NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第11節
2023年3月10日(金)19:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 41-26 コベルコ神戸スティーラーズ
良いプレーには笑顔。トライには抱擁。
フライデーナイトに生まれた“6度の喜び”
ロックスターはいない。
だから、みなで喜び、みなで祝福した。
リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)が決めた6つのトライは、すべて異なる選手たちがスコアラーとなった。その半数が、今季序盤には出場機会のなかった選手たち。良いプレーには笑顔で駆け寄り、トライをすれば抱きしめた。
先週はトライを決めてもどこか静かだったからこそ、今週はちゃんと喜びを表そう。そうチームで決めていたのだという。
チーム最初のトライは高橋敏也。オフサイドにならないギリギリのタイミングで飛び出し、キックチャージからそのままグラウンディングした。「あの場面で相手のキックにプレッシャーを掛けることが、このチームでは9番の仕事。いい結果につながってよかった」と安堵する。
ディフェンスでも体を張る。自陣深くでは、何度も相手の強烈なアタックを止めた。
「僕たちはゴール前でのディフェンスを『キャッスルディフェンス』と呼んでいます。城を守るため、プライドが試される。一層集中力が高まります」
そう話すのは、今季初めて先発を任された栗原由太。後半28分にトライを決めると、小さくガッツポーズした。
「とにかくアグレッシブにプレーしようと挑んだ一戦。うれしかったです」
キックオフ直後から接点バトルに勝ち、規律高く戦ったBR東京は、2017年以来となるコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)からの勝ち星を手にした。
一方、勝ち点獲得とはならなかった神戸S。2017年以来の『10番』を背負ったラファエレ ティモシーは、今週の日曜日に10番で出場することを告げられたという。
「難しかったのは、時間が限られていたこと。ショートウィークの中で、スタンドオフとしての準備をしなければなりませんでした」
試合序盤は相手陣でプレーすることも多かったが、なかなか得点には結びつかなかった。「スキルにおける実行力と規律の欠如が、BR東京に掛け続けたプレッシャーを解いてしまった」と振り返る。
それでも後半、神戸Sの時間帯を作った仲間たちの姿を「誇らしく思います」と語ったラファエレ。仲間とともに、次節へと向かう。
(原田友莉子)
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ
「今日のパフォーマンスにとてもハッピーです。最初の20分でしっかりとプラットフォームを作れたかな、と。フィジカルなディフェンス、そしてキャリーやブレイクダウンでもフィジカルさを見せられたと思います。そこが良いベースになったと感じています。
コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)はすごく良いアタッキングチーム。私たちにとって危険なチームでしたが、選手たちはずっとハードワークを続けていたので、(この勝利によって)自分たちは良いチームなのだと気付けたのではないでしょうか。ただ、最後の15分間は、僕の髪の毛にとって良い影響はないので(笑)。しっかりとレビューをしていきたいと思いますが、いまは本当にハッピーです」
──シーズン序盤よりも、相手陣22mに入ったところの実行力が増したと思う。どのように感じていますか?
「練習でも時間をかけている部分です。もちろんフォーカスしています。ラグビーとはシンプルなゲームで、自陣22m内では止めて、相手陣22m内に入ったら得点すればいい。私たちにはパワフルなボールキャリアーもいるので、そういった面でも助けになっているかなと思います。
あとは選手たちに自信がつくと、それがどういう力となるか。すごいな、と思います。もともとあるパワーがさらにパワーアップします。ただ、いつも選手に伝えているのは、一つの試合が潮目を分けることもあるということ。シーズン序盤には連続で敗れましたが、そのときに言っていたのは『1試合良いゲームができれば、潮目が一気に変わる』ということです。いまは逆に良い状態が続いているので、悪いサイクルに入らないようハードワークを続けていきたいと思います」
──プレーヤー・オブ・ザ・マッチのブロディ・マクカランは神戸S戦への良いヒントを教えてくれましたか?
「(ヒントは)なかったですね(笑)ブロディ(・マクカラン)にとってもすごく重要なウイークだったように思います。先週(山本)昌太が負傷離脱し、ブロディ(・マクカラン)自身、リーダーグループの一員としての役割がありました。今週は昔に所属していたチームとの対戦でもありましたし、ビッグウイークであったと思います。少しプレッシャーも感じていたのではと思うと、(勝てたことは)うれしく思います」
──負傷者が続いているが?
「一年を通して、スコッドで戦うことを説いてきました。スコッドメンタリティを信じて戦うチームが私たちです。ロックスターがいるわけではなく、お互いのために戦えるチームだからこそ、それぞれにチャンスが回ってきたら、しっかりとパフォーマンスを見せてくれます。
チームとして本当にみんなが成長しています。今日、ゲームキャプテンを務めたガンディー(マット・マッガーン)を含め、チームに何が必要か分かっていますよね。それぞれがステップアップし、試合に出ていると感じます」
──安定的に勝つために必要なこととは何でしょうか?
「全員に責任があるので、自分の仕事をしっかりと、きっちりとやることだと思います。自分が自分の仕事をしっかりとやり切れば、タフなチームになる。もちろん勝敗はつくので負けることもあると思いますが、それでも自分の仕事をしっかりと、ベーシックなことをしっかり高いレベルで一人ひとりがやっていければ、勝利に近づくのかなと思います」
──パディー・ライアンについての評価はいかがでしょうか?
「素晴らしいですね。プレーもそうですし、若いフロントローに対してもすごく良い存在です。スーパーラグビーで100試合以上に出場し、ワラビーズ(オーストラリア代表)としてテストマッチにも出ている34歳の選手。何をすべきか分かっているので、リコーブラックラムズ東京のプログラムに価値を与えてくれています」
リコーブラックラムズ東京
マット・マッガーン ゲームキャプテン
「今夜のゲームは、僕たちにとって(勝利が)必要なゲームだったと思います。過去2試合は最初の20分でしっかりとスコアをし、試合終盤には点差が離れている展開になっていた中で、今日は最後まで歯を食いしばって戦わなければなりませんでした。静岡ブルーレヴズ、東芝ブレイブルーパス東京と続くこれからの2週間に向け、こういったハードなゲームは必要だったのかなと思います。
今日のゲームを終え、しっかりと80分間戦わなければならないということが分かりました。まずは今日のパフォーマンスを誇りに思います」
──前半はペナルティゴールを狙わなかった場面もあったが、キッカーでありゲームキャプテンとしてどういう判断をしたのでしょうか?
「ここ数週間、モールの調子も良く、自分たちの武器になっていました。何度あのエリアに入れるかを考え、後半、風があるときに必要だったら蹴れると考えていました。
振り返ったときに、あれはペナルティゴールを狙うべきだったのかどうかは分かりませんが、オンフィールドディシジョンはペナルティゴールではなかった。そして、コーチボックスから見ていたコーチ陣たちも、グラウンドにいる選手の判断を支持してくれているので良かったです」
──左のオープンサイドへのアタックに自信があるように感じたがどうでしょうか?
「1週間積み上げてきたものがあるからです。何もせずに試合でできるわけではありません。ハードワークしてきたところが大きいと思います。
フォワードはラインアウトをしっかりと決めなければならないし、モールもタイトになって前に出なければいけない。バックスもそのボールを受けて実行していかなければなりません。1~15番がそれぞれ自分の仕事をやることにフォーカスできているので、素晴らしいチームトライだったと思います」
コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズ
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ
「先週、先々週の記者会見と同じようなコメントになってしまいます。前半は自分たちが得点を取り切ることができず、後半に入ったら簡単なトライを与えてしまいました。その結果、後半の最後のほうに追い上げても追いつけない点差まで離されています。
試合終盤、苦しい状況になってから良いファイトを見せられたのは、過去2試合で見られなかったこと。良かったところではありますが、ただ、試合の結果として求めているものには足りませんでした。本当に残念な結果ですが、これがラグビーです」
──準備段階でどのような意識付けをして挑んだのでしょうか?
「アタックに関しては、精度の部分。完遂し切ることをフォーカスポイントにしていました。スペースにしっかりとボールを運べば、チャンスが絶対に訪れると分かっていた。ただ、『常に一貫性を持ってやり切ることできたか』と言われるとできなかった。
特にアタックでは、ここ数週間取り切るべきところで取り切れていません。なので、一番大事なフォーカスポイントとして精度を掲げましたが、そこは今日、実現しませんでした」
──苦しい状況を、雰囲気含めどのように打開していくのでしょうか?
「本当に厳しい状況なのは間違いないと思います。ここで自分たちがやるべきことは、個人がしっかりと前を向いて進むのか、頭を下げてあきらめてしまうのかのどちらかしかありません。この2週間を振り返ったときに、ショートウイークからのショートウイーク。しかも2試合とも東京(での試合)。自分たちが本来やりたかった準備がしっかりできたかといえば、できませんでした。
ただ、昨季からホスト・ビジター制度になったので、それは言い訳にはなりません。自分たちがやるべきことは、しっかりポジティブに前を向いてアタック、ディフェンスともに精度を上げること。そこにフォーカスし、結果を得ていくことで前を向けるのではないかと思います」
──本日の結果を受けて、プレーオフ進出が厳しくなったがどのように感じていますか?
「いま、一番思うのは、順位よりも80分間戦う姿勢を見せること。会社やファンの方々、応援してくれる方々のために80分戦う姿勢を見せ、パフォーマンスを出すことに一番の重きを置いていきたいです」
──シーズン中には、アタックが得点につながる試合もあった。そのときと比べ、何か違いはあるのでしょうか?
「アタックシステムの一部分で詳細が抜けてしまうと、自分たちのアタックが機能しなくなってしまっています。いま、自分たちのアタックが機能するように何とか修正しようとしているところです。ただ、こういう状況になってしまうと、そこまで大きく崩れてはいないのに、自分たちが自信を失うことにつながりやすい。特に結果が生まれてない時期だとなおさらで、相手チームもやはりそこを狙ってきます。
自分たちで自分たちにプレッシャーを掛け、そこまで大きなエラーが起きているわけではないのに、自分たちがまた失敗していると不安になってしまう。殻に閉じこもるプレーをしてしまうサイクルにつながり、より自分たちのミスにつながっていると感じます」
コベルコ神戸スティーラーズ
橋本皓キャプテン
「(ニコラス・ホルテン)ヘッドコーチと同じです。最後、追い上げましたが遅すぎた。相手に簡単にスコアを与えすぎた結果です」
──苦しい状況を、雰囲気含めどのように打開していくのでしょうか?
「一戦一戦しっかりと準備して、やるべきことをしっかりやっていくだけです。シンプルですが、それがすべてだと感じています」
──シーズン中には、アタックが得点につながる試合もあった。そのときと比べ、何か違いはあるのでしょうか?
「特に変化はないです。自分たちがしっかりと、やるべきことをやっているときは良いアタックができています。ただ、どこか、何かがおかしくなると、影響を受ける。そういったところで、アタックの波に乗りきれないときがあると思います。波に乗っているときは、例えば今日の最後のほうがそうだったように、良いアタックができる。だからこそ、試合通してずっと出せるか、というところだと感じます」