2024.01.15NTTリーグワン2023-24 D1 第5節レポート(神戸S 34-38 S東京ベイ)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第5節 カンファレンスA
2024年1月14日(日)14:30 ノエビアスタジアム神戸 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 34-38 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

神戸から北陸へ。“逆境”に立ち向かった選手たちが見せた正のエネルギー

コベルコ神戸スティーラーズの日和佐篤選手。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で被災したひとりだ

コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)は1月14日、ノエビアスタジアム神戸でクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)を迎撃。劣勢だった前半から一転、後半は怒とうのアタックを展開し、最終盤には逆転に成功。ところが、最後の最後でトライを許し、34対38の惜敗を喫した。

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。子どものころに被災した神戸市出身の日和佐篤は試合前、「“神戸製鋼”は復興のシンボルだと思っていますし、特別な思いをもってプレーできたら」と話した。22歳の濱野隼大も「どれだけ厳しくても神戸は立ち直ってきた」と育むチームカルチャーを強調。3日後の「1.17」への思いを胸に、神戸Sはこの日の試合に臨んだ。

濱野は後半5分に反撃の口火を切るトライを奪い、後半22分から出場した日和佐はテンポのいい配球でアタックをリード。後半35分、会場に大歓声を巻き起こす劇的な逆転トライを挙げたのはサウマキ アマナキだ。

「僕らがパフォーマンスをしっかり出して、いい結果を神戸の土地に届けること。何か僕たちにもできることがあるんじゃないか」

チームで共有した思いを胸に、6番は激しいタックルを受けても最後までボールを放さなかった。

ブロディ・レタリックと共同キャプテンを務める山下楽平もまた、「自分たちが見せたかったラグビーを見せることができた時間帯もありました。それはチームとしても良かったと思います」と思いを言葉にした。試合には敗れ、連敗は3に伸びた。チームの反省点を話した14番は、その上で力強く前を向いた。

「この逆境から頑張っていきたい」

キックオフ前、大型ビジョンには1本のメッセージ動画が

試合前、大型ビジョンには1本のメッセージ動画が放映されている。橋本皓や松岡賢太、アーディ・サベア、李承信ら神戸Sの選手が言葉を紡ぐ。元日に発生した能登半島地震。神戸だから伝えられるものがある、その思いを詰め込んだ動画だ。

「復興への道は簡単じゃない。一緒に頑張れば未来はきっと明るくなるはず。1.17の神戸から北陸の皆さんへ」

神戸SとS東京ベイは高水準のバトルを演じた。最終盤に訪れた逆転に次ぐ逆転は、互いが全うした“あきらめない気持ち”の体現そのもの。連敗を3で止め、苦境を脱したS東京ベイ。神戸Sも必ずここから巻き返す。この日のノエスタには、“逆境”に立ち向かうための激励や決意、覚悟など、さまざまな正のエネルギーが満ちていた。

(小野慶太)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(右)、ブロディ・レタリック共同キャプテン(左)

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「コンニチハ。前半は自分たちのプレーの中に緊急性というものがまったく見られませんでした。前半は7対17で折り返し、後半はいいプレーができました。その上で後半の終盤ですね、自分たちがしっかりと前に出るタイミングで出ていきましたし、最後に取り返して前に出ることができましたが、本来ならきっちりと試合を締めないといけないところで締められませんでした」

──「前半はプレーの中で緊急性が見られなかった」ということでしたが、具体的にどういうことでしょうか?

「大きな部分で言えば、キックプレッシャーのところですね。前半に関してはキックを蹴ったあと、もっとスプリントして相手に対してプレッシャーを掛けられるチャンスのところで、自分たちが緊急性をもってプレッシャーを掛け切れていなかった。そこに関しては後半、間違いなく良くなりました。

後半はキックオフのあとに、しっかりスプリントして相手陣奥深くでタックルをしてそこから自分たちのターンオーバーに変える、というところが良くなりました。

緊急性というのは、そのキックオフのスプリント以外でも、セットスピードなどいろいろな部分、エリアすべてのところにおいてです。第4節まではコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)としては良かったところなので、そこが前半に足りていなかった部分だと思います。さっきブロディ(・レタリック)も言ってくれたように、イグジット(脱出)の部分が良くなかったです。自分たちがトライなどで点数を重ねたあとも、イグジットの部分が良くないので相手にペナルティを与えてしまって、相手が結局、そこで点を追加してしまい、自分たちが取ったあとにそのまま連続で取り切れない状況になっていました」

──3連敗となったが、この状況を打開するために重要なことは?

「この3試合を振り返ると、勝つために必要なことは十分できていて、本来であれば勝つべき試合を自分たちが大事なところでミスをしてしまって手放している状態が続いています。3連敗もしてしまうと、自分たちはどうしたらいいんだろうと頭を抱えてしまいますけど、自分たちはそれだけのことができていることを絶対に忘れないようにしていきたいと思います。まだ11試合あるので、しっかりと、残りの試合を戦っていきたいと思っています。一度戦った相手ともまた戦うチャンスがあるので、そこでしっかりと倒し切ることをしていかないといけないと思います。自分たちのパフォーマンスとして間違いなく成長していかないといけない部分はあるので、そこは成長させていかないと。リーグワンは非常にタフな大会になっているので、今シーズンをここまで見ても埼玉パナソニックワイルドナイツさん、東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)さんが素晴らしいパフォーマンスをしていると思いますし、どこのチームが勝ってもおかしくないパフォーマンスを続けています。その中で自分たちは成長しながら残りの試合を勝ち続けていきたいと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック 共同キャプテン

「コンニチハ。(デイブ・)レニー ヘッドコーチがうまくまとめてくれたと思います。自分たちが丁寧に仕留め切らないといけないところで丁寧さがなくなり、そこでのミスが自分たちに大きくのしかかってきました。相手陣に入った際には自分たちのポイントに変えることができましたが、自分たちの脱出エリアですね、自陣奥深くから正しく脱出しないといけないところでの精度も良くなかったと思います」

──3連敗となったが、この状況を打開するために重要なことは?

「このあとにバイウィークがあるというのは、自分たちにとっていいタイミングになったと思います。明日、練習試合があって今日出ていないメンバーも試合には出ますし、来週、バイウィークがあることによって何を修正しないといけないのかを理解して、そこに取り組んだ上で頭をクリーンにできるいいチャンスが自分たちにはあると思っています。デイブ(・レニー ヘッドコーチ)も言っていたように、成長しなければいけない部分はたくさんあると思います。なので、そこの部分にチームとして取り組んで、バイウィーク明けに自分たちが勝っていけるようにしたいと思います」

──自陣深くからの脱出でのトラブルに関して、一番の原因はどのようなことだったでしょうか?

「自分たちがプレーしようとしたところでミスをして相手にボールを与えてしまい、自陣の奥深くで相手にプレーするチャンスを与えてしまったという状況ももちろんありましたし、自分たちがボールをしっかりと蹴り出さないといけないところで、それがインフィールドに残ってしまって、相手が真ん中でブレイクダウンを作ってから両方とも使える状況でアタックをさせてしまうこともありました。自分たちのセットピースがうまくいっていることが多いので、しっかり蹴り出すべきところは蹴り出して相手にプレッシャーを掛けていくことをしなければいけなかったと思います。ミスに関しては純粋に自分たちのボールキャリーのところで激しく、力強いボールキャリーをしていかないといけないと思います」

──阪神淡路大震災が発生した1月17日に近い日程での試合でした。どのようなマインドセットで向かったのでしょうか?

「1週間準備する上で、神戸という街、会社というのはとても大事な存在で、復興というのがどれだけ大変だったかということに、チームとして触れました。ここ2試合で連敗していたので、自分たちとして神戸の街のために勝利を得られるかは大事に思っていました。それができなかったのは残念で、悔しい気持ちです。フラストレーションの溜まる結果となってしまいました」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(右)、立川理道キャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「コンニチハ。まず今日はこういう試合に勝てたことについてグレイトな気持ちです。これまでいろいろな学びもあった中でこうやって結果につながったのは本当にいい気持ちです。ここにいる立川(理道)キャプテンをはじめ、大事な局面で一つになれたこと、プロセスをしっかり追求できたところがタフな戦いに勝てた結果ですが、最後の笛が鳴るまでいいチャレンジをしてくれました。もちろん神戸Sさんもいいチャレンジをしてくる中で、たくさんのことを求めていいパフォーマンスをしてくれて、それがいい結果につながったと思います。これで自分たちがやりたい方向性にまた戻ってきた第一歩のところだと思うので、2週間後のリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)戦に備えたいと思います」

──メンバー発表後に選手の変更がありました。けが人も出る苦しい試合が続いている中で、力を出し切れた一番の要因はなんでしょうか?

「けがのところはコントロールできないです。先ほど立川選手が言っていたようにシステムや選手たちを信頼するところではゲラード・ファンデンヒーファー選手がフルバックをやっていましたし、根塚洸雅選手もしっかりやることをやってくれました。個人で勝つわけではないので出てくれた選手がしっかりやってくれたことだと思います」

──プランどおりやっていてもこれまで勝てていなかった中で、どのようなことを意識してきたのでしょうか?

「過去の試合ではいいプレーをしても点数に変えられなかったり、プレッシャーを掛けられているのにチャンスをモノにできなかったりというのがあった中で、今日の試合ではしっかり我慢するところは我慢できていましたし、フォワードも頑張っていましたし、アタックもディフェンスも機能していました。最後のリカス・プレトリアス選手のトライも、小さなプレッシャーを掛け続けたからこそのもので、そうした小さいこと、ベーシックなことを確実にやっていった結果だと思います」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン

「(フラン・ルディケ)ヘッドコーチが言ったようにここ数試合、僅差で負けてしまった試合がありました。チームとしても苦しいというか、やってきたことは間違いないと言い続けて練習に取り組んできて、今日、こういうタフな試合を勝ち切れたことはすごくチームにとっても得るものは大きかったと思いますし、ここからまた自分たちのやるべきことを明確にしていって、次に進んでいきたいと思います。本当にこの試合に勝つためにチーム全員で同じ絵を見てこの試合に臨みました。23人、出たメンバーだけではなくて、残っている選手たちの貢献はすごく大きかったですし、オレンジアーミーの皆さんも神戸までたくさん来ていただき声援をいただいて、静岡ブルーレヴズ戦もそうですし、BL東京との試合もそうですけども、声援に応えられなかったことに悔しい気持ちもあったので、こうしてまた一戦一戦、戦っていく中で、ファンの人たちと喜びを分かち合えるのはすごくうれしく思います。ここでの経験をしっかり生かして、少しリフレッシュして、BR東京戦に向けて勝ちを積み上げていけるようにしていきたいと思います」

──苦しい状況が続いていた中で、大事にしてきたことは?

「自分たちのスタイルやゲームプランというものを信じ切れないことが一番怖かったので、そこはスタッフが提示したものに対して、リーダー陣らがすり合わせて、それを選手たちに言い続けてやり切ることが大事だと思います。ここ数試合それをやり切りながら勝ち切れなかったので、だからこそ苦しかったんですが、今日こうやって勝てたことは本当に大きな一歩なのかなと思います」

──ゲームプランについて教えてください。

「神戸Sのディフェンスの中で、フィジカルの強い選手たちがボールを抱えあげるようなタックルをするなど特徴的なディフェンスの中で、自分たちがどうアタックしていくのかというのをプランとして臨みました」

──ゲラード・ファンデンヒーファー選手のキック成功率が高かった。彼の良さをどう見ていましたか?

「今日はこういうタイトな試合の中で、狙えるところは狙っていくというのが頭の中にありました。彼自身が自分で狙えるというときには自信をもって蹴っていると思いますし、僕自身も彼の心境を読み取りながら、ここは狙わないほうがいいのかなというようなことも考えていきます。今日の彼のコンディションや、キックの感覚が良かったのか、自信をもって『どのエリアでも狙える』と言ってくれたので、僕らも信頼して彼の選択に従いました。別に外れたとしても彼が一番、この中でうまいので(笑)。そこは信頼していますし、今日のタイトなゲームの中で彼が決めてくれた3点の意味は大きかったです。トライ後のゴールも、相手にとってはプレッシャーを掛けられたと思うのですごく感謝しています。引き続き決めてほしいと思います」

──残りシーズンへ向けて大事にしていきたいことは?

「毎試合ゲームプランというのは変わっていくと思いますが、やはり自分たちの大きなフォワードをどう前に運んでいくかはハーフ団の考えるべきことだと思います。今日も神戸Sのフィジカルの強い選手に抱えあげられるようなディフェンスをされてしまいました。やはり、体の大きい相手にああいうところでボールをうまくリサイクルできないとなかなかペースをつかめないと思います。逆にどのチームも自分たちに対してやってくると思うので、そこは修正していかないといけません。ディフェンスの部分は毎試合向上していると思うので、規律の部分も含め、レフリーとのコミュニケーションも良くなってきていると思いますし、そういうところでしっかり自分たちのスタンダードというものを見つけていきながらさらに成長していきたいと思います」


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