NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第5節 カンファレンスB
2024年1月13日(土)12:00 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 21-81 埼玉パナソニックワイルドナイツ
とにもかくにもマインドセットの修正。
それが相模原DBに与えられた次なる課題
「すごくショックといいますか、難しい感情でいます」
三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)の岩村昂太キャプテンはやや呆然とした表情で、埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)戦の結果を表現した。
相模原DBの長い飛距離のキックオフで始まったゲーム。ウイングの中井健人が快足を飛ばしてリターンをブロックし、埼玉WKにプレッシャーを与える。
最初のプレーは計算どおり。しかし、そのあとの相模原DBの強みである粘り強いディフェンスが機能しない。埼玉WKのゲインを止めることができず、前半だけで7つのトライを奪われる。
相模原DBは、前節から先発メンバーが9人代わった。グレン・ディレーニー ヘッドコーチは「自分たちのパフォーマンスには関係ありませんし、言い訳になります。誰が出てもいいパフォーマンスを出さなければいけないというスタンダードがあります」と影響を否定するが、坂本侑翼、タウモハパイ ホネティ、トニシオ・バイフなど主力が負傷離脱したのは事実としてある。
一方の埼玉WKは、前半に大きなリードを許した前節のトヨタヴェルブリッツ戦の反省から設定したテーマである“アクション・ファースト(見極めて、相手よりも早く動き続ける)”を意識した練習を重ねてきたという。さらに負傷離脱していた主力選手の復帰に加え、風上と順光というプレー環境での優位性もあった。
ここまで2勝2敗、前節は35対40と横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)にも善戦していた相模原DBに対して、埼玉WKはまったくスキを与えずに試合を終えた。
相模原DBの鶴谷昌隆バイスキャプテンは前半について、「失点が続く中で、自分たちのラグビーを出さずにこのまま終わるのではなく、自分たちのラグビーをやるために、次の仕事をみんなで共有して修正しようとしましたが、うまくいかなかった部分があり、後半まで続いてしまいました」と振り返る。
岩村キャプテンが敗因に挙げたのは“マインドセット”。鶴谷バイスキャプテンはこう説明する。
「埼玉WKには日本代表選手が多くいて、われわれにはいないということがマインドセットの部分に大きく影響したのかなと感じます。試合前に先入観はなくそうと話していましたが、横浜E戦と比べてパフォーマンスに差が出てしまいました」
相模原DBの次の課題は、“マインドセットの修正”だ。
鶴谷バイスキャプテンは「今日は負けたことを受け止めて、学んで次に生かすため、来週の頭からしっかりマインドセットを修正して次の東京サントリーサンゴリアス戦に向かいたい」と前を向いた。
(宮本隆介)
三菱重工相模原ダイナボアーズ
三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ
「正直、ショックな状態で、かなりびっくりしています。第1節〜4節までは結構いいラグビーをしていたと思いますが、今日はまったくできずに終わってしまい、残念でした」
──前半に大量失点しました。試合が始まってから想定外のことはありましたか?
「今日のようにあんなにミスタックルをすると当然そういう流れになると思います。ファーストプレーからそうで、自分たちがプレッシャーを掛けていたのに、相手は簡単に抜けて、大きくゲインをしてトライを取りました。そこからいきなり自信がなくなることもあるので、そこでみんなが一つになってリスタートしなければならなかったのですが、それができないまま、ディフェンスをやり切ることができず、さらにまた悪いディフェンスにつながったと思います」
──先週の横浜キヤノンイーグルス戦が激闘で、けが人も出ました。しかも今節は中5日、1日とはいえ少ない準備期間での試合。そういう日程的な部分、しかも今日は常識的には横浜キヤノンイーグルスよりも強敵という相手で、難しさはありましたか?
「そういうところは自分たちのパフォーマンスには関係ないと思います。そのせいにしたら言い訳になると思います。自分たちは誰が出場しても、いいパフォーマンスを出さなければいけないというスタンダードがあります。単純に今日はそれができませんでした。先週はいいパフォーマンスを出せましたし、勝てた試合だと思います。最初の4試合は一貫性をもってプレーできていましたけれど、それが今日はまったくできませんでした。なぜなのか、自分たちで考えないといけないのですが、せっかくいいパフォーマンスを先週見せたにもかかわらず、今日こういうパフォーマンスを出すのは許せないことです。そこは自分たちで考えて、またいい流れを作らなければいけません」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン
「ヘッドコーチがおっしゃったとおり、すごくショックといいますか、難しい感情でいます。実際、どこに問題があったのか、あらためて映像を確認し、自分たち一人ひとり自問自答して問いたださないといけない状況なのかなといま感じています。しっかり、もう一度自分たちにベクトルを向けて、何が悪かったのか、準備の段階で何ができていなかったのか、試合ではどういうマインドセットでいたのか、そういったことを振り返って次に生かしていきたいと思います」
──今日はどんなところにフォーカスして、実際それがどれくらいできたのか。分かる範囲で教えてください。
「チームとして毎試合、アタック、ディフェンス、いろいろフォーカスポイントは決めますけれど、先程ヘッドコーチも言ったとおり、まずはアタックうんぬんより、ディフェンスのところでタックルフィニッシュできませんでした。あとは試合中、コーチ陣から『われわれのボディーランゲージ、相手と戦う姿勢が欠けている部分がある』ということを指摘されました。そういうことはグラウンドに立つ選手に絶対あってはならない状況だと思います。なので、“できた” “できていない”というよりは、まずは自分たちのそういったボディーランゲージやマインドセットがこの試合で欠けていたところだと思います」
──ゲームプランとしては、どういったことを事前に考えて、実際、主にどこがプランどおりにいかなかったのでしょうか?
「ディフェンスのタックルだと思います。人はいましたけど完全に最初からタックルフィニッシュできなかった。それができていなかったので、その後のアタックまでたどり着くことができなかった80分だったと思います」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「チームとしていい1週間を過ごせてうれしいですし、自分たちの取り組み方として、先週と今週を比較すると、今週のほうがいいところがあったと感じています。先週の試合結果を振り返っていただければ分かると思いますが、いいスタートが切れていると思うので、今回の試合はそういう意味でもいい準備ができた1週間だったと感じています。また、福井翔大選手の50キャップ(カップ戦を除く日本選手権とトップリーグトーナメントを含めた公式戦出場数)という今回の記録をポジティブにとらえていますし、ラクラン・ボーシェー選手と山沢拓也選手が復帰してプレーをしてくれたことをうれしく感じています。坂手淳史キャプテンから、けがから戻ってプレーしていくというのはどういう心境なのか説明していただけるかなと思います」
──先週のトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)戦で、坂手選手が「アクション」を意識したとおっしゃいましたが、前半の40分、ロビー・ディーンズ監督としてはどんなことを意識したのかを具体的に教えてください。
「チームの中で話し合った結果、“アクション・ファースト”というテーマを掲げました。先週の試合では、前半と後半で多くの違いがあったのですが、そこから、自分たちがどういうものが試合の序盤に必要になってくるかということを話して、“アクション・ファースト”を意識しました。ラグビーはすごく複雑なゲームで、すごく細かいことに気をとられがちなスポーツではあるのですが、その中でもキーポイントを自分たちの中でいくつか見つけています。このような熱くなりやすいスポーツにおいて、80%は自分たちのニーズをカバーするために、いくつかキーポイントを拾って、補っていくことを意識しています。いろいろな細かいことがあるのですが、それを一つひとつ述べていくと時間が足りませんし、それを一つずつつぶしていくとなると練習時間も足りなくなってしまうので、自分たちが練習でカバーしてきたものを実際にこのように試合でパフォーマンスとして表せたことはすごく良かったと感じています。
本日の最初の40分間は特別なものがあったと思います。三菱重工相模原ダイナボアーズさんにスキを見せなかったと感じています」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「まず、今日いいスタートを切るために、いい準備をしようと1週間の練習を積んできましたが、それがうまくゲームに反映されたと思っています。ゲームの中で、今日のテーマは“アクション”。自分たちが見極めて、相手よりも早く動き続けるというところを意識して今週のゲームに臨みました。前半から良くできていましたし、スコアが広がったあとでも、集中力を切らさずに、プレーし続けられたのは、練習でメンバー外の選手が、僕たちゲームに出る選手に対してプレッシャーを掛け続けてくれたおかげではないかと思っています。そこで練習どおりゲームが運べたところは自分たちの自信になると思いますし、今後もこういうスタート、そしてこういうスタートを切れなかったとしても、ゲームの中で修正しながら自分たちがアクションし続けるというところにフォーカスしながらやっていきたいと思います。
けがからの復帰に関しては、ちょっとよく分からないのですが、いい形でゲームに対してインパクトを残してくれた、ロッキー(ラクラン・ボーシェー)、ヤマ(山沢拓也)を含めて、復帰してからいい形でチームに対してプレーしてくれていると思います。ルード(・デヤハー)もなかなか帰ってこられない大きなけがから、チームに対して、メンバー外としていいプレッシャーを掛けるなど、いいアドバイスをしながら、こうやって今週ゲームに戻ってきたというところはすごくチームとしてもうれしいことです。彼らが今後ともさらに活躍してくれることを願っています。メンバーは準備をたくさんできているので、今後、たくさんのメンバーみんなでチームを作っていければと思っています」
──前半は風上で、キックオフも積極的に蹴らないでどんどん回していったように見えたのですが、どういった意図のアタックだったのでしょうか。
「コイントスに勝って、風と太陽の部分で右側から左側に対するアタックを取りました。風は大きく影響しないと思いましたが、試合が始まってみると、上空では少し風が吹いていたので、いいチョイスだったかなと思います。
前半、キックを蹴らなかったところは、キック一辺倒ではなくて、どこでキックを蹴るかというタイミング、アタックするチャンスを逃さないというところを常に考えとして持っているので、そこまで何か特別なことをしたというわけではないです。アタックをしながら、10番、15番といい判断をする選手がいっぱいいるので、そこでいい判断をしながらキックを蹴って、それ以外の選手がチェイスする。そこの基本的なところがうまくいったかなと思っています」
──ロビー・ディーンズ監督がおっしゃっていた『前半40分が特別なものだった』というのは、先週、最終的には勝ったとはいえ、トヨタV戦での前半の出来が良くなかったということに対してでしょうか。
「もちろんそうです。出来が悪かったというのと、今までトヨタVさんがやっていなかった戦術をプレーしてきて、それに対して少し真に受けてしまったところから、修正がうまくいかなかった。前半、良くなかった要因として、自分たちが直せる部分が大きいと反省が出たので、これを今週は意識しました。しっかりコミュニケーションをとって全員がつながり続けてラグビーをする。そこがまずは基本だと思うので、それをもう1回、思い出して、前半からやっていこうという話をしていました。すごくいい前半でしたし、うまくいくことばかりではないと思いますけれど、こういうことを続けていければ、自分たちのチームレベルとしても上がっていくと思うので、いいスタートを切れるように、アクションというところは、今週のテーマでしたけれど、1シーズンとおして、念頭に持っていきたいと思います」