NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第13節(交流戦)
2025年3月30日(日)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 24-27 コベルコ神戸スティーラーズ
奮闘の裏に隠された、わずか4分の休息。若武者はチームの武器を磨き上げる
リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)が挑む、春の秩父宮ラグビー場2連戦。その初戦の相手は、第6節で29点差の敗戦を喫したコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)。この日は2連続トライで先制し勢いをつかんだBR東京だったが、最終スコアは24対27と勝ち点の獲得は1にとどまった。
たった4分の休憩が、大きなエネルギー源となった選手がいる。プロップの津村大志だ。先発出場し、後半14分に一度グラウンドを退いたが、代わって入った選手の負傷により後半18分に再登場。計76分間、グラウンドに立ち続けた。
後半22分のこと。マイケル・ストーバーグが45mものビッグゲインを決めると、真っ先にサポートに走り込んだのが津村だった。「ここ走らなあかん!」と全力で腕を振り、足を上げた。
「ボールを放ってくれたらトライやったんですけど……」と笑いながら、そのときの状況を振り返る。
「ずっと(ボールをくれと)呼んでいました。でも僕の声より歓声がすごかった。『ウソやん、(トライまで走り切るのは)絶対無理や』と思ったのですが、マイキー(ストーバーグ)がボールを片手で持ってひたすら走っていたので『これは絶対パス放らんわ』と思って(笑)」
だからとにかく走って、そのあとに形成されるであろうラックに入ろう。174cm・108kgの背番号1は、全速力で駆け寄った。
「ほかの人よりも、絶対に僕のほうが走れました。あのしんどい状況で、一瞬でも休めたら体がまったくちゃうんです」。心強きプロップランナーの疾走が、トライを導いた。
また、神戸Sのプロップには39歳の山下裕史、そして具智元と日本代表キャップ数合計80を誇る猛者がそろった。そんなベテランたちを前に、スクラムでも奮闘する。
「試合前から名前でプレッシャーを感じていました。でも逆にここでチャレンジできたら、どれだけ自分がスクラムで通用するのかを示すことができる」。プレッシャーを掛け、ペナルティを奪えたことに手ごたえを得た。
BR東京に入団して1年。さまざまなチームのさまざまなスクラムを、体験し学んだこと。その対応策を内省できるようになったこと。なにより、BR東京の仲間と改善策を十分に話し合えていること。ここ1年間で、スクラムのレパートリーが「倍に増えた」という津村。「いま、スクラムがチームの一番の強みだと思います。でもまだまだ、レベルアップできるチャンスはある。シーズンが終わるまで、自分たちの形を磨き続けていきたい」と誓った。
(原田友莉子)
リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ
「本当にとても残念な結果です。ポジティブなことを言えば、最後までチャンスはあったかなと。自分たちとしては、あのようなゲーム展開になってもちゃんと勝てる方法を見つけることが必要です。いまは自分たちが自分たちの一番の問題かなと思います。大事なタイミングでTMOも入って、モメンタムも失われました。大切な時間帯にしっかり実行できるかというのはかなり重要だと思いますし、自分たちが勝つには自分たちのベストな状態を見せ続けながら、判定も自分たちに転がるようになればと思います。コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)さんはすごく良かったと思います。最初1分もしないうちに一人入替があって、そのあともロック二人ともにイエローカードで出て、いない時間帯もありました。そういう展開の中でも神戸Sさんは必要なところで実行し続けたのかなと思います」
──プレーオフトーナメント圏内に入るため、どのあたりを修正しなければいけないでしょうか。
「ディフェンスをもっとタフにいかないといけません。自分たちのフィジカルのなさで取られたトライもありました。来週はクボタスピアーズ船橋・東京ベイと戦います。すぐにでも修正しないといけないところはあるかなと思います。ターンオーバー17回では戦えないですから」
──若いスタンドオフがたくさんいる中で、中楠一期選手をずっと起用していることについて彼への期待と評価を教えてください。また伊藤耕太郎選手への評価、アイザック・ルーカス選手の状態についてもお願いします。
「アイザックはもう数週間です。(中楠)一期も(伊藤)耕太郎も、(チームにいるというのは)とてもラッキーなことで、二人とも違うものをもたらしてくれます。タイプが違います。いまは一期を信頼しています。ゲームコントロールに、リードの仕方ですね。もちろん若いのでミスもします。耕太郎も同じことになると思います。すごく難しいポジションではあるので、ニュージーランドなどでの経験上、若い選手を入れて彼らがパフォーマンス悪かったときに交替させてしまうと、自信をなくしたり、そのあと何年か引きずってしまうことがあったりします。だからコミットすることが大事で、しっかりと成長できる場を与えることが大事かなと思います。一期のリーダーシップは間違いなく成長しています。インサイドにTJ(・ペレナラ)、アウトサイドに池田(悠希)がいるので、助けにはなっていると思います。リードの仕方は良くなっていて、ゲームプランを実行するところも良くなっています。周りにシニアプレイヤーがたくさんいるので、年齢的にリードをする難しさはあると思います」
リコーブラックラムズ東京
TJ・ペレナラ ゲームキャプテン
「僕も最初に神戸Sさんについて言いたいと思います。ブロディ・レタリックが直前で外れたり、ファーストプレーでウイングが入替しなければならない状況になったり、イエローカードも続きました。自分たちも『こういう展開でも勝てる方法を見つけないといけない』と言いましたが、神戸Sさんはああいう展開の中でしっかり見つけたと思います。自分たちとしてはすごく残念です。本当にたくさんの時間、良いラグビーができていたと思います。こういうゲームを勝っていかないといけない、それだけの能力はあると思うのでそれができなかったことは残念です。ですが、自分たちのチームに関しては誇りに思っています。特にフォワードはすごくよくやってくれています。彼らが作ってくれた土台の上に、自分たちもしっかりと良いパフォーマンスをして、しっかり決め切りたいなと思います。すごくフラストレーションが溜まっていますし、すごく悔しいです。でも、自分のチームメイトに対しては誇りに思いますし、向かっていく方向性、自分たちが作ろうとしているものは間違っていないと思います」
──前半ラスト10分間、数的優位の中で逆に2トライを取られてしまいました。「こうしておけば」と思うことはありますか。
「あの時間帯は自分たちの規律が悪く、13人しかいない相手に3、4回ペナルティを重ねてしまいました。そうすると相手も時間を使うことができます。セットピースにもち込まれると、神戸Sさんがアタックをコントロールできる形になるので、そういう点で良くなかったですね。ファーストコンタクトで負けてモールを作られてしまいました。相手は13人でも、クイックボールを作らせてしまいました。そこは自分たちがアグレッシブに行かなければいけなかったですね」
──TMOが続いたシチュエーション下で、どのようなマネジメントをしていたのでしょうか。
「選手としては、起きていることに対応していくしかないです。そのディシジョンにアグリーするかどうかは別として、TMOの回数も、そこは従うしかないというか、次の仕事に切り替えていくしかないです。難しさを感じますし、フラストレーションもあります。でもゲームの一部なので、誰かのせいにしているわけではまったくないです。TMOに関しては結局、正しいディシジョンにつながればいいかなと思います。今日は3、4回認められないトライがあったのですが、振り返ったときに彼らも正しいと思えるのであれば、それは問題ないです」
──中楠選手と伊藤選手、一緒にプレーしてそれぞれの良さをどのように感じますか。
「一期はゲームコントロールとリーダーシップが強みです。あとスキルですね。チームをしっかり動かし、スキルを見せてくれます。耕太郎とはあまりたくさんプレーしていないので言えないかもしれませんが、限られた時間の中で思うのは、ナチュラルギフトをもっている選手だと思います。スペースが見えていますし、スムーズなパスやキックもできるし、穴が見える視野もあります。ダミアン・マッケンジーやアイザック・ルーカスを思い出させる部分があります」
コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ
「今日、自分たちチームに対しては誇りに思います。試合前を含め、メンバーチェンジもたくさんありました。レタリックも手術になってしまい、その上でもう一人の選手についても体調不良という形で急きょメンバー変更がありました。試合開始後も40秒で(アタアタ・モエアキオラを)失ってしまい、両ロックもイエローカードになりました。一つのトライは、13人でトライを取ることができました。前半はその状況の中でも、スコアボードの上では自分たちが上回る状況で折り返せました。そういうところで、自分たちは勇敢な姿を見せられたと思います。プレッシャーがある中でも落ち着いたプレーができました。リコーブラックラムズ東京さんは今季素晴らしい形で成長しているチームだと思います。ここ数週間の結果を見ても、本当に伸びているチームだと思います。アタック、ディフェンスともにブレイクダウンでプレッシャーを掛けられ、アタックも素晴らしいものがありました。2チームとも本当に疲れ切った状態かなと思います。後半はスクラムでも多くペナルティを取られました。成長できるところは多くあると思いますので、そこの部分は振り返りたいと思います。正しいエリアに入った際、自分たちが相手陣内22mに入った際に関しては、良いアタックができていたと思います」
──レタリック選手に手術が必要になったということですが、具体的に話せる範囲で状況を教えてください。
「練習中にけがをして、手術をしました。長さ的にはおそらく3週間ほどだと思います。手術は金曜日に終わっています」
──山下裕史選手はここ数試合良い働きをしていると思いますが、どう感じていますか。
「(スーパーラグビーの)チーフスでもコーチをしましたが、正直そのときよりもいまのほうが良いプレーをしていると思います。今日スクラムで問題になったのは、山下裕史さん側ではありません。(山下裕史選手は)素晴らしいパフォーマンスを出してくれています。ここ最近プレータイムも多いです。ここ数週間(の働きを)考慮してあげないといけないと思う選手は、彼以外にもたくさんいます」
コベルコ神戸スティーラーズ
李承信 共同キャプテン
「メンバー変更であったり、イエローカードであったり、けが人が出た難しい状況の中でも勝ち切れたことにチームの成長を感じています。勝ち点を積み重ねられたことをうれしく思います。難しい状況の中で我慢する力、しっかり耐える力というのは成長できたと思うのですが、後半に入って10点差がつき、相手陣にいる中で自分たちがスコアできなかった精度の高さや規律というところはまだまだ成長していかないといけないと思います。でも13人の中でスコアできたこと、自分たちが目指すラグビーができている時間帯は本当に相手を圧倒できていました。そこに対する精度、規律を改善することができればより一層、強いチームになれると思います。しっかり良いレビューをして、次の東芝ブレイブルーパス東京戦を迎えたいと思います」
──前半終了間際、人数が少ない中でトライを取れた理由と、チームにどういう声掛けをしていたのか教えてください。
「しっかり敵陣に入ってボールをキープしたいという形でした。前半はラインブレイクやゲインを得た部分でもボールをロストし、相手にボールを渡していました。まずは自分たちでしっかりボールをキープして、スコアを重ねていこうというところです。ディフェンスではけっこう速いテンポで相手に出されていたので、どれだけスローラックにして、プレッシャーを掛けられるかということを話していました。13人になったときには目の前の一瞬一瞬にフォーカスして、1対1で負けないようにということはハドルでも話しました。ゴール前からターンオーバーになった瞬間、ボールを継続してどんどんモメンタムを得ながらアタックできていたので、そこは自分の言葉というよりも一人ひとりのスイッチや、リーダーシップが表れたと思います」
──それが後半できなかったことは反省点でしょうか。
「点数が離れたときの気の緩みであったり、集中力の低下であったりは少しあったのかなと思います」
──シーズン前半戦では競ったゲームで勝ち切れないことがありましたが、ここ数試合は勝ち切れています。どういうことを意識しているのでしょうか。
「ゲームの一番重要な局面、重要な瞬間にワンチームでコネクトしています。我慢強さが一番成長していると思います。(前節の)東京サントリーサンゴリアス戦もそうですが、タフなゲームに勝つことで『絶対最後は自分たちが勝つんだ』というマインドセットが一人ひとりに芽生え、結果につながっているかと思います」