2023.04.23NTTリーグワン2022-23 D2 1位~3位順位決定戦 第3節レポート(浦安DR 48-28 三重H)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2 1位~3位順位決定戦 第3節
2023年4月22日(土)14:30 駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場 (東京都)
浦安D-Rocks 48-28 三重ホンダヒート

そしてラグビーは続く。入替戦を前にした両チームで見られたグッドニュース

ディビジョン2は浦安D-Rocksが全勝で優勝を決めた。一方、三重ホンダヒートは金井健雄選手が通算100試合出場を達成した

NTTジャパンラグビー 2022-23 ディビジョン2の戦いがついに終了した。順位決定戦第3節のカードは、総当たりのリーグ戦で首位を争った浦安D-Rocks(以下、浦安DR)と三重ホンダヒート(以下、三重H)の対決。浦安DRが3度、三重Hを上回り、総当たりのリーグ戦も含めて全勝でディビジョン2王者に輝いた。

前半5分にモールから金正奎が先制トライを決めると、11分には石井魁が中央を切り裂き、最後はタイラー・ポールがトライ。しかし、三重Hも15分のペナルティトライと25分の山路健太のトライで追いすがる。両チームがコンバージョンキックもすべて成功させ、がっぷり四つの試合が展開された。

しかし、浦安DRが底力を見せる。35分には見事なパスワークから飯沼蓮が抜け出してトライ。40分には飯沼のフェイントに三重Hのディフェンスがつられたところを活用して石井が抜け出す。見事なステップで突き放すトライを決めた。

後半も流れは浦安DRにあったが、トム・バンクスが豪脚を繰り出してトライするなど、三重Hも追いすがる。ラスト数分は何フェーズ続いたのかというほどプレーが切れずに、無酸素運動のような展開となるが両チームが奮闘。最後に三重Hが加点したところで試合は終了した。

かくして順位は決し、ここからは両者ともに入替戦への準備を進めることとなる。そんな中で、それぞれ明るいニュースがあった。

三重Hは金井健雄がジャパンラグビー トップリーグ、リーグワン通算100試合出場を記録し、試合後にはセレモニーも行われた。三重Hの選手だけでなく浦安DRの選手たちもそろって記念撮影が行われ、「ノーサイドの精神でみんなに祝ってもらえた」と金井は顔をほころばせた。自身はシンビンでプレーできない時間があったが「みんなで我慢してアタックして、手ごたえが出てきた部分だった」と、敗れはしたものの“入替戦につながるトライ”を得た。

そして、浦安は盤石の全勝でディビジョン2を駆け抜けつつも、「目標はもちろん、入替戦で勝つことですが、その上でディビジョン1で優勝するころを目標にしているので、スタンダードは崩れず、満足している選手は一人もいない」(飯沼)と精神的にも充実。また、イズラエル・フォラウがついにチームに戻ってきたことも朗報だ。後半の早い時間帯にイズラエル・フォラウをフルバックで投入し、安田卓平をスタンドオフに配する形もテストできた。

勝敗の結果は分かれたが、双方が入替戦に向けてはずみをつける試合になった。

(沖永雄一郎)

浦安D-Rocks

浦安D-Rocksのヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ(右)、飯沼蓮キャプテン

浦安D-Rocks
ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ

「みなさん、こんにちは。まずは選手たちがフィールド上で見せてくれた努力に感謝していますし、とても誇りに思います。この試合に勝ったことをうれしく思いますし、同時に感謝しています。

試合序盤はイエローカードが出てしまうなど、ディフェンスの気の緩みのところから立ち上がりが厳しくなりましたが、落ち着いて選手たちが対処してくれたと思います。その結果、前半の最後には素晴らしいトライが生まれました。

後半は規律のところと、ラインアウトのタイミングがうまくいかないというところで、これまでも課題になっていましたが、引き続き修正しなければいけないと思いました。それでも、チームとしては成長していると思いますし、こうした結果を達成できました。それは今日戦ったメンバーだけではなく、今日プレーしていない選手やスタッフ、マネジメント、声援を送ってくれたファンの方々の努力の賜物だと思います」

──キャプテンからは厳しい言葉もあったが、今季ベストパフォーマンスだと感じた。ヘッドコーチのイメージどおりに成長できていますか?

「いい方向に向かっていると思います。例えば、リーグの最初の三重ホンダヒートさんとの対戦は、勝利できたことはうれしかったのですが納得のいかない勝ち方でした。それに比べると、もちろん完璧ではないですが、80分間フルのパフォーマンスができたと評価できると思います。次はディビジョン1の高い強度でずっと戦ってきた相手との試合になるので、レベルの差はあるかもしれませんが、(飯沼)蓮が言ったようにチームとしてはいい準備をすることができているので、練習でというよりは、あとは(試合で)やってみるしかないというところまできているとは思います。プレッシャーが掛かっている中でどれだけ遂行力を高められるかだと思います」

──まったく新しいチームを率いるのはキャリアの中で初めてだと思うが、チームの文化などの達成度はどのくらいにありますか?

「興味深い質問ですね。勝利を重ねていくごとにチームの文化は強くなっていくと思います。もちろん、まだまだ向上の余地がありまだまだ成長できるものはあると思っています。コロナ禍で選手や家族が集まったりすることが難しかった中で、少しずつ合宿やファミリーデイを設けて、家族を含めてチームの文化を高めてきましたし、そこはうまくいっていると思います。

あとはチームとして築く上で、フィールドでの厳しい試練を乗り越える経験も大事にしている部分です。練習中からもやっていますし、負けて学ぶこともあります。

もちろん、今季は昇格を目指しているので負けて学ぶことはしたくありませんが、そうした逆境は、文化が成長する機会として大きいものであると思います」

浦安D-Rocks
飯沼蓮キャプテン

「今日はありがとうございました。序盤でいいスタートを切って2トライをして、そのあとイエローカードが出るという状況でしたが、前回の試合でああいったカオスな状況を経験していましたので、みんなが心の準備をできていました。試合前にも、『どれだけカオスな状況になってもとにかく自分たちを信じて戦おう』ということは言っていました。

2トライはされてしまいましたが、あまり焦ることなく、前回みたいにパニックになることはありませんでした。自分たちがやってきたこと、1週間いい準備をして課題を修正して臨んだ試合だったので、少し成長は見せられたと思います。ただ、まだまだセットピースや、ディフェンスでも今日はトライを取られ過ぎています。そういうところを引き締めて、まだまだ締めたいと思います。ありがとうございました」

──全勝で入替戦に臨むが、あらためて引き締めたいことは?

「もちろん負けて成長することは今まで経験してきました。これは何回か言っていますが、ヨハン(・アッカーマン ヘッドコーチ)が練習中から、勝って反省するチームという文化を作ろうとしています。常に『氷に文字を刻んでいいことを書いても、太陽の光を浴びたら溶けてなくなってしまう。常にハードワークしよう』と言ってくれています。チーム全体のプライオリティーで、全員がそこを信じて練習に励んでいて、正直、試合よりもしんどい練習を毎週しています。自分たちの目標はもちろん、入替戦で勝つことですが、その上でディビジョン1で優勝することを目標にしているので、スタンダードは崩れず、満足している選手は一人もいません。僕が何も言わなくても、文化が作り上げられているので大丈夫かなと思います」

浦安D-Rocksの竹内柊平バイスキャプテン(左)、繁松哲大選手

浦安D-Rocks
竹内柊平選手

「ありがとうございました。前半から三重ホンダヒートさんのプレッシャーがある中で、接戦になっているところをバックスがいい形で切り崩してくれて、いい流れで前半を終われました。それで後半は自分たちの強みであるアタッキングラグビーを前面に出せていい締めくくりになったのではないかと思います。

反省点としてはやっぱりラインアウトで、競ってくるいい選手がいると成功しないところや、セットピースが安定しないところがあります。そこを改善して、次の花園近鉄ライナーズ戦に向けてチーム一丸で戦っていきたいと思います。

──自身の今季の成長をどう感じていますか?

「自分はスクラムの経験値がないので、例えば変則的なスクラム、一人ひとりが別のアングルでくるようなスクラムにはまだ対応し切れていない部分があって、プレッシャーを掛けられるなどチームを危ない状況に陥らせてしまうことがありました。そういった経験が積めたのはとても大きい収穫だったかなと思っています」

──全勝優勝をどう受け止めていますか?

「もちろんピンチの状況もありましたが、自分の中では(全勝は)当然の結果だと思っています。この1年間、本当にハードワークしてきましたし、一人ひとりの意識もすごく高くて、23人全員のハードワークを体現できていると思うので、この全勝という成績は別に、何も不思議なことではではないと思っています。自分たちがやってきたことを出せれば入替戦も必ず勝てると思いますし、その次のシーズンはディビジョン1優勝を目指すために準備を積んで、もっとチームとして一つになれればと思います」

浦安D-Rocks
繁松哲大選手

「今日はありがとうございました。僕としては、今日の三重ホンダヒート戦は全体的に、チームで目標にしている最初から最後までハードワークするところが80分間できたと思うので、そこは良かったと思います。改善点、課題としては、まだペナルティがちょっと多かったので、入替戦に向けて詰めていけたらなと思います」

──飯沼蓮キャプテンは明治大学の後輩でもあるが、どう見ていますか?

「大学のときからすごくリーダーシップがあって、頼れる選手です。後輩だったのが一緒のチームになって引っ張ってくれて、すごくやりやすいのはありますし、助かっています」

──ハードワークという意味では、試合終盤にまったくプレーが切れない時間が長く続いた。両チーム大変な状況だったと思うが、ピッチ内はどういう状況だったのでしょうか?

「最後にすごい攻防が続いていたときは、とにかくみんなで止めよう、前に前に出ようと、それしか頭になかったです。キツい思いも頭の隅にありましたが、とりあえず早く戻って、早く前に出て、ボールを取り返さなきゃとばかり考えていました(笑)」

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートの上田泰平ヘッドコーチ(左)、古田 凌キャプテン

三重ホンダヒート
上田泰平ヘッドコーチ

「みなさん、お疲れ様です。今日は浦安D-Rocks(以下、浦安DR)さんのホストゲームということで、最初のバスの導線から、いろんなことに気を遣ってもらったおかげで、ウォーミングアップから試合の入りまで、非常にスムーズに流れてストレスなくできたことを感謝しています。

得点差としては少し開いてしまったとは思いますが、試合の中身を見ていけば、自分たちのちょっとしたところがこういうふうな結果に結び付いてしまったという感想です。そういう小さなところを今後どう直していくかをしっかりとやっていけば、次につながる、成長につながるような内容になっていくと思うと選手たちには話しました。僕たちがやらなければいけないことは、入替戦に向けてどういうことをこの試合から学んで、修正をかけていくかというところだと思います。そこはまたしっかり、リーダー陣と話しながら、いい1週間を過ごしていけたらと思います」

──今日のゲームプランはどういったものだったのでしょうか?

「アタックのところでは、浦安DRさんはフロントラインのディフェンスがすごく強いので、そこをどう潜り抜けながら壊していくかということは考えていました。最初はすごくいい局面を作れていて、前半は1対1の場面もしっかりと作り出し、前にいい形で行っていたと思います。そこはプランどおりできていたと思いますが、最終的にプレッシャーを掛け切れませんでした。あとはチャンスを作り出してはいましたが、チャンスはチャンスでしかないので。それをどれだけ取れるかに意識を集中させることを次はやっていければと思います」

──パブロ・マテーラ選手がメンバーから外れているが、入替戦に間に合いそうか。

「はい、大丈夫です(笑)」

三重ホンダヒート
古田凌キャプテン

「お疲れ様です。前半の入りから少し、自分たちのペナルティがあるなど、うまくリズムを作れない場面がありました。試合の中でどうやったらもっとリズム良くテンポ良く、アタックとディフェンスができるかをしっかり話し合いながらできればと思います。

後半の最後は我慢の時間帯があったのですが、三重ホンダヒートらしいアタックが我慢強くできて、そのあとはトライにつながったので、すごくポジティブなイメージで(試合を)終われました。負けてしまったのですが、この試合をいい学びにして、もう1回前を向いて一丸となって、タイトになって次に進んでいきたいと思います」

──自陣からなかなか脱出できなかったときにスコアを取られていた印象だったが?

「そこはいつもどおり、ハーフの9番10番がうまくコントロールしながら、できている部分もあったと思います。そんなには悪くなかったのかなというイメージですが、ダイレクトタッチなどで自陣にバックした場面はありましたが、あまりネガティブではなかったんじゃないかと思います」

──入替戦に向けて修正したいところは?

「まずは一人ひとりが正しい判断をするところと、一人でやるんじゃなくて、アタックでもディフェンスでもしっかり横とつながりながらみんなでやる。細かいところを練習からしっかりリーダー陣から行っていければと思います」

三重ホンダヒート
金井健雄選手

「今日はいろいろと厳しい戦いをすることができて、チームとして成長することができたと思います。チャンスのところで浦安D-Rocksさんは取り切って、僕らは取り切れなかったことで、厳しい戦いになったと思います」

──試合最後のトライは入替戦に向けての勢いにつながるのでは?

「まずは、私がシンビン中に長い攻撃をみんなで我慢してアタックしていたところが、手ごたえが出てきた部分かなと。強い終わり方を絶対しようというところで、入替戦につながるトライだったのかなと思います」

──1部のトップレベルを経験しているが、チームや若い選手にどういったことを伝えているのでしょうか?

「強いチームと弱いチームの差というのは大きな差ではなくて、本当にちっちゃなことをできる、できないで少しずつ差がついていきます。切り替えやリアクションもそうですし、毎日の練習で少しずつ直していって、あと2週間でできることをやりながら成長していけたらと思います」

三重ホンダヒート
フランコ・モスタート選手

「まず、今日のパフォーマンスは非常に残念なことになってしまったと思います。入替戦に向けて、チームとして課題があると思いますので、ここから1週間、ゲームがない週を挟んで入替戦に向かっていきますが、相手がNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)に決まりましたし、しっかりとリカバーと対策、準備をしてパフォーマンスを出して、昇格できるように頑張っていきたいと思います」

──今日の試合の具体的な課題は何でしょうか?

「自分たちにフォーカスを当てて、修正するべきところは修正しなければいけません。主には、アタックプランを遂行することや、ディフェンスのシステムを守るといったところに関して、チームとして果たすべき役割を遂行していかなければというのがあります」

──入替戦は昨季と同じ相手になるが、昇格するために必要なことは何でしょうか?

「GR東葛さんとは、前回対戦してから1年くらい経過していますし、目の前のゲームにフォーカスして戦ってきたのであまりよく見れていないのが正直なところです。ですので、これからしっかりゲームを見て分析、研究をして、いい準備をして臨みたいと思います。コーチたちはもちろん研究していると思いますし、ゲームプランを準備してくれていると思いますので、選手たちはそれを守ってしっかりと遂行することが大事だと思っています」

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