトのある『(テビタ・)タタフで追加点を!』という展開を考えていました。

3人ともライバルとして争いながらやっていますので、すごく成長を感じます。まだまだ荒削りな部分もありますが、試合を重ねるたびにどんどんいい経験ができていると思います」

東京サントリーサンゴリアス
齋藤直人キャプテン

東京サントリーサンゴリアス(D1 カンファレンスB)の齋藤直人 共同キャプテン

「対静岡ブルーレヴズというところで、セットピースやブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)の部分にフォーカスしてこの一週間を過ごしてきました。ブレイクダウンに関しては(ナンバーエイトの)クワッガ・スミス選手を中心に絡んでくることは想定できていたので、そこに対して、いいブレイクダウンを作り、いいテンポにできていたんじゃないかと思います。

ただ、自分たちのペースを握り切れなかった要因として、やはりペナルティ、ディシプリン(規律)のところに課題がありました。毎節のように課題として挙がっている部分なので、チームとしてもう少し、何か気合いを入れて向き合わなければならないと思っています」

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