2024.02.26NTTリーグワン2023-24 D1 第7節レポート(BR東京 17-27 神戸S)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第7節
2024年2月25日(日)13:00 駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 17-27 コベルコ神戸スティーラーズ

うれしい初キャップと、味方を称えるための全力疾走。信じ続けた先にある答えを信じて

リコーブラックラムズ東京のマット・マッガーン選手。「チームの力にはなっているけど、ファンの人、コメンテーターの人でも気付いていないようなハードワークも多いんです」

リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)は2月25日(日)、駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)と対戦し、17対27で敗れた。

スクラムが解けると、湯気が沸き立つ。冷たい雨が降る中で行われた一戦は互いにミスが続き、“決定機を逃さない”ための一瞬の集中力の差がスコアに表れた。

「(試合間隔が空いた1カ月の間)あえて長めの休みを取ったり、強度を落とした練習をしたりと、選手たちはリフレッシュできました」と話すのは、多くのキッズが憧れを抱くニュージーランド代表のアーディ・サベア。神戸Sは勝ち点を19に伸ばし、トップ4争いを続けている。

一方のBR東京は、これで6敗目。善戦するも勝ち切れない、苦しいシーズンは続くが、好材料もある。

アーリーエントリーでファーストキャップをつかんだのは、サミュエラ・ワカヴァカ。朝日大学をこの春卒業する22歳だ。

アーリーエントリーでリザーブから出場したリコーブラックラムズ東京のサミュエラ・ワカヴァカ選手

高校時代はプロップで、大学3年生まではナンバーエイト。大学4年生から再びプロップに戻った強いボールキャリアーだ。「メンバー入りを伝えられたときには、信じられなかった。とてもうれしかったです」と喜んだ。

それでもピッチに立てば表情を変え、ファーストプレーから力強い突進を見せた。「自分自身に100%の自信がなかったら、良いプレーは見せられない。これからも『泥臭く』を大事にプレーしていきます」と誓った。

今季からカテゴリーAとなり、より出場時間を確保できるようになったマット・マッガーンは、3つのプレースキックをすべて成功させた。「(カテゴリーBの)アイザック・ルーカスと同時出場できる機会が増えた。コンビネーションも阿吽の呼吸になってきた」と、この日何度か連係プレーでラインブレイクを果たした要因を語った。

試合中には、前線で体を張るフォワードを称えるためだけに、プレーが止まった瞬間におよそ40mを全力疾走したマット・マッガーン。相手のノックオンを誘うタックルを決めた選手の頭を撫でた。

「頑張ってくれていることをちゃんと褒めてあげたい。チームの力にはなっているけど、ファンの人、コメンテーターの人でも気付いていないようなハードワークも多いんです。だからこそ僕は、すごく感謝しているんだということを伝えたいのです」

いまは見えない答えを探し続けても仕方がない。どこかで必ず、ターニングポイントはやってくる。そのチャンスが来たときに、しっかりと準備ができているように。

勝利が先行しないいまだからこそ、自分たちらしく、チームに根付くDNAを信じ続ける。

(原田友莉子)

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京のピーター・ヒューワット ヘッドコーチ(右)、武井日向キャプテン

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「すごい腕相撲のような試合でした。こういうコンディションなのでランニングラグビーに適していないことは分かっていましたが、腕相撲のような戦いになって、ビッグモーメント(勝負を分ける部分)でコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)が上回ったことが差になったと思います」

──前節、クボタスピアーズ船橋・東京ベイに1点差という惜しい負け方をしたあと、練習試合を重ねました。選手セレクションはどのように行ったのでしょうか。

「選手たちには、すべてのゲームがセレクションだと伝えました。二つの練習試合で若い選手、経験ある選手が出場しましたが、ジョシュ・グッドヒュー、西川大輔にサミュエラ・ワカヴァカが良いパフォーマンスをしてくれました。良いプレーができればチャンスが回ってくるんだ、と選手たちには思ってもらいたい。クラブの強みとして、AチームであろうともBチームでも、チーム全員で戦うチーム。そこを強みにしていきたいと思います。

(ジョシュ・)グッドヒューはロックで80分間プレーして、すごく良かったです。西川に関しては、ウイングにとってこういったコンディションは厳しく、シンビンもありましたが、トライセーブもしたし良かったと思います。(サミュエラ・)ワカヴァカはインパクトを与えてくれました。まだ若い選手ですが、学びに対する姿勢やプログラムを信じて成長してくれています」

リコーブラックラムズ東京
武井日向キャプテン

「フィジカルな戦いになると分かっていました。自分たちも戦えた部分はもちろんありましたが、ただブレイクダウン周りでプレッシャーを受けて自分たちの思うようなアタックができなかったことは改善すべきことかなと思います。ペナルティ数もこれまでの試合に比べたら多かったので、改善していきたいと思います」

──神戸Sの接点での強さは事前に想定していたと思いますが、接点でペナルティが多くなってしまったのはどういう要因でしょうか?

「神戸Sの接点の強さもありますし、二人目のサポートの寄りが遅かったとも思います。そうするとあれだけプレッシャーを受けてしまう。相手はニュージーランド代表“オールブラックス”のジャッカラーがたくさんいますし、そういう選手に好き勝手に仕事をさせ過ぎてしまったなと思います。そういうところはレベルアップしていきたいです」

──敵陣に食い込んだところでペナルティが重なってしまいました。

「先ほどヒューイ(ピーター・ヒューワットヘッドコーチ)が言ったとおり、そういう瞬間の集中力、フォーカスが欠けてしまった部分があったかな、と。チャンスやピンチの場面でもう一段階レベルを上げて、集中力を上げていかないと取り切れるところで取り切れないですし、逆に取られてしまいます。それが結果として勝敗につながっているので、集中力を上げてペナルティをせずに取り切るところまでレベルアップしていきたいと思います」

──対戦したアーディ・サベア選手についてどのような感想を持ちましたか?

「一つひとつの接点に激しくきますし、一人、二人じゃ止まらないレッグドライブの部分もすごかったです。でもそれに負けていないな、という感触はリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)のメンバー全員にあったと思うので、オールブラックス相手にやれる、という自信はみんな得たと思います」

──得点に結びつけるための打開策を教えてください。

「こういうコンディションなので、自分たちの思うようなパスワークができずハンドリングエラーもありました。こういうシチュエーションだったらどうしなきゃいけない、ともう少し話して、コントロールできることをコントロールしていきたいと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(右)、ブロディ・レタリック共同キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「結果についてはハッピーです。難しい天候だったので、本来の自分たちのプレーよりもキックが多かったと思います。でも多くの時間、しっかりと良いディフェンスができたと思います。テリトリーでも圧倒することができました。

プレッシャーをスコアに変えられないこともありましたが、今日はこういう形で勝利を収められたので良かったです」

──この試合に向けてどのような準備をしていましたか?雨ということは予想していましたでしょうか?

「週末はおそらく雨だろうということは分かっていました。この何カ月にも渡って、神戸での練習において雨が降ることはなかったのですが、今週は雨が続いていました。BR東京の現在の順位は上のほうではありませんが、本来の順位はもっと上、力を持っているチームだと考えていました。体の大きいボールキャリアーが多い中で、接点で負けてはダメだと話していました。その部分では良い勝負ができたと思います。接点で良い勝負ができたおかげでボールも出たし、カウンターラックもありました。正しいエリアでプレーすることもできました。より多くのキックを使いながら正しいエリアでプレーしようと話をしていたので、それができて良かったです」

──なかなか得点に結びつかなかったのは雨が影響しているのでしょうか?

「BR東京に関してはディフェンスに優れたチームということが分かっています。(BR東京の)マット・テイラー コーチングコーディネーターとは一緒にコーチングしたこともありますし、今シーズンのBR東京のスタッツを見てもトライを簡単に与えていないことが分かっていました。こういったコンディションだからこそ、一層得点をすることが難しいチームだと分かっていました。最終的に試合を分けたポイントは、賢いキックで得点につなげられたこと、そこが自分たちにとっては一番の違いと思っています」

──BR東京のラインアウトからの攻撃はどのように映ったでしょうか?

「10番にはアイザック・ルーカスがいて、ボールを持ったら脅威になる選手。それ以外にもシャープな動き、脅威となる選手はいるので、自分たちは相手がどういう動きをしてくるかという予習はしてきました。

モールでの2トライは素晴らしかったと思います。その前の部分で、自分たちの規律を守れずチャンスを与えてしまったことが良くなかったと思います」

──実際に作りたいチームと、現状のチームとのギャップはどれぐらいありますでしょうか?

「昨季は9位。課題がたくさんあると分かった上でシーズンをスタートしました。コンディショニングやスキルセット、ゲーム理解度と、すべての面で成長させようと取り組んできています。まだ成長させている途中ですが、自分たちはいま、なんとかトップ4にたどり着けるかが焦点になっています。おそらく東芝ブレイブルーパス東京、埼玉パナソニックワイルドナイツはこのままシーズン最後までいく可能性が高いと思うので、そうなったらトップ4に残された枠はあと二つ。ラスト2の枠に入れるかどうか、これからの数週間がすごく重要になってきます。

そのためには、試合日にどれだけ良いパフォーマンスを出せる状態になるかが大切です。負けていないチームには、負けない理由がある。われわれはまだすべての面で成長させている途中で、それを続けていきます」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック共同キャプテン

「正しいエリアでしっかりとプレーすることができたと思います。自分たちのチャンスに仕留め切れなかったこともありましたが、ブレイク明け、後半戦最初のゲームを勝ちで終えて次に進めることは良かったです」

──なかなか得点に結びつかなかったのは雨が影響しているのでしょうか?

「どういう形でミスをしたのかは、もう一度映像を見て振り返る必要があります。相手陣に入ってからは得点して帰ってくることが目標でしたが、毎回それができたわけではありません。修正しなければいけないところがあると思うので、振り返ってどこを修正するか確認していきたいと思います」


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