2023.04.08D2 1位~3位順位決定戦 第1節 浦安DR vs S愛知-見どころ

浦安D-Rocks(D2)

1試合の重みが増す”ラスト4“。勝ち続けて成長してきたチームはさらに勝利への思いを強くする

浦安D-Rocksの安田卓平。けがのイズラエル・フォラウ選手に代わり、フルバックで出場を続けている

前節、“首位攻防戦”を制した浦安D-RocksはNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2の総当たりのリーグ戦10試合を全勝で駆け抜けた。しかし、これはまだ始まりに過ぎない。今季はあと4試合残っており、目標である入替戦の前に、もう一度、順位を決める戦いが待っている。ここから先の戦いは1試合ごとに状況が変わっていく。

「うまくいかないこともたくさんありましたけど、順調に来ていると思います。勝った中で成長できているのは自信になりますし、新しいチームであるだけに、勝つことでチームがうまくいっていると思います」

中止を除く9試合すべてに出場した安田卓平はチームの成長をそう振り返る。安田自身は開幕節から第3節まではウイングで出場しながら、イズラエル・フォラウの負傷によってフルバックへとポジションが変わった。しかし、「最も得意」とするポジションなだけに違和感なくチームを引っ張っている。

「ポジションにとらわれることなく、やることはあまり変わってないです。自分自身の持ち味を出せていると思います」

そんな安田の武器は万能性だ。相手を跳ね飛ばす推進力や両足で蹴れるキックなど、強みが多い。

「周りをコントロールしたり、パスやキックでゲームメークをしたりするところは持ち味だと思っていますけど、それが出せる試合が増えてきていると思います。(イズラエル・)フォラウにランでは勝てないですけど、ゲームメークのところでは僕のほうが優れている部分もあると思う」

さらに、「僕より大きくて速い選手はたくさんいる」と言いつつも、身体能力にも自信がある。ラグビーを始める中学生以前は、野山を駆け回っていたという。

「保育園のころから、散歩コースは山道でした。いろいろな遊びをしていたことで、ラグビーを始めてからも吸収力が高かったのかも。いま考えたら危ないと思いますけど、ロッククライミングみたいに岩を登ったりしていました(笑)。それで運動能力が鍛えられたのかもしれません」

そして、ゲームメークなど戦術面の強みは性格によるものだろうか。

「勉強も嫌いじゃなかったですし、ほかのスポーツを見ていても詳しく知りたくなって、野球の配球についての解説動画を見てしまいます(笑)」

イズラエル・フォラウの復帰がもう少し先になりそうなだけに、頭脳面とパワー面の両方でチームを支えてきたフルバックにかかる期待は変わらず大きい。安田は静かに決意を語った。

「昨季悔しい思いもしましたし、ここから先で勝たないと何の意味もないので。4試合全部、勝ちたいです」

(沖永雄一郎)

豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)

リーグ戦で2敗を喫したリベンジへ。
対照的な二人を筆頭にS愛知は勝ちにいく

豊田自動織機シャトルズ愛知の藤浪輝人選手(中央)。プロ選手としてプレーしながら、教員免許取得のための勉強を続けている

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2は順位決定戦に突入。総当たりのリーグ戦を3位で終えた豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)は、江東区夢の島競技場に乗り込み、同1位の浦安D-Rocks(以下、浦安DR)と対戦する。

シーズン終盤、疲労の色も濃くなる時期。「ディビジョン1昇格のため、この2試合をしっかり勝って、入替戦へのステップにしたい」と語ったのは、ここまで6試合に出場する藤浪輝人。170cmと小柄だが、低いタックルを武器に浦安DRへフィジカルバトルを挑む構えだ。

藤浪にはラグビー以外に夢がある。それは教員免許を取ること。現在、通信制の大学に通って教師になるための勉強をしている。「自分の母校である伏見工業高校(現・京都工学院高校)に帰って、ラグビー部の指導者になりたいです」(藤浪)。2007年度の全国高校大会の決勝で東福岡高校と熱戦を繰り広げた伏見工業高校の姿に「初めて涙を流し」、そのタイミングで、伏見工業高校への入学を決意。そんな母校に、これまでの、これからのラグビー人生で得た財産を還元するため、プロのラグビー選手との二足の草鞋を履きながら、日々勉学に励んでいる。

「小学6年生のときに、松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)や小倉順平(横浜キヤノンイーグルス)がいた桐蔭学園高校が全国高校大会で初優勝して、印象に残ったので入りたいと思った」と語るのはここまでチームトップの6トライを数える齊藤大朗だ。ただ、入学して以降は強い思いを持っていた藤浪とは対照的に「成り行きに任せてきた」という齊藤。当時、ラグビーを続けた原動力も「辞めたら何も残らなかったから」(齊藤)と即答する。しかし、クールなイメージに反して、ラグビーに対する熱い思いは秘めている。「桐蔭学園高校の藤原秀之監督は答えを出さない指導法で、選手に考えさせて答えを導き出す監督でした。高校で培ったラグビー偏差値は、大学・社会人になっても生きていると思います」(齊藤)。

総当たりのリーグ戦で2敗を喫した浦安DRを相手に、勝ちにいく。その思いをこの二人をはじめ、選手全員がプレーで示してくれるだろう。

(齋藤弦)

ニュースの一覧へ