NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦)第13節 カンファレンスB
2023年3月26日(日)14:30 東大阪市花園ラグビー場(大阪府)
コベルコ神戸スティーラーズ 14-23 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
後半25分の一体感。
“数千人でのスクラム”が生み出した反撃のトライ
コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)が、東大阪市花園ラグビー場にクボタスピアーズ船橋・東京ベイを迎えた第13節。前半から自陣に押し込まれたホストチームだったが、後半に山中亮平のトライやコンバージョンキックで追い上げる。だが、今季ここまで安定した強さで2位につける相手を崩し切れずに敗戦。前節に続く連勝はならなかった。
スタジアムがこの日一番の一体感に包まれたのは後半25分のことだ。
ビハインドを追い、ゴール前に迫った神戸S。相手のプレーに関してビデオ判定(テレビジョンマッチオフィシャル)が行われ、ペナルティがあったと判定された。
キックで3点を狙うペナルティゴールなどいくつかの方法を選択できる神戸Sだったが、そこでスクラムを選ぶとファンからスタジアムを揺らすような大歓声が巻き起こった。フィールド上で「それは感じましたね」とその盛り上がりを察していたのは山中だ。
「相手のバックスがシンビン(10分間の一時的退場)だったので、スクラムから(展開していけば)行けるんじゃないかなと。ああいう流れの中で勢いはついたと思います」
自らの出番到来にスクラムの最前線を担う山本幸輝、松岡賢太、前田翔は瞳をギラつかせた。体のぶつかる激しい音がスタンドに響き、神戸Sは相手のスクラムを圧倒。徳田健太が右サイド際へキックし、アタアタ・モエアキオラが収め、最後は山中がトライした。
スクラムを選択した際、ファンはトライを目指すチームに全面的な支持の声援を送ったのだろう。神戸Sが組んだのはフォワード8人だけではない、数千人規模のスクラムだ。選手とファンが瞬時につながる、ラグビーをスタンド観戦するからこそ得られる醍醐味が詰まった場面だった。
もちろん試合には敗れており、その事実は強く受け止めるしかないが、戦いはなお続く。秩父宮ラグビー場での次節のあとは、東大阪市花園ラグビー場での花園近鉄ライナーズとの敵地戦、そして、最終節は横浜キヤノンイーグルスを東大阪市花園ラグビー場に迎えるホストゲーム。山中は「『花園』は今年初めてで、ひさしぶりでしたけどすごく良い雰囲気でした。ファンの期待に応えられるように自分たちのプレーをしていきたいと思います」と誓う。
神戸Sによる“花園劇場”、その実現に大きな期待を抱かせた後半25分の一体感だった。
(小野慶太)
コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズ
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ
「今日の天気のコンディションを考えたときに、本来、コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)がプレーしたい、いつものプレーができるかと言ったらそうではないことは試合前から理解していました。その上で一番大事になるバトルは、テリトリーの取り合いの部分と話をしていました。ですから、今日のキッキングゲームで勝ち切れるかどうかが重要視していたポイントです。あともう一つは、フィジカルでどれだけ勝っていけるか。その二つのところでクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)さんに負けてしまったので、今日の負けにつながったと思っています。キックの蹴り合いに関しても、S東京ベイさん(の選手)が前に出ながらバウンドするようなキックが多く、神戸Sのほうがバウンドしないキック、ダイレクトでキャッチされてしまうキックが多かった。最終的に試合の結果を分けたところはそこだと思います。その二つで勝ち切れなかった。
キッキングゲームのところで自分たちがうまくいかなかったことによって、本来求めているよりも自陣で過ごす時間を多くさせられてしまった。それが最終的な結果につながってしまったと思っています」
──相手が一人少なくなったあと、自陣に押し込まれていたが、どのように評価していますか?
「間違いなく試合を分けたキーになる瞬間だったと思います。その10分間で自分たちの精度を上げて相手陣に入って相手にプレッシャーを掛けないといけないところでした。自分たちはその10分間で試合を戻すことで、勝ち切れるチャンスがあったのですが、S東京ベイさんがしっかりと神戸Sの陣地の深いところでプレーしたことによって、勝ち切られてしまったと思っています」
コベルコ神戸スティーラーズ
橋本皓 キャプテン
「(ニコラス・ホルテン ヘッドコーチと)同じですね。前半もほとんど自陣で過ごしたので、キックゲームのところをもうちょっとうまくできたらまた結果は違ったのではないかと思います。敵陣に入るときもあったんですけど、自分たちのミスで終わってしまったことが大きかったと思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「コンニチハ。この2試合、雨の中という状況でしっかり試合をコントロールして勝ち切れた、きれいな形ではなかったかもしれないですけど、勝ち切れてまず良かったと思います。チーム全体で、ベンチから出た選手が、大事な場面、特に最後の20分でしっかりとやり切ってくれました。さっきロッカーでも話をしていたんですが、この6週間、6連戦の中で、チームとしても成長できたと思いますし、良い方向に向かっているとは思うので、次の週はしっかりリフレッシュして、マインドも体のほうもしっかりと準備してフィニッシュストロングで良い形で終われたらと思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道 キャプテン
「2週連続で雨の中の試合だったので、戦い方というのはある程度、リハーサルできていましたし、前半の入りなど、ポイントを取るところでしっかりと取れていたのはポジティブな要因だと思います。後半、なかなか敵陣に入ってポイントを変えられなかったのはあるんですけど、その中でもずっと相手にプレッシャーを掛けられていたと思いますし、80分をとおして自分たちがやりたいラグビーはできていたと思います。6週間、良い学びがあったと思うので、ラスト3試合しっかりとレギュラーシーズンを戦って、その先に向けていきたいと思いますが、まずは一戦一戦、戦っていくことがチームの決まりというか、そういうことでうまくいっていると思います。チームとしてもすごく良い方向に向かっていると思うので、バイウィークを挟んでしっかりリフレッシュして、また次の試合にフォーカスしてやっていきたいと思います」
──テレビジョン・マッチ・オフィシャル(TMO)でトライが認められないこともあったが、流れを渡さなかった?
「TMOのところでインゴールに入りながらもグランディングできなかったシーンもあったり、ペナルティになってしまったシーンもあったりしたんですけど、ただ、相手のキックオフであったり、ドロップアウトのキックオフであったり、相手のリスタートに対してしっかりプレッシャーを掛けられていたので、常にテリトリーを取れていたと思います。そういうところでプレッシャーは相手のほうがあると全員で声掛けしながらラグビーができていたと思うので、慌てずにずっとゲームを進められていたのかなと思います。
あまり何かを引きずることはなく、何かが起きても次、何をしなければいけないのかを話しながら、みんなそれに向かっていけています。その前の出来事をしっかりと忘れて、フラッシュしていける過程でうまく結果がついてきていると思います」
──前回のコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)との対戦と今日の試合との違いは感じましたか?
「一つはこの雨の中のコンディションで、セーフティーリードをもっていたのはメンタル的にも、自分たちがプレーする上でも優位に立っていたのかなと思います。前節の江戸川のときは本当にワントライで逆転という状況の中でのプレーで、こちらにもプレッシャーはありましたし、神戸Sとしても勝ち取れるところを勝ち取れなかったという雰囲気だったと思います。今回は全体をとおしても自分たちがコントロールしている時間が長かったと思いますし、セーフティーのポイントを取っていきながら戦えていた。大事なときにペナルティゴールを決められていたのも大きかったと思います」
──雨の中での試合だったことについて。
「この天候だったり、レフリーだったりは自分たちでコントロールできないことで、そこに対してあまりフォーカスしていないというか、そこは1年間をとおしてチームで鍛え上げることもできましたし、雨の試合を前節、経験できていたのもすごく大きな経験値だと思います。今日の試合に向けての準備の部分で言うと、クボタスピアーズ船橋・東京ベイにとってもすごくアドバンテージだったと思います」