NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第5節 カンファレンスA
2024年1月13日(土)14:00 ヤマハスタジアム(磐田) (静岡県)
静岡ブルーレヴズ vs 東京サントリーサンゴリアス
静岡ブルーレヴズ(D1 カンファレンスA)
全試合フル出場のD1最多スコアラーは22歳。
キックの名手は「この1本が本当に重要になる」
開幕2連敗のあと、2連勝して順位も調子も上がってきた6位の静岡ブルーレヴズ。今節は3位の東京サントリーサンゴリアスを新年初のホストゲームに迎える。優勝争いに絡むためには絶対に勝ちたい一戦。藤井雄一郎監督も「ここは大事な試合」と、あらためてチームを引き締めている。
そんな中、試合2日前の練習後にいつも以上に長くプレースキックのトレーニングを重ねていたのが、若き10番・家村健太だった。
昨年春に京都産業大を卒業したばかりの22歳で、昨季はアーリーエントリー枠で8試合に出場。そこからプレシーズンで大きな成長を見せ、今季は開幕からスタメンの座をつかみ、ここまで4試合すべてにフル出場している。
プレースキックも任されて高い成功率を示し、第3節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦では終了間際に劇的な逆転トライを決め、チームに今季初勝利をもたらした。そして気づくと51得点を挙げて、ディヴィジョン1の最多スコアラーとなっている。
そんな成長著しいスタンドオフに対して藤井監督は、高く評価するとともにさらなる期待を寄せる。
「ディフェンスもいいですし、ゲームコントロールもどんどん良くなっています。いまは成長している段階で、もっと良くなると思いますけど、日本代表になりたいんだったらもっともっと高い要求をしないといけないと思っています」
家村本人も試合を重ねながら自身の成長を実感できている。
「少し余裕が出てきたというか……。前シーズンは自分のプレーで精一杯なところがあったんですけど、今季はチームの状況を見たり、相手のディフェンスの状況を見たり、『いまこういう場面だからこうしたほうがいい』など、10番として感じることもできるようになってきて、それを周りに発信することもできるようになってきていると思います。10番としてのディシジョンのところは、まだミスもありますけど、1試合1試合上げられているかなと思います」
そうした“見て・判断する”という部分がよく表われたシーンが前節の三重ホンダヒート戦でも見られた。開始10分の攻撃で左からボールを受けた家村は「ゲインして裏(のスペースに相手選手)がいないのが見えたので、とっさに蹴りました」と右サイドの裏に絶妙なキックを流し込み、それを右ウイングの矢富洋則が押さえ込んで、2本目のトライを獲得した。
展開の中でのキックも、飛距離・精度ともハイレベルで、エリアの獲得やチャンスメークに大きく貢献している。
すでに攻守にバランスのとれた中心選手の一人となっているが、「プレースキックの精度と、相手にとって脅威になるようなランプレーは、いまの課題だと思っているので、そこはもっともっと伸ばしていきたいです」と向上心も人一倍。
リーグワンになってまだ勝ったことがない東京SGを倒すには、「この1本(のキック)が本当に重要になると思っています」と言う家村。それを決めつつチームの勝利に貢献できれば、家村の成長はまた1段階加速することだろう。
(前島芳雄)
東京サントリーサンゴリアス(D1 カンファレンスA)
“超速ラグビー”の体現者超えへ。その先に見据える勝利とトライ、そして、日本代表
2連勝中の東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)。第5節は静岡県のヤマハスタジアム(磐田)に乗り込んでの静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)戦だ。伝統的にスクラムを始めとしたセットピースに強みを持つ相手にどう勝機を見いだし、トライにつなげるかが重要になる。
「やっぱりセットピースは静岡BRの強みだと思うので、こちらからどんどん仕掛けてセットピースの状況を与えず、自分たちの持ち味であるアタッキングラグビーにつなげていけるか。キックのセレクション、ランで行くセレクションをバランスよく組み合わせて、相手をしっかり走らせる勝負に持っていきたいです」
こう語るのは、昨季のリーグワン最多トライゲッターに輝いた尾崎晟也だ。今季も開幕戦でいきなりハットトリックを決めるなど、ここまで4トライと好調を維持している。
「周りからは、今季もトライ王を目指してほしいといった応援をいただいています。もちろん自分も取りたい気持ちはありますが、最優先事項は勝利のためにプレーすること。オフの期間はキックを重点的に練習してきましたし、目の前の試合、一つひとつのプレーを大事にやっていきたいですね」
日本人ウイングとしてリーグ屈指の存在である尾崎晟也。そんな彼に新たな刺激となっているのは、世界的ウイングである南アフリカ代表のチェスリン・コルビがチームに加入し、普段の練習から切磋琢磨できることだ。
「自分よりも小さなサイズ(※尾崎晟也175cm、チェスリン・コルビ172cm)でこれだけのプレーができるのかと、初めて会ったときは本当に衝撃を覚えました。小さい選手でも世界で戦えることを証明してくれているので、自分にとって学ぶことはとても多いです」
日本代表の指揮官に就任したエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは新たなチームコンセプトとして「超速ラグビー」を掲げ、その体現者としてチェスリン・コルビの名を挙げている。つまり、チェスリン・コルビから学び、超えるプレーを見せることができれば、尾崎晟也の代表入りにもつながるというわけだ。
「速さというのは単純なプレースピードだけでなく、判断や連係スピードのことも指しているはず。その部分でも、チェスリン・コルビ選手は一つひとつのプレーが速く、ベーシックスキルが非常に高い。自分が日本代表になるためのお手本が近くにいる、ということはすごく実感しています」
進化し続けるトライ王が見据える勝利とトライ。その先に、日本代表への道が続いている。
(オグマナオト)