2024.01.12NTTリーグワン2023-24 第5節 神戸S vs S東京ベイ-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第5節 カンファレンスA
2024年1月14日(日)14:30 ノエビアスタジアム神戸 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ vs クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

コベルコ神戸スティーラーズ(D1 カンファレンスA)

たとえ体は小さくとも。子どもたちにも示す、「スター選手にも引けを取らない」気持ちの強さ

コベルコ神戸スティーラーズの松岡賢太選手。ポジションはフッカーだが、ハンドリングやランプレーにも定評がある

ノエスビアスタジアム神戸でクボタスピアーズ船橋・東京ベイを迎える今節のコベルコ神戸スティーラーズ。キックオフは1月14日午後2時30分。昨季リーグ王者を撃破し、連敗脱出に挑む一戦となる。

186cm/123kgの中島イシレリと183cm/117kgの具智元。超重量級プロップに挟まれてスクラムの最前列に立つのは、175cm/100kgの松岡賢太。歴然とした体格差。その光景はとてつもなく衝撃的だ。

「二人とも僕より20kgくらい重い。『大きいなぁ!』って思いますよ」

そう苦笑まじりに語った松岡。ただ、「思いますけど、それをまとめるのがフッカー。大きい人たちを生かせるかどうかは僕次第です」と鋭い視線を飛ばした。

当然、松岡は体を鍛えに鍛え抜いている。そのボディは筋肉の塊だ。

「スクラムでは胸を張るんですけど、背中を寄せたら胸を張ることができます。背中を引く力は広背筋や肩甲骨の周りの筋肉なので、そこを意識して鍛えて、良い姿勢を保てるようにしています」

さらに、“お尻”を鍛えることも欠かせないという。

「昨季くらいからの(スクラム時の)新ルールで『クラウチ、バインドの瞬間まで右足を残せ』と言われています。プロップは手で相手と組み合えますけど、フッカーは自分のお尻で自分を支えないといけません。1番と3番が前に行くのを右足のお尻の筋肉で止めて、それを一気に外して(セットへ)入る感じ。お尻が弱かったら支え切れません」

今節のスクラムの対面はニュージーランド代表で90キャップを誇るデイン・コールズ。「スーパースター」とリスペクトする松岡だが、その言葉には自信があふれた。

「スター選手だからスクラムが敵わないなどと、組んだ感じで今まで思ったことはありません。『スター選手にも引けは取らない』と思っています。しっかりと圧力を掛けたいです」

ハンドリングやランなどアスリート性にも定評ある松岡。「体が小さくても『ラグビー選手になりたいな』って思っている子どもに、小さくても勝負ができるところを見せたいと思っています」。最前線でチームを引っ張り、自らのミッション遂行に燃える26歳に注目だ。

(小野慶太)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスA)

希望の光を灯すために。「石川のみなさんとともに、僕たちも立ち上がる」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのファウルア・マキシ(写真中央)、藤原忍(写真右)、アシペリ・モアラの3選手は地震があった能登半島にある日本航空高校石川の出身だ

1月1日16時10分、緊急地震速報の警告音がけたたましく鳴り響き、直後には自宅マンションが大きく揺れた。スマートフォンを開くと、石川県能登地方を震源とする大地震が発生したという。みんな、大丈夫か? 無事なのか? ファウルア・マキシは、高校生活を過ごした第2の故郷の現状を憂慮した。

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)のファウルア・マキシ、藤原忍、アシペリ・モアラの3人は石川県の能登空港に隣接する日本航空高校石川の出身。トンガ出身のファウルア・マキシ、アシペリ・モアラにとって、そこは初めて「雪」というものに触れた場所でもある。ファウルア・マキシが当時を振り返る。

「とても厳しい学校で、先輩後輩の規律も厳しかったです。日本では同学年とか年下にはため口で、先輩など目上の人には敬語を使います。『敬語』のようなものはトンガにはありませんでした。高校時代にそうした日本の文化やマナーを学ぶことができ、その経験は卒業後にとても役立ちました」

HARAJUKUとかSHIBUYAとか、そこは想像していた日本の街とは随分と違っていて、アシペリ・モアラは能登に到着した際に「ここは本当に日本なのか?」と思ったという。ただ、二人はその後日本で生活をする上で重要なことのすべてを高校生活で身に付けている。アシペリ・モアラは「僕にとっての日本は石川」と語り、ファウルア・マキシも「石川で学んだからこそ日本のことを好きになれた」と懐かしむ。

「卒業するころには『日本』をかなり理解できるようになっていました。石川で学んだことは(卒業後に進学した)天理大学でも生かせました」(ファウルア・マキシ)

その青春の学び舎が震災に見舞われたのは今年の元日。藤原はすぐに高校の監督、コーチと連絡を取った。

「学校の建物自体は大丈夫らしいのですが、窓ガラスが割れたり、道路にヒビが入ったりと、大変なことになっていると聞きました。選手たちはみんな帰省していて無事だったそうですが、学校はひどい状態になっていると」

ファウルア・マキシ、アシペリ・モアラも連係して監督たちに連絡を入れ、後輩たちの無事を確認。藤原を含めた3人は「状況が落ち着いたら現地にお見舞いに行きたい」と口をそろえる。

「僕はまだ卒業してから一度も石川に帰っていないんです。みなさんには1日でも早く、元の生活に戻れるようになってほしいです。とても心配しています」(アシペリ・モアラ)

スポーツ選手には、こんなときこそ果たすべき使命というものがある。今季は1勝3敗と苦戦を強いられているS東京ベイ。リーグ下位でもがいていた苦難の時期を乗り越えて昨季に優勝を果たした男たちは、逆境を力に変える術を知っている。

「僕たちはこれで終わるわけではありません。石川のみなさんとともに、僕たちのチームも一緒になって立ち上がって、頑張っていきたいと思います」(藤原)

「いま、石川は本当に大変なことになっています。試合でいいパフォーマンスを見せて、そして勝って、石川の後輩や監督たちを少しでも元気づけられればうれしいです」(ファウルア・マキシ)

スポーツにしかできないこと。スポーツだからできること。1月14日のコベルコ神戸スティーラーズ戦。不撓の王者が勝利という名の希望の光を灯す。

(藤本かずまさ)

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