2024.01.22NTTリーグワン2023-24 D3 第5節レポート(江東BS 38-20 WG昭島)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン3
第5節
2024年1月20日(土)13:00 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス 38-20 クリタウォーターガッシュ昭島

2シーズンぶりにつかんだ“夢の島”での勝利。
その裏にあったそれぞれの奮闘

「前節を踏まえて、『自分たちのスクラムを組もう』と、この1週間準備してきました」。清水建設江東ブルーシャークスの立川直道選手

清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)にとって負けられない“夢の島最終戦”。改修工事に入るためホストエリアの江東区でファンに勝利を見せる今季最後のチャンスで、選手、スタッフともに思いを一つにクリタウォーターガッシュ昭島を迎えた。

前半に風上となった江東BSは風の優位性を得ただけでなく、選手たちはこれまでと一風違った姿を見せた。試合の入りからリズムに乗り、要所で確実に得点を重ねて25対13で前半を折り返す。後半早々には相手にトライを許し、一時は5点差まで縮められるが、前節の課題であったモールからのトライが続き、38対20でノーサイド。ファンも待ちわびた江東区夢の島競技場での念願の勝利を2シーズンぶりに飾った。

特にスタジアムが沸いたのは、前半27分、ラインアウトのサインプレーから鮮やかなトライが決まったシーンだった。立川直道からのスローを長身2mのトム・ロウがキャッチすることなくスルー。その先にいた松土治樹がボールを受け取りそのままトライを奪った。あまりにもきれいなサインプレーに、スタジアムは歓喜の渦で包まれた。トライを決めた松土は、江東区夢の島競技場で1年前に人生初の大けがをし、この試合が復帰後初の先発。「ネガティブなことが頭によぎりながらも、グラウンドに立てば自分が体で引っ張るという思いで入りました。練習どおりの形でトライできて本当に良かったです」と安心した表情で振り返る。

江東BSはラインアウトからのモールで3トライを決めた。そのうち2トライを決め、課題だったセットピースを安定させた立川の存在が大きかった。練習では立川を筆頭にスクラム、モール、ラインアウトのチェックを納得するまで取り組む姿があった。試合後には、「前節を踏まえて、『自分たちのスクラムを組もう』と、この1週間準備してきました。相手に合わせず、自分たちの真っすぐ低いスクラムを80分徹底することができました」と手ごたえも口にした。

また、前節の悔しい逆転負けから、白子雄太郎キャプテンとともに立川は精神面でもチームを立て直してきた。練習からポジティブな言葉を意識し、試合中もミスが起きても次に切り替える声が飛んでいた。2シーズンぶりの江東区夢の島競技場での勝利の裏には、苦しい時期を乗り越えた選手たちの努力が詰まっていた。

試合後恒例の全選手でファンを見送る“お見送り花道”は笑顔に包まれた。立川は「ファンのみなさんと本当の意味で同じ気持ちになれました」と安堵感を見せ、「次節までにもう一段階積み上げてさらに成長した姿を見せたいです」と続けた。“シャークス”の次なる戦いはすでに始まっている。

(山村耀)

清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークスの仁木啓裕監督兼チームディレクター(左)、白子雄太郎キャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕監督

「勝てて良かったという一言です。母体となる清水建設は、富山県が創業の地で、その中で先週は勝てずにモヤモヤした部分もありましたが、今回は勝利できて、同じ北陸地方にある石川県の方々に少しでも笑顔を届けられたのではないかと思います。本当にありがとうございました」

──前節は個人技に頼るプレーが多く、チームで動く攻撃の形をもう一度見直したいと話されていましたが、チームでアタックするという組織力については今日の試合はいかがでしたでしょうか?

「上から観ていて、選手たちのたくましい姿を誇らしいと感じていました。今季、監督に就任したころにはこのような姿は想像できなかったもので、選手たちが非常に仕事とラグビーの両立を体現してくれた結果だと思います。組織力ももちろんですが、気持ちの部分が勝ったのかなと思います」

──前半、相手が風下を選び、風上から攻めることになりました。風上は優位である一方で難しさもあると思いますが、最初の入りはどのようなところを意識されたのでしょうか?

「フォワードの控えもクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)さんは1枚多く、後半が勝負になるのかなとも考えられましたが、それに合わせることなくわれわれのやるべきことは“先手必勝”で、はじめからいくことを意識しようと声を掛けていました。今回は普段フルバックで出ているコンラッド(・バンワイク)選手がスタンドオフで出場し、エリアの部分は気にしながらのプレーになりましたが、想像以上のプレーをしてくれて満足しています」

──公式戦100試合を達成した日髙駿選手について監督からのお言葉をいただけますか。

「ジャパンラグビー リーグワンの前身のころからチームに入ってくれて、プレーだけでなく頭脳の部分も含めて、本当にお手本になる部分があります。彼が頑張ってきた結果が100キャップに結び付いたと思いますし、一言『ありがとう』と伝えたいです。厳しい言葉を掛けるなら、まだまだ引退はさせないつもりなので、レギュラーを勝ち取って、頑張ってほしいと思っています」

──今日の試合でテーマである『実行』がある程度できた上で、それを継続していくことが大事になりますが、そのために次の練習からどのようなところに注力していくのか教えてください。

「次の試合まで期間が空きますが、2本練習試合が入っているので、今日ジャージーを着られていない選手には、しっかりアピールをしてほしいと伝えました。そのアピールがチームの底上げにもなりますし、今日出た選手はそういったアピールを見ると、安心していられないという気持ちにもなると思います。それが本来チームとしてあるべき姿だと思っています。アピールをしてくれた選手を見落とさず、次のゲームで使っていきたいと思っています」

清水建設江東ブルーシャークス
白子雄太郎キャプテン

「今週のテーマは『実行』で、自分たちの準備したプレーを相手のプレッシャーがある中でもやり切ろう、遂行し切ろうということをテーマに挙げていました。高い集中力をもってできた部分が多く、勝利できて良かったです」

──今日はセットピースを起点にフォワードの得点が多かったですが、キャプテンとして今日の試合の満足度はどうでしょうか?

「前節ではフォワードが不甲斐ない試合をしてしまったので、今日は雨予報もあり、フォワード勝負になることをフォワード同士でも声を掛け合っていました。スタートのメンバーだけでなく、控えの選手を含めて80分間集中力高くやり抜けたと思います」

──今日の勝ちを今後につなげていくために取り組みたいことはどのようなことでしょうか?

「ベーシックな、基本的な部分を大切にしたいです。スクラム、ラインアウトなど、やはり基本はすごく重要なので、その積み重ねを引き続きやっていくことだと思います」

クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(左)、石井洋介キャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ

「残念な結果です。前半は自陣からの脱出にうまくいかない部分があって、相手のアタックが自陣に入ってきていて、守りに入る時間が長くなってしまいました。後半は自分たちのやりたいラグビーが少しはできましたが、最初の20分でチャンスが生み出せている中、得点できないことが重なってしまいました。清水建設江東ブルーシャークスさんのほうは、チャンスになったときにうまく得点していたという印象で、そこが大きな違いかなと思います」

──後半から徐々に自分たちのリズムも作れたという話がありましたが、ハーフタイムにはどのような指示を出されたのでしょうか?

「前半の終わりごろから、だんだん自分たちのラグビーができてきたので、それを継続しようと指示しました。後半の入りでトライが取れて、後半20分くらいには、3~4回敵陣22mラインのところに入れたシーンがありましたが、そこで小さいエラーがありました。ここから2週間空くので、敵陣に入ったときにいかに得点を取れるようになるかを大きな改善点として取り組んでいきたいです」

クリタウォーターガッシュ昭島
石井洋介キャプテン

「ヘッドコーチからあったように、最初の20分のところで相手にやりたいラグビーをさせてしまったところが今回の大きな敗因の一つだと思います。前半の後半あたりから自分たちのしたいラグビーはできつつありましたが、その中でのブレイクダウンなど細かいところが疎かになってしまい、勝つことができなかったと思います」

──相手のリズムになりかけたときに選手間で話されていたことはどのようなことでしょうか?

「エリア取りのところでうまくいかず、ずっと自陣にいたので、キックを蹴らずに自分たちでボールキープしていこうと声を掛け合いました。前半の途中からは徐々に自分たちのラグビーができていったのかと思います」

──次節まで3週間ほど空きますが、次に向けて修正していきたい部分はどのようなところでしょうか?

「この3週間の過ごし方が重要になるので、もう一度自分たちの強みであるアタックの部分をやっていくために、まずはブレイクダウンのところを精度高くやっていきたいと思います」

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