リコーブラックラムズ東京(D1 カンファレンスA)
反省の積み重ねが生む前向きな姿勢。自分を信じる男が切り拓くトライへの道筋
リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)がこれまで重ねてきた努力が形となり表れた2連勝。次なるはコベルコ神戸スティーラーズを迎え、ホスト・秩父宮ラグビー場での3連戦を封切る。
NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1第10節を終え、ラインブレイク数1位、ゲインメーター2位の座に立つのは、BR東京の快速ウイング、ネタニ・ヴァカヤリアだ。
しかし、当の本人は、ランキングに気を配らない。「マインドセットをスイッチオンした結果のパフォーマンス」と、あくまでも現状のデータとして冷静に捉える。試合日には母国・フィジーの音楽を聴き、高揚感へとつなげるそうだ。
今季、目立つのは相手ディフェンスをかわしながらタッチライン際を走り抜け、トライへとつなげるシーンだ。
「自分のスピードを信じれば、どれだけタッチラインが近かろうとトライまで持っていくことができます」
ルーツは母国・フィジーへとさかのぼる。セブンズのフィジー代表でもあったネタニ・ヴァカヤリアは、自身の強みを理解し15人制へのプレーへ昇華させた。「いつ何時も、ベストを尽くすこと。それがチームを助けることにつながるのです」。BR東京に加入し5シーズン目。これまでこのチームで過ごした時間は、より強固な結束力を生み出した。
もちろん、前向きな言葉の裏にはたくさんの反省も同居する。毎試合、反省の連続だという。「自分がやらなければならいことに向き合って、真摯に居残り練習をします」。だからこそ生み出されるトライの数々なのだとあらためて理解する。
ネタニ・ヴァカヤリアに「自身の夢は?」と問うと「より良いプロラグビー選手になること」という答えが返ってきた。
「子どものころから、ラグビーを仕事にしたいと思っていました。だけど、現実的に捉えられるようになったのは、18歳のときにBR東京のセレクションを受けてから。契約を結んだ19歳のときには、現実的な未来として描いていたと記憶しています」
今節は秩父宮ラグビー場で、今季初のナイターゲームを控える。
「金曜夜の試合です。ぜひ大勢の友人・同僚を誘って観戦に来てください。そして、BR東京を応援してください!」
果たして、どこまでラインブレイク数を伸ばすのか注目だ。
(原田友莉子)
コベルコ神戸スティーラーズ(D1 カンファレンスB)
フライデーナイトを楽しみ、躍動せよ。神戸Sは楽しさの先に結果を追い求める
10日金曜日にリコーブラックラムズ東京とのビジターゲームに臨むコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)。今節はナイトゲームということもあり、試合2日前は、ナイターでトレーニングを行った。
前節では、IPU・環太平洋大学からアーリーエントリーで加入したティエナン・コストリーが、ナンバーエイトでスターティングメンバーに名を連ね、初出場かつフル出場を果たしている。
週の始めから出場することが決まっていたわけではなく、急遽決まった出場だった。それでも、ティエナン・コストリーは、「あまり準備をする時間がなかったことが、良かったのかもしれない。あまり焦ることなく、私が務めなければいけない、本当にベーシックな仕事をやり切ればいいと割り切れました。週の始めから『メンバーに入る』と言われていたら、もっと緊張していたかもしれない」と振り返る。
対戦したのは、東芝ブレイブルーパス東京。対面する位置には、リーチ マイケルがいた。「5、6回は、タックルやボールキャリーで当たり、すごい力を感じた」というティエナン・コストリーは、現在191cm、100kg。リーチとは、10kg以上の差がある。「私はまだ軽いので、もっと体を大きくしていかなければいけないと思っています。でも、このリーグで戦うことが無理ではないと感じた。私も強い選手になりたいので、これから成長していきたい」と意気込んでいる。
今節は、フランカーとして出場する。役割は少し変わるが、前節で手ごたえのあった「ワークレート(作業量)と努力」を示しつつ、前節でチャンスもありながら「取り切れなかったのがちょっと悔しい」と語っていたトライも狙いたい。
チームとしては、直近2試合では、思うような結果を得ることができていない。名門だけに、求められる戦績を得られていない悩みや苦しみも抱えていることだろう。グラウンドで最後尾に立つ山中亮平は、いまのチームを見て、このように話す。
「ミスをせずに戦術を遂行できるようにプレーしているのかもしれない。けれど、もっと思い切りの良さもほしい。そうでないと、結果も全然ついてこないし、面白いことをやっても面白くないじゃないですか。やっぱり、やっていて楽しいと感じながらプレーしたい」
今節は、プレーを楽しみ、躍動する神戸Sを期待したい。
(前田カオリ)