NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第4節
2024年1月6日(土)13:00 ミクニワールドスタジアム北九州 (福岡県)
九州電力キューデンヴォルテクス vs 日本製鉄釜石シーウェイブス
九州電力キューデンヴォルテクス(D2)
地元で訪れた最高の舞台。
同期の前で体現したいラグビーの楽しさ
新年を迎えて初戦となる今節。九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)は日本製鉄釜石シーウェイブスと対戦する。舞台はミクニワールドスタジアム北九州。キックオフは1月6日13時。ともに開幕から3連敗中の両者だけに初勝利への熱い思いがぶつかり合う熱戦になることは必至だ。
北九州市出身の山田章仁が通算100トライに王手をかけて迎える地元での一戦。スーパースターに視線が注がれるのは当然だが、もう一人、注目すべき選手がいる。山田章仁と同じ北九州市出身の新鋭・神田悠作だ。
東筑高校を卒業後、早稲田大学への進学を目指すもそれが叶わず。2浪の末に東洋大学へと進学する。浪人中の2年間はラグビーに関わることなく、本人いわく「体はブヨブヨ」だったという。「仮に早稲田に合格していてもラグビーは高校までのつもりだった」が、東洋大学に合格後、「高校の監督や両親の『頑張ってみたら』という言葉があって」ラグビーを続行した。
しかし、2年間のブランクがあった神田にとって当時、関東大学リーグ一部昇格を目指す東洋大学の環境は「めちゃくちゃキツかった(苦笑)」という。それでも、「死に物狂いで自主練して(元の体を)取り戻した」そうだ。ただ、2年間のブランクは身体的なキツさ以外のものも与えてくれた。
「とにかく楽しかった。言ってしまえば、良くなる一方しかない状況でした。脂肪が落ちて、筋力が上がるし、足も速くなる。分かりやすい実感しかなくてそれが楽しかった」
その気持ちは九州KV加入後のいまも続いている。
「ラグビーから2年離れたからこそ、いいプレーができると『あぁ、楽しいな』って。だから、練習が苦じゃないんです。趣味が練習です(笑)」
高井迪郎キャプテンも「あいつは周りが『止めろ』って声を掛けないとずっと練習している」と言うほど、神田はラグビーに没頭している。そんな神田だが今回の舞台であるミクニワールドスタジアム北九州にはある思い入れがある。
「ミクスタの隣にあさの汐風公園という場所があって、大学生のときのオフシーズンに自主トレをやっていました。そこで『いつかミクスタで試合できないかな』と思いながら練習していました。今回、それが叶うチャンスがあってうれしいですね」
今回の試合には小学校、中学校、高校の同期生たちも観戦に訪れるそうだが、その仲間たちはすでにラグビーを止め、いまも続けているのは神田だけだという。止めるはずだったラグビーを続けてきたからこそ、巡ってきた地元での最高の舞台。神田は存分にラグビーの楽しさを表現する。
(杉山文宣)
日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)
「妥協と満足は成長を止める」。
成長を続ける若き司令塔
日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)は1月6日(土)に福岡のミクニワールドスタジアム北九州で九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)と対戦。新年一発目の試合で今季初勝利を狙う。
司令塔、10番のスタンドオフには、3試合連続で昨年に加入した落和史が起用された。「勝つ試合は10番の活躍が印象に残ることが多いと思っている。チームを勝ちに導くスタンドオフになりたい」と、落は表情を引き締めた。
昨季、まだ大学生だった2月からアーリーエントリーでチームに加入した落は、その翌月にジャパンラグビー リーグワン初出場を果たした。ほかの選手のけがの影響などもあったと言うが、今季のプレシーズンマッチでも多くの試合で先発起用された。「まだ実力で試合に出られているとは思えていない。その中でも自分のできることを100%出していきたい」と、チャンスをモノにするために奮闘している。
落は昨季から体重を7kg増加させ、チームが今季特にフォーカスしているコンタクトエリアで十分戦える自信をつけていた。そんなとき、プレー機会も増える中で自分自身を見つめ直す大きな機会があったという。プレシーズン終盤の紅白戦でも手ごたえを感じていたが、開幕戦ではメンバーに入れなかったのだ。「調子は良かったが、足りないところがあった」。元々人見知りで人に気を遣ってしまうという性格もあり、スタンドオフとして大切な、チームを引っ張る積極性に欠けていることに気づかされた。
その後、自分の弱点を克服しようという思いを、与えられたチャンスでしっかり表現した。前節、後半8分には落の見事なキックパスからトライが決まった。相手のポジショニングや動きを観察して落から味方に伝えた指示が生んだ得点だったという。「積極性のなさがプレーの幅も狭めてしまっていたし、プレーだけではなく積極性から信頼が生まれると実感しました」と、試合を重ねながら、チームを司る役割の重要性をしっかりと肌で感じている。
釜石SWに入団してからは、大学時代には行っていなかったキッカーも務めている。「自分がキックを外さなければ勝っていた試合もあった。キックは課題の一つでもあるし、強みに変えたいものです」。日々、コーチや先輩のアドバイスを受けるとともに、いい形で蹴ることができた自分のキックの動画を何度も見て、精度を上げている最中だ。
「妥協と満足は成長を止める」。この座右の銘を胸に、成長を止めない若き司令塔。辰年の今年、昇り龍のごとくチームに勢いをもたらすプレーを期待したい。
(佐々木成美)