2024.01.11NTTリーグワン2023-24 第4節 浦安DR vs S愛知-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第4節
2024年1月13日(土)14:30 ゼットエーオリプリスタジアム (千葉県)
浦安D-Rocks vs 豊田自動織機シャトルズ愛知

浦安D-Rocks(D2)

憧れられる選手になるために。一瞬の痛みを耐えられるワケ

期待のルーキー、浦安D-Rocksの武内慎選手。191cmサイズのフランカーは痛いプレーを厭わない

2024年初戦からいきなり天王山が実現する。現在2勝1敗で2位につける浦安D-Rocks(以下、浦安DR)は、ここまで全勝で首位を走る豊田自動織機シャトルズ愛知をゼットエーオリプリスタジアムに迎え撃つ。今月唯一のゲームで勝利し、首位浮上を誓う一戦だ。

191cm/110kgの大柄な体とは対照的に23歳のその表情にはまだあどけなさが残る。昨季のアーリーエントリーを経て、今季、明治大学から浦安DRに加入した武内慎は憧れだったリーグワンでの戦いに興奮と驚きを隠せないでいる。

「日本のリーグだけど各国の代表選手がいて、ウチにも(ラグビーワールドカップ代表経験のある)サム(・ケレビ)やリアム(・ギル)、ジェームス(・ムーア)がいる。『本当にテレビで観ていた選手が戦っている舞台に自分も来たんだ』と。光栄でありちょっと緊張や感動したりしながらも楽しくプレーできています」

試合を重ねるごとに雰囲気や空気に慣れ、自らの課題やチームに向き合う余裕も出てきた。大学時代のロックからフランカーにポジション変更した武内の持ち味は、サイズを生かしたコンタクトプレーと若さを生かし、アグレッシブに走り回るスタミナ。その二つを武器に攻守でボールのあるところに顔を出し、倒されても立ち上がり、何度でも相手に向かっていく。

「体の痛みは何日か寝れば治るけど、心の痛みはしばらく残るんですよね……。良いプレーは褒めてもらうこともあるけど、すぐに流れていく。でも、悪いプレーは『あのときの……』と自分にも周りにも残る。心が痛いです。あとは本当に勝ちたいだけです。『外国人選手だから強い。日本人選手だから外国人選手に勝てない』。それではイヤ。誰に対しても圧倒したい気持ちがあります。だから、痛くてもやる。一瞬の痛みよりもずっと続く痛みを味わうほうがよっぽどイヤなので」

肩書きで言えばルーキー。経験値が浅く、周囲への憧れもある。まだまだこれからの選手である。だからこそ、抱く夢は大きく、見据える目標は遠くにある。

「いきなり手が届くとは思っていないですけど、日本代表に少しでも届くような選手になりたいし、ラグビーには周りにインスパイアを与えられる魅力があると思うので、次は自分が憧れられる選手になっていきたい。そのために自分にできることをこなしながら成長し、一歩一歩確実に前に進んでいきたいです」

今年8月には24歳になる。年男の表情は、希望に満ちていた。プロ1年目、“辰の如く”武内は駆け抜ける。

(須賀大輔)

豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)

輪島市での避難所生活からラグビーのピッチへ。佐藤慶、いまできる精一杯の姿を

豊田自動織機シャトルズ愛知の佐藤慶選手。元旦の能登半島地震の被災者のひとりとして試合に臨む

開幕から3連勝、良い流れを維持したまま2024年の戦いに移る豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)。昨季の対戦で全敗を喫した浦安D-Rocksを相手に4連勝を狙う。

今月1日に起きた能登半島地震。北陸地方に甚大な被害を及ぼし、現在も避難所での生活を余儀なくされている人々が多くいる中、S愛知の佐藤慶も被災した。フッカーとして今季全3試合に出場し、S愛知の屋台骨を支える26歳。出身は新潟県だが、4年ぶりに石川県輪島市に住む祖母の家を訪れていたという。

「祖母は80歳で一人暮らしをしていて、自分を含めて3人で年末年始を過ごしていました。テレビを観ていたらいきなりドカンと揺れて、急いで祖母を担いで家の外に出ました」。目の前の道路もひび割れ、住居も半壊状態になったという。その後、3日まで避難所で過ごした。幸い3人全員にケガはなく、レスキュー隊が到着して周囲の人たちの安全を確保できたため、愛知県に戻ることを決めた。

「愛知県に帰ってきて、輪島市と景色が違い過ぎて頭と体が追い付きませんでした。一人でいると頭がおかしくなりそうで、仲の良い人たちに温かくしてもらいながら過ごしていたら、徐々に心も落ち着いていきました」

S愛知の練習には5日から参加し、今節も先発予定だが、佐藤は完全に前を向けているわけではない。「正直、キツいと思う瞬間もあります」。被災地のためにという強い使命感が抱けないのは、自身も心に傷を負ったから。それでも、人生を懸けて挑んできたラグビーというスポーツが本人の居場所になっている。「ジムでトレーニングしたり、ラグビーをしたりすることで気がまぎれるというか、無心になれました。それならば、自分がラグビーをする姿を見せることで、祖母を始め、被災した人へ結果的に元気を届けられたらと思います」。

いまの自分にできる精一杯をグラウンドで見せると佐藤は誓っている。その姿をぜひ見てほしい。

(齋藤弦)


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