2024.01.14NTTリーグワン2023-24 D1 第5節レポート(静岡BR 25-29 東京SG)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第5節 カンファレンスA
2024年1月13日(土)14:00 ヤマハスタジアム(磐田) (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 25-29 東京サントリーサンゴリアス

コンバートからの初キャップ、そして初トライ。寄り添ってくれる偉大な先輩を超えるために

登録はスタンドオフ。しかし昨年の10月下旬から練習を始めたばかりというスクラムハーフとしても才能を開花させているという静岡ブルーレヴズの岡崎航大選手

前半は完全に自分たちの形で試合を進め、後半も24分まで8点のリード(25対17)を奪っていた静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)。しかし、その後は東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)に主導権を奪い返され、後半38分に逆転トライを決められて、ホストゲームで2戦連続の逆転負け。勝てば大きな自信になる試合をあと一歩のところで落とし、非常に悔しい結末となった。

ただ、その中でもスクラムやディフェンスの改善によってスター軍団を圧倒する時間帯を作るなど、ポジティブな要素も多く見えた。

そうした光明の中でもう一つ大きかったのは、岡崎航大の成長ぶりだ。

筑波大学時代はセンターとしてプレーすることが多く、2021年にヤマハ発動機ジュビロ(当時)に加入してからはスタンドオフを本格的に務めるようになった。今季も登録ではスタンドオフだが、昨年の10月下旬からスクラムハーフの練習を始め、みるみる適性を発揮し始めた。チームとしても、若手の田上稔が負傷して今季中の復帰が難しく、バックアップの選手を増やしたいという事情があった。

そして前節の三重ホンダヒート戦でスクラムハーフとして先発し、ジャパンラグビー リーグワン初キャップをつかむと、これまでの経験を生かしたボールキャリーやテンポの良い球出しなどで持ち味を発揮。藤井雄一郎監督からも及第点を与えられて、今節も引き続き先発し、ヤマハスタジアムでの初出場に至った。

初めてのホストゲームで、岡崎は小気味良い配球で攻撃をリード。前半28分にチームのこの試合最初の、自身にとってはリーグワンでの初トライを決めてみせた。この場面、右にクワッガ・スミスがいて相手の注意が一瞬そちらに向けられたスキを見て、パスからランに切り替えて狭い隙間をすり抜けていった。

「10番をやってきたので、前を見るというところはスクラムハーフでも生きていると思います」と彼自身が試合前から語っていたとおり、自らの持ち味を存分に発揮したトライだった。

「今日うまくできれば合格かな、と思ったんですけど、ディフェンスもできているし、ウチのオプションの一つになってくれたと思います」と、藤井監督にとってもうれしい活躍を見せた。

そんな岡崎の急成長を促しているのは、38歳の大ベテラン、矢富勇毅だ。主力選手としてのプレーだけでなく、プレイングアドバイザーという役割も担っている矢富勇毅は、岡崎がスクラムハーフに挑戦し始めた当初から多くの実戦的なアドバイスを与えてきた。

「矢富(勇毅)さんには最初からパスを見てもらっていましたし、僕のクセも見抜いて的確にアドバイスしてもらうなど、本当に細かく教えてもらっています。それは自分が上達する上で本当に大きいと思います」と岡崎も感謝の言葉を口にする。

センターやスタンドオフの経験を生かしたフィジカルの強さやランプレーも、現代的なスクラムハーフとして彼の大きな武器となる。

「東京SGの流(大)選手や齋藤(直人)選手も、継続してテンポ良くボールを出していくところや相手にプレッシャーを掛けるところもうまいと思ったので、そこは盗んで自分のモノにしたいと思っています。あとは矢富(勇毅)さんがいてくれているうちに、いろいろな経験や知識を学んでいって、矢富(勇毅)さんを超えるようなスクラムハーフに成長できれば、と思っています」

スクラムハーフという新たな道での開花を目指す岡崎。その成長曲線は静岡BRの今季において大きな楽しみの一つになっていくことだろう。

(前島芳雄)

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの藤井雄一郎監督(右)、マロ・ツイタマ バイスキャプテン

静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督

「すぐそこまで(勝利が)来ていたんですけども、なかなかいいようには点も取れなくて、最後……。選手は精一杯持っているものを出して、本当にスター軍団だと思うんですけども、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)さんに立ち向かってくれました。これ以上のものは求められないかなと思うので、しっかり前を向いてまた次に行きたいと思います」

──良い流れの前半から、後半はなかなか主導権を握り続けられなかった原因というのは、どう感じていますか?

「スクラムでペナルティを取られたり、自分たちの流れに持ってこれそうなところでのキックオフのミスであったりなど、自分たちのミスが自分たちの首を絞めたかなと感じています」

──岡崎航大選手を2試合連続でスクラムハーフとして先発起用しましたが、今日の彼のプレーはいかがでしたか?

「今日うまくできれば、合格かなと思っていたんですけど、前半にトライも取りましたし、ディフェンスもできている。ウチのオプションの一つになってくれたんじゃないかと思います」

──試合終盤のところは、東京SGやトップ4のチームはリザーブからどんどん強い選手が入ってきます。

「そうですね。あとから入ってくる選手も代表の選手や、経験もたくさんある選手が出てくる。それは何とか練習量で、選手も本当にハードな練習をして、しっかり受けられるようにはなっていたんですけど、試合中の小さなミスや、コントロールなど、そういうことはこういう負けの中でしっかり経験を積んで、自分たちのモノにしていくんじゃないかと思っています。決して敵わない相手ではないと思っているので、前を向いていきたいと思っています」

──クワッガ・スミス選手が負傷交代により、不在となったのは痛かったでしょうか?

「それはラグビーなので、相手も同じようにけがもします。もちろん影響がないと言えばうそになると思うんですけども、それはラグビーのシーズン中に起こることなので、その中でいる選手が戦っていくというのがチームだと思います。けがはけがで残念ですけども、そこは前を向いていきたいと思います」

──クワッガ・スミス選手のけがの状況はいかがですか?

「まだちょっと。いまは治療中なのではっきり言えないし、レントゲンを撮ったりしないといけないと思いますが、シーズン中には戻ってこれるんじゃないかなと思います」

静岡ブルーレヴズ
マロ・ツイタマ バイスキャプテン

「藤井さんが言ったとおり、前半は良いスタートを切ることができていたんですが、後半の、特に最後20分のところで、東京SGさんに主導権を握らせてしまった。ここでしっかりと学んで、次の試合に向かって成長していけたらいいなと思います」

──前半の良い流れから後半なかなか主導権を握り続けられなかった原因というのは、どう感じていますか?

「藤井さんが言ったのと同じで、ミスで自分たちにプレッシャーを掛けてしまい、相手に主導権を握られてしまった。特に東京SGさんというアタックの強いチームにボールを与えてしまうと自分たちが我慢しなければいけない。そこがしっかりできなかったと思っています」

──監督も『ディフェンスが良くなった』と言っていましたが、ご自身も良いタックルを連発していました。チームとしてのディフェンスの手ごたえはいかがですか?

「そうですね。藤井さんが言ったように最初の東芝ブレイブルーパス東京さんとの試合からディフェンスのところを変更して、そこから毎週しっかりと練習を積んできました。今日は良かったところもあったんですけども、最後のところでトライを取られてしまったということはしっかりと学んでいかなければいけませんし、これから自分たちとしてはポジティブなところにしっかりとフォーカスしていくこと。ネガティブなところはしっかり自分たちで練習して改善していく。次は花園近鉄ライナーズさんとの試合なので、そこで良い試合ができるように頑張っていきたいと思います」

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督(右)、堀越康介キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督

「本日はありがとうございました。本当にタフなゲームでした。このゲームを勝ち切ったということはわれわれにとってもすごく自信になります。試合をする前から静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)さんは2連勝中ということと、ホストでのゲームということで、本当に苦しい戦いになるというのは分かっていたんですけども、本当によく我慢して、80分トータル23人でしっかりと勝ち抜いてくれた。本当に選手のことを誇り思います」

──最後の場面で逆転できた理由はどんなところだと思いますか?

「いくつか肝になるというか、ゲームの大事なモーメントがあったと思うんですけども、そこでしっかりと集中力を持って、逆にペナルティを取られないことや、(ボールを)取り返したこと。あとはテンポをしっかりとフィニッシャー(交代出場の選手)が上げられたことはすごく大きかったかなと思います。静岡BRさんの場合は、メンバーを積極的に代えてくるというよりは、どちらかというとなるべくスタートのメンバーで長い時間を戦うチーム。われわれは今日の場合は早めに(交代の)カードを切っていくというか、フィニッシャーをどんどん入れていく。フィニッシャーのメンバーにも自信を持っていますので、そういうところもうまくいったのかなと思います」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン

「今日の試合は、本当にタフというか、本当に最後の最後まで分からない、我慢続きの試合だったと思います。その中でちょっとパニックになるときもありましたけど、自分たちでもう1回、どういうラグビーに立ち返るのかというのをグラウンド内で冷静にリーダーが話して、それを最後まで遂行できたことが勝因じゃないかなと思います」

──立ち返れたこと、自分たちがやるべきこととおっしゃっていましたが、具体的にはどういうところですか?

「やっぱりペナルティを犯して自陣で戦うと、(静岡BRは)やっぱり勢いのあるチームですし、強いランナーがどんどん当たってくる。余ったところでサイドを使ってくるなど、そういうシンプルラグビーで静岡BRさんはすごく強かったので、そこのゾーンにまず入れないことを意識しました。敵陣で戦うためにはまずシンプルな、練習でやってきたことなんですけど、どうやって敵陣に入るかというプランを自分たちで遂行できたことが良かったのかなと思います」

──後半の半ばあたりからスクラムもすごく改善されていたように見えましたが、どんな修正をしたのでしょうか?

「難しいな……。(田中監督が「企業秘密です」とコメントを挟む)。もちろん、静岡BRさんがそこ(スクラム)に懸けてくるのも試合前から分かっていました。試合中にどう修正したのかはちょっと言えないんですけど、そこをしっかり修正できたことは本当に自分たちの自信になりました。この強い静岡BRさんから最後にペナルティも取れましたし、そこは次のゲームにもつながるんじゃないかなと思います」

──非常にタフなゲームで、最後は土壇場で勝ち切れた理由というのはどのように感じていますか?

「ネバーギブアップの精神じゃないですかね。やっぱり最後の5分、最後に2トライを取ったシーンは、本当に黄色のジャージーがよく動いていましたし、誰よりも早く立ってグラウンドを駆け回ったと思うので、そういうところが勝因かなと思います」

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